「生物の分類」の版間の差分

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== アリストテレスの分類 ==
どのような分類体系が合理的かは、[[アリストテレス]]以来さまざまな工夫がされ、案が出されてきた。彼の『[[動物誌 (アリストテレス)|動物誌]]』では動物分類は次のようになる
彼の『[[動物誌 (アリストテレス)|動物誌]]』では動物分類は次のようになる。
# 有血動物
## [[胎生]]
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近代的な分類法の刷新は[[カール・フォン・リンネ|リンネ]]から始まった。
 
リンネは種の学名に二名法(属名と種小名の2語で表す)を採用し、分類を体系づけた。また、属・種の上位分類として、綱・目を設けて、階層的な分類体系とした。
また、属・種の上位分類として、綱・目を設けて、階層的な分類体系とした。
 
現在の生物分類でもこのルールは変わっていないが、リンネの時代に比べると階層構造はより多段階となっている(後述)。
 
しかしリンネの分類自体が現在もそのまま生きているわけではない。例えば、リンネは[[クジラ]]を[[魚類]]に分類していたがこれは誤りであった。また[[植物]]を[[雄蕊|おしべ]]の本数を元に分類したことは有名だが、現在の植物分類ではこの分類手法は捨てられている
また[[植物]]を[[雄蕊|おしべ]]の本数を元に分類したことは有名だが、現在の植物分類ではこの分類手法は捨てられている。
 
また、リンネの時代には「[[進化]]」の概念がなかったため、リンネの分類はあくまでも形態の類似異同の差異による操作に限られる限界があった。
 
== 現在の生物分類 ==
{{mainMain|階級 (生物学)}}
{{Biological classification}}
以下では現時点で生物分類でほぼ一般的に使われている分類体系フレームを記述する。
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| [[菌界]]
| なし
| [[プロテオ古細菌界]]<ref>古細菌の界分類については安定していない。ここではユーリ古細菌界とプロテオ古細菌界に2分する方式を採用した</ref>
|-
| '''[[門 (分類学)|門]]''':
| '''{{lang|en|phylum<br />/division}}''':
| '''{{lang|la|phylum<br />/divisio}}''':
| [[脊索動物門]]<br />(脊椎動物亜門)
| [[被子植物門]]
| [[担子菌門]]
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| '''{{lang|en|genus}}''':
| '''{{lang|la|genus}}''':
| [[ヒト属]]<br />''Homo''
| [[ローズマリー属]]<br />{{snamei|Rosemarinus}}
| [[エノキタケ属]]<br />{{snamei||Flammulina}}
| エスケリキア属<br />{{snamei||Escherichia}}
| アエロピュルム属<br />{{snamei||Aeropyrum}}
|-
| '''[[種 (分類学)|種]]''':
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|}
* 門は、動物学と細菌学では{{lang|en|phylum}}、植物学、菌類学では{{lang|en|division}}/{{lang|la|divisio}}と使い分ける。
* 中間的分類が必要なときの階級名は、その分類単位よりも上位の分類には、大 ({{lang|en|magn-}})・上 ({{lang|en|super-}}) を、下位の分類には、亜 ({{lang|en|sub-}})・下 ({{lang|en|infra-}})・小 ({{lang|en|Parv-}}) などの接頭語を各階級の頭につけて生成させる。
* {{lang|en|subfamily}}(亜科)と{{lang|en|genus}}(属)の間をさらに細分する必要があるときは、{{lang|en|tribe}}(動物では族、植物では連)を使う。
* {{lang|en|subgenus}}(亜属)と{{lang|en|species}}(種)の間をさらに細分する必要があるときは、{{lang|en|section}}(節)を使う。
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| -ales
| &nbsp;
| -ales
|-
|亜目
204 ⟶ 201行目:
| -ineae
| &nbsp;
| -ineae
|-
|上科
220 ⟶ 217行目:
| -aceae
| -idae
| -aceae
|-
|亜科
236 ⟶ 233行目:
| -eae
| -ini
| -eae(同上)
|-
|亜族(亜連)
247 ⟶ 244行目:
|}
 
分野によっては慣習的に、よく使われる語尾がある。たとえば、動物門の -zoa、綱の -morpha、目の -iformes、-ida、古細菌門の -archaeota などである。しかしこれらはルールではなく、例外が多い。
 
== 最上位分類の変遷 ==
=== ===
{{mainMain|界 (分類学)}}
生物(現在から見れば高等生物のみであるが)は古代から植物・動物の2つに分けられ、近代にはそれぞれが[[界 (分類学)|界]] ({{lang|en|kingdom}}) とされた。
 
微生物が発見されてくると、[[1860年]]、[[エルンスト・ヘッケル]]が[[原生生物]]界を作り三界とした。さらに後には[[五界説]]、[[界_ (分類学)#八界説|八界説]]などが登場してきたが、現在から見れば過渡的な分類と言える。
 
一方、[[原核生物]]の研究が進むと、[[細胞核]]の有無など[[細胞]]の基本構造の違いに比べれば従来の界の違いは表層的なものであるとして、界より上の分類が現れた。
 
=== ドメイン ===
{{mainMain|ドメイン (分類学)}}
 
界より上の階級は、上界 {{lang|en|superkingdom}}、{{lang|en|empire}}、ドメイン {{lang|en|domain}} などと呼ばれたが、現在では[[ドメイン (分類学)|ドメイン]]で統一されている。(上界はドメインと界の間の階級として使われることがある)
272 ⟶ 269行目:
! '''[[ロバート・ホイタッカー|ホイタッカー]]<br />([[1969年]])<br />5界説'''
! '''[[カール・ウーズ|ウーズ]]<br />([[1977年]])<br />6界説'''
! '''ウーズ<br />([[1990年]])<br />3ドメイン説<ref name="Woese_1990">{{cite journal | author = Woese C, Kandler O, Wheelis M | title = Towards a natural system of organisms: proposal for the domains Archaea, Bacteria, and Eucarya(Eucarya.(生物の自然機構について:古細菌、細菌、真核生物の3ドメインの提案). | u=http://www.pnas.org/cgi/reprint/87/12/4576 | journal = Proc Natl Acad Sci U S A | volume = 87 | issue = 12 | pages = 4576-9 | year = 1990 | id = PMID 2112744}}</ref>'''
|-
| rowspan="3" | &nbsp;
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その一方で、しだいに遺伝子解析の手法も熟練度を増し、系統そのもので分類することが出来るレベルにまでなってくる。
 
2005年、国際原生生物学会から真核生物の新しい分類体系(Adl (Adl ''et al.'') が提出された。この分類は、それまでの界の枠組みを廃し、真核生物を6つの[[スーパーグループ (分類学)|スーパーグループ]]に分類するものである。ウィキペディアの各記事でも、これらを界相当の分類として採用している場合が多い
この分類は、それまでの界の枠組みを廃し、真核生物を6つの[[スーパーグループ (分類学)|スーパーグループ]]に分類するものである。ウィキペディアの各記事でも、これらを界相当の分類として採用している場合が多い。
 
{| class="wikitable" style="background-color: #fff; margin-left: 0.5em;"
|-
| [[真正細菌]]ドメイン
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|}
 
クロムアルベオラータについては、当時から単系統性が疑問視されていて、近年に見られる他の多くの分類では細分される傾向にある。(細分した場合には通常、ストラメノパイル、アルベオラータ、クリプト植物、ハプト植物の4グループに分けられる。2010年現在では、[[クリプト植物]]と[[ハプト植物]]が姉妹関係にあるとして、[[有中心粒類]]を含めて、[[ハクロビア]]という分類群を形成するとする説が有力視されるようになってきている<ref>{{PDFlink|[http://www.plankton.jp/sub08_22_01.pdf 中山剛氏(筑波大)の原生生物の記事(pdf)]}}</ref> また一方では、上述のスーパーグループのうちの4つをまとめた[[バイコンタ]]が、その単系統性を有力視されるようにもなった。
 
そのような近年の分子系統学的な成果を取り入れつつ、階層分類を盛り込んだものもある。下表に一例を示す。
349 ⟶ 345行目:
| [[真正細菌]]界
|-
|colspan="2" rowspan="2"| [[古細菌]]ドメイン
| [[ユリアーキオータ門|ユーリ古細菌界]]
|-
362 ⟶ 358行目:
| [[アメーボゾア]]上界
| [[アメーボゾア]]界
 
|-
|rowspan="6"| [[バイコンタ]]上界
394 ⟶ 389行目:
* [[クロロフレクサス門]]
* [[クリシオゲネス門]]
* [[サーモデスルフォバクテリウム門]]
* [[サーモミクロビア門]]
* [[藍藻|シアノバクテリア門]]
410 ⟶ 405行目:
* [[フィブロバクター属|フィブロバクター門]]
* [[フソバクテリア門]]
* [[プランクトミケス門]]
* [[プロテオバクテリア|プロテオバクテリア門]]
* [[ウェルコミクロビウム門]]
474 ⟶ 469行目:
==== [[菌類|菌界]] ====
* [[ツボカビ門]]([[ツボカビ]])
* [[接合菌門]] ([[ケカビ]]、[[クモノスカビ]])
* [[子嚢菌]]門([[酵母]]、[[アカパンカビ]])
* [[担子菌門]]([[キノコ]])
 
546 ⟶ 541行目:
 
* [[真正細菌]] (Bacteria) エステル型脂質を持つ原核生物、[[ムレイン]][[細胞壁]]
** [[テッラバクテリア]] (Terrabacteria) グラム陽性関連細菌及び藍色細菌
*** [[藍藻|藍色細菌]] (Cyanobacteria) 酸素発生型光合成細菌
*** [[クロロフレクサス門]] (Chloroflexi)
*** [[デイノコックス・テルムス門]] (Deinococcus-Thermus)
*** [[フィルミクテス門]] (Firmicutes) グラム陽性低GC含量。芽胞形成
555 ⟶ 550行目:
*** [[FCB群]]
**** [[緑色硫黄細菌]] (Chlorobi)
**** [[バクテロイデス門]] (Bacteroidetes)
*** [[PVC群]]
**** [[クラミジア門]] (Chlamydiae)
562 ⟶ 557行目:
**** [[レンティスファエラ門]] (Lentisphaerae)
*** [[プロテオバクテリア]] (Proteobacteria)
*** [[スピロヘータ]] (Spirochetes)
* [[古細菌]] (Archaea) (他生物に対して対掌体の)エーテル型脂質を持つ原核生物。
** ユリアーキオータ界 (Euryarchaeota) [[Zリング]]による細胞分裂
*** [[ユリアーキオータ門|ユリアーキオータ門]] (Euryarchaeota)
*** [[DPANN群]] (DPANN group) 未培養系統
** [[プロテオ古細菌界|プロテオアーキオータ界]] (Proteoarchaeota) [[ESCRT複合体]]による細胞分裂
*** [[タウムアーキオータ|タウムアーキオータ門]] (Thaumarchaeota)
*** [[クレンアーキオータ門]] (Crenarchaeota)
*** [[コルアーキオータ|コルアーキオータ門]] (Korarchaeota) 未培養系統
*** [[ロキアーキオータ|ロキアーキオータ門]] (Lokiarchaeota) 未培養系統。真核生物に対して側系統もしくは極めて近いとする報告有り
* [[真核生物]] (Eukaryote) 核膜有り、線状染色体、細胞骨格・原形質流動有り、80Sリボソーム、有糸分裂有り
** [[バイコンタ]] (Bikonta) 2本[[鞭毛]]を持つ真核生物(退化により持たないものも有り)
*** [[植物]](狭義、一次植物)(Plantae, [[アーケプラスチダ|Archaeplastida]]) 一次共生により[[葉緑体]]を獲得した真核生物の直系の子孫、板状[[ミトコンドリア]]クリステ、葉緑体包膜が2重
**** 緑色植物 (Viridiplantae) :[[被子植物]]、[[裸子植物]]、[[シダ植物]]、[[コケ植物]]、[[車軸藻類|シャジクモ藻類]]、[[緑藻]]類
**** 灰色植物 (Glaucophyta)
**** 紅色植物 (Rhodophyta) :[[紅藻]]類
*** 盤状クリステ類 (Discicristatae) 盤状ミトコンドリアクリステ、エクスカヴェートに含める意見有り
**** [[ユーグレノゾア]] (Euglenozoa) :[[ユーグレナ植物]]、[[キネトプラスト類]]
**** [[ヘテロロボサ]] (Heterolobosea) :[[ネグレリア]]類、[[細胞性粘菌|アクラシス類]]
**** ジャコバ類 (Jacobea) ミトコンドリアクリステは板状
*** [[エクスカバータ|エクスカヴェート]] (Excavates) 細胞腹側に深くえぐれた捕食装置を有する真核生物の一群
**** マラウイモナス (''Malawimonas'') 盤状クリステ類の可能性あり
**** トリコゾア類 (Trichozoa) :ディプロモナス類、レトルタモナス類、パラバサリア類
**** アネロモナス類 (Anaeromonada) :オキシモナス類
*** [[ストラメノパイル]] (Stramenopiles) 中空の鞭毛小毛を有する真核生物の一群、[[アルベオラータ]]を含めて[[クロムアルベオラータ|クロマルヴェオラータ]] (Chromalveolata) とする意見有り
**** 無殻太陽虫類 (Actinophryida)
**** [[オパリナ]]類 (Opalozoa)
**** [[ラビリンチュラ]]類 (Labyrinthista)
**** ビコソエカ(ビコエカ)類 (Bicosoecales, Bicoecales)
**** プラシディア類 (Placididea)
**** デヴェロパエラ (''Developayella'')
**** [[卵菌類]] (Oomycetes) :ツユカビ類、[[ミズカビ|ミズカビ類]]
**** [[サカゲカビ|サカゲツボカビ]]類 (Hyphochytriomycetes)
**** [[不等毛植物]]類([[黄色植物]]類)(Heterokontophyta, Chromophyta) :[[褐藻]]類、[[珪藻]]類
*** [[アルベオラータ]] (Alveolata) 細胞膜直下に扁平な小胞を有する真核生物の一群
**** [[繊毛虫]]類 (Ciliata) :[[ラッパムシ|ラッパムシ類]]、[[ゾウリムシ]]、[[ツリガネムシ]]
**** [[アピコンプレクサ]]類 (Apicomplexa) :[[マラリア原虫]]、トキソプラズマ、[[クリプトスポリジウム]]
**** [[渦鞭毛藻]]類 (Dinophyta) 例:[[褐虫藻]]、[[ヤコウチュウ]]
*** [[リザリア]] (Rhizaria) 分子情報による類縁、アメーバ状生物が多いが全てに共通する形態的特性は無い
**** レタリア (Retaria) :[[有孔虫]]類、[[放散虫]]類、一部の[[太陽虫]]類
**** [[ケルコゾア]] (Cercozoa) :ケルコモナス類、[[クロララクニオン藻]]類、[[ネコブカビ]]類、ユーグリファ類
*** 所属不明
**** [[クリプト植物]] (Cryptophyta) 独立の界とする研究例有り
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** [[ユニコンタ]] ([[:en:Unikont|Unikonta]]) 1本鞭毛を持つ真核生物(真菌類は[[退化]]して鞭毛を持たない)
*** [[アメーボゾア]] (Amoebozoa) 分子情報による類縁、真核生物の最も原始的な系統、アメーバ状生物が多い(アメーボゾアとバイコンタを統合してアンテロコンタ (Anterokonta) とする説有り)
**** 葉状仮足類(ロボサ)(Lobosa) :[[アメーバ]]類
**** コノサ (Conosa) :[[変形菌]]、[[細胞性粘菌|タマホコリカビ類]]、アカントアメーバ類、エントアメーバ類、ペロビオンタ類
*** [[オピストコンタ]] (Opisthokonta) 鞭毛を後方にして運動する真核生物
**** [[菌類]] (Fungi) :[[子嚢菌]]類、[[担子菌]]類、[[微胞子虫]]類
**** メソミセトゾア (Mesomycetozoa) :イクチオスポラ類
**** コアノゾア (Choanozoa) 例:[[襟鞭毛虫]]類
**** [[後生動物]] (Metazoa) 例:海綿動物、刺胞動物、脱皮動物(線形動物、節足動物)、冠輪動物(扁形動物、環形動物、軟体動物)、後口(新口)動物(棘皮動物、半索動物、脊索動物)