「成年後見制度」の版間の差分

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このように後見人の担い手は広がりつつあるが、一方で家族が後見人となり財産管理をする傍らで本人の財産を侵奪したり悪徳リフォーム業者が認知症高齢者の任意後見人になり高額の契約を結んだりする等の事例があるのも事実である。年金生活である知的障害者の家族が、年金収入を家族の生計に充てている事例があるとの指摘もされている。監督人がいない場合、後見人を家庭裁判所が監督する建前だが裁判所の人的資源の限界もあって十分な監督ができていないのが実情である。他方、任意後見の移行型については任意後見受任者が監督を忌避して監督人選任申立てを故意的に懈怠する可能性も学会や新聞紙上等において指摘されており、<ref>[[2005年]]開催の日本成年後見法学会のシンポジウム及びその内容を記録した『成年後見法研究第3号』155ページ以下等。</ref>監督忌避を目的に任意代理契約でそのまま進めて問題が生じているケースもある。
 
具体的な事例としては、後見人である親族による金銭の着服が発覚し刑事事件となるケース<ref>として、[[福岡県]]で知的障害の実兄2人の成年後見人であった実弟が[[ヤミ金]]業者らと共謀して多額の預金を引き出したとして親族相盗例を排除して[[業務上横領罪]]を適用し、[[福岡地方検察庁]][[特別刑事部]]によって[[逮捕]]・[[起訴]]されたことが[[2006年]][[10月5日]]付けの[[毎日新聞]]によって報じられている</ref>や専門職による職業後見人が不当な報酬額を取得し財産を侵奪したりするケース<ref>社団法人成年後見センター・リーガルサポート東京支部の元副支部長である司法書士が任意後見契約において設定された報酬額に加えて日当等を請求し、結果的に年間500万円程度の多額の報酬額を不当に取得したとして問題となった。この司法書士は、2006年春に成年後見に関する書籍を発行するなどの活動を行っていた。</ref><ref>東京弁護士会元副会長の弁護士が、2009年から12年までの間に、成年後見人として管理していた千葉県に住む女性の定期預金を解約し、約4200万円を自分の口座に入れるなどして横領した。</ref>が全国各地で報告されている。また、[[2012年]][[2月]]には[[広島高等裁判所|広島高裁]]で、財産管理能力を考慮せずに親族の一人を成年後見人とした結果、財産を着服されたとして、[[広島家庭裁判所|広島家裁]]の過失を認める判決が出されている<ref>[http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2012/02/21/20120221dde041040007000c.html 成年後見横領:家裁の過失認定 成年後見人トラブルで初--広島高裁] 毎日新聞 2012年2月21日</ref>
また、[[2012年]][[2月]]には[[広島高等裁判所|広島高裁]]で、財産管理能力を考慮せずに親族の一人を成年後見人とした結果、財産を着服されたとして、[[広島家庭裁判所|広島家裁]]の過失を認める判決が出されている<ref>[http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2012/02/21/20120221dde041040007000c.html 成年後見横領:家裁の過失認定 成年後見人トラブルで初--広島高裁] 毎日新聞 2012年2月21日</ref>。
 
このような財産着服は、[[最高裁判所 (日本)|最高裁]]家庭局によると、[[2010年]][[6月]]から[[2011年]][[3月]]の10ヵ月間だけでも182件に及ぶという。最高裁は、[[信託制度]]を活用する形での財産保護策を検討している<ref>[http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111020ddm012040046000c.html 後見制度:10カ月で悪用182件 「信託制度」導入へ--最高裁が防止策] 毎日新聞 2011年10月20日</ref>。
 
一方専門職による職業後見人が不当な報酬額を取得し財産を侵奪したりするケースとして、社団法人成年後見センター・リーガルサポート東京支部の元副支部長である司法書士が任意後見契約において設定された報酬額に加えて日当等を請求し、結果的に年間500万円程度の多額の報酬額を不当に取得したとして問題となった。この司法書士は、2006年春に成年後見に関する書籍を発行するなどの活動を行っていた。また、東京弁護士会元副会長の弁護士が、2009年から12年までの間に、成年後見人として管理していた千葉県に住む女性の定期預金を解約し、約4200万円を自分の口座に入れるなどして横領した。これら職業後見人による財産着服についても、信託制度の活用が最高裁判所から求められたが、日弁連の反対により頓挫している。
 
このようななかで後見人としての資質の向上や倫理観、懲罰制度についての議論が起こっており、とくに裁判所では士業者団体による後見人候補者名簿の作成に当たっては名簿提出をする団体の研修内容や組織体制を重視してきた。また士業者団体に対し、裁判所が適切な懲罰制度を設けることなどを求める例もでている。また民間団体による市民後見人が後見業務を行う場合には複数の法人で相互に活動をチェックする体制をとるなど、権限の濫用を防止するための試みも行われているとの報道がなされている<ref>[[日本経済新聞]][[夕刊]] 2006年[[10月19日]]など</ref>。
 
なお、「職業後見人による犯罪・怠慢・不当に高額な報酬の請求の露見・報道があとを絶たず、その能力不足・倫理欠如が指摘されて久しく、そうした状況の改善も今後の課題とする」との主張もあるが,職業後見人による犯罪数は全体の1割にも満たず,横領行為等のほとんどが親族による後見人によって行われているのが実情である。そもそも,報酬請求は裁判所が審判により定めるものであり,専門職後見人が請求するものではない。このような主張は,(後見人以外の)親族から制度不理解による不満という形でなされることが多く,失当である。
 
=== 医的侵襲に対する同意 ===