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{{Multiple image|direction=vertical|width=250
|image1=Bell UH-1D SAR LTG 61.jpg
|caption1=[[UH-1 (航空機)|UH-1D]]
|image2=101st Airborne Div at Tikrit.jpg
|caption2=[[UH-60 ブラックホーク]]
|image3=Mi-8MTV-5 (3).jpg
|caption3=[[Mi-17 (航空機)|Mi-8MTV]]
}}
'''汎用ヘリコプター'''({{Lang-en|Utility helicopter}})は、[[軍用機|軍用]][[ヘリコプター]]の分類の一つ。中型ヘリコプターがこれに該当する<ref name="軍用ヘリ"/>。
 
== 概要 ==
機体規模としては、[[輸送機|輸送]]用として使った場合は[[分隊]](10名前後)を収容できる程度のものである。この程度の機体規模であれば、[[輸送|軽輸送]]・[[ヘリボーン]]用以外にも、通常は小型[[ヘリコプター]]によって行なわれるような任務にも容易に投入可能であり、このことから'''汎用'''と称される<ref name="軍用ヘリ"> {{Cite book|和書|author=[[江畑謙介]]|year=1987|title=軍用ヘリのすべて―戦いを変えた万能兵器|publisher=原書房|isbn=978-4562018925}}</ref>。
 
汎用ヘリコプターが投入される任務としては、主に下記のようなものがある。
* [[輸送機|軽輸送]](Slick)
* [[攻撃ヘリコプター|武装攻撃]](Gunship)
* [[航空救急]]([[:en:Medical evacuation|MEDEVAC]])/負傷兵後送([[:en:Casualty evacuation|CASEVAC]])
* [[連絡機|連絡]](Liaison)
* [[観測機|観測]](Observation)
 
== アメリカ ==
=== 陸軍・海兵隊 ===
[[アメリカ陸軍]]が最初に汎用ヘリコプター(HU)の機種記号を付与した機体が[[UH-1 (航空機)|HU-1 イロコイ]]([[1962年]]の命名法改正に伴いUH-1に改称)であった。この機体は、折からの[[ベトナム戦争]]において、上記の各種任務に幅広く投入され、HU-1の1を英文字のIと見做した「HUI=ヒューイ」という愛称で広く親しまれた。また、本格的[[攻撃ヘリコプター]]として[[AH-1 コブラ]]を開発した際には、本機がベースとされた。
 
しかしUH-1は、完全装備の[[小銃]][[分隊]]を収容できないなど、性能に若干の不足があったため、アメリカ陸軍は、ベトナム戦争中より、UTTAS(汎用戦術輸送機システム)構想の検討を開始した。[[1972年]]、UTTAS構想が各社に対して提示され、[[シコルスキー・エアクラフト]]社の[[UH-60 ブラックホーク|YUH-60]]と[[ボーイング|ボーイング・バートル]]社の[[YUH-61 (航空機)|YUH-61]]が候補機として選定された。比較テストの結果として、[[1976年]]、YUH-60がUH-60 ブラックホークとして採用された<ref name="軍用ヘリ"/>。
 
一方、[[アメリカ海兵隊]]においては、汎用ヘリコプターは陸軍よりは[[アメリカ海軍|海軍]]に近い運用法がなされており、主として[[連絡機|連絡]]・[[観測機|観測]]・[[航空救急|救難]]・武装攻撃に投入された。[[上陸戦|水陸両用作戦]]の性格上、[[輸送|航空輸送]]の所要量が大きいこともあって、軽輸送用途には、[[シコルスキー S-58|HUS-1(CH-34)]]の後継として採用された輸送ヘリコプターである[[V-107|HRB-1(CH-46)]]が投入され、これが半ば汎用ヘリコプターとして広く使用された<ref name="艦載ヘリ"> {{Cite book|和書|author=江畑謙介|year=1988|title=艦載ヘリのすべて―変貌する現代の海洋戦|publisher=原書房|isbn=978-4562019748}}</ref>。[[1970年]]には、[[カナダ軍]]向けに開発されていたUH-1の双発版である[[ベル 212]]を[[UH-1N ツインヒューイ]]として採用したほか、[[2009年]]より、さらに改良した[[UH-1Y ヴェノム]]による更新が開始された。
 
=== 海軍 ===
{{See also|LAMPS}}
[[アメリカ海軍]]においては、[[アメリカ陸軍|陸軍]]のような[[輸送|軽輸送]]ではなく、[[航空母艦]]艦上での[[連絡機|連絡]]・[[航空救急|救難]]を主任務として汎用ヘリコプターを定義しており、HUないしHJの機種記号を付与していた。ただし現在では、[[対潜哨戒機#哨戒ヘリコプター|哨戒ヘリコプター]]や[[LAMPS]]機が広く配備されたことから、これらの機体に代替されて、汎用ヘリコプターという種別そのものが消滅している。
 
なお、LAMPSは「多目的」(Multi-Purpose)と定義されているが、これは、従来の汎用ヘリコプターの任務に加えて対潜・対水上戦闘任務が加わったことをあらわしており、従来の「汎用」とは異なるものである<ref name="艦載ヘリ"/>。
 
=== 空軍 ===
[[アメリカ空軍]]の保有機材は、基本的に[[固定翼機]]に限定されているが、少数の回転翼機も運用している。これらは、汎用ヘリコプターや[[練習機|練習ヘリコプター]]、また、[[ヘリコプター]]の特性を生かした特殊な輸送ヘリコプター(クレーン・ヘリコプター)である。
 
空軍の汎用ヘリコプターは、基本的に[[連絡機|連絡]]・[[救難機|救難]]を目的とした非武装機であり、[[飛行場]]や[[射場]]などの[[アメリカ空軍基地の一覧|空軍基地]]に少数機ずつ配備されている。空軍には[[捜索救難|戦闘捜索救難]](CSAR)の専門部隊が設置されているため、汎用ヘリコプターによる救難範囲は、基地の周辺におおむね限定される。機材としては[[UH-1N ツインヒューイ]]を使用するが、老朽化に直面していることから、CVLSP(common vertical lift support platform)計画のもとで更新が予定されている<ref>{{Cite web|author=Stephen Trimble|date=2002年6月11日|url=http://www.flightglobal.com/articles/2011/06/02/357446/usaf-powers-up-for-long-awaited-uh-1n-replacement.html|title=USAF powers up for long-awaited UH-1N replacement|language=英語|accessdate=2011年8月1日}}</ref>。
 
== ソビエト連邦 ==
[[ソビエト連邦軍]]においては、[[ソ連地上軍|地上軍]]は[[ヘリコプター]]を運用せず、[[ヘリボーン]]作戦などを実施する際には、[[ソ連空軍|空軍]]の機体と協同することとされていた。[[東側諸国]]は規模の違いはあれ、概ね、このような[[ソビエト連邦|ソ連]]式の運用を手本にしていた。
 
[[ソ連崩壊]]後、ソビエト連邦軍を引き継いだ各国軍においても、これらの方針は踏襲されたが、国によってはヘリコプター部隊の主力は[[陸軍]]へ移管されたり、[[海軍]]基地所属の部隊が[[空軍]]へ移管ないし廃止されたりしている。
 
=== 空軍 ===
[[ソ連空軍]]の装備は、[[アメリカ海兵隊]]と同様の方針を採用しており、比較的小型で[[連絡機|連絡]]・[[観測機|観測]]に重点を置いた機体と、比較的大型で[[輸送]]や[[攻撃ヘリコプター|武装攻撃]]に重点を置いた機体の併用とされていた。当初は[[Mi-1 (航空機)|Mi-1]]と[[Mi-4 (航空機)|Mi-4]]、[[1960年代]]半ばからは[[Mi-2 (航空機)|Mi-2]]と[[Mi-8 (航空機)|Mi-8]]を運用してきた。なお、[[1970年代]]以降、Mi-8の強化改良型である[[Mi-17 (航空機)|Mi-8MT(輸出型はMi-17)]]の実用化に伴い、生産はこちらに切り替えられている。ただしアメリカ海兵隊と異なり、比較的大型のMi-8を汎用ヘリコプターとして運用しており、一部の機体は武装ヘリコプターとして改装されたほか、本格的攻撃ヘリコプターとして[[Mi-24 (航空機)|Mi-24]]を開発する際にもMi-8がベースとなっている。また、Mi-24には[[兵士|兵員]]ないし担架の収容・輸送スペースが残されていることから、こちらも汎用ヘリコプターとして運用することもできる<ref name="軍用ヘリ"/>。[[ソビエト連邦|ソ連]]ではアメリカ海兵隊が保有しない固定翼大型[[輸送機]]並みの大型ヘリコプターを運用した。当初は[[Mi-6 (航空機)|Mi-6]]、後期には[[Mi-26 (航空機)|Mi-26]]が配備され、さらに大型の機体も少数生産された。これらの存在により、西側では輸送用に充当されるような中型ヘリコプターが、ソ連では汎用機として扱われることとなっていた。
 
[[ソビエト連邦軍|ソ連軍]]にとって、小型[[ヘリコプター]]はあくまで補助的な地位に留まったため、生産も[[ポーランド人民共和国]]など他国に任せており、国内では主力のMi-6やMi-8クラスの機体を重点的に生産した。なお、Mi-8クラスは軍・官用と[[アエロフロート・ロシア航空|アエロフロート]]用に重点的に配備され、Mi-6クラスはほぼ軍・官専用であったのに対し、小型機は[[農業]]など、民生用に多くが使用されている。
 
=== 海軍 ===
[[ソ連空軍|空軍]]以外にも、[[ロシア海軍航空隊|海軍航空隊]]が多数の汎用ヘリコプターを運用した。[[艦載機]]として用いられたのは、専ら、[[Ka-25 (航空機)|Ka-25]]や[[Ka-27 (航空機)|Ka-27]]といった[[対潜哨戒機#哨戒ヘリコプター|哨戒ヘリコプター]]であったが、これらは[[航空救難|救難]]や[[連絡機|連絡]]などの任務にも投入され、汎用機の役割も担わされた。少数ではあるが、Ka-27をもとにした艦載輸送ヘリコプターとしてKa-29が開発され、[[上陸戦]]に使用するため[[イワン・ロゴフ級揚陸艦]]などに搭載された。
 
また、基地配備の[[ヘリコプター]]には、空軍同様の機種の汎用ヘリコプターが充当されていたが、これらの機体は、[[ロシア海軍歩兵|海軍歩兵]]による地上作戦にも使用される。
 
== イギリス ==
[[イギリス陸軍]]では、[[陸軍航空隊 (イギリス)|陸軍航空隊]]は汎用ヘリコプターより大型の[[ヘリコプター]]を保有せず、[[ヘリボーン]]作戦時には[[イギリス空軍]]の輸送ヘリコプターを使用する。汎用ヘリコプターとしては、[[1960年]]からは[[ウェストランド スカウト]]、[[1974年]]からはさらに[[SA 341 (航空機)|ウェストランド ガゼル AH]]が運用されるようになったが、これらはいずれも非武装で、搭載量も少なかった<ref name="軍用ヘリ"/>。
 
[[1977年]]より陸軍航空隊は、対[[戦車]]攻撃用として[[アグスタウェストランド リンクス]]AHの受領を開始したが、これは単なる武装ヘリコプターに留まらず、汎用ヘリコプターとして幅広い任務に従事している<ref name="軍用ヘリ"/>。
 
一方、[[イギリス海兵隊]]は固有の航空部隊を持たないが、上級部隊である[[イギリス海軍]]の[[艦隊航空隊]]が[[シコルスキー S-61#ウェストランドのライセンス生産|ウェストランド・コマンドゥ HC.4]]輸送ヘリコプターとリンクス AH.7汎用ヘリコプターを保有する<ref name="艦載ヘリ"/>。
 
== フランス ==
[[フランス陸軍]]は[[アメリカ海兵隊]]と同様の方針を採用し、[[1960年]]より小型で[[連絡機|連絡]]・[[攻撃ヘリコプター|攻撃]]に重点を置いた[[SA 316 (航空機)|SA.316 アルエットIII]]、[[1968年]]からはより大型で輸送に重点を置いた[[SA 330 (航空機)|SA.330 ピューマ]]を併用してきた。また、[[1973年]]には小型機として[[SA 341 (航空機)|SA.341 ガゼル]]が新たに導入されたほか、[[1970年代]]後半より、SA.330 ピューマから[[AS 332 (航空機)|AS.532 クーガー]]への更新が開始された<ref name="軍用ヘリ"/>。
 
== 参考文献 ==
{{Reflist}}
* {{Cite book|和書|author=田村尚也|year=2008|title=ミリタリー基礎講座 2 (歴史群像シリーズ 歴史群像アーカイブ VOL. 3) - 現代戦術への道|chapter=ヘリボーン戦術大研究|publisher=学研パブリッシング|isbn=978-4056051995}}
 
[[Category:ヘリコプター|*はんよう]]