「ハーブ」の版間の差分

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[[File:K%C3%BCchenkr%C3%A4uter-1.jpg|thumb|240px|right|[[タイム]]、[[オレガノ]]、[[ローズマリー]]]]
'''ハーブ'''({{Lang-en|herb}}<ref>[[イギリス英語]]で {{IPA-en|ˈhɜːb}} 「ハーブ」、[[アメリカ英語]]では {{IPA-en|ˈɚːb}} 「アーブ」</ref>、{{Lang-fr|Herbe}})は、「[[草]]」を意味する{{Lang-la|herba}} に由来する言葉で{{要出典|date=2014年11月}}、一般的に[[料理]]の香り付けや[[保存料]]、[[薬]]、[[香料]]などに利用される植物を指す。緑の葉を持つ草、茎のやわらかい植物などを指し<ref name="ハットフィールド">A.W.ハットフィールド 著 『ハーブのたのしみ』 山中雅也・山形悦子 訳、八坂書房、1993年</ref>、[[種子]]、[[実]]、[[根]]、[[樹皮]]などは[[香辛料]]と呼ぶことが多い。[[苔]]から[[木本]]まで、香りや薬効があるものをハーブとして扱う場合もある<ref name="ハットフィールド"></ref>。
 
== 概要 ==
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に大別することができる{{要出典|date=2014年11月}}。
 
西洋では様々なハーブ、香辛料が料理に利用された。胡椒などの香辛料は、保存料・香り付け・薬として重宝されたが、交易で遠方からもたらされるため高価だった。民衆は、身近に手に入る香りあるハーブ、防腐作用を持つハーブを料理・保存に利用した。胡椒の代わりに使われた[[マメグンバイナズナ]]は、イギリスでは「貧者の胡椒」と呼ばれている<ref name="ベックマン"> ヨハン・ベックマン 著 『西洋事物起源(二)』 特許庁内技術史研究会 訳、岩波書店、1999年</ref>。フランスのプロヴァンス地方では、[[セイボリー]]、[[フェンネル]]、[[バジル]]、[[タイム]]、[[ラヴェンダー]]などのハーブが料理によく使われ、現在ではこれらをブレンドしたものが[[エルブ・ド・プロヴァンス]]の名で販売されている。フランス料理では[[パセリ]]、[[チャイブ]]、[[タラゴン]]、タイムなどの生のハーブをみじん切りにしたものが多用され、{{仮リンク|フィーヌゼルブ|fr|Fines herbes}}と呼ばれる<ref>[[Julia Child]], ''Mastering the Art of French Cooking'' vol. I p 18.</ref>。フランスの[[煮込み料理]]の香り付けには、パセリ、タイム、[[ローリエ]]、[[エストラゴン]]など数種類のハーブを束ねた[[ブーケガルニ]]が使われる。ヨーロッパ各地に、ハーブを主な材料とする{{仮リンク|グリーンソース|en|Green sauce}}が存在し、イタリアでは、すりつぶしたパセリ、[[酢]]、[[ケッパー]]、[[ニンニク]]、[[タマネギ]]、[[アンチョビ]]、[[オリーブオイル]]、[[マスタード]]などをまぜて作るソースを[[サルサ]]ヴェルデという。ドイツ・[[ヘッセン州]]ではグリューネ・ゾーサ(Grüne Soße または Grüne Sosse)が有名であり、[[ルリジサ]]、[[スイバ]]、[[コショウソウ]]、[[チャービル]]、[[チャイブ]]、パセリ、および{{仮リンク|サラダバーネット|en|Sanguisorba minor}}などの7種類の生のハーブを刻み、[[サワークリーム]]・レモン汁を混ぜたソースに、固ゆで卵・[[じゃがいも]]などを添えて食べる。このように、ヨーロッパではハーブは料理によく利用され、相互に影響を受けながらも地域によって特色がある。
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File:Lepidium_virginicum_8170.jpg|胡椒の代わりに使われたマメグンバイナズナ
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{{main|薬草#歴史|薬学史|ディオスコリデス}}
[[File:Dioscorides_De_Materia_Medica_Byzantium_15th_century.jpg|thumb|『薬物誌』 [[東ローマ帝国]] , 15世紀]]
 
[[File:Tacuin Laitue18.jpg|thumb|中世ヨーロッパで作られたギリシャ・アラビア医学の本『[[健康全書]]』より、「レタス」。現在「野菜」と考えられるものも、性質や薬効が説明されている。]]
現在ハーブと呼ばれる植物には、[[メソポタミア]]、[[エジプト]]など古代から薬用に利用されたものもある。[[古代エジプト]]では[[イチジク]]・[[ブドウ]]と合せて[[ヤグルマギク]]や[[ケシ]]の仲間が栽培された薬草園があった{{要出典|date=2014年11月}}。各地のハーブは、[[ローマ帝国]]の拡大などで相互に広まった。ローマ時代に遠く[[ブリテン島]](イギリス)にまで伝わったハーブは、ローマ帝国崩壊後も一部が根付き、活用された。ハーブを使った治療の知識は「ボールドの医書」などに残されている。
 
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西洋中世に何度も大流行した[[ペスト]](黒死病)の際にも、ペスト除けに利用された(ただし、流行を終わらせたりペストを治すほどの効果はなかった)。ハーブやスパイス、果実などの成分を溶かし込んだリキュールは薬として利用され、14世紀イタリアでは、リキュール(リクォーリ)が薬用として輸出された記録が残っており<ref>[http://www.suntory.co.jp/wnb/guide/liqueur/01/02.html リキュール入門 1.リキュールとは 語源]サントリー</ref>、1346年に始まるヨーロッパでの[[ペスト]]大流行の際には、貴重な薬品として扱われた<ref>[http://www.suntory.co.jp/wnb/guide/liqueur/01/03.html リキュール入門 1.リキュールとは 歴史]サントリー</ref>。ローズマリーをアルコールと共に蒸留した蒸留酒・ローズマリー水([[ハンガリーウォーター]])は、最初薬用酒として、のちに[[香水]]として利用された<ref name="ベックマン"> ヨハン・ベックマン 著 『西洋事物起源(二)』 特許庁内技術史研究会 訳、岩波書店、1999年</ref>。17世紀南フランスの[[トゥールーズ]]でペストが大流行した際、死亡した人々から盗みを働いた泥棒たちがいたが、彼らは感染しなかった。[[セージ]]、[[タイム]]、ローズマリー、[[ラベンダー]]などを酢に浸して作った薬を塗って感染を防いだといい、このお酢は「{{仮リンク|4人の泥棒の酢|en|Four Thieves Vinegar}}」と呼ばれ利用された<ref>永岡治 著 『クレオパトラも愛したハーブの物語 魅惑の香草と人間の5000年』 PHP研究所、1988年</ref>。また、[[錬金術]]の影響を受けた西洋の伝統医学では、アラビアから伝わった[[蒸留]]技術を洗練させ、ハーブなどの植物から[[精油]]を抽出し、薬として利用した<ref>ヒロ・ヒライ 著 『エリクシルから第五精髄、そしてアルカナへ: 蒸留術とルネサンス錬金術』 Kindle、2014年(初出:「アロマトピア 第53号」 2002年)</ref>。ヨーロッパでは病気の原因は[[ミアスマ]](瘴気、悪い空気)であると考えられていたため、空気を清めるために病人のいる所や病院で香りの強いハーブが焚かれた。イギリスでは、監獄熱の感染予防に法廷にローズマリーが持ち込まれた<ref name="ハットフィールド"></ref>。
 
イギリス人が[[北アメリカ]]に移住し、ハーブや[[本草書]]、[[医学書]]を持ち込んだため、ハーブとその利用法は新大陸にも伝わった<ref>ジョージ・ウルダング 著 『薬学・薬局の社会活動史』、清水藤太郎 訳、南山堂、1973年</ref>。<!--
さらにハーブの歴史は様々な製品の語源からもあらわれる。一例をあげるならばソープ(石鹸)の語源は、ハーブの1種、ソープワート(''Saponaria officinalis'' ナデシコ科)。全草からとれるサポニンを煮出して使用していたことから名づけられた。また、フランス語のサボン(savon)もソープワート(サボン草)からでシャボン玉のシャボンにもつながっている。-->
 
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* [[香辛料]]
* [[ユナニ医学]](ギリシャ・アラビア医学) - 薬物の知識が[[ペダニウス・ディオスコリデス|ディオスコリデス]]により『薬物誌』としてまとめられ、以後ヨーロッパおよびイスラーム圏の伝統医学で使用された。治療にはハーブも多く使用される。
* [[アーユルヴェーダ]] - インドの伝統医学。アーユルヴェーダ薬物の多くがユナニ医学に取りいれられた。
* [[中国医学]] -中国を起源とする東アジアの医学で、[[生薬]]などを治療に用いる。
* [[植物園]] /[[プラントハンター]]