「北九州弁」の版間の差分

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{{独自研究|date=2008年4月}}
 
'''北九州弁''' (きたきゅうしゅうべん) は、[[福岡県]]の[[北九州市]]を中心とした[[地域]]で話される[[日本語の方言]]である。[[豊日方言]]の一つ。この記事では、[[遠賀郡]]地域を西限 、[[京築]]地域を東限とした範囲の方言を北九州弁として述べる 。福岡県の方言は大きく[[福岡県豊前方言|東部方言]]([[豊前国|豊前]]と筑前東部)、[[筑前方言|西部方言]]([[筑前国|筑前]]大部分)、[[筑後方言|南部方言]]([[筑後国|筑後]])に分けられ、北九州弁は東部方言に入る<ref>平山輝男ほか『日本のことばシリーズ40福岡県のことば』明治書院、1997年</ref>。
 
== 特徴 ==
# タ行音の多用 :「-ちゃ」「-っち」
# [[疑問文]]での[[撥音]]の多用 :「何なん?」「食べるん?」([[博多弁]]では「食べると?」)
# 短縮語・変化語の多用 :「くらす=喰らわす」
# 強調的表現・断定的表現の多用 :「-やろ」「-やん」「-ぞ」
# [[命令]]表現・強勧誘表現の多用 :「食べり (い) 」<イイ型> / 「見てん」<テン型> / 「教えちゃらんね」<チャランネ型> / 「来ちゃりい」<チャリイ型>
 
== 発音・アクセント ==
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== 語彙 ==
=== 名詞 ===
*「おいちゃん」… [[おじ|伯父さん・叔父さん・小父さん]][[苗字]]または[[地名]]を冠して「佐藤のおいちゃん」「[[小倉]]のおいちゃん」などと呼ぶ。
*「かしわ」… [[鶏肉]]。「[[かしわめし弁当]]」などがある。
*「がと」… 「 - の分」。例えば「300円分買って来て」は「300円がと買って来ぃ」となる。
*「- がた(方)」… 誰々の家。「お前んがた(方)」など。
*「かったりばんこ」… 代わりばんこ、交互。
*「かべちょろ」… ヤモリ。広義には、トカゲあるいはカナヘビを含むこともある。
*「きさん」… きさま(貴様)。
*「ごっつ」…1… 1.ある人と能力などが互角である人。また、ある人と別の人とが能力などについて互角である状態。2.ある物と価値などが同等である物。また、ある物と別の物とが価値などについて同等である状態。「100m走のタイム、お前と大体ごっつやのう」。
*「すいばり(が刺さる)」… 木材や竹の針状になった繊維(が指等に刺さる)。[[棘#加工や老朽化で生じる棘|とげ]]の一種。
*「ど(ん)げ」「ど(ん)べ」… 最下位。どんけつ。「どべ」は西日本の広い範囲で使用される。
*「びびんこ」… [[肩車]]。
*「びったれ」… だらしない。不潔な人。
*「めいぼ」… [[ものもらい]]。
*「こしょう」「わごしょう」… [[一味唐辛子]]。ちなみに、一般的な[[胡椒]]は「洋こしょう」と呼ぶ場合がある。
 
=== 動詞 ===
# [[上一段活用]]・[[下一段活用]]・[[サ行変格活用]]の[[命令形]]などの活用語尾は、標準語ではオ段音 (「-ろ」) となるのに対して、北九州弁ではエ段音となることが多い。(例:「見れ」「着れ」「食べれ」「調べれ」 )
# ただし、弱い命令形、あるいは依頼のニュアンスを含む場合、標準語でエ段音 (「-て (下さい)」) となるのに対し、北九州弁ではイ段音となる (例:「見ぃ」「着り」「食べり」「調べり」「来(き)ぃ」) か、「-ちゃり」(例:「しちゃり」) という接尾語が付くことが多い。
# 特殊な活用をするものが若干ある。例えば、下一段活用の「寝る」は、標準語での未然形「寝(ないで勉強する)」に加えて、北九州弁では未然形「寝ら(んで勉強する)」があり、また上一段活用の「見る」は、標準語での未然形「見(ないで予想する)」に加えて、北九州弁では未然形「見ら(んで予想する)」があり、五段活用と同様の活用をする場合がある。「出る」についても同様。「なんぼかけても電話に出らん」。
 
* 「いさる」{ラ行五段} …威張る。
* 「おらぶ」{バ行五段} …叫ぶ。
* 「か(っ)てる」{タ行下一段} …仲間に入れる。「仲間に入れて」は「か(っ)てて」、自動詞の場合「かたる」。
* 「からう」「かるう」{ワ行五段} …背負う(しょう)。「かばんをかるう」。
* 「きびる」{ラ行五段} … (紐などで) 縛る、束ねる。
* 「くらす」「はちくらす」{サ行五段} …殴る。「 (拳骨を) 喰らわす」の短縮語。「はちくらす」の「はち (鉢) 」は頭のこと。
* 「くらしゃげる」{ガ行下一段} …殴る。「くらす」+「あげる」の複合語。
* 「こまめる」{マ行下一段} …両替で金銭を細かくする。
* 「しばく」{カ行五段}…殴る。
* 「たう」{ワ行五段} …1.ある物が、離れている別の物に届く。2.手・背が届く。
* 「つむ」{マ行五段} …(髪・爪などを)切る。
* 「なおす」{サ行五段} …片付ける。しまう。「机の上の物を引き出しになおす」。[[近畿方言]]でも同一の意味で使用される。
* 「なんかかる」{ラ行五段} …寄り掛かる、もたれる。
* 「ぬく(温)める」{マ行下一段} …あたためる。「弁当をぬくめる」。
* 「はぐる」{ラ行五段}…はがす、めくる。「月初めに前月のカレンダーをはぐる」。
* 「ぱける」{カ行下一段} …壊れる、故障する。
* 「腹かく」{カ行五段} …腹が立つ、苛立つ。
* 「はぶてる」{タ行下一段}…ふてくされる。
* 「はわく」{カ行五段} …ほうき等で掃く。
* 「へる」{ラ行五段} …盗む。隠語「へっぱる」の短縮語。
* 「ほがす」「ほぐ」{サ行五段} …穴を開ける、穿孔する。
* 「ほげる」{ガ行下一段} …穴が開く。
* 「ほたる」{ラ行五段}…ほったらかす。
* 「またごす」{サ行五段} …跨ぐ。
 
=== 形容詞・形容動詞・副詞・連体詞 ===
#豊日方言の特徴でもあるが、形容詞の終止形の活用語尾が「よか」「うまか」のように「か」となる([[カ語尾]])ことはない。形容詞のカ活用も、隣接する九州の諸方言に比して多くない。例えば「外は寒いねぇ」は「外は寒かねぇ」とはならない。
* 「ええ」… 「良い」という意味。[[西日本]]中心に使われる。
* 「おおいい」「おいい」… 多い。
* 「きない」「きいない」{形・ク} … [[]]色い。[[鶏卵]][[黄身]]は「きなみ」と呼ぶ。
* 「濃ゆい」「濃いい」{形・ク} … 濃い。
* 「しゃあしい」「じゃかあしい」「せからしい」{形・シク} …うるさい、騒がしい。
* 「辛 (から) い」{形・ク} … 標準語と同じ意味にも使われるが、「辛い」単独で「しょっぱい」「塩辛い」の意味を表す語として使われる。([[博多弁]]なども同様)
* 「きつい」{形・ク}… 標準語と同じ意味(「きびしい」「つらい」「窮屈だ」)にも使われるが、「くたびれた」という意味で使われる。「きちい」とも言う。
* 「ぎょうさん」{副}… たくさん。
* 「すいい」… [[酸味|酸っぱい]]
* 「つまらん」「ちゃーらん」{形・特殊} … 「駄目だ」。不許可を表す。例えば「食べたら駄目だ」は「食うたらちゃーらん」となる。また「駄目になる」は「つまらんくなる」となる。
* 「ぬく(温)い」{形・ク} … 暖かい。
* 「いっちゃん」{副} … 最も、一番に。西日本の広い範囲で使われる。
* 「いっちょん」「いっちょも」{副} … 少しも(否定文)。「いっちょん好かん」で「これっぽっちも好きじゃない」という意味になる。
* 「さっちが」「しゃっちが」{副} … いちいち、わざわざ、しつこく。
* 「ちぃと」{副}… ちょっと、少し。
* 「ちかっぱ(い)」{副} …1… 1.力一杯、思い切り。2.とても。
* 「なし」「なして」{副} … なぜ、どうして。
* 「何ちかんち」{副} … つべこべ(言う)。
* 「そうとう(相当)」「ほうとう」「ばり」 {副} … とても。
* 「でたん」{副}… とても。(八幡西区など一部の地域で使用される)
* 「いたらん」{連体} … 余計な。多くは「いたらんこと (するな / せんでいい)」などの形で使用される。
 
=== 助動詞・助詞、末尾の変化など ===
* 「-ちゃ/っちゃ」{助} … 「-だよ」。([[北九州市]][[小倉北区]]の[[チャチャタウン小倉]]のネーミングはこの表現から)「私、最近ジムに通っているんだ」は「うち、最近ジムに通いよんちゃ」となる。また、同意を強調するあいづちとして、「そうそう!」は「そうっちゃ」、「そうなんだよね!」は「そうなんちゃ!」などと使われる。
** ただし、旧[[筑前国]]である北九州市西部地域(八幡以西)では、同じ意味で「-ばい」という語尾になる。
* 「〜やろ」… 「でしょう」。「行くんでしょう」は「行くんやろ」となる。[[博多弁]]のように「〜っちゃろ」とは言わない。
* 「〜のぅ」{終助}… 文末に強調や詠嘆として使う。主に中年以上の男性が使う。例えば「きれいだねぇ」が「きれいやのぅ」となる。山口弁・[[広島弁]]などと同様。
* 「-ごと」{助動} … 「-ように」。比況の助動詞「ごとし」の活用語尾が省略されたもの。例えば「雪道で転ばないように気を付けなさいよ」は「雪道で転ばんごと気を付けりいよ」となる。また「ドアが開かなくなった」は「ドアが開かんごとなった」となる。
** 特に「-ごとある」で「-みたいだ」「-ようだ」という意味であり、例えば「中村さんは事情をよく知らないみたいだ」は「中村さんは事情をよう知らんごとある」、「熱があるようだ」は「熱があるごとある」となる。
* 「-ぞ」{助} …1… 1.断定「-である」「-だ」。例えば「そうだ」は「そうぞ」となる。また「競輪は北九州が発祥なんだよ」は「競輪は北九州が発祥ぞ」となる。2.強意「-よ」。「天気予報では雨が降るっちぞ」。
* 「-っち」{助} … 「-って」「-ということ」。例えば「山田君が『来い』って言っていたぞ」は「山田君が『来い』っち言いよったぞ」となる。また「田中さんがあなたのこと好きなんだって」は「田中さんがあんたのこと好きっち」となる。
* 「-け/けん/けぇ」{助} …1… 1.「-ので」「-から」。理由・原因を表す接続助詞。例えば「忙しいから、遊べない」は「忙しいけ、遊べん」となる。2.強意「-よ」。「これ、食べるけぇ」。
* 「-げな」{助} … 「-なんて」「-なんだって」。やや驚きや、強調を伴った伝聞・伝達を表す。「今時チョッキげな言いよったら笑われるよ」。「また台風だってよ」は「また台風げな」。
* 「- (し)よる/ よう/よん」{助動} … 「- (し)ている」「- (し)つつある」。動詞の連用形に接続し、動作が現在進行中であることを表す([[相 (言語学)|相(アスペクト)]]参照)。例えば「そっちに向かっている」は「そっちに向かいよる / 向かいよう」となる。
** 「(テレビ番組・会議・祭り等が)ありよる / ありよう」…「やっている・行われている」の意味で用いられる。
* 「- (し)とる/とう/とん」{助動} … 「- (し)ている」「- (し)終わっている」。動詞の連用形に接続し、動作が完了した結果が存続している状態を表す。例えば「こっちに着いている」は「こっちに着いとる / 着いとう」となる。
** [[山口弁]]・大分弁と同様に「-ちょる/ちょう/ちょん」も用いられる。
** 使い分けの例:「もう渋滞しよる」は「もう渋滞しつつある(渋滞が始まった)」。「もう渋滞しと(ちょ)る」は「もう渋滞して(しまって)いる」。
* 「- (し)きる」{助動} … 「-出来る」「- (する)能力がある」。動詞の連用形に接続し、能力可能を表す。「計算出来る (計算する能力がある) 」は「計算しきる」、「百点取れる (百点取る能力がある) 」は「百点取りきる」。逆に「-出来ない」「- (する) 能力がない」は「- (し)きらん」となる。「マニュアル車で坂道発進しきらん」「怖いで夜トイレに一人で行ききらん」。
** 状況可能については「- (し)きる」は使用せず、標準語と同じ可能表現 (可能動詞、助動詞れる・られる) を使う。ただし、近年は状況可能、能力可能の使い分けは、あいまいになってきている。
* 「- (し)ちゃる」{助動} … 「-してあげる」。「欲しい物があったら買うちゃる」。
 
=== その他、成句 ===
*「あんねぇ」「あんなぁ」… 「あのね」という呼びかけ。
*「いけん」… 「ダメ」「いけない」という意味。
*「何しよん?」… 「何してるの?」という意味であるが、久しぶりに会った人に対して「久しぶり。元気にしてた?」という意味でも多用される。([[NHK北九州放送局]]で放送されていた番組「[[情報ワイド福岡いちばん星]]」に「[[なんしよ〜ん!?北九州]]」というコーナーがあった。)
*「好かん」… 「好きじゃない」「嫌い」。北九州弁に限らず、九州では「嫌い」という言葉を使用することが少ない。強い拒否の意思を示す場合においてのみ「嫌い」という言葉を使用する。
*「〜なんよ」「〜んよ」… 例えば「そうなのよ」が「そうなんよ」、「知っているのよ」が「知っと(ちょ)んよ」となる。
*「〜時前〜分」… 例えば9時50分は10時10分前とは言わず「10時前10分」と言う。
*「かたらして」… 「仲間に入れて」という呼び掛け。「か(っ)てて」とも。
*「なしか?」… どうしてだ? なぜだ?
*「なんぼ」… いくら?
*「のおっちゃ」… 「なあ、そうなんだろ」「なあ、どうなんだよ」と相手に返答を要求する呼び掛け。一触即発の険悪な状態でよく聞かれる喧嘩言葉。
*「見てん」… 「見てみてよ」という弱命令表現・強勧誘表現。単に見ることを要請するのではなく、発話者に不満があることを相手に示唆する。「それ見たことか」という意味もある。
*「さん、のー、がー、はい」… 複数人で荷物を持ち上げる際の「一、二、三、はい」という掛け声。
*「じゃんけん、しっ」「どっこい、しっ」… じゃんけんの際の掛け声。2回目は「あいこで、しっ」、3回目以後は「しっ」とだけ言うが、地域によっては3回目は「合わんで、しっ」とも言う。
*「-っち言いよろう(も/が) 」「-っち言いよー / 言っと(ちょ)ーやろ」… 「-って言っているでしょう(が)」と相手に言い聞かせる言葉。
*「何ち?」… 「何って言ったの?」「何だって?」と相手に聞き返す言葉。強い表現の使用例では「お前、何かちゃ?」(お前、何なんだよ? ) ともいう。
*「-しとき / せんどき」… 「-しておいてくれ / しないでほしい・しない方が良い」という弱命令表現・強勧誘表現。「明日台風が来るけ、釣りには行かんどき」。
*「-せんね」… 「-しなさい / -しましょう / -したらどう?」という弱命令表現・強勧誘表現。「あんたもほんとにだらしない人やね。もっとしゃんしゃんせんね」。「今度良かったら家に来んね」。
*「[[川中島 (騎馬戦)|川中島]]」… 北九州の[[小学校]]の[[運動会]]でよく実施される高学年の男子児童による[[騎馬戦]]。[[鉢巻]]・[[帽子]]を取り合うような簡単なものではなく、騎馬同士で組み倒すような本格的なもの。紅組が[[武田信玄]]軍、白組が[[上杉謙信]]軍となる。(異なる場合もある)
 
== 脚注 ==