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== 点群の既約表現 ==
{{main|群の表現|大直交性定理}}
点群の対称操作の間の掛算関係に対応した関係をもつ行列を、その点群の'''表現行列'''といい、これらの対称操作に対応する一組の行列を、その点群の'''表現'''と呼ぶ。対称性という抽象的なものの集まりである点群は一見すると捉えどころがないように見えるので、それを目に見える具体的な形にする手段が「表現」である。一般にある1つの点群について、いくつもの表現が可能である。表現行列の性質は、その[[指標表|指標]]([[トレース]])によって特徴づけられる。指標をまとめて表にしたものを'''[[指標表]]'''と呼ぶ。
 
ある表現がより簡単な表現に分解することができる場合、その表現を'''可約表現'''と呼ぶ。これ以上は分解できない表現を'''[[既約表現]]'''と呼ぶ。可約表現から既約表現への[[直和]]分解(簡約)は、適当な[[相似変換]]によって行うことができる。なお相似変換をしても指標は変化しない。
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考えている系がある対称性をもつ場合、その系の様々な特性は、最も基本的なものを合わせることで構成されていると考えられる。点群という数学的手法で対称性を取り扱うことで、その対称性における最も基本的なもの(既約表現)は何かを知ることができる。
=== 記号 ===
点群の既約表現を表す記号には3通りある。
*[[ベーテ記号]]
::いつでも''Γ ''と書き、その下に添字として一連の番号をつける方法。
*[[マリケン記号]]
::[[群の表現|表現]]の次元数によって記号を変える。1次元の既約表現ならば''A ''もしくは''B'' 、2次元ならば''E'' 、3次元ならば''T'' とする。必要に応じてこれらに適当な添字をつける。
*[[BSW記号]](Bouckaert-Smoluchowski-Wigner記号)
::[[固体物理学]]においてよく用いられる。
=== 簡約の例 ===
[[Image:Ammonia-3D-balls-A.png|thumb|right|200px|C<sub>3v</sub>対称性をもつアンモニア分子。1つの窒素分子と3つの水素分子からなる。]]
アンモニア分子を'''''C<sub>3v</sub>'''''対称性の既約表現に分解する<ref>{{Cite book|和書|author=中島昌雄|title=分子の対称と群論|publisher=東京化学同人|year=1973|isbn=4807900862}}
</ref>。C<sub>3v</sub>の対称操作は、''E''、''C<sub>3</sub>''、''σ<sub>v</sub>''である。
 
まず適切な基底を用いて、点群の可約表現を作る。基底としてアンモニアの3つの水素原子H1、H2、H3を選んでみる。
 
* 恒等操作''E''ではそれぞれの水素原子の位置は変わらないから、表現行列は[[単位行列]]となり指標は+3。
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\end{pmatrix}
</math>
* 酸素原子を通る平面での鏡映操作では、1つの水素原子だけが変換されないので指標は+1
:<math>
\begin{pmatrix}
141行目:
*A<sub>2</sub>:{(3×1)+2(0×1)+3(1×(-1))}÷6 = 0
*E:{(3×2)+2(0×(-1))+3(1×0)}÷6 = 1
よって可約表現Γは2つの既約表現A<sub>1</sub>とEに簡約される。
:<math>\Gamma = A_1 + E</math>