「群の直和」の版間の差分
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2014年11月26日 (水) 17:36時点における版
数学において、群 G は次のようなとき 2 つの部分群 H1 と H2 の直和 (direct sum) と呼ばれる[1][2]。
- H1 と H2 はともに G の正規部分群である。
- 部分群 H1 と H2 は自明な共通部分をもつ(すなわち単位元 しか共通にもたない)。
- G = <H1, H2>; 言い換えると、G は部分群 H1 と H2 によって生成される。
より一般に、G が部分群の有限集合 {Hi} の直和であるとは、
- 各 Hi は G の正規部分群であり
- 各 Hi は部分群 <{Hj : j not equal to i}> と自明な共通部分をもち
- G = <{Hi}>; 言い換えると、G は部分群 {Hi} によって生成される。
G が部分群 H と K の直和であれば、G = H + K と書く。G が部分群の集合 {Hi} の直和であれば、しばしば G = ∑Hi と書く。ルースに言えば、直和は部分群の弱い直積に同型である。
抽象代数学において、構成のこの手法はベクトル空間、加群、そして他の構造の直和に一般化することができる。より多くの情報は記事加群の直和 (direct sum of modules) を見よ。
この概念は可換である。そのため 2 つの部分群の直和の場合には、G = H + K = K + H である。それはまた次の意味で結合的でもある。G = H + K, K = L + M であれば、G = H + (L + M) = (H + L) + M である。
非自明な部分群の直和として書ける群は直可約 (decomposable) と呼ばれる。そうでなければ、直既約 (indecomposable) と呼ばれる。
G = H + K であれば、次のことが証明できる:
- すべての h ∈ H, k ∈ K に対して、h*k = k*h である。
- すべての g ∈ G に対して、g = h*k となるような唯一の h ∈ H, k ∈ K が存在する。
- 商において和の簡約がある。つまり (H + K)/K は H と同型である。
上記の主張は G = ∑Hi の場合にも一般化できる、ただし {Hi} は部分群の有限集合。
- i ≠ j であれば、すべての hi ∈ Hi, hj ∈ Hj に対して、hi * hj = hj * hi である。
- 各 g ∈ G に対して、{hi in Hi} の唯一の集合が存在して
- g = h1*h2* ... * hi * ... * hn
- 商において和の簡約がある。つまり ((∑Hi) + K)/K は ∑Hi に同型である。
直積との類似性に注意しよう。直積では各 g は
- g = (h1,h2, ..., hi, ..., hn)
として一意的に書ける。
すべての i ≠ j に対して hi * hj = hj * hi であるから、直和における減の積は直積において対応する元の積に同型であることが従う。したがって部分群の有限集合に対しては、∑Hi は直積 ×{Hi} に同型である。
直和成分
群 が与えられると、部分群 が の直和成分 (direct summand) である(あるいは から分裂する (split))とは、別の部分群 が存在して は部分群 と の直和であるということである。
アーベル群において、 が の divisible subgroup であれば、 は の直和成分である。
例
- とすれば が部分群の直積 であることは明らかである。
- がアーベル群 の divisible subgroup であれば、別の部分群 が存在して、 となる。
- が 0 でない -ベクトル空間でもあれば、 は と別の部分空間 の直和として書くことができ、 は商 と同型になる。
直和への分解の等価性
有限群の直既約部分加群の直和への分解において部分群の埋め込みは一意ではない。例えば、クライン群 (Klein group) V4 = C2 × C2 において、次が成り立つ。
- V4 = <(0,1)> + <(1,0)>
- V4 = <(1,1)> + <(1,0)>
しかしながら、有限群 G = ∑Ai = ∑Bj、ただし各 Ai と各Bj は非自明で直既約、が与えられると、2つの和は順序の入れ替えと同型の違いを除いて同じ項をもつ、というのがレマク・クルル・シュミットの定理 (Remak-Krull-Schmidt theorem) の内容である。
レマク・クルル・シュミットの定理は無限群に対しては成り立たない。なので無限 G = H + K = L + M のケースにおいて、すべての部分群が非自明で直既約であるときでさえ、H は L か M に同型であると仮定できない。
無限集合上の和への一般化
G が部分群の無限(もしかしたら非可算)集合の直和の場合において上記の性質を記述するには、より多くの注意が必要である。
g が群の集合のカルテジアン積 ∏{Hi} の元であれば、gi を積における g の i 番目の元とする。群の集合 {Hi} の外部直和 (external direct sum) (∑E{Hi} と書かれる)は ∏{Hi} の次のような部分集合である。各元 g ∈ ∑E{Hi} に対して、gi は有限個を除いてすべて単位元 である(同じことだが、gi のうち有限個だけが単位元でない)。外部直和における群演算は通常の直積のように pointwise な積である。
この部分集合は確かに群をなす。そして群 Hi の有限集合に対して、外部直和は直積に等しい。
G = ∑Hi であれば、G は ∑E{Hi} に同型である。したがって、ある意味、直和は「内部」(internal) 外部直和である。G の各元 g に対して、一意的な有限集合 S と一意的な {hi in Hi : i in S} が存在して、g = ∏ {hi : i in S} となる。