「微分可能関数」の版間の差分

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[[File:Approximation of cos with linear functions without numbers.svg|400px|thumb|微分可能関数は線型関数によって局所的に近似できる]]
 
[[数学]]の一分野である[[微分積分学]]において、'''可微分函数'''あるいは'''微分可能関数'''(びぶんかのうかんすう、{{Lang-en-short|differentiable function}})とは、その[[定義域]]内の各点において[[導関数]]が存在するような関数のことを言う。微分可能関数の[[グラフ (関数)|グラフ]]には、その定義域の各点において非垂直な[[接線]]が存在しなければならない。その結果として、微分可能関数のグラフは比較的なめらかなものとなり、途切れ(break)、たり折れ(bend)曲がったりせず、{{仮リンク|先端尖点 (特異)|label=先端尖点(カスプ)|en|cusp (singularity)}}(cusp)や、[[垂直接線]]を伴う点などは含まれない。
 
より一般に、ある関数 ''f'' の定義域内のある点 ''x''<sub>0</sub> に対し、導関数 ''f''′(''x''<sub>0</sub>) が存在するとき、''f'' は '''''x''<sub>0</sub> において微分可能'''であるといわれる。そのような関数 ''f'' はまた、点 ''x''<sub>0</sub> の近くでは[[線型関数]]によってよく近似されるため、''x''<sub>0</sub> において'''局所線型'''(locally linear)とも呼ばれる。
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== 微分可能性と連続性 ==
[[File:WeierstrassFunction.svg|thumb|right|[[ワイエルシュトラス関数]]は連続であるが、どの点においても微分可能ではない]]
''f'' が点 ''x''<sub>0</sub> において微分可能であるなら、''f'' はその点 ''x''<sub>0</sub> において[[連続関数|連続]]である。特に、微分可能関数はどのようなものでも、その定義域内のすべての点において連続である。しかしその逆は成立しない:すなわち、連続関数は必ずしも微分可能ではない。例えば、折れ(bend)や先端(cusp)尖点、あるいは垂直接線を伴う関数は連続であることもあり得るが、それら例外的な箇所においては微分可能性は失われている。
 
現実に現れる多くの関数は、すべての点あるいは[[ほとんど (数学)|ほとんどすべて]]の点において導関数を持つものである。しかし、[[ステファン・バナフ|バナッハ]]による一つの結果として、ある点において導関数を持つ関数の集合は、すべての連続関数からなる空間における{{仮リンク|やせた集合|en|meagre set}}であることが示されている<ref>{{cite journal|author=Banach, S.|title=Uber die Baire'sche Kategorie gewisser Funktionenmengen|journal=Studia. Math.|issue=3|year=1931|pages=174–179}}. Cited by {{cite book|author=Hewitt, E and Stromberg, K|title=Real and abstract analysis|publisher=Springer-Verlag|year=1963|pages=Theorem 17.8|nopp=true}}</ref>。くだけた言い方をすると、このことはつまり、微分可能関数は連続関数の中でも珍しいものであることを意味している。至る所で連続であるが、どこにおいても微分可能ではない関数の最もよく知られた例は、[[ワイエルシュトラス関数]]である。
 
== 微分可能性のクラス ==
{{main|滑らかな関数}}
ある関数 ''f'' は、それ自体連続であるような導関数 ''f''′(''x'') が存在するなら、'''連続的微分可能'''(continuously differentiable)であると言われる。微分可能関数の導関数が[[不連続性の分類|跳躍不連続点]]を持つことは無いが、ある本質的な真性不連続点を持つことはある。例えば、関数
:<math>f(x) \;=\; \begin{cases} x^2\sin (1/x) & \text{if }x \ne 0 \\ 0 & \text{if }x=0\end{cases}</math>
は点 0 において微分可能である。なぜならば、
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であるが、これは ''x''&nbsp;→&nbsp;0 に対する極限を持たない。それにもかかわらず、{{仮リンク|ダルブーの定理 (解析学)|label=ダルブーの定理|en|Darboux's theorem (analysis)}}によれば、任意の関数の導関数に対して[[中間値の定理]]は成立する。
 
しばしば連続的微分可能関数は、'''{{math|''C''<sup>1</sup>クラス(}}-'''に属すであると言われる。ある関数に一階および二階の[[導関数]]が存在し、それらが両方とも連続であるとき、その関数は '''{{math|''C''<sup>2</sup>クラス}}-級'''に属すであると言われる。より一般的に、第 ''{{mvar|k'' }}-階までの導関数 {{math|''f''′(''x''), ''f''″(''x''), ... , ''f''<sup>(''k'')</sup>(''x'')}} が存在し、すべて連続であるなら、その関数は '''''{{mvar|C''<sup>''k''</sup>クラス}}-級'''に属すであると言われる。すべての正の整数 {{mvar|n}} に対して導関数 {{math|''f''<sup>(''n'')</sup>}} が存在するなら、その関数は[[滑らかな関数|滑らか]]、あるいは、'''{{math|''C''<sup>''''</sup>クラス}}-級'''に属すであると言われる。
 
== 高次の微分可能性 ==
{{See also|{{仮リンク|多変数学|en|multivariate calculus}}}}
 
ある関数 {{math|'''f''': '''R'''<sup>''m''</sup> → '''R'''<sup>''n''</sup>}} が点 {{math|'''x<sub>0</sub>'''}} において微分可能であるとは、
:<math>\lim_{\mathbf{h}\to \mathbf{0}} \frac{\mathbf{f}(\mathbf{x_0}+\mathbf{h}) - \mathbf{f}(\mathbf{x_0}) - \mathbf{J}(\mathbf{x_0})\mathbf{h}}{\| \mathbf{h} \|} = \mathbf{0} </math>
を満たすようなある[[線型写像]] {{math|'''J''': '''R'''<sup>''m''</sup> → '''R'''<sup>''n''</sup>}} が[[存在記号|存在]]することを言う。関数が {{math|'''x<sub>0</sub>'''}} において微分可能であるなら、そのすべての偏導関数は {{math|'''x<sub>0</sub>'''}} において存在しなければならず、そのような場合、線型写像 {{math|'''J'''}} は[[ヤコビ行列]]となる。高に関する同様の定式化は、一変数微積分にお学でて発見された [[:うところの{{仮リンク|有限増分の補題|en|en:fundamental increment lemma|fundamental increment lemma]]}}によって示さ与えられる。
 
ここで、偏導関数の存在は(あるいは、すべての[[方向微分]]の存在でさえも)、ある点における関数の微分可能性を保証するものではない、ということに注意されたい。例えば、
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は {{math|(0, 0)}} において微分可能でないが、ふたたびその偏導関数と方向微分はすべて存在する。
 
ある関数のすべての偏導関数が存在し、ある点の[[近傍]]において連続であるなら、その関数はその点において微分可能でなければならず、実際 {{math|''C''<sup>1</sup> クラスに属す}}-級である。
 
== 複素解析における微分可能性 ==
{{main|正則関数}}
[[複素解析]]において、ある点の近傍で複素微分可能な関数はすべて[[正則関数|正則]]と呼ばれる。そのような関数は必ず無限回微分可能であり、実[[解析関数|解析的]]である。
 
== 多様体上の微分可能関数 ==