「オオムギ」の版間の差分

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[[画像:Various grains.jpg|thumb|240px|オオムギとカラスムギ、およびそれらを原材料とする食品]]
==名称==
「オオムギ」は[[漢名]]の「大麦(だいばく)」を[[訓読み]]したものである。「大」は、[[コムギ|小麦]](コムギ)に対する穀粒や草姿の大小ではなく、大=本物・品質の良いもの・用途の範囲の広いもの、小=代用品・品格の劣るものという意味の接辞によるものである。[[ダイズ|大豆]](ダイズ)、[[アズキ|小豆]](アズキ、ショウズ)、[[アサ|大麻]](タイマ)の大・小も同様である。伝来当時の漢字圏では、比較的容易に殻・フスマ層([[種皮]]、[[胚芽]]など)を除去し粒のまま[[飯]]・[[粥]]として食べることができたオオムギを上質と考えたことを反映している。
 
また、オオムギをはじめ、コムギ、エンバク、ライムギ、[[ハトムギ]]など、姿の類似した一連の穀物を、東アジアでは総称して[[ムギ]]と呼ぶ。こうした総称はヨーロッパでは存在せず、barley(大麦)、wheat(小麦)のようにそれぞれの固有名で呼ぶのみである。
伝来当時の漢字圏では、比較的容易に殻・フスマ層([[種皮]]、[[胚芽]]など)を除去し粒のまま[[飯]]・[[粥]]として食べることができたオオムギを上質と考えたことを反映している。
 
==品種==
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==用途==
===食品===
[[File:Mugitoro gohan 2.jpg|thumb|right|200px|麦とろご飯]]
;[[主食]]として
: [[メソポタミア]]では小麦より塩害に強いため、南部の[[バビロニア]]で多く栽培された。[[ヨーロッパ]]では粗く挽いた大麦を煮た粥状のものが食べられていた。[[古代ローマ]]では粗挽きの大麦の粥は[[プルス]]と呼ばれ、主食として重要なものであった。その後パンが普及し、15〜16世紀にかけて寒冷な地でも生産性が高く、茹でただけでも比較的美味な[[ジャガイモ]]が[[アメリカ大陸]]からもたらされたため、現在では主として飼料用および醸造用の穀物とされるようになった。
: [[チベット]]で主食の中心となっている[[ツァンパ]]は、ハダカオオムギを乾煎りして粉砕した粉で、茶で練るなどして食べられている。
: 日本は[[チベット文化圏]]と並んで大麦を主食穀物として多く利用する地域であった。しかし[[明治|明治時代]]までは今日のように、炊飯しやすい[[押麦]]にして[[白米]]と混炊することは行われていなかった。<ref> 「飲食事典」本山荻舟 平凡社 p78 昭和33年12月25日発行</ref>。[[米]]や[[雑穀]]と比べて煮えにくいため、挽き割り粥にするか、炊飯に先立ち、あらかじめ煮て冷まして一晩置く[[えまし麦]]としてから、単独、あるいは米や雑穀と混炊して調理した。明治時代までは、えまし麦の茹で汁は、[[砂糖]]を混ぜて[[母乳]]の代用品として使われることもあった。近年までは[[麦飯]]として米と混炊して特に農村部では重要な主食とされた。しかし農村部では白米の飯が祭礼に際しての特別なご馳走であったこと、都市部で白米の飯が普及したことなどから、麦飯は白米の飯に対して農村的な格の低い洗練されない食品とされた。そのため臭くてまずいと考え、蔑んで貧民や囚人の食事とみなす者も少なくなかった(俗に言う「刑務所の臭い飯」のいわれである)。その一方で、白米の飯への憧れによって[[脚気]]は近代の日本で国民病と呼ばれるまでに蔓延した。
: 海軍ではこれへの対策としていち早く麦飯を導入し脚気患者を激減させたが、「死地に赴く兵士に白米を食べさせてやりたい」という情から白米にこだわった陸軍では日露戦争で著しい戦病死者を出した。(当時はまだビタミンが発見される前であり、麦飯の根拠は薄く伝染病説が主流だった)また、麦が配給されていた海軍でも一部の兵士がこっそり麦を捨てていたために完全な克服には至らず、脚気禍が何度も再燃している。現在では精白技術の向上による食味の向上や、押し麦の普及による炊飯の容易化により、健康食として再び人気を博している。また、[[とろろ]]には麦飯を使うものとされており、[[麦とろご飯]]は[[東海道]]の[[鞠子宿]]などで古くから名物となっていた。[[沖縄県]]においては、[[緑豆]]とオオムギを使って[[あまがし]]という[[ぜんざい]]の一種が作られ、夏の風物詩となっている<ref>「保存版 沖縄ぬちぐすい事典」監修 尚弘子 pp20-21 2002年11月24日初版第1刷 プロジェクト・シュリ</ref>。オオムギを[[ポン菓子]]にして[[チョコレート]]をコーティングした[[麦チョコ]]も、[[駄菓子屋]]などで売られている
;飲み物
:[[カクテル]]の[[マイタイ]]に用いられる[[オルジェーシロップ]]や[[スペイン語]]圏で人気のある飲料[[オルチャータ]]は、どちらも[[ラテン語]]で「ホルデアタ」(hordeata、「オオムギから作られた」)と呼ばれるオオムギを原料とした飲料を祖先としている。オオムギを[[エスプレッソ]]風にしたイタリアの[[カッフェ・ドルゾ]]もまたよく飲まれる。また、麦芽に甘味料などをくわえて飲みやすくした麦芽飲料は世界各国でよく飲まれ、大企業も[[ネスレ・ミロ]]、[[ホーリック]]、[[オバルチン]]などといった麦芽飲料を製造し販売している。
:日本や朝鮮半島では種子を煎ったものを煎じて、[[麦茶]]として飲まれる。日本では冷やして主に夏に飲まれるが、朝鮮半島では温かくして年中飲まれる。日本でも[[江戸時代]]には麦湯と呼ばれ、温かくして飲むものであったが、新麦を使うものが美味であるため、季節はやはりオオムギの収穫期である夏のものであった。
;加工食品の材料
:日本では[[麹]]を生やして[[醤油]]・[[味噌]]などの[[発酵]]食品の原料として使われる。ハダカムギから作られる[[麦味噌]]が、[[九州]]を中心に作られている。[[焼酎]]のような酒類の原料としても用いる。また、炒った大麦を挽いた粉を[[はったい粉]]、または[[はったい粉|麦焦がし]]と呼び、[[砂糖]]や湯などと合わせて練り、菓子の一種として食べていた。[[麦粉 (菓子)|麦粉]]は現在においても菓子の原料として広く使われている
:麺やパンの材料としても用いることができるが、[[コムギ]]と違い、[[グルテン]]をほとんど含まないので弾力性が必要な[[麺]]の原料とするには、小麦などと混合するかグルテンの添加が必要である。製粉して[[パン]]にした場合もグルテンに乏しいためあまり膨らまず、小麦のパンとは食感が異なるどっしりとした重い感じのパンができる。また大麦は小麦より粉に挽きにくいという問題があるが、発芽させることによって挽きやすくなる。下述の麦芽としての利用は、そこから偶然生み出されたものである。
;麦芽
:大麦の主な用途として[[麦芽]]の製造があげられる。麦芽は文字通りオオムギなどのムギ類を発芽させたものである。麦芽には[[アミラーゼ]]酵素が含まれ、[[デンプン]]を[[糖]]に分解する作用があるため、[[麦芽糖]]が大量に生成される。麦芽糖はその名の通り糖であり、甘味料として[[水飴]]や[[シロップ]]の原料ともなる。さらにが、麦芽のもっとも重要な利用法は糖からアルコールを作り、[[ビール]]や[[ウィスキー]]などの酒類を作ることである。一般的に、麦芽といえば大麦オオムギからのものをさす。これはオオムギから作る麦芽が最も酵素が多く含まれるため、麦芽の質がよく、結果として麦芽を利用する場合はほとんどがオオムギ麦芽を使用するからである
;その他
:若葉を粉砕して粉末にしたものは[[青汁]]の一種として、[[健康食品]]として売られている。