「スティーヴン・ミルハウザー」の版間の差分

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にわかにミルハウザー再評価の空気が流れるも、本人は白けていたらしい。次作の『ナイフ投げ師』、『Enchanted Night』、『The King in the Tree』で、再び、親密な雰囲気の屋根裏部屋のようにこじんまりと幻想的で、精緻に構築されたミニアチュールのように職人的な作風に戻った。
 
日本では[[岸本佐知子]]さんと[[柴田元幸]]氏の完璧な翻訳によって本国以上の支持を得ている。
 
 
その作風は[[E・A・ポー]][[ホーソーン]]などのアメリカ浪漫派の流れを汲み、[[ボルヘス]][[カルヴィーロ]]的な知的遊戯も見られるが、むしろ最大の影響源はドイツ浪漫派か。[[トーマス・マン]][[ホフマン]][[クライスト]]などの影響は特に色濃く、中でもトーマス・マンの『トニオ・クレーゲル』『ヴェニスに死す』はその最たる例。ミルハウザー作品に常に登場する“天才的な才能を持ちながら、現実および商業主義に敗退し、破滅する芸術家”はおそらくこの二作から取られている。(比較的ありがちなモチーフではあるが。)
 
本人は「もっともインスピレーションを受けた作品」としてポーランドの前衛作家[[ブルーノ・シュルツ]]の『大鰐通り』と、イギリスの歴史家R・D・オールティックの『ロンドンの見世物』を挙げており、美の極致を行くような艶かしい文体、懐古趣味的なオブジェの羅列とその微に入り細を穿った描写、といった点でこれらの作品との類似が見られる。