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{{国際化|領域=日本|date=2008年10月19日 (日) 03:58 (UTC)}}
[[ファイル:Belchatow-elektrownia.jpg|thumb|right|220px|ベウハトゥフ発電所([[ポーランド]])]]
'''火力発電所'''(かりょくはつでんしょ、英:thermal power plant)とは、[[石炭]]、[[石油]]、[[天然ガス]]などを[[燃料]]とする[[火力発電]]による発電設備がある[[発電所]]を指すのこと
 
== 概要 ==
[[日本]]で火力発電所を所有している[[会社]]、主に10の地域[[会社]]([[北海道]]を行っている[[東北]]のことであり何らかの[[東京電力燃料]][[中部電力石炭]]、[[北陸電力石油]]、[[関西電力天然ガス]]など)を[[中国電力燃焼]]させ[[四国]]、[[九州電力]]、[[沖縄電力]])や電力卸売り会社([[電源開発]])を行っている施設である。
 
また[[東日本旅客鉄道|JR東日本]]([[川崎市]][[川崎区]])のように自家用発電所を持つ企業も少なくない。電力需要が大きかったり蒸気を多用する工場の中には、[[ボイラー]]などによる火力発電施設を設けて自社工場内の需要を賄い、これらの施設が火力発電所と呼ばれる事があり、一部では余剰電力の売電まで行っている。[[電力自由化]]以降は、[[神戸製鋼所]]や[[新日鐵住金]]などは新たに火力発電所を建設して、電力会社や法人へ電力の卸売りを積極的に行っている。
 
'''日本初の火力発電所'''は、[[東京電燈]]により、1887年(明治20年)に建設された「第二電燈局」(現:東京都中央区日本橋茅場町)。現在、跡地はビジネスホテル「相鉄フレッサイン 日本橋茅場町」とおなっている
 
== 構成 ==
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== 立地 ==
かつては、[[千住火力発電所]]のように電力需要の大きな大都市近くに建設される場合が多かった(たとえば[[千住火力発電所]]など)が、送電技術の向上や燃料搬入の利便性、海水を[[冷却水]]として使用できること、排煙や騒音問題から住宅地とは離す必要があったことなどから、臨海地区の工場地帯に建設される場合が多い。また、エネルギー効率が悪く輸送に不便な[[褐炭]]のような石炭を使った火力発電では、炭鉱近くに火力発電所が建てられることがあり、これらは「山発電」と呼ばれる。
 
== 発電方法による特徴と採用例 ==
{{国際化|section=1|date=2015年2月}}
=== 汽力発電所 ===
*[[汽力発電]]の設備を持つ発電所。燃料の[[燃焼]]で放出される[[化学]]エネルギー]]水を沸騰させ[[水蒸気]]を作り、[[蒸気タービン]]を回転させることによる、[[汽力発電]]の設備を持つ発電所
*発電技術の発展とともに大容量化が進み、現在では1基あたりの出力は100万kW級が日本国内で最大である。
*なお単に汽力発電と言った場合には、[[原子力発電]]・[[地熱発電]]・[[太陽熱発電]]も含まれる。
 
=== 石油火内燃力発電所 ===
*[[内燃力発電]]の設備を持つ発電所。[[内燃機関]]で燃料を燃焼させ回転運動を起こし発電する。
*使用される内燃機関は[[ディーゼル]]エンジンが主流であり、ガスエンジンや[[ガスタービン]]を使用している発電所もある。
*始動性が良く、需要調整が最も容易。
 
=== コンバインドサイクル発電所 ===
*ガスタービンの排熱で汽力発電も行う、[[コンバインドサイクル発電]]の設備をもつ発電所。
*2重に発電を行うため、他の発電方法と比べ[[熱効率]]が高く、ガスタービンであるため始動性も良い。
*ガスタービンと、蒸気タービンを組み合わせた小容量のユニットを複数設置し、3〜6台ずつグループとして運用するため、起動・停止や出力の変化が速い。
*系列あたりの出力は大容量でありながら、上記運用方法により効率の低下が少ないという特徴がある。
 
== 石油危機燃料の種類による石油火力発電所の新設禁止特徴 ==
=== 石炭火力発電所 ===
*火力発電の黎明期から使用されている。
*従来、石炭火力は煙突よ[[大気汚染]]の原因となばい煙、人々の健康噴出し公をイメージするものとして描かれる事が多かっ歴史ある。日本では集塵装置を始めとする諸設備により大気汚染防止対策が採られている。一方、こうした対策が講じられていない国も多くあり、中国の例ではあいかわらずそうした対策が講じられておらず、2011年に[[北京市]]、[[天津市]]、[[河北省]]に存在する発電所のばい煙により、[[呼吸器疾患]]等で9,900人が死亡したとするデータもある<ref>{{Cite news
|url=http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=73483
|title=北京周辺の石炭消費、大気汚染悪化の原因に=11年に1万人死亡―中国
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}}</ref>。
*[[温室効果ガス]]([[二酸化炭素]](CO2)など)の排出量が最も多いため、[[地球温暖化]]を引き起こしている、氷河の融解を招き、世界各地で水没する地域も作り出している、としばしば指摘されている。
 
=== 石油火力発電所 ===
*石炭火力と比べ、出力の調整など柔軟な運用に対応しやすいため、ピーク電源として運用されている。
*近年の原油高により、他の燃料よりコストがかかるほか、産出国の事情に左右されやすく安定供給に問題がある。
 
=== LNG(天然ガス)火力発電所 ===
*コンバインドサイクル発電を採用している場合、運転・停止が短時間で容易にでき、需要の変化に即応した運転が可能であり、ミドル電源として運用されている。
*[[LNG]](液化天然ガス)は、ガスを液化する際にガス中の「ちり」、燃焼時に硫黄分などの不純物を取り除いているため、硫黄酸化物や煤塵の発生がなく、環境負荷が少ない。
 
 
== 石炭利用拡大に関するIEA宣言 ==
[[第二次石油危機]]の発生を受けて、1979年5月に行われた第3回[[国際エネルギー機関|国際エネルギー機関(IEA)]]閣僚理事会において、'''「石炭利用拡大に関するIEA宣言」'''の採択が行われた。この宣言には'''石油火力発電所の新設禁止'''が盛りこまれていたた。
 
これは日本にも影響した。→[[#日本#IEA宣言への対応]]
 
== 日本 ==
[[日本]]ではさまざまな企業が火力発電所を所有している。
 
例えば、大手の電力会社では、10の地域[[電力会社]]([[北海道電力]]、[[東北電力]]、[[東京電力]]、[[中部電力]]、[[北陸電力]]、[[関西電力]]、[[中国電力]]、[[四国電力]]、[[九州電力]]、[[沖縄電力]])や電力卸売り会社([[電源開発]])である。発電量の割合で見るとこれらが多い。
 
また自家用発電所を持つ企業も少なくない(たとえば[[東日本旅客鉄道|JR東日本]]([[川崎市]][[川崎区]])のように自家用発電所を持つ企業も少くないど)。電力需要が大きかったり蒸気を多用する工場の中には、[[ボイラー]]などによる火力発電施設を設けて自社工場内の需要を賄い、これらの施設が火力発電所と呼ばれる事があり、一部では余剰電力の[[売電]]まで行っている。[[電力自由化]]以降は、[[神戸製鋼所]]や[[新日鐵住金]]などは新たに火力発電所を建設して、電力会社や法人へ電力の卸売りを積極的に行っている。
 
'''日本初の火力発電所'''は、[[東京電燈]]により、1887年(明治20年)に建設された「第二電燈局」(現:東京都中央区日本橋茅場町)。現在、跡地はビジネスホテル「相鉄フレッサイン 日本橋茅場町」とおなっている
 
*汽力発電は、発電技術の発展とともに大容量化が進み、現在では1基あたりの出力は100万kW級が日本国内で最大である。
 
 
=== 発電方法別 ===
 
==== 汽力発電所 ====
;採用例
:[[東京電力]] [[姉崎火力発電所]]1号機(60万kW):日本初の[[臨界点|超臨界圧]]ボイラーおよび蒸気タービンを採用。
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:[[電源開発]] [[橘湾火力発電所]]1、2号機(各105万kW):単機出力は火力発電所では日本国内最大。
 
==== 内燃力発電所 ====
*燃料の燃焼で放出される化学エネルギーで[[内燃機関]]を回すことによる、[[内燃力発電]]の設備を持つ発電所。
*使用される内燃機関は[[ディーゼル]]エンジンが主流であり、ガスエンジンや[[ガスタービン]]を使用している発電所もある。
*始動性が良く、需要調整が最も容易であるため、[[佐渡島]]や[[沖縄諸島]]、[[小笠原諸島]]など、[[離島]]の電源や、発電所の非常用電源として設置されている。
;採用例
:[[東北電力]] [[両津火力発電所]]1、3~9号機(計5.3万kW):内燃力発電所(ディーゼル発電)では日本最大級の発電規模。
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:[[東京電力]] [[横須賀火力発電所]]1、2号ガスタービン(計17.4万kW):同発電所は汽力発電がメイン。ガスタービン発電設備は予備的な存在。1号ガスタービンは非常用。
:[[沖縄電力]] [[牧港火力発電所]]1、2号ガスタービン(計16.3万kW):同発電所は汽力発電がメイン。ガスタービン発電設備は予備的な存在。
*:始動性が良く、需要調整が最も容易であるため、[[佐渡島]]や[[沖縄諸島]]、[[小笠原諸島]]など、[[離島]]の電源や、発電所の非常用電源として設置されている。
 
==== コンバインドサイクル発電所 ====
*ガスタービンの排熱で汽力発電も行う、[[コンバインドサイクル発電]]の設備をもつ発電所。
*2重に発電を行うため、他の発電方法と比べ[[熱効率]]が高く、ガスタービンであるため始動性も良い。
*ガスタービンと、蒸気タービンを組み合わせた小容量のユニットを複数設置し、3〜6台ずつグループとして運用するため、起動・停止や出力の変化が速い。
*系列あたりの出力は大容量でありながら、上記運用方法により効率の低下が少ないという特徴がある。
;採用例
:[[JR東日本川崎火力発電所]]1号機(14.42万kW):日本初のコンバインドサイクル発電方式を採用。
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:[[中国電力]] [[水島発電所]]1号機(28.5万kW):設備更新で1,400℃級ACC方式に変更。
 
=== 燃料種類による発電所の特徴事例など ===
==== 石炭火力発電所 ====
*火力発電の黎明期から使用されている。日本ではかつて国内炭使用であったが、近年は海外炭であるほか、細かな粉末(微粉炭)にして燃焼している。
*日本では、[[オイルショック]]以降、石油火力から転換した発電所も多い。中には石炭から石油に転換後、石炭に再転換した発電所もある。
*燃料の安定供給や経済性に優れており、近年は石油火力に代わって建設された60~100万kW級の大型火力が主力であり、ベース電源として運用されている。
*発電効率向上のため、近年では[[超臨界流体|超々臨界圧]](蒸気温度593℃以上、蒸気圧力24.1MPa以上)の[[ボイラー]]および[[蒸気タービン]]を採用している。
*石炭を燃焼させた後の灰([[フライアッシュ]])は[[セメント]]の原料として外部に売却されるほか、埋立用としても使用される。
*従来、石炭火力は煙突よりばい煙を噴出し公害をイメージするものとして描かれる事が多かったが、日本では集塵装置を始めとする諸設備により大気汚染防止対策が採られている。一方、こうした対策が講じられていない国も多くあり、中国の例では2011年に[[北京市]]、[[天津市]]、[[河北省]]に存在する発電所のばい煙により、[[呼吸器疾患]]等で9,900人が死亡したとするデータもある<ref>{{Cite news
|url=http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=73483
|title=北京周辺の石炭消費、大気汚染悪化の原因に=11年に1万人死亡―中国
|work=レコードチャイナ
|publisher=レコードチャイナ
|date=2013-06-20
|accessdate=2013-07-05
}}</ref>。
*[[二酸化炭素]](CO2)など[[温室効果ガス]]の排出量が最も多いため、[[地球温暖化]]対策の足かせになっているという懸念もある。
;採用例
:[[電源開発]] [[松島火力発電所]]1、2号機(各50万kW):石炭火力では日本初の[[臨界点|超臨界圧]]ボイラーおよび蒸気タービンを採用。日本で初めて海外炭を使用。
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:電源開発 [[橘湾火力発電所]]1、2号機(各105万kW):単機出力は火力発電所では日本国内最大。
 
 
=== 石油火力発電所 ===
==== 石油火力発電所 ====
*日本では[[第二次世界大戦]]以降、急速に普及し1970年代前半には石油火力が大半を占めていたが、オイルショック以降、他の燃料への代替が進んでいる。
*主に[[重油]]を燃料とする発電所が大半を占める。[[原油]]や[[軽油]]、[[灯油]]を燃料とする発電所も存在する。かつては[[ナフサ]]も使用されていた。
*日本では[[第二次世界大戦]]以降、急速に普及し1970年代前半には石油火力が大半を占めていたが、オイルショック以降、他の燃料への代替が進んでいる。
*現在では石油火力発電所の新設が原則として禁止されており(後述)、老朽化した旧式の発電設備が多く効率も悪いため、稼働率低下の一因となっている。
*石炭火力と比べ、出力の調整など柔軟な運用に対応しやすいため、ピーク電源として運用されている。
*近年の原油高により、他の燃料よりコストがかかるほか、産出国の事情に左右されやすく安定供給に問題がある。
;採用例
:[[中部電力]] [[三重火力発電所]]4号機(12.5万kW):日本初の重油専焼火力。※1989年廃止
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:東京電力 [[鹿島火力発電所]]1~6号機(計440万kW):石油火力では日本最大の発電量。5、6号機は日本初の100万kW機。
 
==== LNG(天然ガス)火力発電所 ====
*[[オイルショック]]以降、普及や燃料転換が進み、現在では火力発電の中で最も比率が高い。
*発電効率向上のため、近年ではガスタービン発電設備と[[汽力発電]]設備を組み合わせた[[コンバインドサイクル発電]]方式が導入されている。
*コンバインドサイクル発電を採用している場合、運転・停止が短時間で容易にでき、需要の変化に即応した運転が可能であり、ミドル電源として運用されている。
*[[LNG]](液化天然ガス)は、ガスを液化する際にガス中の「ちり」、燃焼時に硫黄分などの不純物を取り除いているため、硫黄酸化物や煤塵の発生がなく、環境負荷が少ない。
*LNGの貯蔵設備や[[パイプライン]]の敷設など、付随設備の建設に時間・コストがかかる。なお、[[気化]]作業を近隣のガス会社に委託している発電所もある。
;採用例
139 ⟶ 173行目:
:東京電力 [[富津火力発電所]]1~4号系列(計504万kW):火力発電所では日本最大の発電量。
 
==== 混焼火力発電所について ====
*以前は、石炭・石油混焼火力は少なからず存在したが、現在ではほとんどが廃止されている。石炭専焼火力から転換した発電所が多い。
*石油・LNGガス混焼火力も、石油専焼火力から転換した発電所が多い。
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:[[北海道電力]] [[知内発電所]]2号機(35万kW):日本初の重油・[[エマルジョン燃料|オリマルジョン]]混焼火力。
 
=== IEA宣言への対応 ===
== 石油危機による石油火力発電所の新設禁止 ==
[[第二次石油危機]]の発生を受けて、1979年5月に行われた第3回[[国際エネルギー機関|国際エネルギー機関(IEA)]]閣僚理事会において、'''ける「石炭利用拡大に関するIEA宣言」'''の採択が行われたの宣言には'''石油火力発電所の新設禁止'''が盛りこまれていたためそれ以降日本でもそれ以降原則として石油(原油)火力発電所を新設することが出来なくなった。そのため、現在建設される火力発電所は、石炭やLNG、あるいはそれらの混合等となっている。
 
そしてそれ以前に建設されていた石油火力発電所も、石炭またはLNG火力発電への転換が促進された<ref>[http://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/file/2003/20030618_1.pdf 「わが国における「石油火力発電」の扱いと石油業界の考え方について」石油連盟(PDF)]{{リンク切れ|date=2012年7月}}</ref>。2010年時点で日本の発電電力量比率は火力発電全体で64%(内訳はLNG28.3%、石炭25.2%に対して石油は10.3%)となっている<ref>経済産業省資源エネルギー庁・ガス事業部「電源開発の概要」</ref>。
 
=== 福島第一原子力発電所事故以降の状況 ===
2011年3月の[[福島第一原子力発電所事故]]によって、原子力発電所は定期検査後の再稼動がしづらい状況になっているため、原子力発電の不足を補うために老朽化した休止中の石油火力発電所を復活させたり、LNG火力発電所の定期点検時期を延期したり稼働率を上げるなどして石油(原油)やLNGの輸入量を増大させており、全発電量に占める火力発電の割合は75%以上に増えている。