メインメニューを開く

差分

ギフテッド

9,622 バイト除去, 2 年前
編集の要約なし
これら知性面だけを取り上げて、ギフテッドは単純に学力やIQテストによって測定できる量的な違いであると信じられがちだが、一方で、ギフテッドは世界を知覚するのに一般人とは根本的な違いがあり、その違いが本人の人生経験すべてに影響している、とする説がある。過敏な神経による'''過度激動な反応'''('''OE'''。後述)が原因となって、社会や人生における出来事を一般人に比べて強く、深く、長く感じるという説である。この生理的な違いは、ギフテッドの子供が学校を卒業しようと、大人に成長しようと消えない。ギフテッドの大人はめったに特殊な人として扱われないが、高知能を持つ人間ならではの心理的、社会的、感情的な要求を持っているのである<ref>[http://www.hoagiesgifted.org/optimum_intelligence.htm Hoagies' Gifted: Optimum IQ: My Experience as a Too Gifted Adult (accessdate=2006-09-17)](英語版脚注)</ref>。
 
=== OE(Overexcitabilities、過度激動) ===
ギフテッドの人間には異常なほどの熱情、並外れた集中力、一般人とは一風変わったふるまいが見られる。これは[[注意欠陥・多動性障害|多動性障害]]、[[双極性障害]]、[[自閉症#自閉症の分類|自閉症スペクトラム]]やその他の心理的障害の兆候に似ているが、[[ギフテッド教育]]の専門家はドンブロフスキの「'''積極的な分離'''」([[w:en:Positive Disintegration]]) <ref name=SENG />という人格形成理論をしばしば引用する。積極的な分離理論の中核をなすのが、'''刺激に対する並ならない反応'''('''OE''' '''Overexcitabilities''' '''過度激動''')である。これは神経の感受性が増すことによって通常の人間よりも刺激を生理的に強く経験する性質であり、ギフテッドの特徴である。
 
否定的な分離とは、一般社会的な生き方から受動的・破滅的に離れてしまうことで、行為の主体性を喪失するため[[精神病]]や[[自殺]]を引き起こす可能性がある。それに対して積極的な分離とは、一般的な受身の人生から離れるべく、まず対象から主体的に分離し、物理的あるいは精神的な距離を置くことで、より広い視野を俯瞰し、強い知覚に基づく深い理解を形成し、より高いレベルの認識を求め続けることである。たとえば、一般社会に対してでさえ積極的分離と再融合を繰り返すギフテッドは、自己や世界の概念が徐々に変化しながらも少しずつ社会の矛盾を解きほぐし、問題を認識し、最終的に独創的な生き方のビジョンを得てその解決や克服、その実現を目指す。しかし、その分離過程では、常に、緊張、不安、気分的うつ、恥、罪悪感といった精神的苦痛を伴う。その自己の葛藤は、常に深い感情作用と連動しており、人生の要となる出来事から日常の内省行為まで、世の中がそうあるべき姿と現実世界とのギャップを思い知る強烈な機会となる。
 
ドンブロフスキは、短時間の単純な感情は人格の成長にあまり影響はなく、否定的感情も含めた激しい感情作用こそが人生を変えるような劇的な体験をもたらし、積極的な分離を起こすと考えた。つまり精神的苦痛は、個人が心理的により高いレベルへ成長するために不可欠であり、その深い感情作用を最大にもたらすものはOEである、と結論付けている。ギフテッドの子供が、OEという平均以上に敏感な精神状態にあることは、勉学や仕事で著しい成果をあげるだけでなく、日常におけるすべての活動においても精神に特異な反応を起こしていることを示す。つまりギフテッドは、誕生時より常に外界・内界両方からの刺激を増長した精神で感じ、激しく深い幅をもって経験し、内省を繰り返していることが、彼らの著しい成長に関連しているという説である。
 
ドンブロフスキはOEを次の5つの分野に区分けした。
# '''精神運動性OE''':一般的に「落ち着きがなく頭の回転が速い」印象を与えるもので、身体的多動だけでなく、話すスピードが速い、話が一気に飛躍する、頭が働いて眠れない、という精神的多動を示す。
# '''知覚性OE''':「神経質」という言葉で表される性質で、増長した知覚意識を持ち、まぶしい光、大きい音、匂い、触感など感覚器官に与えられた刺激に過剰に反応する。靴下の縫い目や服のラベルが気持ち悪かったり、隣室の時計の時を刻む音が気になって集中できない、などの例がある。鋭い感性は、幼少の頃から絶景に息を呑み、名曲に涙を流すといった美的感覚にも通ずる。
#'''想像性OE''':隠喩などの詩的表現に優れる。「注意力散漫」と見られ、「おとぎの国の住人」と揶揄されるほどの強い想像力をもつ。白昼夢を楽しみ、前夜見た夢にも過剰に反応する。いわゆる英語圏で言うところの、"think out of the box"(枠にとらわれない独創的な考え方)あるいは"think different"ができる能力として賞賛される資質である。
#'''知性OE''':一般に広く知られているギフテッドの特徴。知識とロジック、新しい意味を渇望し、疑問を追求し、理論的な分析や真実の探求を愛する。そのため高度な科学・ドキュメンタリー番組を好んで見たり、頭脳パズル、知覚・論理ゲームを好む。
#'''感情性OE''':[[感情の一覧|感情]]の種類と幅が大きく「ドラマチック」な反応を示す。より楽しみ、より悲しみ、より腹立ち、より驚き、より恐れ、より共感する。深く感情移入し、愛着心、責任感、自省意識も非常に強い。ある程度の人生経験を持つギフテッドには、相手の気持ちを鏡のようにリアルタイムで読取り、共感する人もいる。
 
どの分野のOEが強いかは個人差がある。たとえば、高い知覚性OEを持つギフテッドは外界からの刺激に対して非常に敏感であり、五感のいくつかが働きすぎて作業に集中できないため、混雑や混乱した環境を避けようとする。一方、知覚性OEが低く、妨害をすべて遮断して作業や思考に集中でき、むしろ五感への刺激が存在する只中に身を置くことを好み、その状況下で上手くやっていけるギフテッドもいる。OEが強いほど毎日の生活が強烈な体験となるが、特に想像性、知性、感情性において過剰に反応する人は、他人に比べて日常生活を深遠に体験し、人生の苦楽も激しく感じる。
 
==精神的、社会的な問題==
===OE(過度激動)に起因する問題===
ドンブロフスキは、強いOE([[#ギフテッドの特徴|前述]])を持つ人間は最高にハイな気分とどん底に沈み込む気分両方を味わう可能性があり、決して楽な人生ではないことを表して、OEを「悲劇的なギフト(天からの贈り物)」と呼んだ。
 
OEが強い場合、周囲のあらゆる刺激に過剰に反応してしまい、所属する集団から浮いてしまうことがある。例えば、感情の起伏が激しいことから気分屋、知覚が鋭く些細なことで不快になってしまうことから神経質、といった[[レッテル]]を貼られる([[ラベリング]])。また反応が表面化しない場合でも、普通であるべき行為が心から自然にできない、相手の感情・欲求・反応などを考えすぎるあまり行動に一貫性がなくなる、などの対人距離、反社会的反省に常に駆られ、状況を満足に楽しめないケースも多い。逆に、感情や五感への刺激を避けるために敢えて集団から離れていると、今度は人付き合いが悪いと非難される。それらの状況下で感じるあらゆる気分的うつ(慢性の[[うつ病]]とは異なる)や自己嫌悪といった否定的な感情も、OEゆえに必要以上に増幅され強く感じてしまうため、逃げ場を失う危険を内包する。
 
===気分的うつ===
ギフテッドと[[うつ病|慢性うつ病]]や[[自殺]]との関連性は、科学的には未だ証明されていない。レイスとレンズリの研究では次のように述べられている。「著述や視覚芸術に優れた独創的なギフテッドである青少年を除いては、ギフテッドの人間も一般人もうつ病に関する違いはない。ギフテッドは知覚能力が発達しており、他人よりも敏感で発達社会的に孤立し、発達状態にもむらがあるため社会的、精神的な問題にぶつかる。しかしながら、彼らのもつ高い問題解決能力、[[社会技能|ソーシャル・スキル]]、倫理判断、学校外の事物への関心、達成感といったものが助けとなっていると思われる」<ref name=renzulli /> また自殺率についても、ギフテッドとの関連性はいまだ証明されていない<ref>Neihart, M. (2002). Risk and Resilience in Gifted Children: A Conceptual Framework. In M. Neihart, S. Reis, N. M. Robinson, & S. M. Moon (Eds.) ''The Social and Emotional Development of Gifted Children.'' (pp. 113-124). Waco, Texas: [http://www.prufrock.com/ Prufrock Press, Inc.](英語版脚注)</ref>。
 
しかし、ギフテッドの人間が気分的にうつ状態に陥ることが多いことは、過去から広く認知されている。死の終局、根本的な個人個人の取るに足らない存在、人生の意味や意味の欠如といった抽象的な心配ごとが引き金となり、他人より不安を感じやすいという性質もうつ状態に拍車をかけている<ref>[http://www.sengifted.org/articles_counseling/Ellsworth_AdolescenceAndGiftedAddressingExistentialDread.shtml SENG: Articles & Resources - Adolescence and gifted: Addressing existential dread (accessdate=2006-09-17)](英語版脚注)</ref>。
 
===孤立===
18
回編集