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英語版Wikipedia「腰痛」の疫学の項目を訳しました 2015.5.1 午後10時30分 |
英語版Wikipedia 「腰痛」の「歴史」より翻訳 2015.516 21時03分 |
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== 原因 ==
欧州におけるガイドライン<ref>{{Cite report|title=European guidelines for the management of chronic non-specific low back pain |url=http://www.backpaineurope.org/web/files/WG2_Guidelines.pdf |publisher=[[:en:European Cooperation in Science and Technology|European Cooperation in Science and Technology]] }}</ref>によれば、腰痛は、疾患ではなく、症状である。腰痛の原因は、腰部に負担のかかる動作による
===腰部に負担のかかる動作による脊椎・腰椎・神経などの障害===
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腰痛の訴えは、人が医療機関を訪れる最も多い理由のうちの一つである。<ref name=AHRQ_2013>{{cite journal |title = Use of imaging studies for low back pain: percentage of members with a primary diagnosis of low back pain who did not have an imaging study (plain x-ray, MRI, CT scan) within 28 days of the diagnosis |url = http://www.qualitymeasures.ahrq.gov/content.aspx?id=38884 |year = 2013 |publisher = Agency for Healthcare Research and Quality |accessdate = 11 June 2013 }}</ref><ref name=AAFPfive>{{Citation |author1 = American Academy of Family Physicians |author1-link = American Academy of Family Physicians |title = Ten Things Physicians and Patients Should Question |publisher = American Academy of Family Physicians |work = Choosing Wisely: an initiative of the ABIM Foundation |page = |url = http://www.choosingwisely.org/doctor-patient-lists/american-academy-of-family-physicians/ |accessdate = September 5, 2012}}</ref> 多くの場合、痛みは、2、3週間しか続かずに、ひとりでに消えるように見える。<ref name=ACPfive>{{Citation |author1 = American College of Physicians |author1-link = American College of Physicians |title = Five Things Physicians and Patients Should Question |publisher = American College of Physicians |work = Choosing Wisely: an initiative of the ABIM Foundation |page = |url = http://www.choosingwisely.org/doctor-patient-lists/american-college-of-physicians/ |accessdate = 5 September 2013}}</ref> 医学学会のアドバイスによれば、もし、現病歴と診察所見が、腰痛の原因となる特定の疾患の存在を示唆しないのならば、エックス線写真やCT検査やMRI検査は不要である。<ref name=AAFPfive/> 患者さんは、
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; 寒冷療法
寒冷療法は、日本では、広く行われている。痛みを伝える神経は、冷やされて機能低下が起こり、痛みをあまり伝えなくなる。また冷却により炎症反応が押さえ込まれと、局所の浮腫が改善し、浮腫による神経圧迫が改善し、痛みが減る。しかし、急性腰痛は、原因不明ではあっても、元来はself-limited で予後の良い疾患である。炎症反応などは正常の防衛反応であり、そうした正常の修復過程を妨害しない方が良い場合がある。寒冷により、血管は収縮し、血流は低下し、体の組織は正常の機能が果たせなくなる。もし、背中に氷を押し当てるなどして、冷やし過ぎにより寒冷障害を起こせば、症状は悪化する。下記のように、アメリカの腰痛ガイドラインは、腰痛に対して、寒冷療法を推奨していない。
; 支持療法(コルセット、腰ベルト)
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; ペインクリニックによる神経ブロック
例えば椎間関節注射については、次の通りである。硬膜外注射やトリガーポイント注射についても、
*WHO: 椎間関節への注射は、鎮痛や機能改善の点で効果が認められない。椎間関節への注射は、感染、出血、神経損傷、化学的髄膜炎の原因となる。エックス線透視下で行えば、放射線被爆がおきる。<ref>[http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/66296/1/WHO_NCD_NCM_CRA_99.1.pdf?ua=1 Low back pain initiative] WHO p26 </ref>
*European Committee: 非特異的腰痛に対して、椎間関節腔にステロイドを注入することや、椎間関節の神経ブロックを行うことを、我々は推奨できない。<ref>[http://www.backpaineurope.org/web/files/WG2_Guidelines.pdf European Guidelines for the Management of Chronic Non-specific Low Back Pain] European Committee (p158-p177)</ref>
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労災申請したが労働基準監督署の確認作業に時間がかかる・労災申請したが認定されないなど、生活に困った場合は、居住地からの立ち退きを要求される前に、速やかに管轄の役所にて[[生活保護]]申請すべきである。生活保護制度には、治療費・交通費・医療器具代などが支払われる医療扶助制度がある。生活保護申請においては、仕事を探す意欲があることやボランティアが一緒であることなどが、効果的な場合もある。
==腰痛の疫学==
腰痛が1日以上続いて活動が制限されたというのは、よくある訴えである。<ref name=hoy_2012>{{cite journal |author=Hoy D, Bain C, Williams G, et al. |title=A systematic review of the global prevalence of low back pain |journal=Arthritis Rheum. |volume=64 |issue=6 |pages=2028–37 |date=June 2012 |pmid=22231424 |doi=10.1002/art.34347 |url=}}</ref> 世界的には、約40%の人が、一生のうちで一度は腰痛になるのであるが、<ref name=hoy_2012/>先進国では約80%の人が一度は腰痛になる。<ref name=malhotra_2011>{{cite book |author=Vinod Malhotra; Yao, Fun-Sun F.; Fontes, Manuel da Costa |title=Yao and Artusio's Anesthesiology: Problem-Oriented Patient Management |publisher=Lippincott Williams & Wilkins |location=Hagerstwon, MD |year=2011 |pages=Chapter 49 |isbn=1-4511-0265-8 |url=http://books.google.ca/books?id=qOhuwkoN15MC&pg=PT1390}}</ref> また、どの時点でも、9%から12%の人は、腰痛の症状を持っている。また、23.2%の人は、過去1ヶ月間に一度は腰痛があった。<ref name=hoy_2012/><ref name=vos_2012>{{cite journal|last=Vos|first=T|title=Years lived with disability (YLDs) for 1160 sequelae of 289 diseases and injuries 1990–2010: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2010.|journal=Lancet|date=15 December 2012|volume=380|issue=9859|pages=2163–96|pmid=23245607|doi=10.1016/S0140-6736(12)61729-2}}</ref> 腰痛が始まるのは、しばしば20歳から40歳である。<ref name=casazza_2012/>加齢するに従って、腰痛を持つ人の数は増加し、40歳から80歳では、腰痛はよくある症状となる。<ref name=hoy_2012/>
男性と女性とで、どちらが腰痛を持つ率が高いかについては、明瞭ではない。<ref name=hoy_2012/><ref name=vos_2012/>
==腰痛の歴史==
[[File:Harvey Cushing, Doris Ulmann 1920s.jpg|thumb|right|ハーベー・クッシング、1920年代]]
人類は、銅器時代以来、腰痛と共にあった。外科の論文として最古のものは、紀元前1500年ごろのもので、Edwin Smith Papyrusが、脊椎捻挫を診断するための検査について述べている。ヒポクラテス(紀元前460年-同370年)は、最初に坐骨神経痛や腰痛という言葉を使った。また、2世紀の中ごろから終盤にかけて活躍したガレンは、腰痛の概念についてやや詳しく記載した。人類の最初の千年の終わりごろまでは、医者は、背中の手術を試みることは無く、注意深く観察して待つように患者に勧めた。中世を通じて、実地医家は、腰痛は精神から生じるものと考えて医療を行った。<ref name=maharty_2012>{{cite journal |author=Maharty DC |title=The history of lower back pain: a look "back" through the centuries |journal=Prim. Care |volume=39 |issue=3 |pages=463–70 |date=September 2012 |pmid=22958555 |doi=10.1016/j.pop.2012.06.002 |url=}}</ref>
20世紀の初めには、医者は、腰痛が神経の炎症や神経のダメージによって生じると考えた。<ref name=maharty_2012/> その当時の医学論文には、神経炎や神経痛という言葉がよく出てくる。<ref name=lutz_2003>{{cite journal |author=Lutz GK, Butzlaff M, Schultz-Venrath U |title=Looking back on back pain: trial and error of diagnoses in the 20th century |journal=Spine |volume=28 |issue=16 |pages=1899–905 |date=August 2003 |pmid=12923482 |doi=10.1097/01.BRS.0000083365.41261.CF}}</ref>しかし20世紀の終わりごろには、腰痛がそのようにして起きるという考えを支持する人は少なくなった。<ref name=lutz_2003/> 20世紀の初めに、アメリカの脳神経外科医のハーベー・クッシングは、腰痛の外科的治療が世間に受容されることに貢献した。<ref name=manusov_2012_surg>{{cite journal |last=Manusov |first=EG |title=Surgical treatment of low back pain. |journal=Primary care |date=September 2012 |volume=39 |issue=3 |pages=525–31 |pmid=22958562 |doi=10.1016/j.pop.2012.06.010}}</ref> 1920年代から1930年代にかけて、腰痛の原因について、新しい考え方が現れた。医師たちは、神経系と精神的要因の組み合わせによって腰痛が生じるという考えを提案した。例えば、神経の弱さ(神経衰弱)や女性のヒステリーである。<ref name=maharty_2012/> 筋肉のリウマチ(現在は結合組織炎と呼ばれる)も、論文中に出てくる頻度が増した。<ref name=lutz_2003/>
エックス線写真のような新しい技術により、医師は診断のための新しい手段を手に入れた。エックス線写真は、あるケースでは、椎間板が腰痛の原因となることを明らかにした。1938年に整形外科医のJoseph S. Barrは、椎間板が関与する坐骨神経痛が、手術により改善したことを報告した。<ref name=lutz_2003/>この研究報告によって、1940年代には、腰痛の椎間板モデルが、支配的となり、<ref name=maharty_2012/> CTやMRIなどの新しい画像診断の援助を受けて、1980年代の文献の主流となった。<ref name=lutz_2003/> その後、椎間板のトラブルは腰痛の原因としては比較的まれであることが研究により明らかとなり、椎間板についての議論は下火となった。その時以来、医者は、多くのケースでは、腰痛の原因は特定されないことに気が付くようになり、また、たいていの場合には、治療の有無に関わらず、6週から12週以内に、痛みが治まることに気が付くようになった。<ref name=maharty_2012/>
==脚注==
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