「粒子状物質」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
98行目:
 
===組成===
粒子状物質の組成は場所や時期により変動する。日本では、環境省が平成22年度(2010年度)からPM2.5の全国的な平均成分分析を行い公表している。この平成23年度(2011年度)の国内全観測点平均データによると、全体16μg/m<sup>3</sup>のうち、硫酸イオンが最も多く約25%(4μg/m<sup>3</sup>)、次いで有機炭素{{refnest|group=注|name=ocec|元素状炭素は、別名"黒色炭素"ともいい、化石燃料が高温で不完全燃焼する際に生じる黒煙や煤(すす)にあたる。一方、有機炭素は、有機物に由来する炭素を指し、その種類は少なくとも数百に上る。VOCも有機炭素である<ref>長谷川就一「環境問題基礎知識 [https://www.nies.go.jp/kanko/news/21/21-5/21-5-04.html 粒子状物質中の炭素成分について]」、国立環境研究所『国立環境研究所ニュース』、21巻6号、2003年2月</ref>}}が約18%(3μg/m<sup>3</sup>)、アンモニウムが約12%(2μg/m<sup>3</sup>)、そのほか元素状炭素<ref group="注" name="ocec"/>、硝酸イオンなどとなっている<ref>「[http://www.env.go.jp/air/osen/jokyo_h24/index.html 平成24年度大気汚染状況について 図表] [http://www.env.go.jp/air/osen/jokyo_h24/figs1.html#chpt2_fig2 図1 地点分類別成分濃度(全国)]」環境省、2013年、2015年4月13日閲覧</ref>。
 
{|class=wikitable style="float:left;margin:10px 10px 10px 0;text-align:right;font-size:small;line-height:1.2em"
|+ 東京都内一般局9地点 PM2.5組成平均値 2008年度<ref name="tkrep11-4"/>
|-
|成分||割合(%)
|-
|元素状炭素 EC ||7
|-
|有機炭素 OC ||18
|-
|アンモニウムイオン NH<sub>4</sub><sup>+</sup> ||11
|-
|ナトリウムイオン Na<sup>+</sup> ||1
|-
|カリウムイオン K<sup>+</sup> ||1
|-
|カルシウムイオン Ca<sub>2</sub><sup>+</sup> ||1
|-
|塩化物イオン Cl<sup>-</sup> ||1
|-
|硝酸イオン NO<sub>3</sub><sup>-</sup> ||10
|-
|硫酸イオン SO<sub>4</sub><sup>2−</sup> ||22
|-
|その他([[金属]]、[[水]]分、有機炭素に<br/>結合している水素や酸素など) ||28
|-
|colspan="2"|濃度平均値:20μg/m<sup>3</sup>
|}
 
東京都が平成20年度(2008年度)に行った調査では、成分の季節変化や経年変化、また人為起源の成分が明らかにされている。都内の一般環境大気測定局<ref group="注">道路から離れた住宅地に設置されている測定局。</ref>9地点で春・夏・秋・冬それぞれ14日間づつ抽出して平均値を算出したもので、年平均の組成は左表の割合となっている<ref name="tkrep11-4">[[#tkrep11|東京都微小粒子状物質検討会報告書]]、p4-10, p34-36</ref>。
 
季節変化を見ると、春のうちPM2.5濃度が高い日に限ると、濃度が低い日に比べて硫酸イオンの濃度が高い傾向にある。夏は、光化学反応により生成されていると考えられる硫酸イオンの割合が高い一方、他の季節に比べて硝酸イオンの割合が低い。秋は、元素状炭素や有機炭素の割合が比較的高いが、農地でのバイオマス燃焼([[野焼き]]など)に由来するものが都市部まで飛来している可能性が指摘されている。また秋や冬は、塩化物イオンや硝酸イオンの割合が高いが、二次粒子である硝酸アンモニウムや塩化アンモニウムが低温の下で粒子の形状を保ちやすいためと考えられる。さらに秋や冬のPM2.5濃度が高い日には、硝酸イオンの割合がさらに高くなる傾向にある<ref name="tkrep11-4"/>。
 
なお、平成12年度(2000年度)の測定値との比較では、濃度自体が半分程度まで減少しており、中でも元素状炭素や有機炭素、塩化物イオンの減少幅が大きかった。これは、2003年の[[ディーゼル車規制条例]]による排出ガス規制や、ごみ焼却炉の改良、VOCの排出規制などの効果によるものと分析されている<ref name="tkrep11-5">[[#tkrep11|東京都微小粒子状物質検討会報告書]]、p5</ref>。
 
さらに、都市部と、都心から1,000km離れた太平洋上の離島である小笠原諸島・[[父島]]の測定値を比較すると、父島では元素状炭素や有機炭素、硝酸イオンの割合が都市部に比べてかなり小さく、これらの成分は主に人為起源であることが推測されるという<ref name="tkrep11-5"/>。
 
大阪府が平成25年度(2013年度)に行った調査では、春や夏のPM2.5濃度が高い日のうち、大陸から気流が流れ込みやすい条件の日には、石炭の燃焼に由来するとされる鉛や[[ヒ素]]、硫酸イオンの濃度が上昇する傾向が共通して見られた。また、東京と同様に夏に硫酸イオンの割合が高く冬に硝酸イオンが高い傾向がみられた<ref name="osrep25">「[http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/kankyo/gijutsu/pm25/h25_overview.html 平成25年度微小粒子状物質成分分析結果報告書の概要]」大阪府立環境農林水産総合研究所、2014年</ref>。<ref name="tkrep11"/>。なお、PM2.5濃度の変化における越境汚染の寄与度は大陸からの距離に関係があり、大阪・兵庫ではPM2.5濃度に対する感度が48%に上る一方、東京では26%にとどまるという調査が報告されている<ref name="tkrep11">[[#tkrep11|東京都微小粒子状物質検討会報告書]]、p33</ref>。
 
==健康への影響==