「テレマークスキー」の版間の差分

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== テレマークスキー用具 ==
; ブーツ
: まず、踵を浮かせるため、テレマークブーツには一般の靴と同様に[[拇指球]]付近で屈曲することが求められる。プラスチックブーツでその問題をクリアすることは困難で、結果として登山靴に近く歩きやすい皮革製のブーツが長年にわたって用いられていた。しかし1993年、それまで皮革製テレマークブーツを生産していたイタリアのスカルパ (SCARPA) 社が、独自の屈曲構造を採用した世界初のプラスチック製テレマークブーツ、ターミネーターを発売。同じく老舗のガルモント (GARMONT) やクリスピー (CRISPI) も追随し、改良を重ねて完成度が高まってからはプラスチックブーツが主流となった。滑り主体の深く剛性が高いモデルから、歩き主体の浅く柔らかいモデルまで多数のバリエーションが出揃い、革靴は少数派となりつつある。
: テレマークブーツの一目で分かる特徴として、ビンディング取り付けのためコバが長く前方に突き出ていると、プラスチックブーツの場合屈曲可能にするため甲の部分を蛇腹状にしている挙げられる。
; 板
 
: 板も以前はアルペンスキーと明らかに異なり、細長く軽量な板が主流であった。しかし近年のプラスチックブーツの普及により滑りが高速化して板にも高い剛性やターン性能が求められるようになり、加ったうテレマークレースのスキー幅規定撤廃(後述)もあって短く幅広のカービング板が主流になりつつある。よって板だけを見ればアルペンスキーとの差はなくなってきており、新雪滑降用の[[ファットスキー]]などを中心にアルペン・テレマーク兼用の板も多く発売されている。また、[[サロモン]]などアルペン専業だったメーカーのテレマーク参入も続いている。
; 板:
; ビンディング
: 板も以前はアルペンスキーと明らかに異なり、細長く軽量な板が主流であった。しかし近年のプラスチックブーツの普及により滑りが高速化。板にも高い剛性やターン性能が求められるようになり、加えてテレマークレースのスキー幅規定撤廃(後述)もあって、短く幅広のカービング板が主流になりつつある。よって板だけを見ればアルペンスキーとの差はなくなってきており、新雪滑降用の[[ファットスキー]]などを中心にアルペン・テレマーク兼用の板も多く発売されている。また、[[サロモン]]などアルペン専業だったメーカーのテレマーク参入も続いている。
: そのような板とブーツとの間を取り持つ[[ビンディング]]は、アルミやステンレスの板を曲げただけのような軽量で非常にシンプル簡単な構造である。ビンディングから出ている3本のピンを靴底にある3所の穴に合わせ、コバの部分を上からクリップのように挟んで固定するだけの3ピン式と、コバをビンディング本体に差し込み、靴の周りを1周するケーブルで固定するケーブル式に分けられ、高剛性化しながらもスキー発祥時のスタイルを保ち続けている。最近では固定するケーブルを靴底側に配置したり、アルペンスキーのようにステップインで装着できたりするモデルも登場している。また、転倒時の負傷防止のためにセフティ(解放機構)を装備したモデルもあるが、モデルによっては重量増になるうえ、そもそもつま先しか固定しないテレマークスキーでは転倒時でも大きな怪我につながることは少ないので、さほど普及はしていない。セフティに限らず、便利でも構造の複雑なビンディングはそれだけ故障のリスクも高く、トラブルが[[遭難]]につながりかねない山岳スキーでは敬遠される傾向が強い。
 
; ビンディクライミングスキン
: 登行時には、クライミングスキン(一般に[[シール]]と呼ばれる)という毛羽だったテープ状のものをスキー板の底面に貼り付け、後方に滑らないようにする。シールはその名の通り[[アザラシ]]の毛皮でできており、前方へは極めて滑らかに滑走できるが後方へは強い抵抗を発生する。ただし現在では非常に入手困難になり、代用品として登場した[[モヘヤ]](アンゴラ山羊の毛)や、ナイロンなどの[[合成樹脂]]による製品が主流になっている。また、起伏の少ないルート用として、底面にうろこ状のギザギザ模様(ステップソール)が刻まれ、シールを装着しなくとも後方に滑らないように加工したスキーもある。
: そのような板とブーツとの間を取り持つ[[ビンディング]]は、アルミやステンレスの板を曲げただけのような軽量で非常にシンプルな構造である。ビンディングから出ている3本のピンを靴底にある3カ所の穴に合わせ、コバの部分を上からクリップのように挟んで固定するだけの3ピン式と、コバをビンディング本体に差し込み、靴の周りを一周するケーブルで固定するケーブル式に分けられ、高剛性化しながらもスキー発祥時のスタイルを保ち続けている。最近では固定するケーブルを靴底側に配置したり、アルペンスキーのようにステップインで装着できたりするモデルも登場している。また、転倒時の負傷防止のためにセフティ(解放機構)を装備したモデルもあるが、モデルによっては重量増になる上、そもそもつま先しか固定しないテレマークスキーでは転倒時でも大きな怪我につながることは少ないので、さほど普及はしていない。セフティに限らず、便利でも構造の複雑なビンディングはそれだけ故障のリスクも高く、トラブルが[[遭難]]につながりかねない山岳スキーでは敬遠される傾向が強い。
; ストック
 
; クライミングスキン:
: 登行時には、クライミングスキン(一般に[[シール]]と呼ばれる)という毛羽だったテープ状のものをスキー板の底面に貼り付け、後方に滑らないようにする。シールはその名の通り[[アザラシ]]の毛皮でできており、前方へは極めて滑らかに滑走できるが後方へは強い抵抗を発生する。ただし現在では非常に入手困難になり、代用品として登場した[[モヘヤ]](アンゴラ山羊の毛)や、ナイロンなどの[[合成樹脂]]による製品が主流になっている。また、起伏の少ないルート用として、底面にうろこ状のギザギザ模様(ステップソール)が刻まれ、シールを装着しなくとも後方に滑らないように加工したスキーもある。
 
; ストック:
: [[ストック (スキー)|ストック]]も山岳用になると独特の機能を持っている。雪面や状況に応じて長さが変えられ、いざという時には左右を繋げてゾンデ棒やテントのポールとしても使用できたり、滑落対策としてグリップ部にピッケルを装着できたりするモデルもある。また、ほとんどは深雪でも埋まらないように大きいリングを装着している。もっとも、ゲレンデでは安価で軽量なアルペンスキー用を使っているケースも多い。
 
このように用具はアルペンスキーとかなり異なるため、一般的なスキー用品店やスポーツ用品量販店でテレマークスキー用品を扱っている店舗は非常に少なく、登山用品店や山岳・テレマークスキー専門店でしか購入できない場合が多い。
 
一方、同じ踵が浮くノルディックスキーでも、クロスカントリースキーはより軽快に歩きやすくするために板は細く軽いものに進化し、スキージャンプは滑走時の加速と飛行時の揚力確保のために板は非常に長く幅広いものに進化してきたので、双方ともテレマークスキーとは大きく異なるものとなっている。また、双方ともターンの必要はないので板にエッジはなく、サイドカーブもつけられていない。
 
== 最近の傾向 ==