「デスモドロミック」の版間の差分

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== 概要 ==
1つの[[ポペットバルブ|バルブ]]につき2組の[[カム (機械要素)|カム]]と[[ロッカーアーム]]を設けてバルブの押下と引上を分担させ、バルブ[[ばね|スプリング]]に頼ることなく強制的にバルブを閉じることで、高回転時における[[バルブタイミング]]を正確に管理する機構である。古くは[[1930年代]]に[[メルセデス・ベンツ]]が[[レーシングカー]]に使用したという記録があり、市販車では[[ドゥカティ]]の[[オートバイ]]に採用されるなど、主に[[4ストロークエンジン機関|4ストローク]][[ガソリンエンジン]]で用いられている。
 
一般的なレシプロエンジンで用いられるバルブスプリングを利用したバルブ機構では、エンジンの回転速度が速くなると設計されたタイミングにバルブが完全に閉じることができなくなる[[バルブサージング]]と呼ばれる現象が発生する。また、バルブを急速に開閉させようとすると、開く際にバルブが弾かれる'''バルブジャンプ'''と呼ばれる現象や、閉じる際にバルブシートとの衝突でバウンドする'''バルブバウンス'''と呼ばれる現象が発生する。いずれの現象も[[燃焼室]]内の[[圧縮]]効率を低下させるため、エンジンの回転速度やバルブの開閉速度を制限する要素となるが、デスモドロミックはこれらの現象を回避してエンジンの高回転化やバルブ開閉の高効率化、バルブタイミングの厳密な管理といった点で有利となる。
 
デスモドロミックではバルブを閉じる際の[[抗力|抵抗]](メカニカルロス)は、閉じるためのロッカーアーム(クローズロッカーアーム)の[[慣性]]とバルブの密閉を補助する[[トーションバー・スプリング]](リターンスプリング)の[[荷重]]によって発生するが、バルブスプリング方式のスプリングによる抵抗と比較すると小さい。また、スプリングを収容するためのスペースが不要であるため、バルブステムを短く軽量に作ることができ、[[シリンダーヘッド]]の高さを抑えることができる。
 
一方、[[部品]]点数がスプリングバルブ方式に比べて多いため、[[製造]][[コスト]]や[[メンテナンス|整備]]コストが高くなり、シリンダーヘッドの重量も大きくなりやすい。また、バルブを開くロッカーアームだけでなく、閉じ側のクローズロッカーアームのバルブクリアランス調整も必要となる。
 
デスモドロミックのようにバルブスプリング方式の欠点を補う機構を市販車に採用しているのは近年ではドゥカティだけであり、2007年現在では二輪・四輪を問わず唯一量産自動車にデスモドロミックを採用するメーカーであり、デスモドロミックは同社の代名詞ともなっている。ただし他社のレース用車両においては、[[共振]]周波数を高められる[[トーションバー・スプリング|ねじりばね]]や[[空気ばねバネ|ニューマチックスプリング]]をバルブスプリングに採用して、より単純な構造でバルブサージングを抑制して高回転を可能にしているものがある。
 
== 歴史 ==
デスモドロミックの発明は、アーネスト・ヘンリー((''Ernest Henry)'' )で、1912年に[[プジョー]]のグランプリ車に用いられたのが最初である。その後、サムルソンのエンジンを経て、[[1954年]]に[[メルセデス・ベンツ]]が製作した[[フォーミュラ1|F1]]用車両、[[メルセデス・ベンツ W196|W196]]のエンジンが採用した。このエンジンは[[1955年]]に同社がレース活動を休止するまで多くの成績を残した<ref>『エンジンのロマン』P266-280pp.266-280。</ref><ref name="criticism-108">『礼一郎式外車批評』P108p.108。</ref>。
 
次にデスモドロミックが採用されたのは、[[1956年]]に[[ドゥカティ]]が開発した[[ロードレース世界選手権]]125ccクラス用のレース車両だった。ドゥカティは[[1968年]]に量産車初のデスモドロミック採用のモデル「マークIIIデスモ」を誕生させ、その後も採用車両を生産し続けている。
 
自動車評論家の[[福野礼一郎]]によれば[[スクーデリア・フェラーリ]]の[[1990年]][[フォーミュラ1]]用V12[[V型12気筒]]エンジン'''ティーポ036'''が採用していたという<ref>『礼一郎式外車批評』P108< name="criticism-108"/ref>。
 
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
*[[福野礼一郎]]『礼一郎式外車批評』[[双葉社]] ISBN 4-575-29558-2
*鈴木 『エンジンのロマン』三樹書房 ISBN 978-4895222877
 
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{{オートバイ部品と関連技術}}
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[[Category:往復動機関]]
[[Category:自動車のエンジン]]