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'''政治的行為'''('''せいじてきこうい''')とは、一般職の[[国家公務員]]に対して禁止されている政治活動の行動類型をいう。また、その禁止される政治活動の行動類型を定めた[[人事院規則]]14-7の副題でもある。
 
== 概 ==
[[国家公務員法]]第102条は、一般職の国家公務員に対して、次のように政治的行為の制限を定めており、同条第1項いる。
#職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与」すし、あことを禁じてるほか、「選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない」と規定している。人事院規則14-7(政治的行為)は、この国家公務員法第102条第1項の委任を受けて定められたものである
#職員は、公選による公職の候補者となることができない。
#職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。
 
そして、国家公務員法第102条第1項の委任を受けて人事院規則14-7(政治的行為)が定められており、同規則第6項は、17に及ぶ政治的行為を規定している。
人事院規則14-7第6項により、17に及ぶ政治的行為の類型が規定されている。同項の規定は限定列挙であり、同項に定められている行為以外の行為による政治活動は制限されない。また、同項第5号ないし第7号に定める行為を除き、いずれも「政治的目的」があることが要件とされているが、その内容は同規則第5項により8つの類型に限定されているため、実際は第5項「政治的目的」と第6項「政治的行為」によって二重にその適用範囲を絞る形式を採用している。もっとも、同規則第1項は、その政治的行為の禁止又は制限に関する規定は、臨時的任用、条件付任用、休暇、休職、停職中を問わず、原則としてすべての一般職に属する職員に対して適用されること、第2項は職員が公然又は内密に職員以外の者と共同して行う場合にも適用されること、第3項は代理人や使用人等を通じて間接に行う場合にも適用されること、第4項は第6項16号の行為(腕章等の着用)を除いて職員の勤務時間外の行為にも適用されることを定めており、その禁止又は制限は一律かつ広範囲にわたっている。
#政治的目的のために職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること
#政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し又は提供せずその他政治的目的をもつなんらかの行為をなし又はなさないことに対する代償又は報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て又は得させようとすることあるいは不利益を与え、与えようと企て又は与えようとおびやかすこと
#政治的目的をもって、賦課金、寄附金、会費又はその他の金品を求め若しくは受領し又はなんらの方法をもってするを問わずこれらの行為に関与すること
#政治的目的をもって、前号に定める金品を国家公務員に与え又は支払うこと
#政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し若しくはこれらの行為を援助し又はそれらの団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となること
#特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること
#政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること
#政治的目的をもって、第5項1号に定める選挙、同項第2号に定める国民審査の投票又は同項第8号に定める解散若しくは解職の投票において、投票するように又はしないように勧誘運動をすること
#政治的目的のために署名運動を企画し、主宰し又は指導しその他これに積極的に参与すること
#政治的目的をもって、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し若しくは指導し又はこれらの行為を援助すること
#集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること
#政治的目的を有する文書又は図画を国、特定行政法人又は日本郵政公社の庁舎、施設等に掲示し又は掲示させその他政治的目的のために国、特定行政法人又は日本郵政公社の庁舎、施設、資材又は資金を利用し又は利用させること
#政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること
#政治的目的を有する演劇を演出し若しくは主宰し又はこれらの行為を援助すること
#政治的目的をもって、政治上の主義主張又は政党その他の政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これらに類するものを製作し又は配布すること
#政治的目的をもって、勤務時間中において、前号に掲げるものを着用し又は表示すること
#なんらの名義又は形式をもってするを問わず、前各号の禁止又は制限を免れる行為をすること
これらの規定は限定列挙であり、同項に定められている行為以外の行為による政治活動は制限されない。また、第5号ないし第7号を除く規定中の「政治的目的」とは、同規則第5項に掲げる次の8つの内容に限定されている。
#規則14-5に定める公選による公職の選挙において、特定の候補者を支持し又はこれに反対すること
#最高裁判所の裁判官の任命に関する国民審査に際し、特定の裁判官を支持し又はこれに反対すること
#特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること
#特定の内閣を支持し又はこれに反対すること
#政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対すること
#国の機関又は公の機関において決定した政策の実施を妨害すること
#地方自治法に基づく地方公共団体の条例の制定若しくは改廃又は事務監査の請求に関する署名を成立させ又は成立させないこと
#地方自治法に基く地方公共団体の議会の解散又は法律に基く公務員の解職の請求に関する署名を成立させ若しくは成立させず又はこれらの請求に基く解散若しくは解職に賛成し若しくは反対すること
このように、人事院規則の定める政治的行為は、同規則第5項「政治的目的」と同規則第6項「政治的行為」の双方に該当しない限りこれに当たらないことになる(第6項第5号ないし第7号の行為を除く。)。
 
人事院もっとも、同規則14-7第6項により、17に及ぶ政治的行為の類型が規定されている。同項の規定限定列挙であり同項に定められている行為以外の行為による主要な政治活動は制限されない。また、同項第5号ないし第7号に定める行為を除き、いずれも「政治的目的」があることが要件とされているが、その内容は同規則第5項により8つの類型に限定されているため、実際は第5項「政治的目的」と第6項「政治的行為」によって二重にその適用範囲絞る形式を採用ほぼ網羅している。もっとも同規則第1項は、その政治的行為の禁止又は制限に関する規定は、臨時的任用、条件付任用、休暇、休職、停職中を問わず、原則としてすべての一般職に属する職員に対して適用されること、第2項は職員が公然又は内密に職員以外の者と共同して行う場合にも適用されること、第3項は代理人や使用人等を通じて間接に行う場合にも適用されること、第4項は第6項16号の行為(腕章等の着用)を除いて職員の勤務時間外の行為にも適用されることを定めておりいることから一般職禁止又は制限国家公務員は一律かつ広範囲にわたって政治活動を制限されているとる。
国家公務員法第102条第1項に違反する行為は、同法第82条により[[懲戒処分]]の理由となるほか、同法第110条第1項第19号により、懲役3年以下又は罰金10万円の範囲で、刑事罰の対象にもなる。
 
なお、国家公務員法第102条第1項に違反する行為は、同法第82条により[[懲戒処分]]の理由となるほか、同法第110条第1項第19号により、懲役3年以下又は罰金10万円の範囲で、刑事罰の対象にもなる。
 
== 沿革 ==
当初制定された国家公務員法(昭和22年法律第120号)は、寄付金等の要求等の行為のみに限り政治的行為を制限し(現行の第102条第1項の前段にあたる部分)、その違反行為に対する罰則規定も定めていなかった。ところが、いわゆる「2.1スト」など、官公庁の労働運動の高まりを受けた連合国最高司令官ダグラス・マッカーサーは当時の芦田均首相宛てに書簡を送り、国家公務員法の全面的改正を指示した。これを受けた1948(1948年(昭和23)23の同法の改正(同年法律第222号)に際して、第102条第1項に「人事院規則で定める政治的行為」を禁止する旨の規定が加わったほか、第110条1項19号の罰則規定も定められた。
 
なお、政治的行為の制限規定は、占領軍総司令部との折衝によりもうけられたため、その母法はいわゆるアメリカのハッチ法にあるとされている。
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== 政治的行為に関する判例 ==
=== 初期の裁判例 ===
国家公務員法第102条第1項、人事院規則14-7は、一般職の国家公務員の政治活動を一律広範囲に制限していることその政治的行為の具体的な定めを包括的に人事院規則に委任していること(その違反行為が刑事罰の対象となることから、犯罪の構成要件の委任であり、[[罪刑法定主義]]との関係でも問題となる。)、またその制定当初が連合国軍総司令部の意向によってなされたものであることなどから、学説上制定当初より、これを違憲とする学説が根強い。しかし、当初、[[最高裁判所]]や下級裁判所は、同法、同これらのを違憲と判断したことはなかった。初期の最高裁判例としては、次のようなものがある
 
* 最高裁判所1958年(昭和33年)3月12日大法廷判決(国家公務員法第102条第1項は日本国憲法第14条に違反しない。)
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=== 猿払事件 ===
ところが、その後、北海道宗谷郡猿払村の郵便局に勤務する郵政事務官が、1967(昭和42)年の衆議院議員総選挙に際し、日本社会党を支持するポスターを掲示し又は配布したという事実で起訴された事件('''猿払事件''')において、旭川地裁は、同法、同規則と日本国憲法第21条第1項が保障する[[表現の自由]]との関係を問題とし、同地裁は、同法、同規則の規定は当該事件に適用される限りにおいて日本国憲法第21条、第31条に違反するなどして、無罪判決を出した(1968((1968年(昭和43)433)3月25日判決)。この判決の影響は大きく、その後、同種の事件について、下級審で同法、同規則の規定を違憲とするか、あるいは当該公務員の行為に可罰的違法性がないなどとして、無罪とする事例が続出した。主要な事件としては、次のようなものがある
 
* 徳島地裁1969年(昭和44年)3月27日判決(徳島郵便局事件第一審-'''無罪'''
* 東京地裁1969年(昭和44年)6月14日判決(総理府統計局事件第一審-有罪)
* 札幌高裁1969年(昭和44年)6月24日判決(猿払事件控訴審-控訴棄却・'''無罪'''
* 青森地裁1970年(昭和45年)3月30日判決(むつ営林局事件第一審-'''無罪'''
* 高松高裁1971年(昭和46年)5月10日判決(徳島郵便局控訴審-控訴棄却・'''無罪'''
* 東京地裁1971年(昭和46年)11月1日判決(全逓プラカード事件-'''戒告処分取消し''')※行政事件
* 東京高裁1972年(昭和47年)4月5日判決(総理府統計局事件控訴審-原判決破棄・'''無罪'''
* 仙台高裁1972年(昭和47年)4月7日判決(むつ営林署事件控訴審-控訴棄却・'''無罪'''
* 名古屋地裁豊橋支部1973年(昭和48年)3月30日判決(豊橋郵便局事件第一審-'''無罪'''
* 東京高裁1973年(昭和48年)9月19日判決(全逓プラカード事件控訴審-控訴棄却・'''戒告処分取消し'''
* 高松地裁1974年(昭和49年)6月28日判決(高松簡易保険局事件第一審-有罪)
 
このように、下級審の判断が合憲・違憲分かれていたところ、最高裁判所は、猿払事件上告審において同法、同規則が日本国憲法第21条、第31条に違反しないとして逆転有罪とし('''最高裁判所1974年(昭和49年)11月6日大法廷判決'''。11対4の多数意見)、実務上の混乱に決着をつけた。なお、同日付けで徳島郵便局事件、総理府統計局事件に対して、猿払事件の判決を引用して同じく有罪判決を言い渡した。
 
猿払事件上告審判決の後、下級審において裁判所が国家公務員法第102条1項人事院規則14-7違憲であると判断した事例ことはない。また、その後最高裁判所に係属した豊橋郵便局事件(1977年(昭和52年)7月15日第3小法廷判決。全員一致)、全逓プラカード事件(1980年(昭和55年)12月23日第3小法廷判決。2対1には次多数意見)ようなものがあるが高松簡易保険局いずれも猿払事件(1981年(昭和56年)10月22日第1小法廷上告審判決。3対2の多数意見)においを引用しも、同裁判所は同法、同規則が日本国を合法に違反しない結論付けており、現在に至っている。
*豊橋郵便局事件上告審判決-最高裁判所1977年(昭和52年)7月15日第3小法廷判決(全員一致)
*全逓プラカード事件上告審判決-最高裁判所1980年(昭和55年)12月23日第3小法廷判決(2対1の多数意見)
*高松簡易保険局事件上告審判決-最高裁判所1981年(昭和56年)10月22日第1小法廷判決(3対2の多数意見)
 
== 関連項目 ==