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[[File:Malloetako tontorrak.jpg|right|600px|thumb|北側から見たアララール山脈]]
'''アララーの龍'''(アララーのりゅう、Dragon of Aralar,Dragon of Aralar')とは、[[バスク国 (歴史的な領域)|バスク地方]]に伝わる[[竜]][[伝承]]である。'''アララールの竜'''とも。ここではアララー山の代表的な竜伝承「アララーの龍」と「サン・ミゲルと龍」の両方の伝承について記述する。なお参考文献を除き「竜」の表記で統一する。魔女と共に生きた竜を退治する話と贖罪の旅を続けた騎士が竜に出会い、天使ミカエルに求めたところ、ミカエルが退治した話の2つが残されている。
 
== アララーの竜 ==
[[File:Aralar.jpg|thumb|right|450px|チンドキ山から見たアララール山脈]]
若者が[[悪魔]]の捕虜になっていた。しかし、悪魔に従う獣たちに、死んだロバの肉を若者が均等に分けたので、悪魔に従う獣たちが感謝して捕虜である若者にお礼として[[魔法]]の力を与えた。その後、[[魔女]]と悪魔が集う集会の最中に、魔女が「貴方はいつ死ぬのですか」と悪魔に聞いた。この時悪魔は自身が死ぬ方法を配下の魔女らに教え、かつ事実上不可能であることを魔女らに伝えた。
 
若者は盗み聞きしたその内容を実行すべく悪魔の住処からこっそり抜け出し、アララー山地に行った。まず、竜に食われそうになった娘の居場所を突き止め、若者はまず魔法で[[ライオン]]に姿を変えて竜と戦った。竜は娘を捨て、[[洞窟]]に逃げたが、しかし油断して獲物を探すべく住処から出てきたところで若者に退治された。ライオンの姿のまま若者は竜の体を切り裂いて開けてみるとなんと竜の死骸から野うさぎが出て逃げていった。若者は今度はライオンから[[猟犬]]に変身し、猟犬の姿のまま野うさぎを切り裂いて殺した。すると今度は野うさぎの死骸の中から鳩が出てきた。若者は今度は「神と鷲」と呪文を唱え猟犬から鷲に変じた。鷲となった若者が鳩を切り裂くと鳩の死骸の中から卵が出た。若者は鷲から人間の姿に戻ってその卵を悪魔の住処に持っていった。
 
そして若者が悪魔の目の前に現れた。若者が見た悪魔は魔女が集う中で衰弱しきっていた。悪魔は若者を見て「私も殺されるだろう」と言ったという。実はその卵を悪魔の額にぶつけると悪魔が死ぬことを若者はあの集会でこっそり聞いていたのであった。
 
== サン・ミゲルと竜 ==
[[File:SAN MIGEL20.JPG|thumb|250px|サン・ミゲル教会]]
[[File:Teodosio kateak Aralar 2009.JPG|thumb|250px|サン・ミゲル教会にある『ゴニ』(鎖)]]
[[バスク自治州]][[ギプスコア県]][[w:en:Goierri|Goierri]]郡アタウン([[w:en:Ataun|Ataun]])<ref>アタウンは他にもシュガールという竜伝承がある。「[[シュガール]]」の項を参照の事</ref>というところにイラウンスゲ([[エレンスゲ]])が住んでいた。空腹になると村を荒らしまわったので村人の犠牲は増えるばかりだった。そこで毎日竜に生贄を差し出すことになった。若い娘が生贄に当たり竜が待っている洞窟の入り口付近にやって来た。
 
その当時、騎士のゴニがペンテンシア(贖罪のための苦行)をしようと、腰からぶら下げた大きな鎖を引きずり、鉄の靴が壊れるまで山を歩いていた<ref>中世社会では事故死などの過失致死罪その他で刑事罰が下るときに死刑ではなく贖罪のための巡礼などの刑に減刑される場合があった。</ref>。そこに高貴な騎士の姿に化けた悪魔がやってきた。高貴な騎士の姿に化けた悪魔は「靴と鎖を壊すにはお前の大便を刷り込め」とゴニに言った。ゴニは悪魔の助言の通りにしたが壊れたのは鉄の靴だけで鎖は壊れなかった。靴なしでゴニはさらにさまようこととなった。
 
さまよううちにゴニは偶然アララール山の竜の洞窟の前を通り、そこで生贄になっている娘を見つけた。騎士ゴニはさっそく娘を解放した。そこへ竜がやって来た。ゴニが伸ばしておいた鎖を竜は噛んで飲みこんだ。ゴニは聖ミカエルに向かって「助けて」と叫んだ。神はその声を聞き届け「ミカエル、お前を呼んでるぞ」と言った。するとミカエルは「あなた無しでは行けません」といった。こうして神を自分の頭上の載せてミカエルはアララー山へ降りて尖った剣で竜の首を切り、騎士ゴニの鎖も立ち切った。騎士ゴニの償いはここで終わった。それからその洞窟にはサン・ミゲル教会<ref>サン・ミゲル(San Miguel)=聖[[ミカエル]]という意味である。正式名称は「[[w:es:Santuario de San Miguel de Aralar|Santuario de San Miguel de Aralar]]」でありアララー山と深いかかわりを持つことがよくわかる。なお、「サン・ミゲル教会」という名称だけではスペイン語圏ではごくありふれた教会名である。</ref>が建てられたという。
 
== 補説 ==
[[File:Ganbora azken txanpa.JPG|thumb|250px|アララル山脈にあるガンボア山]]
アララルは[[バスク語]]で「山脈」を意味し、アララル([[w:en:Aralar Range|Aralar Range]])には魔物が棲んでいるとされている<ref>竹原威滋・丸山顯德編 「世界の龍の話」 三弥井書店、2002年、p. 205。参考文献の表記は「アララー」</ref>。
 
スペインの竜伝承では卵が武器になる説話が多い。「アララーの竜」は悪魔の額に卵をぶつけると死ぬという説話である<ref>卵なら何でもいいというわけではなくその卵は小さく、黄色身がなく特別な卵であるのがふつうである。</ref>。
 
== 脚注 ==
<references />
 
== 参考文献 ==