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ギフテッド

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これら知性面だけを取り上げて、ギフテッドは単純に学力やIQテストによって測定できる量的な違いであると信じられがちだが、一方で、ギフテッドは世界を知覚するのに一般人とは根本的な違いがあり、その違いが本人の人生経験すべてに影響している、とする説がある。過敏な神経による'''過度激動な反応'''('''OE'''。後述)が原因となって、社会や人生における出来事を一般人に比べて強く、深く、長く感じるという説である。この生理的な違いは、ギフテッドの子供が学校を卒業しようと、大人に成長しようと消えない。ギフテッドの大人はめったに特殊な人として扱われないが、高知能を持つ人間ならではの心理的、社会的、感情的な要求を持っているのである<ref>[http://www.hoagiesgifted.org/optimum_intelligence.htm Hoagies' Gifted: Optimum IQ: My Experience as a Too Gifted Adult (accessdate=2006-09-17)](英語版脚注)</ref>。
 
=== OE(Overexcitabilities、過度激動) ===
ギフテッドの人間には異常なほどの熱情、並外れた集中力、一般人とは一風変わったふるまいが見られる。これは[[注意欠陥・多動性障害|多動性障害]]、[[双極性障害]]、[[自閉症#自閉症の分類|自閉症スペクトラム]]やその他の心理的障害の兆候に似ているが、[[ギフテッド教育]]の専門家はドンブロフスキの「'''積極的な分離'''」([[w:en:Positive Disintegration]]) <ref name=SENG />という人格形成理論をしばしば引用する。積極的な分離理論の中核をなすのが、'''刺激に対する並ならない反応'''('''OE''' '''Overexcitabilities''' '''過度激動''')である。これは神経の感受性が増すことによって通常の人間よりも刺激を生理的に強く経験する性質であり、ギフテッドの特徴である。
 
否定的な分離とは、一般社会的な生き方から受動的・破滅的に離れてしまうことで、行為の主体性を喪失するため[[精神病]]や[[自殺]]を引き起こす可能性がある。それに対して積極的な分離とは、一般的な受身の人生から離れるべく、まず対象から主体的に分離し、物理的あるいは精神的な距離を置くことで、より広い視野を俯瞰し、強い知覚に基づく深い理解を形成し、より高いレベルの認識を求め続けることである。たとえば、一般社会に対してでさえ積極的分離と再融合を繰り返すギフテッドは、自己や世界の概念が徐々に変化しながらも少しずつ社会の矛盾を解きほぐし、問題を認識し、最終的に独創的な生き方のビジョンを得てその解決や克服、その実現を目指す。しかし、その分離過程では、常に、緊張、不安、気分的うつ、恥、罪悪感といった精神的苦痛を伴う。その自己の葛藤は、常に深い感情作用と連動しており、人生の要となる出来事から日常の内省行為まで、世の中がそうあるべき姿と現実世界とのギャップを思い知る強烈な機会となる。
 
ドンブロフスキは、短時間の単純な感情は人格の成長にあまり影響はなく、否定的感情も含めた激しい感情作用こそが人生を変えるような劇的な体験をもたらし、積極的な分離を起こすと考えた。つまり精神的苦痛は、個人が心理的により高いレベルへ成長するために不可欠であり、その深い感情作用を最大にもたらすものはOEである、と結論付けている。ギフテッドの子供が、OEという平均以上に敏感な精神状態にあることは、勉学や仕事で著しい成果をあげるだけでなく、日常におけるすべての活動においても精神に特異な反応を起こしていることを示す。つまりギフテッドは、誕生時より常に外界・内界両方からの刺激を増長した精神で感じ、激しく深い幅をもって経験し、内省を繰り返していることが、彼らの著しい成長に関連しているという説である。
 
ドンブロフスキはOEを次の5つの分野に区分けした。
# '''精神運動性OE''':一般的に「落ち着きがなく頭の回転が速い」印象を与えるもので、身体的多動だけでなく、話すスピードが速い、話が一気に飛躍する、頭が働いて眠れない、という精神的多動を示す。
# '''知覚性OE''':「神経質」という言葉で表される性質で、増長した知覚意識を持ち、まぶしい光、大きい音、匂い、触感など感覚器官に与えられた刺激に過剰に反応する。靴下の縫い目や服のラベルが気持ち悪かったり、隣室の時計の時を刻む音が気になって集中できない、などの例がある。鋭い感性は、幼少の頃から絶景に息を呑み、名曲に涙を流すといった美的感覚にも通ずる。
#'''想像性OE''':隠喩などの詩的表現に優れる。「注意力散漫」と見られ、「おとぎの国の住人」と揶揄されるほどの強い想像力をもつ。白昼夢を楽しみ、前夜見た夢にも過剰に反応する。いわゆる英語圏で言うところの、"think out of the box"(枠にとらわれない独創的な考え方)あるいは"think different"ができる能力として賞賛される資質である。
#'''知性OE''':一般に広く知られているギフテッドの特徴。知識とロジック、新しい意味を渇望し、疑問を追求し、理論的な分析や真実の探求を愛する。そのため高度な科学・ドキュメンタリー番組を好んで見たり、頭脳パズル、知覚・論理ゲームを好む。
#'''感情性OE''':[[感情の一覧|感情]]の種類と幅が大きく「ドラマチック」な反応を示す。より楽しみ、より悲しみ、より腹立ち、より驚き、より恐れ、より共感する。深く感情移入し、愛着心、責任感、自省意識も非常に強い。ある程度の人生経験を持つギフテッドには、相手の気持ちを鏡のようにリアルタイムで読取り、共感する人もいる。
 
どの分野のOEが強いかは個人差がある。たとえば、高い知覚性OEを持つギフテッドは外界からの刺激に対して非常に敏感であり、五感のいくつかが働きすぎて作業に集中できないため、混雑や混乱した環境を避けようとする。一方、知覚性OEが低く、妨害をすべて遮断して作業や思考に集中でき、むしろ五感への刺激が存在する只中に身を置くことを好み、その状況下で上手くやっていけるギフテッドもいる。OEが強いほど毎日の生活が強烈な体験となるが、特に想像性、知性、感情性において過剰に反応する人は、他人に比べて日常生活を深遠に体験し、人生の苦楽も激しく感じる。
 
==精神的、社会的な問題==
===OE(過度激動)に起因する問題===
ドンブロフスキは、強いOE([[#ギフテッドの特徴|前述]])を持つ人間は最高にハイな気分とどん底に沈み込む気分両方を味わう可能性があり、決して楽な人生ではないことを表して、OEを「悲劇的なギフト(天からの贈り物)」と呼んだ。
 
OEが強い場合、周囲のあらゆる刺激に過剰に反応してしまい、所属する集団から浮いてしまうことがある。例えば、感情の起伏が激しいことから気分屋、知覚が鋭く些細なことで不快になってしまうことから神経質、といった[[レッテル]]を貼られる([[ラベリング]])。また反応が表面化しない場合でも、普通であるべき行為が心から自然にできない、相手の感情・欲求・反応などを考えすぎるあまり行動に一貫性がなくなる、などの対人距離、反社会的反省に常に駆られ、状況を満足に楽しめないケースも多い。逆に、感情や五感への刺激を避けるために敢えて集団から離れていると、今度は人付き合いが悪いと非難される。それらの状況下で感じるあらゆる気分的うつ(慢性の[[うつ病]]とは異なる)や自己嫌悪といった否定的な感情も、OEゆえに必要以上に増幅され強く感じてしまうため、逃げ場を失う危険を内包する。
 
===気分的うつ===
ギフテッドと[[うつ病|慢性うつ病]]や[[自殺]]との関連性は、科学的には未だ証明されていない。レイスとレンズリの研究では次のように述べられている。「著述や視覚芸術に優れた独創的なギフテッドである青少年を除いては、ギフテッドの人間も一般人もうつ病に関する違いはない。ギフテッドは知覚能力が発達しており、他人よりも敏感で発達社会的に孤立し、発達状態にもむらがあるため社会的、精神的な問題にぶつかる。しかしながら、彼らのもつ高い問題解決能力、[[社会技能|ソーシャル・スキル]]、倫理判断、学校外の事物への関心、達成感といったものが助けとなっていると思われる」<ref name=renzulli /> また自殺率についても、ギフテッドとの関連性はいまだ証明されていない<ref>Neihart, M. (2002). Risk and Resilience in Gifted Children: A Conceptual Framework. In M. Neihart, S. Reis, N. M. Robinson, & S. M. Moon (Eds.) ''The Social and Emotional Development of Gifted Children.'' (pp. 113-124). Waco, Texas: [http://www.prufrock.com/ Prufrock Press, Inc.](英語版脚注)</ref>。
 
しかし、ギフテッドの人間が気分的にうつ状態に陥ることが多いことは、過去から広く認知されている。死の終局、根本的な個人個人の取るに足らない存在、人生の意味や意味の欠如といった抽象的な心配ごとが引き金となり、他人より不安を感じやすいという性質もうつ状態に拍車をかけている<ref>[http://www.sengifted.org/articles_counseling/Ellsworth_AdolescenceAndGiftedAddressingExistentialDread.shtml SENG: Articles & Resources - Adolescence and gifted: Addressing existential dread (accessdate=2006-09-17)](英語版脚注)</ref>。
 
===孤立===
ギフテッドはOE([[#ギフテッドの特徴|前述]])に起因する少し変わった行動をとる、同世代の子供達と精神年齢や興味が異なり話が合わないといった理由で、気の合う友達がみつからなかったり、他の子供から[[疎外]]されることもある。外界からの刺激を嫌うためや、人生をより真摯に受け止めるがゆえに内向性を持ち頻繁に内省するために、ギフテッド自身が一人でいることを選ぶ場合もある。
 
特にギフテッド仲間の[[社会的ネットワーク]]を持たない者にとって、[[孤立]]は一番の問題である。他人に好かれ、認められようと、ギフテッドの子供はしばしば自分の能力を隠そうとする。低達成児となったり、家族や信頼できる人といる時に使う高尚な言葉とは異なり、同級生といる時は簡単な言葉を使うようにするといった、本当の自分とは異なる姿を演じる<ref>Swiatek, M. A. (1995). An Empirical Investigation Of The Social Coping Strategies Used By Gifted Adolescents. [http://www.nagc.org/index.aspx?id=163 ''Gifted Child Quarterly], 39,'' 154-160.(英語版脚注)</ref>。これはギフテッドの女性により多く見られる傾向である。
 
孤立は、必ずしもギフテッドであることが原因ではなく、社会のギフテッドに対する考えにも起因する。社会において人は「ふつう」でなければならないという多大な心理的負担がある。ギフテッドやタレンテッドの人間は、変わり者という烙印を押されたり<ref>Plucker, J. A., & Levy, J. J., (2001). The Downside of Being Talented [Electronic version]. ''American Psychologist, 56,'' 75-76.(英語版脚注)</ref>、 [[いじめ]]の対象になったりし、自己嫌悪や自己卑下する可能性もある。この孤立問題を解決するために、ギフテッド教育の専門家は共通した興味や能力に基づいたギフテッド達でグループを作ることを薦めている。グループに参加する時期が早いほど、孤立を避けられる<ref>Robinson, N. M. (2002). Introduction. In M. Neihart, S. M. Reis, N. M. Robinson, & S. M. Moon (Eds.) ''The Social and Emotional Development of Gifted Children.'' Waco, Texas: [http://www.prufrock.com/ Prufrock Press, Inc.], Lardner, C. (2005) "School Counselors Light-Up the
Intra- and Inter-Personal Worlds of Our Gifted" as found on the World Wide Web at http://www.hoagiesgifted.org/light_up_the_world.htm.(英語版脚注)</ref>。
 
欧米には[[ギフテッド教育]]を施す私立校がある。アメリカ合衆国の場合、公立や進学校を含めた他の私立からギフテッド専門の私立校へ転校する子供も多い。専門私立校は公立のギフテッド・プログラムとは異なる選考基準を設けるところもある。卒業生が[[アイビー・リーグ]]などの名門大学に進む学校も多いが、ギフテッド専門校は進学校ではなく、あくまでもギフテッドである生徒のニーズにきめ細かく応えることができる学校である。そこでは、ギフテッドの子供が、本来の自分のままでいながらにその才能を最大限に咲かせられることを最優先にしている。ギフテッド専門校に通ってようやく話が通じる仲良しの友達ができた、「普通の人」を演じる必要がなくなった、というような広義の意味での[[クオリティ・オブ・ライフ]](人生の質)の向上に力を入れる。一般的にギフテッド専門私立校は授業料が高く、ごく一部の恵まれた子供しか通うことができない。
通常ギフテッド教育を受けるには知能指数や学力試験で選抜され、素行の良さも必要とされるため、子供がギフテッド・プログラムに選ばれて嫌がる親はいない。実際ギフテッドを鼻にかける親も存在する。しかしギフテッドの子供にとって最適の育児・教育法を暗中模索する親は、時にはギフテッドではなく通常クラスに入れたり、状況が許せば[[私立]]や[[ホームスクーリング]]を選ぶこともある。子供の才能を見逃さず最大限に伸ばす方法を考え、常に旺盛で衝動的な知的好奇心を満たす学習課題を与え、激しい感情の波のコントロールを教え、得意分野だけでなくバランスのとれた教養をめざし、高慢にならず、被害妄想を膨らませず、社会で孤立しないよう育てようとする。子供の独創性や独立精神を尊重しながらも、豊かで幸せな人生が送れるよう心をくだいているのである。しかしギフテッドの子供についての悩みは、他人には自慢話や贅沢な文句にしか聞こえず、親自身が孤立することもある。ギフテッドの親も、本人同様、似た立場にある者同士の交流が必要である。
 
== 優秀な子供とギフテッドの比較 ==
 
ギフテッドは、遺伝により生まれ持った特質な資質と環境との相互作用によるものであるが<ref>Plomin, R., & Price, T. S. (2003). The relationship between genetics and intelligence. In N. Colangelo & G. A. Davis (3rd Ed.) Handbook of Gifted Education (pp. 113-123). Pearson Education, Inc.</ref>、幼少期から教育熱心な親と特別な教育方法と本人の一生懸命な学習努力で優れた成績を収める優秀な生徒とは一線を画すると謂われている。ギフテッドは授業中、深さ、意味、速さ、創造性を絶え間なく必要とするため、一般的な授業を退屈に感じている可能性がある。
 
{| class="wikitable sortable"
|-
! 優秀な子供(Bright Child) !! ギフテッド(Gifted Child)<ref>Bright Child vs. Gifted Learner by Janice Szabos, Challenge Magazine,1989, Issue 34</ref><ref>http://www.psychologytoday.com/blog/gifted-ed-guru/201201/the-bright-child-vs-the-gifted-learner-whats-the-difference</ref>
|-
| 答えを知ってる || 質問する
|-
| 反復6-8回で修得する  || 反復1-2回で修得する
|-
| 質問に答える || 詳細を討論する、話をそこから展開できる / 質問に疑問をもつ
|-
| 成績はトップグループ || グループ枠を超えた成績
|-
| アイディアを理解できる|| 抽象化思考ができる
|-
| 興味を示す || 非常に好奇心が強い
|-
| 一生懸命に努力する  || 遊びながら、集中力に欠けたり、でもよい成績をとる 
|-
| 同学年の生徒といるのを好む  || 大人や年上の生徒といるのを好む
|-
| よい暗記力  || よい推測力
|-
| よいアイディア  || 常識外れたアイディア(とっぴな、ばかげたアイディア)
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| 簡単に学ぶ  || 退屈、すでに答えを知ってる
|-
| 学校が好き || 学ぶことが好き(でも学校は好きではない)
|-
| 受容的  || 真剣、情熱的
|-
| 自己満足する(正解した時) || 厳しい自己評価(完璧主義)
|-
| 精巧に真似ができる || 新しいデザインを創造する
|-
| 興味を持って聞く || 強い情感と意見を表す
|-
| 単純で順序立てたやり方を好む || 複雑さを求める 
|-
|注意深い || 心身ともに熱中、没頭する
|-
|}
 
==二重に例外的な場合==
 
[[アメリカ合衆国教育省]]は、ギフテッド教育はギフテッドの子供自身だけでなく国家のためにも必要であるという見解を示した。[[1993年]]発表のギフテッド・タレンテッド教育方針書では、その序章において「国際競争力をつけ、経済的に大きく成長するために、アメリカ国家は最高レベルの学生達に頼らなければならない。この多くの学生達は数学、科学、文筆、政治、舞踏、美術、ビジネス、歴史、心と体の健康、その他の分野においても、将来リーダーシップを取る人材となるからである」と述べられている。
 
==誤診の問題==
日本の現状は、ギフテッドの社会認知がいまだ希薄である。
 
ギフテッド教育がさかんな諸国では、ギフテッドが、[[発達障害]]、[[注意欠陥・多動性障害]](ADHD)や[[自閉症]]、[[強迫性障害]]、[[アスペルガー症候群]]、[[気分障害]] の[[気分変調性障害]]、 [[鬱]]、[[双極性障害]]などに[[誤診]]され社会問題となっており、注意が呼びかけられている。
 
一般的なギフテッドの社会認知は進んでいても、医療関係者や教育者のギフテッドに関する知識不足によりギフテッドが誤診されやすい傾向が指摘されている。
 
不必要な[[処方薬]]の摂取は、ギフテッドの才能や能力を鎮圧させてしまう。薬の摂取をやめ、教育などで知的深究心を満たさせると誤診された症状が改善するという報告もある<ref>Misdiagnosis and Dual Diagnoses of Gifted Children and Adults: ADHD, Bipolar, Ocd, Asperger's, Depression, and Other Disorders by James T. Webb.Edward R. Amend, Nadia E. Webb and Jean Goerss. Great Potential Press, Inc., Jan 1, 2005 - Family & Relationships</ref>。
 
==脚注==
* [[w:en:Positive Disintegration]](英語版ウィキペディア January 18, 2007 20:14 UTC版)
* [[積極的分離理論]]
* [[カジミェシュ・ドンブロフスキ]]
 
== 外部リンク ==
* [http://gifted.main.jp/about_gifted.htm 特定非営利活動法人日本ギフテッド協会 「ギフテッドとは?」]
* [http://borntoexplore.org/gifted.htm Gifted or ADD?]
* [http://www.nichibun-g.co.jp/library/sei-kyoshitsu/037/s370104.htm 日本文教出版 日文の生活科教室 No.37 『アメリカにおける能力別グループ指導』]
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