「グラックス兄弟」の版間の差分

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Galala (会話 | 投稿記録)
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また彼ら兄弟は元老院を無視し民会に法案を提出し成立させるという手段を多用したが、これを失敗の理由と考える者もいる。あくまで元老院は諮問機関であり法案議決権は無いが、その存在を尊重する事は不文律となっていたからである。さらにティベリウス・グラックスは全市民の民会である[[ケントゥリア民会]]・[[トリブス民会]]ではなく、平民だけの民会であるプレブス民会で法案を成立させるという挙にも出ている。[[ホルテンシウス法]]により、プレブス民会で可決された法案は他の民会と同等の効力を持つとされていたが、プレブス民会の議決も元老院の側でコントロールが可能という現実が前提であり、元老院に背く決定がなされた事は想定外であった。それまで政治を司ってきた元老院にすれば、兄弟のやり方は自分たちを無視するものであり、危機感を抱かせるには十分であった。なお、先述したマリウスの軍制改革も当時の体制から見れば革新的な政策であるが、この改革案は元老院でも承諾され成立している。これは当時のマリウスが[[執政官]]の地位にあり、しかも元老院に法案を提出したから通ったとも考えられる。グラックス家は当時大きな名声を博しており、父祖のような執政官就任は十分に射程圏であった。
 
また、彼ら兄弟が護民官に就任したことに失敗の原因を求める者もいる。護民官の職権はあくまで法案の拒否権であって、法案を成立させるために積極的に行動する事は、明らかに職権を逸脱していた。また元老院は有事の際に正規軍を出動させる権利を有していたが、護民官は軍事的背景を持っておらず、正面から対決するのは危険であった。ガイウスが元老院最終勧告を出されて自殺に追い込まれたのがその証左である。後に改革を行った者は、オプティマテスにせよポプラレスにせよ、軍事力を背景に改革を行っている。また護民官の強大な権限は、それを元老院との対立のために積極的に行使しない事を不文律として付与されたものであって、あえてその権限を行使した場合は、元老院の側でも「元老院最終勧告」という、同じく滅多に行使されない事を不文律として付与された権限を行使して対抗するのは必然の理であった。護民官も元老院も強大な権力を持っていたが、後者の権力のほうがより強大であった。

グラックス兄弟とほぼ同じ改革は、後に[[ガイウス・ユリウス・カエサル]]によって、強大な権力と軍事力を背景に行われたが、。しかしそれでもなおカエサルが暗殺者の刃に倒れたように、既得権力を失う者の抵抗は極めて大きかったのである。
 
== その他 ==