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== 背景 ==
セレウコス朝シリアはアンティオコス3世による拡大政策で、東はインド、西は小アジアに至るまで領土を回復させていた。これに反発したローマとの間にローマ・シリア戦争が勃発し、ローマのことを快く思っていなかった[[アエトリア同盟|アイトリア連邦]]とセレウコス朝は手を組んで、共に[[ギリシア]]を攻めた。しかし、{{仮リンク|テルモピュライの戦い (紀元前191年)|en|Battle of Thermopylae (191 BC)|label=テルモピュライの戦い}}に敗れたセレウコス朝はアイトリア連邦を見捨て、小アジアに逃れた。ローマはセレウコス朝を追撃して小アジアのマグネシアに来たり、雌雄を決するべく激突した。この時、[[スキピオ・アフリカヌス|大スキピオ]]は息子を人質にとられていたため、病気と偽って戦線を離脱していた<ref>人質が解放されると同時にマグネシアを目指したが、マグネシアの戦いには間に合わなかった。</ref>。したがって、ローマ軍の指揮は小スキピオが執っていた。
 
== 戦いの経過 ==
アンティオコス3世は、両翼に[[カタフラクト|カタフラクトイ]]という重装騎兵を配備していた。この重装騎兵は当時トップクラスの攻撃力を誇っており、攻めの時であれば殆ど無敵であった。彼の作戦は、カタフラクトイを用いてローマ軍の騎兵隊をいち早く撃破し、[[カンネーの戦い]]のようにローマ軍を包囲・殲滅することであった。一方、ローマ軍はセレウコス軍を過小評価しており、ただ正面突破のことしか考えていなかった。
 
このまま戦いが始まれば、セレウコス軍の勝利は確実であっただろう。しかし、突然周囲に霧が生じ、戦場は全く見えなくなってしまった。視界が狭まったため、セレウコス軍の弓兵部隊はほぼ無力化されてしまった。これを利用し、ローマ軍右翼のエウメネスは[[クレタ]]弓兵部隊に敵左翼を奇襲させた。この奇襲によってセレウコス軍の鎌戦車は自軍に突っ込んでしまい、セレウコス軍左翼は大混乱に陥った。
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奇襲時に起こった喧噪を、アンティオコス3世は自軍の左翼が敵軍に突っ込み、計画通り蹂躙しているものと思い込み、自らのいる右翼も出撃した。ローマ騎兵が迎え撃ったが、カタフラクトイの圧倒的な攻撃力の前に瞬殺され、一気に[[ローマ軍団]]に突っ込んだ。ローマ軍団と言えどもカタフラクトイの猛攻の前には歯が立たず、敗走してしまう。アンティオコス3世は彼らを追撃し、野営地まで追い詰めた。
 
ここで、野営地を守備していた[[アンティゴノス朝|マケドニア]]の[[ファランクス]](ローマと同盟を結んだ折、[[ペルセウス(マケドニア王)|ペルセウス]]が送った[[重装歩兵]])がセレウコス軍のカタフラクトイに立ち塞がった。ローマ軍団を蹴散らしたカタフラクトイであったが、ファランクスの頑強さを崩すのは簡単ではなく、一進一退が続いた。
 
この時、セレウコス軍左翼はローマ軍団・騎兵によって崩壊しており、セレウコス軍中央も包囲されていた。セレウコス軍中央のファランクスは中空方陣を組み、ローマ軍団の攻撃を跳ね返していたが、自軍の戦象部隊が苦痛によって暴れ出したために戦列が崩れてしまった。ファランクスを突破できなかったアンティオコス3世が再び戦場に戻った時には、最早セレウコス軍は戦線を維持することができなくなっていた。この時、アンティオコス3世の持つカタフラクトイで攻めていれば、まだ勝機はあったかもしれない。しかし、彼は戦意喪失してしまい、撤退した。
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一方、ローマ軍は僅か300名ほどの損害であったと発表されているが、これは明らかにローマ側の捏造であり、ローマ兵の埋葬に2日以上掛かったという記録があることから、実際は2000~4000名であったと考えられる。これは想定以上の大損害であり、事実、この戦いを指揮したスキピオ家は以後影響力を低下させている。
 
この戦いは、ファランクス軍の頑強さを証明した。その防御力はローマ軍団を破ったカタフラクトイをも弾き返してしまうほどであった。しかし、霧が出たことによって奇襲を許してしまったことや、アンティオコス3世の追撃によって中央軍が置き去りにされてしまったこと、戦象が暴れて自軍を踏み荒らしてしまったことから、ファランクスはローマ軍団に敗北してしまった。ファランクスは今後消滅していくが、上手く運用されれば、その攻撃力・防御力はローマ軍団を凌駕するものであると示した。
 
== 脚注 ==