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この仮説の根底にあるのは、非常に多様な[[藻類]]が[[クロロフィル]]cを持っていることに対する疑問である。1981年にCavalier-Smithが提唱したクロミスタ界にはその後の改変を経て、クロロフィルcを持つクリプト藻、ハプト藻、ストラメノパイルが含められていたが、それ以外に渦鞭毛藻も多くのものがクロロフィルcを持っている。クロロフィルcを持つ生物はそれぞれ別個に成立したという考え方もされていたが、Cavalier-Smithは1回の二次共生現象で説明することを好んだ。
 
Cavalier-Smith (1999)は、クロミスタとアルベオラータが姉妹関係にあること、クロミスタの4重の[[葉緑体]]膜と渦鞭毛藻の3重の葉緑体膜とが相同であること、マラリア原虫などに発見されたクロロフィルを含まない色素体も同じ紅藻起源であることを主張し、この一群をクロムアルベオレート類(chromalveolates)と呼んだ。すなわち、全てのクロムアルベオレート類は、単細胞の紅藻を細胞内共生により取り込んでできた、クロロフィルcを含む色素体を持つ光合成生物を共通祖先とする、という仮説である。クロムアルベオレート類には、光合成生物のみならず、繊毛虫やラビリンチュラのような非光合成生物も含まれる。<ref>{{cite journal|author=Cavalier-Smith, T.|title=Principles of protein and lipid targeting in secondary symbiogenesis: Euglenoid, dinoflagellate, and sporozoan plastid origins and the eukaryote family tree|journal=J. Eukaryot. Microbiol.|year=1999|volume=46|issuesissue=4|pages=347-366}}</ref>
 
== 支持 ==
アルベオラータが単系統であることについては当時から広く受け入れられていて、特定の変わった生物が本当にここに含まれるのかどうかという議論を除けば現在でも特に異論は出ていない。しかしクロミスタ(クリプト藻、ハプト藻、不等毛類)の単系統性については結論が出ておらず、分子系統解析を行うとそれぞれバラバラになることが多い。たとえばHarper ''et al.'' (2005)のように、ストラメノパイルについては確かにアルベオラータと姉妹関係にあるという結果が出ることも多いのだが<ref>{{cite journal|author=Harper, J. T., Waanders, E. & Keeling, P. J.|title=On the monophyly of chromalveolates using a six-protein phylogeny of eukaryotes|journal=Int. J. System. Evol. Microbiol.|year=2005|volume=55|issuesissue=1|pages=487-496|url=http://www.botany.ubc.ca/keeling/PDF/05chromalvJSEM.pdf}}</ref>、クロムアルベオラータが全体として一つの群を成すという積極的な解析結果はない。
 
それでもクロムアルベオラータという仮説がある程度の支持を集めているのは、GAPDH遺伝子の解析結果によるところが大きい。GAPDH(glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase、グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)は[[解糖系]]を構成し、また植物では光合成の[[暗反応]]に関わる重要な酵素である。緑色植物や紅藻の色素体GAPDHの遺伝子は[[シアノバクテリア]]に由来するのに対して、渦鞭毛藻やクリプト藻の色素体GAPDHの遺伝子は細胞質GAPDHの遺伝子に似ていることが知られていた。そこでFast ''et al.'' (2001)が、アピコンプレクサや[[ラフィド藻]](不等毛藻の一種)のGAPDH遺伝子を同定して分子系統解析を行った結果、アピコンプレクサ、渦鞭毛藻、ラフィド藻、クリプト藻の色素体GAPDHの遺伝子は単系統となることがわかった<ref>{{cite journal|author=Fast, N. M., Kissinger, J. C., Roos, D. S., & Keeling, P. J.|title=Nuclear-encoded, plastid-targeted genes suggest a single common origin for apicomplexan and dinoflagellate plastids|journal=Mol. Biol. Evol.|year=2001
|volume=18|issuesissue=3|pages=418-426|url=http://www.botany.ubc.ca/keeling/PDF/01gap.pdf}}</ref>。しかもその後Yoon ''et al.'' (2002)によって、クロミスタの色素体が共通の起源を持ちそれが紅藻であるということが、色素体ゲノム上の複数の遺伝子(16S rRNA, ''psa''A, ''psb''A, ''rbc''L, ''tuf''A)を使った系統解析により極めて明瞭に示されている<ref>{{cite journal|author=Yoon, H. S., Hackett, J. D., Pinto G. & Bhattacharya, D.|title=The single, ancient origin of chromist plastids|journal=Proc. Natl. Acad. Sci.|year=2002|volume=99|issuesissue=24|pages=15507-15512|url=http://www.pnas.org/cgi/reprint/99/24/15507.pdf}}</ref>。このことからアピコンプレクサと渦鞭毛藻の色素体の起源は共通であり、さらにクロミスタの色素体の起源とも共通していると考えられるようになった。
 
== 批判 ==