「ティーガーI」の版間の差分

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履帯へ動力を伝達する起動輪は車体最前部に設けられた。ティーガーI に用いられた[[履帯]]の幅は、大重量を分散して良好な接地圧を得るために前例のない725mmの幅が採用された。この大きな履帯の採用には問題が生じた。車幅に制限のある鉄道輸送に際してティーガーI の車体がはみ出し、そのままでは輸送できなくなったのである。これに対処するため、最も外側に位置する転輪を外し、520mm幅の輸送用の履帯をつけて鉄道輸送を行った。履帯は乾式で、一本のピンにより連結される。片側96枚、約3トンを連結した。接地圧は1.05 kg/[[平方センチメートル|cm<sup>2</sup>]]である<ref name=walter60>『ティーガー戦車』60頁。</ref>。履帯の交換には、熟練した乗員の場合で約25分を要した<ref name=walter118>『ティーガー戦車』118頁。</ref>。
 
ティーガーI に見られるその他の新たな機構は、油圧式のプリセレクターギアボックスと[[セミオートマチックトランスミッション]]である。ティーガーI の駆動力は、後部のエンジンから床下のカルダンシャフトを通じて車体前部の主変速機へ送られ、減速されたのちにステアリング操作をつかさどる操向変速機へと分配される。この操向変速機での動力の分配の調節により戦車は方向を変え、またはカーブしたり、後退前進を切り替える。この操向変速機から出力される動力は、さらに最終減速機へ送られ、減速されたのちに起動輪へつたえられる。起動輪は履帯を駆動させる。ティーガーはその大重量から、より軽量の車両に使われるクラッチとブレーキではなく、イギリスのメリット-ブラウン式のシングルラジアス機構の改造版が使用された。ティーガーI の操向変速機は二つのラジアス(半径)を持つヘンシェル製L600Cが用いられた。これはそれぞれのギアで二通りの一定半径での旋回が可能であり、一速での最小旋回半径は4メートル、構造的に[[超信地旋回]]も可能であった。マイバッハ製の「OLVAR」OG40-12-16主変速機は前進8速だったので、操向変速機によるステアリングには16通りの旋回半径があり、もし旋回半径を小さくしたければブレーキが使われた。後進は4速が用意された。これらのギアは手動のレバーで段を選択するもので、レバーに連動して油圧回路が閉鎖または解放され、変速は油圧によって自動的に作動した。メインクラッチは湿式多板を使用した。ステアリング操作はレバーではなく、ハンドル(ステアリングホイール)でおこなわれ、パワーステアリング式のため操作にはほとんど力がいらなかった。走行用のブレーキ、また操向変速機用のブレーキにはディスク方式が用いられた<ref name=walter5053>『ティーガー戦車』50頁から53頁。</ref>。ティーガーI の操縦機構は操作しやすく、当時使用されていた戦車の中では先進的なものであったが、本戦車は全体としては機械的に欠点がないとは言い難かった。
 
=== 欠点 ===