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{{出典の明記|date=2015年1月28日 (水) 16:45 (UTC)}}
'''におい'''とは
*[[空気]]中を漂ってきて[[嗅覚]]を刺激するもの<ref>デジタル大辞泉</ref><ref>注. 広辞苑では嗅覚系の説明は2番目以降である。</ref>。
*[[空気]]中を漂ってきて[[嗅覚]]を刺激するもの<ref>デジタル大辞泉</ref>(注. 広辞苑では嗅覚系の説明は2番目以降である。)
* 赤などのあざやかな色彩が美しく映えること<ref>広辞苑 第5版、p.2018。※ 広辞苑第5版でも第6版でも、視覚的な匂いのほうをまず一番目に挙げており、嗅覚的な匂いの説明はその後に配置している。</ref>。[[視覚]]で捉えられる美しい色彩のこと。「匂い」
**[[襲の色目]]のひとつ、上を濃く、下を薄くする配色。「匂い」。
 
== 表記概説 ==
まず広辞苑でどう解説しているか紹介する。次の順番で掲載されている。
 
* 赤などのあざやかな色彩が美しく映えること<ref>広辞苑 第5版、p.2018。※ 広辞苑第5版でも第6版でも、視覚的な匂いのほうをまず一番目に挙げており、嗅覚的な匂いの説明はその後に配置している。</ref>。[[視覚]]で捉えられる美しい色彩のこと。「匂い」
**[[襲の色目]]のひとつ、上を濃く、下を薄くする配色「匂い」という
*[[空気]]中を漂ってきて[[嗅覚]]を刺激するもの<ref>デジタル大辞泉</ref><ref>注. 広辞苑では嗅覚系の説明は2番目以降である。</ref>。
 
<!--{{要出典範囲|日本語の「におい」は、もともと視覚について用いられてきた表現である。それがやがて嗅覚についても用いられるようになったのである。|date=2015年1月28日 (水) 17:06 (UTC)}}-->
 
近年多く用いられている表現では、後者の意味([[嗅覚]]を刺激され人が感じる感覚、それ)で用いることのほう《にお増えて》である。
 
;表記
{{Wiktionary|におい|匂|臭|香|薫|芳}}
 
「におい」は[[大和言葉]]であるが、[[漢字]]ではを当てる場合良い基本的おいを'''は「匂」「匂い'''、悪いにおいを'''臭い'''書く表記する。ただし「匂」は[[当用漢字]]ではなく、また[[国字]]である。例外として「くさいにおい」を「臭い臭い」ではなく「臭い匂い」と書くこともある。
良いにおいを「匂い」、悪いにおいは「臭(にお)い」と書く。<ref group="注">例外として「くさいにおい」は「臭いにおい」と書くのが基本だが、「臭い匂い」と書くことはある。読みづらいので「臭い臭い」とは書かない。</ref>
 
よいにおい(匂い)は大和言葉で「'''かおり'''とも言い」や、漢字は語で「'''香り'''・'''(こうき)」とも言う<ref>広辞苑第六版「におい」</ref>。「かおり」に感じを当てる場合は「香り」「薫り'''・'''」「芳り'''」などである。(いずれも当用漢字だが「芳」は[[当用漢字音訓表|表外訓]])などを当てる。
 
なお「[[かおり]]」「[[かほり]]」「香」は日本女性の名前として用いられることがある。
== 概説 ==
「匂い」は、古来、視覚についても嗅覚についても用いられてきた表現である。
 
== 概説色彩 ==
近年多く用いられている表現では、[[嗅覚]]を刺激され人が感じる感覚、それが《におい》である。
いおいとは、赤などのあざやかな色彩が美しく映えることである<ref>広辞苑 第5版、p.2018。※ 広辞苑第5版でも第6版でも、視覚的な匂いのほうをまず一番目に挙げており、嗅覚的な匂いの説明はその後に配置している。</ref>。[[視覚]]で捉えられる美しい色彩のこと。「匂い」
 
また[[襲の色目]]のひとつ、上を濃く、下を薄くする配色。
=== にほひ、香り ===
においのなかでも、特に好ましいものは「香り」(かおり)、「芳香」(ほうこう)と呼びわけることがある。
 
例えば[[万葉集]]には次のような歌がある。
=== 臭い ===
いやなにおいは「臭」という漢字をあて、「臭い」と書く。
 
: 黄葉(もみじは)のにほひは茂し<ref>広辞苑第五版 p.2018 「匂い」</ref> -([[万葉集]]10)
臭いの中でもとくに強い不快感をもたらすものを[[悪臭]]という。
 
また「[[いろは歌]]」の冒頭でも「いろはにほへと(色は匂えど)」とある。
[[トリメチルアミン尿症]]は、魚臭症候群ともいい、悪臭の出る疾患である。
 
[[襲の色目]]のひとつ、上を濃く、下を薄くする配色も「匂い」という。
=== 色彩 ===
赤などの色彩が鮮やかに映えているさまを匂いと言う。[[視覚]]で捉えられる美しい色彩の感覚も「匂い」と言うのである。→[[#視覚]]
 
=== ;花の部位 ===
伝統的に花の[[雄蕊]][[雌蕊]]をまとめて「におい」と言う。[[日本画]]や[[友禅]]などの[[和柄]]、[[焼物]]、[[漆器]]の[[蒔絵]]、絞り細工など細工の花の中心部分のこと。奥により強い存在を感じさせる表に一部が表出したものを「匂い」と呼ぶ。
 
== 嗅覚の感覚内容 ==
== においと技術、科学 ==
=== 基本的な分類 ===
中世にその原型が生まれ20世紀により具体的に提唱された[[アロマテラピー]]は、主として花や木に由来する芳香成分の香りを活用し、ストレスを解消したり心身の健康の維持に役立つ、ともされる技術である。
;匂い、香り
においのなかでも、特に好ましいものは「かおり」「香り」、「香気かおりこうき「芳香(ほうこう)と呼びわけることがある。
 
=== ;臭い ===
いや不快なにおい、くさいにおいは、現代で「臭気」と言う。「臭」という漢字をあて「臭い(におい)」と書く。
 
臭いの中でもとくに強い不快感をもたらすものを[[悪臭]]という。
 
 
=== においと技術、科学人の関係 ===
;においと感情のつながりの強さ
近年の医学領域における様々な研究成果により、匂いというの他の感覚とは異なり 大脳辺縁系に直接届いていることが明らかになった。その[[大脳辺縁系]]は「情動系」とも呼ばれており、匂いは人間の[[本能]]や、特に[[感情]]と結びついた[[記憶]]と密接な関係がある、と指摘されている。つまり匂いはもっと、<u>最も感情を刺激する感覚</u>なのだとされているのである<ref>青木 孝志、足達 義則「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110004848824 ジャスミンの匂いが心拍変動に与える影響]」(研究発表,第21回生命情報科学シンポジウム)</ref>。
 
;におい感受性の男女差
 
女性は、男性よりも脳の[[嗅覚野]]が発達しているので、匂いに敏感に反応する。<ref>斎藤勇『面白いほどよくわかる!「女」がわかる心理学』西東社, 2014 p.61</ref>
 
女性は男性以上に においに関心を寄せるが、その理由のひとつに、感覚の男女差がある<ref name="saitou_118">斎藤勇『面白いほどよくわかる!「女」がわかる心理学』西東社, 2014 p.118-119</ref>。女性は男性よりも嗅覚が敏感だと言われている<ref name="saitou_118" />。ひとつの要因は、女性というのは月経周期内の時期などによって、嗅覚が敏感になる時期があることである<ref name="saitou_118" />。なお排卵期には「成人男性に関係するようなにおい」や「不快なにおい」に対する嗅覚感受性が低下するという<ref name="saitou_118" />。月経期には、反対に、「不快なにおい」に敏感になる女性が多いと言われている<ref name="saitou_118" />。
 
脳の発達には男女差があり、嗅覚をつかさどるのは「嗅覚野」なのだが、そこは[[大脳辺縁系]]と関係が強いとされていて、その大脳辺縁系というのは、記憶をつかさどる海馬や感情を司る扁桃体があり、嗅覚的感知に大きな影響を与えている<ref name="saitou_118" />。脳がそういう構造になっているので、匂いと記憶、また、匂いと感情 は結びつきやすいのである。そして、女性はにおいを嗅いだ時に、同時にそれに関連する記憶まで呼び覚ましやすいのである<ref name="saitou_118" />。
近年の医学領域における様々な研究成果により、匂いは他の感覚とは異なり、大脳辺縁系に直接届いていることが明らかになった。その[[大脳辺縁系]]は「情動系」とも呼ばれており、匂いは人間の[[本能]]や、特に[[感情]]と結びついた[[記憶]]と密接な関係がある、と指摘されている。つまり匂いはもっとも感情を刺激する感覚なのだとされているのである<ref>青木 孝志、足達 義則「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110004848824 ジャスミンの匂いが心拍変動に与える影響]」(研究発表,第21回生命情報科学シンポジウム)</ref>。
 
;生理的な影響
においは人に生理的な影響を与えることがある。例えば、[[ジャスミン]]の匂い(香り)は心拍のパワースペクトルのLF成分を有意に増大させる、との研究もある。これはジャスミンの香りが[[副交感神経]]の活動増大させ(=交感神経を抑制し)精神性の負荷を減少させることを示唆している<ref>青木 孝志、足達 義則「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110004848824 ジャスミンの匂いが心拍変動に与える影響]」(研究発表,第21回生命情報科学シンポジウム)</ref>。
 
== においにかかわる技術、文化の伝承 ==
ただし、視覚的イメージ(視覚)、[[音]](聴覚)、味(味覚)などに比べると、匂い(嗅覚)というのは、論じられたり教育されたりする機会は比較的少ない。また、近年の日本では匂いが無いことがよしとされて、消臭グッズなどの売上が伸びている。このような、匂いを避けるという現象の背後には、匂いの抑圧があり、さらにその背後には、[[本能]]の抑圧や[[性]]の[[抑圧]]が潜んでいる、と鈴木隆は述べた<ref>鈴木隆『匂いのエロティシズム』集英社, 2002、ISBN 4087201295。</ref><ref>鈴木隆『匂いの身体論:体臭と無臭志向』八坂書房, 1998、4896944151</ref>
中世にその原型が生まれ20世紀により具体的に提唱された[[アロマテラピー]]は、主として花や木に由来する芳香成分の香りを活用し、ストレスを解消したり心身の健康の維持に役立つ、ともされる技術である。
 
ただし、視覚的イメージ(視覚内容)、[[音]](聴覚内容)、[[]](味覚内容)などに比べると、匂い(嗅覚内容)というのは、論じられたり教育されたりする機会は比較的少ない。また、近年の日本では匂いが無いことがよしとされて、消臭グッズなどの売上が伸びている。このような、匂いを避けるという現象の背後には、匂いの[[抑圧]]》があり、さらにその背後には、[[本能]]の抑圧[[性]]の[[抑圧]]が潜んでいる、と鈴木隆は述べた<ref>鈴木隆『匂いのエロティシズム』集英社, 2002、ISBN 4087201295。</ref><ref>鈴木隆『匂いの身体論:体臭と無臭志向』八坂書房, 1998、4896944151</ref>
 
最近では、さまざまな業種の、様々な企業がにおいを活用して、イメージアップや販売促進をはかろうとしている。こうしたことは1010時間以上も香りを長続きさせる最新のにおい噴霧器が開発されたり、「禁煙を手助けする効果がある」とされたり「記憶力を高める効果がある」とされる《機能性アロマ》が開発されたことによる。ただし、人工的な香りが氾濫することによって、「日本人がもつ繊細な《香り文化》が失われつつあるのではないか」「自然の かすかなにおい を教える必要があるのではないか」という専門家の指摘もあるという<ref>NHKクローズアップ現代「[http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=2890 広がる“においビジネス”]」</ref>。
 
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=== 「部屋干し」のにおい ===
== 視覚 ==
洗濯物を室内に干した時(つまり「部屋干し」をした時)問題となるのが その臭いであるが、これは洗濯物が乾燥するまでの長時間、衣類が湿っていることによって(ちょうど菌の繁殖条件がそろっており)[[雑菌]]が繁殖し、それによって臭いが発生しているからである<ref name="yano">矢野きくの『省エネで部屋干し洗濯物を早く乾かす方法』株式会社オールアバウト, 2013。「部屋干しをした洗濯物は、そもそもなぜ臭うのか?」の章。google eブックスで確認可能。</ref>。
古来、あざやかな視覚的な感覚を「匂い」と呼んでいる。この色の鮮やかさを示すのが「にほひ」本来の意味である。
<!--{{要出典範囲|なお、現在の意味と大きく食い違うために理解しづらいが|date=2013年9月}}」という人{{誰|date=2013年9月}}がいる-->
<!--{{要出典範囲|比較的身近な用例|date=2013年9月}}としては-->
例えば[[万葉集]]には次のような歌がある。
 
これを防ぐ方法はいくつかあるが、ひとつは、できる限り短時間で乾かす、という方法である<ref name="yano" />。他にも、雑菌を極力少ない状態にしておく、ということも大切である<ref name="yano" />。また、「部屋干し専用」の洗剤(抗菌作用のある薬剤が入っているもの)を使う方法、また通常の洗濯洗剤に加えて衣類用[[漂白剤]](漂白剤は結局、滅菌剤(除菌剤)として使われている)を入れる<ref name="yano" />、などの方法で、菌の繁殖を最低限にすることが可能である<ref name="yano" />。
: 黄葉(もみじは)のにほひは茂し<ref>広辞苑第五版 p.2018 「匂い」</ref> -(万葉集10)
 
また「[[いろは歌]]」の冒頭でも「いろはにほへと(色は匂えど)」とある。
 
==比喩==
[[襲の色目]]のひとつ、上を濃く、下を薄くする配色も「匂い」という。
微妙なこと、かろうじて感じられること、言葉では表現しづらく理屈でうまく説明できないようなことを「におい」と言うことがある。
 
言葉では説明できないある種の感覚によって、何かを(特に、"良くない" 何かを)感じた時に「なにか臭うなあ」「なんだか臭(クサ)いぞ」などと表現することがある。
==比喩==
微妙さを「におい」と言うことがある。人の五感に喩えたとき、味や色よりもさらに微妙なもの。
 
=== 色彩脚注 ===
憶測によって(おもに好ましくない)ある事柄を見通した場合に「臭う」「臭(クサ)い」と表現されたり、その見通した事柄に辿り着いた場合には「嗅ぎつける」と言われ、その能力は「鼻が利く」「嗅覚が鋭い」などと喩えられる。(「[[勘]]」とも呼ばれるが、勘よりも多少の根拠を帯びる)
<references group="注"/>
 
== ;出典 ==
{{Reflist}}
 
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* [[フレーバー]]
* [[香料]]
* [[調香師]]
* [[香辛料]]
* [[アロマ]]、[[アロマテラピー]]
* [[フェロモン]]
* [[アロマテラピー]]
* [[六境]]、[[現象]]、[[クオリア]]
* [[かおり風景100選]]([[環境省]])
* [[フェロモン]]
* [[体臭]]、[[口臭]]、[[加齢臭]]
* [[トリメチルアミン尿症]]は、(「魚臭症候群ともいい、悪臭の出る疾患である。
;資格、学会など
* [[調香師]]
* [[日本味と匂学会]]
* [[日本官能評価学会]]
* [[臭気判定士]]
* [[かおり風景100選]]([[環境省]])
* [[体臭]]、[[口臭]]、[[加齢臭]]
 
== 関連文献 ==