「イランの核開発問題」の版間の差分

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== 概要 ==
イランは医療用アイソトープの生産を行うテヘラン原子炉の稼働のため、20%高濃縮ウランの自国製造を進めている。通常の[[原子力発電]]では低濃縮ウランで十分であり、高濃縮ウランを用いるのは[[原子爆弾]]の製造を狙っているからではないか、と[[アメリカ]]などから疑われてをかけられたただし原子爆弾には90%以上の高濃縮ウランが必要であり意見が分かれている。イランは自ら加盟する[[核不拡散条約]] (NPT) の正当な権利を行使しているのであり、核兵器は作らないと主張している当時のイランの第6代大統領[[マフムード・アフマディーネジャード]]は『[[ニューズウィーク|Newsweek]]』2009年10月7日号の取材に対して「核爆弾は持ってはならないものだ。」と否定する発言をしている。
 
これに対し核保有国アメリカは、イランの主張に疑念を持ち、核兵器保有に向けての高濃縮ウランであると主張して、国際的にイランを孤立化させようとする政策を取っているきた。これらには政治的思惑が見え隠れしており、疑惑段階でイランに経済制裁をとる一方で、既に核兵器を保有している[[パキスタン]]や[[インド]]などにはイランのようなボイコット(制裁)を行っていおこわなかった
 
2015年にイランは米欧6か国との間で、核開発施設の縮小や条件付き軍事施設査察などの履行を含む最終合意を締結し、核兵器の保有に必要な核物質の製造・蓄積を制限することとなった<ref>{{Citenews|url=http://www.nikkei.com/article/DGXZZO96230220Y6A110C1000000/|title=イラン制裁解除、世界に光と影|newspaper=日本経済新聞|date=2016-01-18|accessdate=2016-01-23}}</ref>。
 
== 中東の緊張 ==
欧米などの孤立化政策に対してイランは反発している。一方で[[トルコ]]、[[ブラジル]]、[[ベネズエラ]]、[[キューバ]]、[[エジプト]]などはイランの平和的核エネルギー開発を支持している
 
中でもトルコは[[イスラム教徒]]がほとんどを占める国でありながら、[[イスラエル]]とは建国以来国交を持つ国であり、他のイスラム圏とは一線を画して欧米圏とイスラム圏との橋渡し的な役割を果たしている国であった。しかし、トルコは[[2008年]]末にイスラエルによる[[パレスチナ自治区]][[ガザ]]大規模攻撃をきっかけにイスラエルとの関係が悪化してきていた。[[2010年]][[5月31日]]、イスラエルが封鎖を続けているガザへの支援物資を運んでいたトルコの人道支援団体を中心とした国際支援船団を、[[イスラエル軍]]が公海上で急襲し、乗船者のトルコ人などが殺害される事件が発生<ref>{{Cite news|url=http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2731691/5823703|title=ガザ支援船をイスラエル軍が強襲、10人以上死亡 トルコ強く抗議|work=AFP BB News|newspaper=[[フランス通信社|AFP通信]]|date=2010-05-31|accessdate=2012-02-17}}</ref>。イスラエルは謝罪拒否を断言、トルコ側は「関係は二度と修復できない」として、以来中東との一切の仲介を拒否した。これにより欧米圏とイスラム圏とのチャネルが失われ、イスラエルと敵対しているイランとの間で緊張が高まっている
 
国際社会は、「イスラエルがイランを空爆し核施設を破壊するのではないか」と危惧している。過去にもイスラエルは「自衛」を理由に周辺国への核関連施設への先制攻撃をしかけ([[1981年]]の[[イラク原子炉爆撃事件]]、[[2007年]]の[[シリア]]の核関連施設の空爆<ref>{{Cite news|url=http://gendaikorea.com/20091109_03_hon.aspx|title=イスラエルが破壊したシリアの核施設の手掛りは平壌との電話通話量だった|newspaper=[[現代コリア]]|date=2009-11-09|accessdate=2012-02-16}}{{リンク切れ|date=2014-1-12}}</ref>)、核保有を阻止してきた経緯がある。しかしイランへの攻撃は他の周辺諸国の上空を通過して行わなければならず、中東諸国はイスラエルによる領空侵犯阻止を大義として、イランへの攻撃を阻止する効果があった。ところが[[2003年]]に[[イラク戦争]]が勃発、[[2011年]]には[[シリア騒乱]]が発生し、両国に制空権を行使できるだけの軍事力維持が期待できなくなっていることから、今度はイランへの先制攻撃が懸念されている。ただし米無人偵察機が撃墜されるなど中国、ロシアの軍事技術供与が確認されておりイランへの攻撃は容易ではな、また中国、ロシアともにイランへの攻撃はイラク戦争のように座視はしない旨を明言してい
 
イスラエルの隣国[[レバノン]]には、特にイランから多大な支援を受けて激しくイスラエルと対立している[[ヒズボラ]]があり、両国の緊張と悪化によって中東地域全体に不安が広がっている
 
== 核開発技術の拡散の懸念と原油価格高騰 ==
イランが、ボイコット(経済制裁)による報復として、「イランが潜水艇を使い[[ホルムズ海峡]]封鎖することにより原油の流通が途絶え、世界経済が混乱するのではないか」と懸念があるされた。この海峡封鎖に使用されるのではと懸念されているのが、[[北朝鮮]]の開発した潜水艇と魚雷などが使用されるのあるはという観測もなされた。<!--以下出典不明と時間的祖語があるためCO--><!-- 北朝鮮の魚雷発射(韓国哨戒艦沈没事件)はこの需要から発生した「死のセールス」という見方がある{{要出典|date=2012年2月}}。北朝鮮は2007年頃から事件で使ったとされる潜水艇をイランに輸出していた。-->これらはイランの核開発技術を北朝鮮に供与した見返りとして提供されたものである可能性が指摘されている<ref>{{cite news |title=北朝鮮、イランに潜水艇輸出 米韓が確認 |url=http://www.asahi.com/special/08001/TKY201006090594.html|date=2010-06-09 |accessdate=2012-02-17 |newspaper=朝日新聞}}</ref>。北朝鮮は[[2006年]]に核実験を行い核兵器保有を公言しているため、核兵器を供与したことが事実であればイランはNPTに違反したことになるが、NPTは平和利用のための核開発技術の供与は認めており、また核兵器供与の事実は確認されていない。
<!-- 以下、この「イランの核開発問題」という項目に盛り込むべき内容としては逸脱し過ぎと判断してCO。--><!--北朝鮮が潜水艇をさらに輸出し資金力強化した場合、日本が拉致被害者を救う機会を失うことを意味する見方が強い。[[マディネジャ]]イラン大統領が「安保理で一度も独立した行動をとったことがない」と日本を批判したのはこうした情勢から暗に仲介を求めたという見方がある。しかし日本は国際連合の中では、まだ敵国条項に該当する国のため、国際連合の枠組み内において積極的政治行動は困難なのが実情である。-->
 
実際には、2011年後半からアメリカ、EUを中心に原油の禁輸、また金融市場からの締め出しなどを打ち出しており、一時的に原油高を招くなど市場は反応した。しかし、イランの最大の取引相手国である中国とインド、さらにはロシアやパキスタンなどが制裁には同調せず、イラン以外の通貨での取引や物々交換など不透明な取引を助長しているとする新たな懸念を生みつつあり、このため制裁の効果は限定的ではとの見方が出始めているもなされた<ref>{{cite news |title=中印、物々交換で原油輸入 イラン制裁回避へ自国通貨取引も|url=http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120331/mcb1203310503005-n1.htm |date=2012-03-31|accessdate=2012-04-11 |newspaper=ブルームバーグ}}{{リンク切れ|date=2014-1-12}}</ref>。
 
== 核協議の合意と制裁解除 ==
イランの政権は、[[イラン大統領選挙 (2013年)|2013年の大統領選挙]]によって、憲法規定による任期で退任したアフマディーネジャードから[[ハサン・ロウハーニー]]に交代した。
 
2015年7月14日、米欧6か国とイランとの間でおこなわれていた核協議が最終合意に達し、イラン側は核開発の大幅な制限、国内軍事施設の条件付き査察を含めた内容を受け入れた<ref>{{Citenews|url=http://www.asahi.com/articles/ASH7G1R73H7GUHBI002.html|title=イランと米欧など6カ国、核協議で最終合意|newspaper=朝日新聞|date=2015-07-14|accessdate=2016-01-23}}</ref>。イラン国内では核開発能力自体は維持したことが評価され、最高指導者の[[アリー・ハーメネイー]]も合意についてロウハーニーをねぎらったと報じられた<ref>{{Citenews|url=http://www.sankei.com/world/news/150716/wor1507160036-n1.html|title=イラン、「外交的勝利」にわく ロウハニ政権への支持も拡大|newspaper=産経新聞|date=2015-07-16|accessdate=2016-01-23}}</ref>。
 
2016年1月16日、IAEAはイランが核濃縮に必要な遠心分離器などを大幅に削減したことを確認したと発表<ref>{{Citenews|url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK17H03_X10C16A1000000/|title=IAEA、イランの核設備縮小を確認 米欧は制裁解除へ|newspaper=日本経済新聞|date=2016-01-17|accessdate=2016-01-23}}</ref>。これを受けてイランと米欧6か国は同日、合意の履行を宣言し、米欧諸国はイランに対する経済制裁を解除する手続きに入った<ref>{{Citenews|url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM17H2M_X10C16A1MM8000/|title=イラン制裁解除へ、米欧など6カ国 核合意履行受け|newspaper=日本経済新聞|date=2016-01-18|accessdate=2016-01-23}}</ref>。
実際には、2011年後半からアメリカ、EUを中心に原油の禁輸、また金融市場からの締め出しなどを打ち出しており、一時的に原油高を招くなど市場は反応した。しかし、イランの最大の取引相手国である中国とインド、さらにはロシアやパキスタンなどが制裁には同調せず、イラン以外の通貨での取引や物々交換など不透明な取引を助長しているとする新たな懸念を生みつつあり、このため制裁の効果は限定的ではとの見方が出始めている<ref>{{cite news |title=中印、物々交換で原油輸入 イラン制裁回避へ自国通貨取引も|url=http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120331/mcb1203310503005-n1.htm |date=2012-03-31|accessdate=2012-04-11 |newspaper=ブルームバーグ}}{{リンク切れ|date=2014-1-12}}</ref>。
 
== 経緯 ==
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* [[2010年]][[2月9日]] - ウラン濃縮開始<ref>{{cite news|url=http://mainichi.jp/select/world/news/20100210k0000m030074000c.html|title=イラン:ウラン濃縮を開始 制裁への流れに抵抗|newspaper=毎日新聞|date=2010-02-09|accssesdate=2010-02-09|archiveurl=http://web.archive.org/20100218131443/mainichi.jp/select/world/news/20100210k0000m030074000c.html|archivedate=2010-02-18}}{{リンク切れ|date=2014-1-12}}</ref>。オバマ米大統領は、イランがウランの濃縮度を20%に高める工程を開始したことについて、この活動を続けるなら「次の措置は制裁だ」と警告した<ref>{{cite news|url=http://www.asahi.com/international/update/0210/TKY201002100107.html|title=イラン核問題、米大統領が「制裁体制つくっていく」|newspaper=朝日新聞|date=2010-02-10}}{{リンク切れ|date=2014-1-12}}</ref>。
* [[2010年]][[2月14日]]、[[トルコ]]のエルドア首相は、[[カタール]]の首都[[ドーハ]]で記者会見し、[[イラン]]の[[低濃縮ウラン]]を[[フランス]]・[[ロシア]]で加工した核燃料と交換する候補地としてトルコが挙がっていることについて、支持することを表明した<ref>{{cite news |title=自国でのウラン交換を支持=トルコ首相 |newspaper=時事通信 |date= 2010-02-15|url=http://www.jiji.com/jc/p_archives?id=20100215054245-8954396 |accessdate=2011-07-19}}{{リンク切れ|date=2014-1-12}}</ref>。
* [[2010年]][[2月16日]]、イランのマディネジャド大統領は(イラン)、既に開始した核燃料生産のためのウラン高濃縮作業について、西側諸国が核燃料を提供するならば、停止する可能性のあることを記者会見で述べた。また、国際原子力機関 (IAEA) のイランの低濃縮ウランを国外に移す案に対して、低濃縮ウランと核燃料を同時に交換する方式なら受け入れる可能性を強調した。さらに、同大統領は、制裁強化に関しては「後悔させるような対抗措置をとる」と警告した<ref>{{cite news |title=イラン大統領、「核燃料を提供なら高濃縮ウラン製造中止も」 |newspaper=サーチナ |date= 2010-02-17|url=http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0217&f=politics_0217_010.shtml}}</ref>。
* [[2010年]][[2月17日]] - 「イランが核弾頭を開発中」とIAEAが報告書草案にまとめる<ref>{{cite news|url=http://www.cnn.co.jp/world/CNN201002190008.html|title=イランが核弾頭を開発か IAEA報告書|publisher=CNN.co.jp|date=2010-02-19|accessdate=2010-02-19}}{{リンク切れ|date=2014-1-12}}</ref>。
* [[2010年]][[5月17日]] - [[トルコ]]、[[ブラジル]]の仲介で、イランが保有する濃縮ウラン1.2トンをトルコに搬出し、外国が提供する製品加工されたウラン燃料と交換することで合意した。ただ、制裁解除となるかは微妙な情勢<ref>{{cite news|url=http://mainichi.jp/select/world/news/20100518k0000m030068000c.html|title=イラン:低濃縮ウランの搬出 トルコ、ブラジルと合意|newspaper=毎日新聞|date=2010-05-17|accessdate=2010-05-18|archiveurl=http://web.archive.org/20100519130040/mainichi.jp/select/world/news/20100518k0000m030068000c.html|archivedate=2010-05-19}}{{リンク切れ|date=2014-1-12}}</ref>。
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* 2012年8月16日 - イスラエルの[[マタン・ヴィルナイ]]民間防衛担当相がイスラエルの大手紙「[[マアリブ]]」のインタビューで、仮にイランと戦争になった場合、30日間複数の戦線で戦闘が続き、一日に数百発のイランのミサイルがイスラエル国内に着弾し、また、イランと同盟関係にある[[レバノン]]の武装組織「[[ヒズボラ]]」とも戦うことになるとの予測を述べ、また、イスラエルはかつてない規模で万全な防衛体勢ができている旨の発言をした<ref>{{citenews|url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120816/k10014310221000.html|title=“イランと戦闘30日間続く”|publisher=NHK NewsWeb|date=2012年8月16日|accessdate=2012年8月16日}}{{リンク切れ|date=2014-1-12}}</ref>。
* 2013年8月 - アフマディーネジャードがイラン大統領を退任。後任に穏健派と目される[[ハサン・ロウハーニー]]が就任。
* 2013年10月 - ロウハーニーは国連などの場で対話を呼びかけており、オバマ米大統領との断交以来初の電話会談も実現した。ところが、イスラエル側は全くロウハーニーの主張を受け入れておらず、イスラエル単独での軍事攻撃も辞さない姿勢を崩していかった
* 2013年11月 - イランと欧米など6カ国で交渉が行われる。ところが、合意達成による制裁緩和を危惧するイスラエルは、かねてから「悪い取引は戦争」になると主張、また、イランの核計画を脅威ととらえる[[サウジアラビア]]が、イスラエルと秘密裏に接触し、懸念を共有。その上で、イスラエル軍機のサウジアラビア領空通過を許可したという報道がなされた<ref>[http://en.alalam.ir/news/1535140 Saudi Arabia to help Israel in possible Iran attack: report]ALALAM 2013年11月17日</ref>。イスラエルとイランは場所的に離れているため、戦闘機での軍事攻撃にはどうしても周辺諸国の領空を通過せざるを得ない。
* 2013年11月24日 - イランと国連安保理常任理事国とドイツの6カ国が核開発の透明性を高める代わりに対イラン制裁の一部を緩和する「第1段階の措置」で合意<ref>{{citenews|url=http://mainichi.jp/select/news/20131124k0000e030107000c.html|title=イラン核協議:「第1段階の措置」で合意|publisher=毎日新聞|date=2013年11月24日|accessdate=2013年11月24日}}{{リンク切れ|date=2014-1-12}}</ref>。
* 2014年3月 - [[ロシア]]が[[ウクライナ]]で起きた政変に対し軍事介入を実施、欧米とロシアの関係が急速に冷え込む。イランの核開発問題を平和的に解決するためにはロシアの協力が必要不可欠とされ、この欧米とロシアの関係悪化がイランの状況にも少なからず影響を与えるとみられる。
* 2015年7月14日 - 米欧6か国とイランの核協議が最終合意に達する。イラン側は核施設の大幅な縮小や条件付き軍事施設査察を受け入れたが、核開発能力自体は維持されることになった。
* 2016年1月16日 - IAEAがイランの核施設縮小を確認したと発表。イランと米欧6か国による最終合意が履行される。
 
== 脚注 ==