「阿Q正伝」の版間の差分

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『'''阿Q正伝'''』(あきゅうせいでん)は、[[中国]]の作家[[魯迅]]によって[[1921年]]から新聞『晨報』の週刊付録一章ずつ発表されたもので、魯迅唯一の[[中編小説]]である <ref name="takeuchi245">竹内(1955年)245ページ</ref>。阿Qという近代中国の一庶民を主人公とした、他に例を見ない物語として注目を集めた。
 
== 評価 ==
無知蒙昧阿Qという、おそらくはこれ以下は愚民の典型である架空ろう最下層中国の一庶民人間を主人公に設定し、権威それを縦横無尽は無抵抗で弱者はいじめ、現実の惨めさを口先で糊塗し思考で逆転活躍させることにより、巧みな布置滑稽な人物像を描き出し、に農村社会ひいては全体社会の最大さまざまな人間タイプ病理であった、民衆思考や行動無自覚と[[民度]]の低さ様式痛烈、浮き彫り告発した作品として評価されたいる<ref name="takeuchi245"/>。特にこの作品を気に入った[[毛沢東]]が談話でしばしば「阿Q精神」を引き合いに出したため、魯迅の名声が高まった<ref> [http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php?file_id=71890 毛沢東の魯迅評価]</ref>。後に中国の高校教科書に採用され、中国国民の多くが知っている小説である。また外国向けにも翻訳されている。
 
== あらすじ ==
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ある日、阿Qは村の金持ちである趙家の女中に劣情を催し、言い寄ろうとして逃げられた上に趙の旦那の怒りを買って村八分になり、仕事にもあぶれる。食うに困って盗みを働き、逃亡同然の生活を続ける。革命党が近くの町にやってきた事を耳にした彼は、意味もわからぬまま「革命」に便乗して騒いだ結果、革命派の趙家略奪に関与した無実の容疑で逮捕される。無知ゆえに筋道たてた弁明も出来ず、刑場に引き出された阿Qは銃殺されてしまう。
 
== 評価 ==
無知蒙昧な愚民の典型である架空の中国の一庶民を主人公に設定し、権威には無抵抗で弱者はいじめ、現実の惨めさを口先で糊塗し思考で逆転させる彼の滑稽な人物像を描き出し、中国社会の最大の病理であった、民衆の無自覚と[[民度]]の低さを痛烈に告発した作品として評価された。特にこの作品を気に入った[[毛沢東]]が談話でしばしば「阿Q精神」を引き合いに出したため、魯迅の名声が高まった<ref> [http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php?file_id=71890 毛沢東の魯迅評価]</ref>。後に中国の高校教科書に採用され、中国国民の多くが知っている小説である。また外国向けにも翻訳されている。
 
== 背景 ==
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== 阿Qの意味 ==
「阿Q」は便宜的な名として作者が設定した仮名である。「阿Q」という主人公の名前は奇妙に思えるが、中国南部<ref>魯迅は[[浙江省]]出身である。</ref>では、「阿」は姓の前につく[[接頭辞]]で親しみの表現であり、「―先生」と同様に、現在でも使われている単語である<ref>[http://www.excite.co.jp/dictionary/chinese_japanese/?search=%E9%98%BF&match=beginswith&id=1 デイリーコンサイス中日辞典 (三省堂)]</ref><ref>[http://www.ctrans.org/cjdic/search.php?word=%E9%98%BF&opts=fw 中日辞書 北辞郎]</ref>。従って、『阿Q正伝』は阿Qの情けない人物像にもかかわらず、「Qちゃんの伝記」といった意味になる。また「Q」という漢字文化圏ではあり得ない名前については、阿Qは人々から「阿Quei(あくい)」という音で呼ばれていたが、Queiの部分の漢字表記が分からないためやむをえず略称を用いる、と設定している。<ref>[[ピン音|拼音]]では「Q」はごく普通に用いられるが、発音は「チ」に似た子音である。この「Quei」はピン音表記ではない。</ref>
 
== 書誌情報 ==
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*『故郷/阿Q正伝』 魯迅 著 / 藤井省三 訳 / 2009年4月9日 光文社古典新訳文庫 / ISBN 978-4-334-75179-1
 
== 出典・脚注 ==
<references/>
 
== 参考文献 ==
* 魯迅作・竹内好訳『阿Q正伝・狂人日記』(1955年)岩波文庫所収、竹内好「『吶喊』について」
 
== 関連項目 ==