「H&K HK416」の版間の差分

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|銃口初速=890m/秒 ※16.5インチバレルモデル
|有効射程=300m<br/>最大有効射程 400m
|重量=3.1-4.2kg(※2kg ※銃身長他によって異なる
|全長=560mm-941mm/690mm-1,037mm(銃床最大展張時)<br/>(※ ※銃身長他によって異なる
|バリエーション=''[[#各型及び派生型]]を参照''
|製造数=
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[[銃砲身|銃身]]の長さに応じて複数のバリエーションが存在している他、本銃の発展型として[[7.62x51mm NATO弾]]仕様とした[[H&K HK417]]が開発されている。半自動射撃機能のみとした民間向け型も開発・販売されており、使用弾薬を.22LR([[22口径ロングライフル弾]])としたスポーターモデルもライセンスを所得した別会社により開発されて販売されている。
 
ドイツのH&K本社で生産されている他、H&Kのアメリカ現地法人であるH&K Defence USA社によっても生産・販売されており、H&K Defence USA社が生産、納入/販売しているものには'''HK416D'''の名称が付けられている。
 
== 開発 ==
[[2001年]]、[[ヘッケラー&コッホ|H&K]]社が[[イギリス軍]]の[[L85|L85A1]]の近代改修を請け負った際の実績を評価し、[[アメリカ陸軍]]も[[M4カービン]]の改修をH&K社に依頼した。
 
M4カービンは[[M16自動小銃]]の特性を引き継いだ優秀な自動火器ではあったものの、「光学照準器を始めとする様々なオプション装備に十分に対応していない」「過酷な使用状況での信頼性に問題がある」との不満も多かったためである。特に、特殊部隊用途としては将兵の評価は必ずしも高くなく、それらの部隊ではM4以外の様々なAR-15系列の自動小銃を「試験用途」の名目で使用している状況でもあり、装備の統一が求められていることも、M4の改修型が求められた要因であった。<br/>
これに加え、H&K社ではアメリカ軍次期制式アサルトライフルとして同社の[[H&K G36|G36]]を基にした[[H&K XM8|XM8]]を提案しており、M4カービン改修型の開発と納入にはXM8の本格導入までの暫定装備としての位置を念頭に置いていた。「M16/M4と操作は基本的に同じであるため新たな銃器教育体系の必要がなく、性能面ではXM8と同等である」という存在を用意することで、制式小銃をXM8に切り替える際の“ストップギャップ(stop-gap:「穴埋め」「中繋ぎ」の意)”として、XM8と併せて大規模な導入が見込める、と考えていたためである。
 
これらの事情を踏まえ、アメリカ陸軍特殊部隊“[[デルタフォース]]”の元隊員である、ラリー・ヴィッカーズ(''Larry Vickers'')氏を監修に迎え、[[2002年]]より[[アメリカ特殊作戦軍]](USSOCOM)と共同で“エンハンスド・カービン(Enhanced Carbin:“Enhanced”とは「強化」「改良」の意)”計画の一つとして開発が進められた。
 
[[2004年]][[2月]]に発表された最初のモデルには'''HKM4'''の名称が付けられた。試験運用の結果は好評であったが、M4カービンの製造元である[[コルト・ファイヤーアームズ|コルト社]]より「商標権を侵害している」との抗議を受け、訴訟に発展したために、部分改良を施された後に[[2005年]][[2月]]に<ref group="注釈">この訴訟は「H&K社'''HK416'''「HKM4」いう名されて改めて発表され、を変更する」「H&K社は以後はこれが正式な製「M4」の名称を商品名に用いない」という形で示談となった。<br/>
なお、コルト社より同様の抗議を受けたブッシュマスター社([[:en:Bushmaster_Firearms_International|Bushmaster Firearms International, LLC]])は[[アメリカ合衆国連邦裁判所|裁判所]]に対し「M4」の名称は[[アメリカ陸軍]]の制式番号であり、コルト社固有の商標権ではなく、コルト社が商標としての占有権を主張することは認められない」との訴えを起こし、2005年12月8日には[[メイン州]]の[[アメリカ合衆国連邦裁判所#.E5.9C.B0.E6.96.B9.E8.A3.81.E5.88.A4.E6.89.80|連邦地方裁判所]]にて「コルト社に「M4」という語に関する独占的権利は認められない」との判決が下されている。</ref>ために、部分改良を施された後に[[2005年]][[2月]]には'''HK416'''と改称されて改めて発表され、以後はこれが正式な製品名となった。
 
HK416となってよりも、実戦での使用結果を含め運用試験の実績は好調であったが、XM8の導入計画がキャンセルされた上、M4カービンの改良計画も、暫定的な結論ながら「M4には全面的に改修しなければならないほどの問題はなく、予算的にもその必要性は低い」とされたため、HK416の導入は特殊部隊向けに留まり、アメリカ軍全軍への大規模な採用は行われなかった。[[アフガニスタン紛争 (2001年-)|アフガニスタン]]・[[イラク戦争]]の結果、5.56mm弾とそれを使用する[[アサルトライフル]]では射程と威力に劣る状況が多発した、という戦訓から7.62mm弾を使用する[[自動小銃]]([[バトルライフル]])の存在が見直されたことを受けて、口径を7.62mmNATO弾対応とした拡大型の「HK417」も開発されたが、こちらも制式採用は行われず、アメリカ軍への大規模な納入は行われていない。
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== 運用 ==
HK416はH&K社によってアメリカ軍を始めとした[[M16自動小銃#AR-15|AR-15]]系列の自動火器、時にM16アサルトライフルもしくはM4カービンを装備する軍隊や法[[執行機関]]<ref group="注釈">英語の“law-enforcement”の訳語、[[警察]]組織及び公的取締機関等を指す用語。</ref>に積極的な売り込みが行われたが、原型のHKM4開発時の軋轢からM4を製造・販売している[[コルト・ファイヤーアームズ|コルト社]]系列の販売網に参入することが出来できず、またM4に比べて高価なことから、使用国そのものは多いものの、軍の制式装備として採用された例は少ない。結果、主に軍隊や警察組織の[[特殊部隊]]が用いる[[アサルトライフル]]もしくは[[カービン]]として運用されているものが大半である。
 
正規軍により制式化された実績としては、[[トルコ軍]]がまず8,000丁を導入し、更に[[トルコ]]のMKE社が[[ライセンス生産]]したものを「'''Mehmetcik-1'''」という名称で軍の次期制式[[アサルトライフル|小銃]]とすることを発表し、[[2010年]]に置き換える予定であったが、実際にはライセンスの取得には至っておらず、生産を巡って争議となったため、計画は[[2011年]]に中止となっている。
 
制式小銃として最も多数のHK416を導入しているのは[[ノルウェー軍]]で、AG-3([[H%26K_G3|H&K G3]]自動小銃のノルウェー軍向けモデル)に代わるものとして制式採用されし、89,000丁を導入している。[[アメリカ軍]]では[[特殊部隊]]の一部に納入実績があり、2010年には[[アメリカ海兵隊|海兵隊]]に分隊支援火器型が'''M27 IAR(Infantry Automatic Rifle)'''として採用されている。ドイツ連邦軍は2014年にはHK416A5を公式に採用し、“'''G38'''”の名称を指定した、と伝えられた。<ref name="HK416_1">[http://www.thefirearmblog.com/blog/2014/09/01/hk416a5-now-g38/ TFB(THE FIREARMS BLOG.COM):September 1, 2014 "The HK416A5 Is Now The G38"]</ref><ref name="HK416_2">[http://strategie-technik.blogspot.jp/2014/08/neu-im-katalog-g38-alias-hk416a5.html STRATEGIE & TECHNIK:28. August 2014"Neu im Katalog: G38 alias HK416A5 "]</ref>。
 
特殊部隊の用いる銃器としてはアメリカ軍を始めとして世界各国で採用されており、特に、[[アメリカ海軍]]の特殊部隊である[[DEVGRU]](旧[[Navy_SEALs]]チーム6)所属の隊員が、[[2011年]][[5月2日]]に行われた「[[ウサーマ・ビン・ラーディンの殺害#Operation_Neptune_Spear|Operation Neptune Spear]]」([[ウサーマ・ビン・ラーディンの殺害|ウサーマ・ビン・ラーディン襲撃作戦]])の際に、HK417と共に本銃を運用していたという情報が海外のミリタリー系サイトで話題となり、本銃の知名度を一挙に広めた。
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HK416(HKM4)は[[ガス圧作動方式#リュングマン式|ダイレクト・インピンジメント式(リュングマン式)]]から[[ガス圧作動方式#ショートストロークピストン式|ショートストロークピストン式]]への変更、[[ピカティニー・レール]]システムの標準装備、アルミ製に替わるスチール製の[[弾倉]]の採用など、作動の確実性と耐久性の向上を企図している。
 
特に、ショートストローク化されたガスピストンがロッド経由でボルトを押し戻すため、機関部内には高温で汚れた発射ガスが一切入らず、保守性、耐塵性が向上している。銃身は[[鍛造#鍛造の分類|冷間鍛造]]技術の採用によって長寿命化され、20,000発以上発射しても銃口初速が衰えず命中精度が維持できるとされている。また、その頑丈さゆえ、テストでは泥水に漬けた直後でもそのまま正常に動作するという耐久性能を見せている<ref group="注釈">同様のテストではM4カービンは暴発事故を起こしているため、このテスト結果はHK416の優秀さの一つとして喧伝されているが、「全く同一の条件下で比較されていない」「テストに用いられているのは特別に耐浸水性能を持つモデル(HK416A2を参照)であり、HK416全般としての性能ではない」といった批判もある。</ref>。
 
なお、2007年秋、[[メリーランド州]]の[[アバディーン性能試験場]]において、HK416は[[H&K_XM8|XM8]]、[[FN SCAR]]、M4とともに、砂塵の多い状況下での試験が行われた。この試験では各銃を10丁ずつ用意し、1丁につき6,000発が射撃された(全体では1種につき60,000発が発射されたことになる)。その結果、HK416は233回の射撃停止障害を記録した。テストに用いられた4種のうち、XM8が最も障害が少なく、障害は116回、重大な障害が11回、FN SCARは223回、M4は最も多い882回の射撃停止障害を起こし、19回は部品の修理を必要とするものであった。
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== 各型及び発展型 ==
[[ファイル:HK_416_US_1.JPG|thumb|240px|HKM4<br/>画像の銃はコッキングハンドルが取り外されている]]
;HKM4(試作型)
:試作及び開発モデル。ハンドガードは[[M4カービン]]と同じく前後のリングにより固定する方式の、レイルがないタイプものが用いられており、ガスブロック(フロントサイト基部)の上部と左右に短いレイルが装備されている(下部にはM4と同じスリングスイベルと着剣装置が備えられている)。
:当初はM4のロアレシーバーにハンドガードを除く新造のアッパーアセンブリを組み合わせて製作された。ハンドガード、グリップ及び銃床はAR-15系列用の様々なものが使われており、固定式の銃床を持つモデルも存在している。
<!--
[[ファイル:HK_416_US_1.JPG|thumb|240px|HKM4<br/>画像の銃はコッキングハンドルが取り外されている]]
※ファイル名は「HK416」であり、だとするならハンドガードの形状からHKM4ということになるのですが、排莢口ダストカバーがある等、AR-15 Mk18 CQBRではないかとも思われるので、コメントアウトとしました。
-->
;HKM4
:初期モデル。排莢口ダストカバーがなく、アッパーレシーバー上のレール装着位置が低い。初期生産型では試作型と同じM4タイプのハンドガードとレイル付きガスブロック仕様になっており、中期以降は[[ナイツアーマメント]]社のRASに似た4面レイル付きのフリーフロートバレル方式のハンドガードとなっている。
:;HKM4D
::公的機関向けモデル。「D」は“Defense”の略。
::H&K社のアメリカ現地子会社であるHeckler and Koch Defense USA社の製品としてアメリカの軍・政府機関に販売・納入されたものに付けられた名称。刻印以外はHKM4と同一である
:
;HK416
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;HK416D
:公的機関向けモデル。「D」は“Defense”の略。
:HK416のうち、H&K社のアメリカ現地子会社であるHeckler and Koch Defense USA社を通じてにより生産、販売・納入されているものに付けられている名称。刻印以外はHK416と同一である。
:ロアレシーバー右面の刻印は「Heckler & Koch GmbH|Made in Garmany|Heckler & Koch|Defense Inc.|Sterling VA」(2008年まで)及び「Heckler & Koch GmbH|Made in Garmany|Heckler & Koch|Defence Inc.|Ashburn VA」(2008年より)。
:H&K Defense USA社がアメリカで生産したものは「Heckler & Koch GmbH|Made in Garmany」の部分が省かれており、刻印は「Heckler & Koch|Defence Inc.|Ashburn VA」のみとなっている。
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::-A3型のトリガーシステムをMR556に採用された2段階式<ref group="注釈">引き始めが軽く、トリガーに連結されている撃発機構が開放(発射)される段階で重くなる方式。指先に力を入れてトリガーを引く必要がなく、射撃精度が高まる。</ref>のものに変更した改良型。
:これらサブタイプ名称は公式のモデル区分には通常は用いられておらず、“サブタイプ名称”というよりは“細かな仕様の名称”に近い。後述のHK416A5以外は単に「HK416」とのみ表記されることが通例である。
:HKM4/HK416の各型はフルセットだけではなくアッパーレシーバーとそれに組み込まれた銃身及び作動機構、そしてハンドガード(HK416)がセットになったコンバージョンキットの状態でSOPMOD([[:en:SOPMOD]](Special|Special Operations Peculiar Modification:Modification]]:特殊作戦用装備)として供給され、既存のM4カービンを始めとしたAR-15系列の銃と結合させて用いられており、「上半分だけがHKM4/HK416」という特殊なモデルが多数存在している。これらは言わば使用部隊や隊員による「ワンオフモデル」のため、派生型として正確に把握することは困難である。
:
;HK416A5
:[[2012年]]に行われた米軍次期カービン計画(ICC:Individual Carbine Competition)に応募するために開発された全面改修型。-A4型を基にG28マークスマンライフルの特徴を取り入れて改修されたモデル。
:ガスブロック先端にガスレギュレーターが装備され、ハンドガードの固定用ネジは独自規格のものから一般的なものに変更されている。ロアレシーバーはセレクター、マガジンキャッチ及びボルトリリースが全てアンビタイプとなった。ボルトキャッチはボタンが大型のものとなり、周囲にL字型のガードが追加されている。トリガーガードは手袋を填めていても引き金を引きやすいように下方に湾曲した形状のものに変更された。弾倉装着部がM4カービンに準拠したものになった<ref group="注釈">それまでのモデルではM4とは弾倉装着部の形状が微妙に異なっており、特に、互換製品として評価が高く人気のあった[[マグプル]]社製のAR-15系列用互換弾倉(PMAG)が装着できない(EMAGは装着可能)。</ref>他、弾倉は同社のHK417や[[H&K G36|G36]]同様に、半透明[[合成樹脂|プラスチック]]製の[[弾丸]]が見えるタイプのものがラインナップに加えられている。本体色のバリエーションには[[迷彩|タンカラー]]<ref group="注釈">公式な色名称は「RAL-8000 green-brown」となっている。</br>タンカラーはH&K G28の採用結果を受けてHK416及び417のラインナップにも採り入れられた。</ref>が追加されている。
:*開発のきっかけとなった次期カービン計画が[[2013年]]には中止されたため、米軍への採用はなされていない。
:;- 11"
:: コンパクトモデル。11インチ(279 mm)銃身を装備。
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[[ファイル:HK416N.jpg|thumb|240px|HK416N]]
;HK416N
:「N」は“Norge<ref group="注釈">“[[ノルウェー]]”の[[ノルウェー語]]における自国名表記</ref>”の略。[[ノルウェー軍]]の要求に応わせ仕様変更されたモデル。
:HK416A2 D16.5RSから銃身の浸水対応機能を省いたものに、安全装置の機構の変更、規制子(ガスレギュレーター)の装備などの改修を加えたもの。独自の着剣装置が銃身に装着されており、規制子切り替えノブはハンドガード前端部右側面にある。
:*一部仕様はノルウェー軍向け納入分以外のモデルにも取り入れられて標準仕様化され、HK416A3となった。
:*独自の着剣装置が銃身に装着されており、規制子切り替えノブはハンドガード前端部右側面にある。
:;HK416K
::「K」は“Kort”の略([[ノルウェー語]]で「短い」の意)。HK416Nの10インチ銃身モデル。
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ドイツのスポーツ銃メーカー、[[:en:Umarex|Umarex]]社が製造・販売しているHK416のコピー(レプリカ)モデル。メーカーの公式な製品名は「'''H&K 416 .22 LR'''」であるが、カービンモデルのレシーバーの刻印から'''HK416D'''と通称されていることが多い<ref group="注釈">このモデルの刻印の「D」はH&K製オリジナルモデルの「D(Defense)」とは意味するものが異なり、「公的機関向け」を意味しない。</ref>。
 
使用弾薬は[[.22LR]](22口径ロングライフル弾)となっているコピーモデルではあるが、H&K社から正式なライセンスを所得しているためにレシーバーには「HK」のロゴマークが入れられている。Umarex社は現在では[[ワルサー|ヴァルター(WALTHER(ワルサー)]]の親会社であるため、生産はヴァー社で行われており、「WALTHER」ブランドでも販売されている。
 
基本的に民間市場のみを対象とした製品のため、セミオートのみでフルオート機能はない。弾倉は30連バナナ型、20連バナナ型、10連箱型のものが用意されている(30連のものはオプション品の扱い)。
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:レシーバー左側面の刻印は「HK」ロゴに「HK 416 D|cal. .22 L.R.HV」。
;HK 416 D10RS .22 LR
:10インチバレルを持つピストルカービンモデル。主にヴァルター(ワルサー)WALTHERブランドで発売されており、“WARTHER”ブランドワルサーでの商品名は「'''HK 416 D10RS, 20-round'''」となっている。
:レシーバー左側面の刻印は「HK」ロゴに「HK 416 D|cal. .22 L.R.HV」。
;H&K 416 Pistol .22 LR