「エマニエル夫人」の版間の差分

制作はフランスの[[CM]][[プロデューサー]]だったイヴ・ルッセ＝ルアール（34歳）で、まだ映画制作会社を設立したばかりの、”映画の素人”が初めて取り組んだ映画作りであった。彼は小説『エマニュエル』は「官能であり[[猥褻]]ではない」と考え、映画『エマニエル夫人』の制作を決意。彼の友人で映画配給会社の御曹司セルジュ・セルツキーから制作費（当時の価格で）5000万円を借り、監督には知人のジュスト・ジャカンを起用した。フランスでは毎年夏になると国民が[[バカンス]]へ出かけてしまうため、バカンスの前に『エマニエル夫人』を上映してヒットさせなければならなかった。しかし、当時のフランスの大統領は保守的な[[ポンピドゥー]]大統領（[[ド・ゴール]]大統領の元側近）で、『エマニエル夫人』の上映に対しては潰しにかかってくることがほぼ確実であった。1974年4月、制作者イヴへのもとへ文化大臣から『エマニエル夫人』の上映禁止の通知が届き、イヴは文化省との交渉を余儀なくされる。ところが同月、ポンピドゥー大統領が急死し、同年5月、[[ジスカール・デスタン]]（48歳）が大統領に当選する。若きジスカール新大統領は「[[表現の自由]]」を尊重して、官憲による[[検閲]]を廃止した（ジスカールは翌年、[[先進国首脳会議]]（[[サミット]]（現・[[G7]]））を創設する）。ここにフランスにおける、「ポルノ解禁」が達成された。その結果、同年6月、イヴ・ルッセ＝ルアールは、「入館は16歳以上」との条件付きで、『エマニエル夫人』の一般劇場での上映を実現させることた（もちろんセックスシーン等では、性器に成功は[[モザイク]]なしたである）。その意味で映画『エマニエル夫人』は、”フランスの表現の自由の象徴”であると言うことができる。

一方、現在もなお警察による[[検閲]]が続いている日本では、当時、[[前張り]]をして”疑似セックス”をする[[日活]]の[[ピンク映画]]（[[ロマンポルノ]]）は存在していたものの、『エマニエル夫人』のように”[[本番]]セックス”をする[[AV]]（[[アダルトビデオ]]）は、まだ誕生していなかった。映画製作会社・[[日本ヘラルド]]の社長・[[古川克己]]がフランスで『エマニエル夫人』を（当時の価格で）100万円で購入。これを日本ヘラルドの宣伝マン・[[山下健一郎]]が、映画宣伝用のポスターを（当時の価格で）100万円をかけて、フランスの写真家フランシス・シャコベッティが撮影してフランスの新聞に掲載されたシルビア・クリステルの写真（上半身裸のシルビアが[[籐]]椅子に座り足を組んでいる）に変更した。山川は「この映画は女性に売る。男性には売らない」との戦略のもと、『エマニエル夫人』の新しい宣伝用ポスター1本で売り込みをかけて成功。『エマニエル夫人』のポスターは、当時の日本人に大きな衝撃を与えた。同1974年の12月、『エマニエル夫人』は日本でも、東京・[[みゆき座]]をはじめとする一般の映画館で上映さた（性器にはモザイクがかけられ、た）。まだ保守的な時代であったにもかかわらず、映画館には若い女性を中心に大ヒット女性たちが殺到して超満員となり、『エマニエル夫人』は”社会現象”にまでなった。日本での興行成績は、『[[007]]』や『[[ゴッドファーザー PART II]]』を上回る第3位を記録。さらにテレビの[[ゴールデンタイム]]でも放送され、視聴率30.8％という高視聴率をマークした。このように『エマニエル夫人』は日本社会に「エマニエル夫人旋風」を巻き起こした、”革命的な映画”であった。