「動物行動学」の版間の差分

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[[File:Moose-Imprinting-sr81-15.jpg|right|250 px|thumb|ヘラジカの刷り込み実験]]
[[File:Larus Dominicanus with young.jpg|right|250 px|thumb|カモメの雛が母鳥のくちばしにある赤い斑点をつつくのは、反射的に食物を吐き出すのを刺激するためである ]]
外界からの刺激や、内からの指示によって、動物が体のある部分で何らかの変化を起こすことである。これは単なる反応ではあるが、それが成長のような形を取らないもので、それらが一連の組み合わせで、結果としてその動物の生活に一定の役割を果たす場合に、'''行動'''という。一般に、動物は動く物”であるので、その反応には移動を伴うが、必ずしも移動しなければ行動とは呼ばないわけではない。広い意味では体色変化や発光も行動の一部である。
 
行動には、一定の機能(目的)が存在する(これは必ずしもそれを動物が認識していることを意味しない)。だから単純な反応であっても、機能があれば行動と呼び得る。たとえば人間の[[あくび]]は生理的な反応だが、講演者に横槍を入れるためにわざと大きくあくびをするのは行動である。行動は、その目的によって分類することも出来る。たとえば繁殖行動、[[探索行動]]などという呼び方をする。研究の目的によって、行動を分類するカテゴリーは異なる。
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=== 社会行動 ===
ほかの個体の現在または将来に影響を与える行動を社会行動と呼ぶ。社会行動には、行動者の絶対適応度(生存と繁殖の機会)を増大させ、他個体の適応度を減少させる[[利己的行動]]、行動者の適応度を減少させ、他の個体の適応度を増加させる[[利他的行動]]、二個体の適応度をともに増大させる[[協力行動]]、行動者が自らの適応度を減少させ、他個体の適応度を減少させる行動[[報復行動]](いじわる行動)などが存在する。
 
=== その他の分類 ===
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== 心理学(精神医学)との融合 ==
[[File:Baby with book.jpg|thumb|right|200px|エソロジーの知見は心理学に取り入れられ、人間理解に大きく貢献している]]
[[精神分析家]]であり[[児童精神医学者]]でもある[[ジョン・ボウルビィ]]は、幼児と母親の関係において動物行動学的知見が有用であることに気づき、[[ニコ・ティンバーゲン]]、[[コンラッド・ローレンツ]]、[[ロバート・ハインド]]らと交流を深めた。WHOの精神保健コンサルタントでもあったボウルビィは、人間の『[[愛着]]([[アタッチメント]])』に注目し、子どもの心の発達には養育者との愛情ある母性的関わりが必要であることを『Maternal Care and Mental Health(1951)』において発表し、[[母性的養育の剥奪]]は子どもに精神的な問題や少年非行などの深刻な影響を与えることを報告した。それまで[[フロイト]]によって説明されてきた欲動理論とは異なり、[[1969年]]から発表された『Attachment and loss』三部作において、[[乳幼児]]は世界を探索するための『[[安全基地]](secure base)』を必要とし、乳幼児の不安の多くは養育者との安全な愛着がないために起こることを指摘した。これらの研究は精神分析家の[[ルネ・スピッツ]]や[[発達心理学者]]の[[メアリー・エインスワース]]らに影響を与え、後に『[[愛着理論]]』と呼ばれる発達理論を形成した<ref>[[#小此木啓吾 他 (2002) |小此木啓吾 他 (2002) ]] p.549</ref>。
 
:''[[心理学#動物行動学からの発展|心理学 - 動物行動学からの発展]] 及び''
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=== 日本における展開 ===
古くは日本の[[精神科医]]である[[島崎敏樹 (精神科医)|島崎敏樹]]が動物行動学を学び、精神病者の[[人間学]]的理解に活用した<ref>[[#井原裕 (2006) |井原裕 (2006) ]] p.7</ref>。[[1970年]]代には、精神科医の[[市橋秀夫 (精神科医)|市橋秀夫]]が精神病患者に見られる対人距離の特異性を行動生物学的視点から説明し、空間の精神病理として研究を行った<ref>[[#市橋秀夫 (1984) |市橋秀夫 (1984) ]]</ref>。[[2000年]]以降では、精神科医の[[岡田尊司]]がボウルビィやエインスワースの愛着理論をまとめ、こころの安全基地を持つ事が病める人々の前進する鍵となることを説いている<ref>[[#岡田尊司 (2011) |岡田尊司 (2011) ]]</ref>。動物行動学を礎とし、ボウルビィやエインスワースによって地歩を固め発展してきた愛着理論は、現代において人間理解に欠かせない要素となっている。
 
== 脚注 ==
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{{Commonscat|Ethology}}
*{{Cite web |author = |date = |url = http://wwwsoc.nii.ac.jp/jes2/ |title = 日本動物行動学会 |accessdate = 2010-12-18 }}
*{{Cite web |author = |date = |url = http://www.jsaab.org |title =応用動物行動学会 |accessdate = 2013年5月-05-24 }}
*[http://www.kli.ac.at/ Konrad Lorenz Institute for Evolution and Cognitive Research] {{en icon}}
*[http://www.usask.ca/wcvm/herdmed/applied-ethology/ Applied Ethology] {{en icon}}
 
 
{{生物学}}