「ニホンウナギ」の版間の差分

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== 特徴 ==
成魚は全長1 m、最大で1.3 mほどになる。細長い体形で、体の断面は円形である。[[目|眼]]は丸く、口は大きい。体表は粘膜に覆われぬるぬるしているが、皮下に小さな[[鱗]]を持つ<ref name="atamagayokunaruosakanazatsugakudaijiten_p130"> おさかな雑学研究会 『頭がよくなる おさかな雑学大事典』 p.130 幻冬舎文庫 2002年 ISBN 9784344402942</ref>。[[腹鰭]]はなく、[[背びれ|背鰭]]、[[尾びれ|尾鰭]]、[[臀鰭]]が繋がって体の後半部に位置している。体色は背中側が黒く、腹側は白いが、野生個体には背中側が青緑色や灰褐色、腹側が黄色の個体もいる。また、[[産卵]]のため海に下った成魚は背中側が黒色、腹側が銀白色になる[[婚姻色]]を生じ、胸鰭が大きくなる。
 
成魚が生息するのは[[川]]の中流から下流、[[河口]]、[[湖]]などだが、内湾にも生息している。細長い体を隠すことができる砂の中や岩の割れ目などを好み、日中はそこに潜んでじっとしている。[[夜行性]]で、夜になると餌を求めて活発に動き出し、[[甲殻類]]や[[水生昆虫]]、[[カエル]]、小魚などいろいろな小動物を捕食する。[[えら]]の他に[[皮膚]]でも[[呼吸]]できるため、体と周囲が濡れてさえいれば陸上でも生きられる。雨の日には生息域を抜け出て他の離れた水場へ移動することもあり、路上に出現して人々を驚かせることもある。濡れていれば切り立った絶壁でも体をくねらせて這い登るため、「[[うなぎのぼり]]」という[[比喩]]の語源となっている。
 
== 生態 ==
従来、長らく正確な産卵場所は不明で[[フィリピン海溝]]付近の東方海域とされたが、外洋域の[[深海]]ということもあり長年にわたる謎であった。しかし、[[2006年]]2月、海洋生物魚類の[[塚本勝巳]]らの研究チームが、ニホンウナギの産卵場所が[[グアム島]]や[[マリアナ諸島]]の西側沖のマリアナ[[海嶺]]の[[スルガ海山]]付近であることを、ほぼ突き止めた<ref>[http://doi.org/10.2331/suisan.72.350 ウナギ回遊生態の解明] 日本水産学会誌 Vol.72 (2006) No.3 P350-356 (平成 17年度日本水産学会賞受賞)</ref>。これは孵化後2日目の仔魚を多数採集することに成功し、その[[遺伝子]]を調べニホンウナギであることを確認したものである<ref name="suisan.78.316">読売新聞夕刊2008年8月18塚本勝巳、[http://doi.org/10.2331/suisan.78.316 天然ウナギ卵発見の道] 本水産学会誌 Vol.78 (2012) No.2 P316-319</ref><ref>Katsumi Tsukamoto, [http://www.nature.com/nature/journal/v439/n7079/abs/439929a.html Oceanic biology: Spawning of eels near a seamount.] Nature 439, 929 (23 February 2006), {{doi|10.1038/439929a}}</ref>これにより、「冬に産卵するという従来かつての説は誤りとされ、現在は6-7月の新月の日に一斉に産卵すで有という説有力である明確になった
 
[[2008年]]6月および8月には、水深が2,000m以上もある西マリアナ海嶺南部海域で[[水産庁]]と[[水産総合研究センター]]による調査チームが成熟したニホンウナギおよびオオウナギの捕獲に世界で初めて成功した<ref name="suisan.78.316"/><ref>黒木洋明、[http://doi.org/10.2331/suisan.76.446 ウナギ親魚捕獲の現場] 日本水産学会誌 Vol.76 (2010) No.3 P446-448</ref>。トロールの曳網水深は200-300mであった。雄には成熟した精巣が、雌には産卵後と推定される収縮した卵巣が認められた。また、水深100-150 mの範囲で、孵化後2-3日経過したと思われる仔魚([[プレレプトケファルス]])26匹も採集された。さらに、プレレプトケファルスが生息する層の水温が、摂氏26.5-28度であることを初めて確認した<ref>[http://www.springerlink.com/content/d034287351066298/fulltext.pdf?MUD=MP Discovery of mature freshwater eels in the open ocean(英文)]Fisheries Science </ref><ref name="suisan.78.316"/>。同チームは2009年の調査においてさらに南方の海域で8個体(雌4、雄4)のニホンウナギと2個体(雌1、雄1)のオオウナギを捕獲した。トロールの曳網水深は150-300mであり、周辺には海山のような浅場はなかった<ref>[http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr21/210707/ ウナギの産卵生態調査の結果について] [[水産総合研究センター]] </ref>。これの結果から、海山上に生息しているわけではなく中層を遊泳しながら産卵をしていると考えられる<ref name="suisan.78.316"/>
 
この推定を基に、塚本らの研究チームが周辺海域をさらに調査したところ、[[2009年]][[5月22日]]未明、マリアナ海嶺の南端近くの水深約160メートル、水温が摂氏約26度の海域で、直径約1.6 mmの受精卵とみられるものを発見。遺伝子解析の結果、天然卵31個を確認した<ref name="suisan.78.316"/>。天然卵の採集は世界初である。同時に、卵は水深約200 mで産まれ、約30時間かけてこの深さまで上がりながら孵化することも判明した<ref>[http://www.nature.com/ncomms/journal/v2/n2/full/ncomms1174.html Oceanic spawning ecology of freshwater eels in the western North Pacific(英文)] ネイチャー・コミュニケーションズ電子版 2011年2月1日付、同日閲覧</ref>。さらに同チームでは、[[2011年]][[6月29日]]学術研究船[[白鳳丸]]に搭載した[[プランクトンネット]]を用いて、産卵直後から2日程度経過した147個の受精卵の採取に成功した。[[新月]]の2-4日程度前の日没から23時の間、水深150-180 mで産卵されたと推定される。
 
卵から2-3日で孵化した仔魚は'''[[レプトケファルス]]'''(葉形[[幼生]]、Leptocephalus)と呼ばれ、成魚とは異なり[[柳]]の[[葉]]のような形をしている。この体型はまだ遊泳力のない仔魚が、海流に乗って移動するための浮遊適応であると考えられている。2012年11月、[[海洋研究開発機構]]と[[東京大学大気海洋研究所]]のチームは、分析により天然ウナギの幼生が「[[マリンスノー]]」を栄養源としていることを確認したと発表した<ref>{{cite journal|author=Michael J. Miller, Yoshito Chikaraishi, Nanako O. Ogawa, Yoshiaki Yamada, Katsumi Tsukamoto and Naohiko Ohkouchi|title=A low trophic position of Japanese eel larvae indicates feeding on marine snow|journal=Biol. Lett.|year=2012|doi=10.1098/rsbl.2012.0826}}</ref>。
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== 脚注 ==
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== 関連項目 ==