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'''小脳'''(しょうのう、{{lang-en-short|cerebellum}}、[[ラテン語]]で「小さな脳」を意味する)は、脳の部位の名称。[[脳]]を背側から見たときに[[大脳]]の尾側に位置し、外観が[[カリフラワー]]状をし、[[脳幹]]の後ろの方から[[コブ]]のように張り出した小さな[[器官]]である。脳幹と小脳の間には[[第四脳室]]が存在する。重さは成人で120~140グラムで、脳全体の重さの10%強をしめる。大脳の10分の1しかないのに、大脳の[[神経細胞]]よりもはるかに多くの[[神経細胞]]がある。脳の神経細胞の大部分は、小脳にあり、その数は1000億個以上である。小脳の主要な[[機能]]は[[知覚]]と[[運動機能]]の統合であり、[[平衡]]・筋緊張・[[随意筋]]運動の調節などを司る。このため、小脳が損傷を受けると、運動や平衡感覚に異常をきたし、精密な運動ができなくなったり酒に酔っているようなふらふらとした歩行となることがある。小脳が損傷されると、そうした症状が起きるが、[[意識]]に異常をきたしたり知覚に異常を引き起こすことはない。このため、かつては高次の脳機能には関係がなく、もっぱら[[運動]]を巧緻に行うための調節器官だとみなされ、[[脳死]]問題に関する議論が起きた際も人の生死には関係がないので、小脳は脳死判定の検査対象から外すべきと主張する学者もいた。ところがその後、小脳がもっと高次な機能を有していると考えられる現象が相次いで報告された。また、[[アルツハイマー病]]の患者の脳を[[PET]]で調べたところ、[[頭頂連合野]]や[[側頭連合野]]が全く機能していないにもかかわらず、小脳が活発に活動していることが判明した。アルツハイマー病の患者では例外なく小脳が活動しており、通常より強化されている。これは大脳から失われたメンタルな機能を小脳が代替していると考えられている。[[伊藤正男]]は、小脳は大脳の[[シミュレーター]]であって、体で覚える記憶の座と表現した<ref name="NOUWOKIWAMERU">立花隆『脳を究める』朝日文庫 2001年3月1日</ref>。
 
小脳の傷害が運動障害を引き起こすことを最初に示したのは、[[18世紀]]の[[生理学者]]たちであった。その後[[19世紀]]初頭~中盤にかけて、[[実験動物]]を用いた小脳切除・病変形成実験が行われ、小脳傷害が異常運動・異常歩様・筋力低下の原因となることが明らかにされた。これらの研究成果に基づき、小脳が運動制御に重要な役割を果たすという結論が導かれたのである<ref name="Fine">{{cite journal | author=Fine EJ, Ionita CC, Lohr L | title=The history of the development of the cerebellar examination | journal=Semin Neurol | year=2002 | pages=375-84 | volume=22 | issue=4 | id=PMID 12539058}}</ref>。