「球種 (野球)」の版間の差分

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==原理==
先の通り、空中に投げられたボールは重力の影響で放物線を描く軌道となるが、ボールに回転をかける事でマグヌス効果による揚力など様々な力が影響してボールの軌道が変化する。他にボールの回転を少なくしたり、無くす事で通常とは違う変化を起こさせるものもある。ボールの回転と変化については流体力学による研究なども行なわれている。
 
===マグヌス効果===
ボールが進行方向に鉛直な回転軸を持ってスピンしている場合は重力以外に[[マグヌス効果]]が発生する。マグヌス効果によればボールが前進する事によって受ける向かい風とボールがスピンすることによって生まれる循環流れが干渉することで、進行方向に対して鉛直方向の[[揚力]]が発生してボールの軌道が変化する。そのため、回転をかける方向によって変化する方向が決定される。
 
バックスピンをかければ上向き方向の揚力が発生して[[自由落下]]の影響を抑え、直線に近い軌道を描く球筋となる。この効果が大いと、変化量により打者球が浮き上がるような錯覚を与え、体感速度も上がり、いわゆる伸びのある球となる。逆にスピン量を少なくして(毎秒10~20回転程度)マグヌス効果による揚力を小さくすることにより直球に対して落ちているように見せるのがフォークボールやチェンジアップの派生的な効果である。更に、球のスピンがトップスピンであれば下向き方向の揚力が発生して放物線よりさらに落下する軌道になる。(球種におけるカーブの変化)
 
また、スピンが横回転であれば横向き方向の揚力が発生し、上から見て右回りであれば右方向、左回りであれば左方向へ変化するボールとなる。投手の利き手方向への変化をもたらすスピンをシュート回転、逆をスライダー回転と呼ぶ。スピンがバックスピンと横回転の中間やトップスピンと横回転の中間などであれば揚力は上向きと横向き、向きと横向きなどに割り振られる。
 
野球のボールにある縫い目(シーム)がマグヌス効果を増幅させている。スピン方向に対し垂直に現れる縫い目はボールの向きによって変わり、1回転で長い縫い目が均等な間隔で4回現れるものがフォーシーム(four-seam)と呼ばれ、最も増幅の効果があるとされる。一方、フォーシーム増幅90度回転させるものた、スピンを掛けた時に縫い目が1周2回通過するように握りをツーシームと呼び、こちらはマグヌス効果による揚力が小さいとされる。いずれも、スピン量が多いほどマグヌス効果が強く発生して大きな変化が生じる。一般的な直球や変化球で毎秒30分2200回転程度であるが、非常にスピン量の多いもので403000回転以上の球を投げる投手もいる。その他、球速によっても変化が変わる。球速が速ければ重力やマグヌス効果を受ける時間が短くなり変化は小さいものとなる。球速が遅ければそれだけ重力やマグヌス効果を長く受けて大きく変化する。
 
その他、球速によっても変化が変わる。球速とスピン量には比例に近い関係ある一方、同じスピン量では球速が速ければ重力やマグヌス効果を受ける時間が短くなり、変化は小さいものとなる。球速が遅ければそれだけ重力やマグヌス効果を長く受けて大きく変化する。遅球ながらスピン量の大きい直球で活躍した投手として、[[山本昌]]、[[和田毅]]、[[上原浩治]](メジャー移籍後)、[[星野伸之]]などが挙げられる。
 
===無回転===
ボールがほとんど回転していない場合(毎秒1回転程度)はマグヌス効果による揚力は発生しないが、ボールの進行方向に対する縫い目の位置によりボールの後流の変化が大きな影響を及ぼし、揚力と抗力が発生して軌道を変化させる。ボールが僅かに回転することで縫い目の位置が変化して上下左右に後流が乱れ、それに応じ揚力と抗力が発生し、ボールが不規則に変化する。また、縫い目の位置によって後流の大きさも変化する為に減速効果も変化してボールの速度も乱れることになる。ナックルボールや無回転のフォークボールなどの変化がこれにあたる。ボールの回転が多い場合は縫い目の入れ替わりが速過ぎて一様な状態に近くなり、この効果はほとんど現れない。
 
===減速===
空中に投げられたボールは[[空気抵抗]]を受けて徐々に減速する。空気抵抗の大きさはボールの後流の大きさに影響を受けるが、ボールの後流基本的に球速が速いほど空気抵抗大きく、また回転の方向、回転数により影響を受ける。<ref>http://www.baseball-lab.jp/column/entry/194/</ref>
 
==投げ方==
ボールの握り方は球種によってそれぞれ異なるが、同じ球種でも投手によって握りが違う。これは[[投法]]や手の形などの個人差から適した握りも変わってくるためである。球種によって体の使い方も異なり、シュートなどは体を開くほうが回転をかけやすいが、逆にスライダーなどは体を開くと難しくなり、同じフォームから共に大きく変化するスライダーとシュートの両方を投げる事は難しい。また新たな球種を習得したために、それに適したフォームに変わって元々投げられた他の球種を投げられなくなる場合もある。腕の角度などの要因から[[オーバースロー]]、[[スリークォーター]]、[[サイドスロー]]、[[アンダースロー]]といった投球フォームによってそれぞれ投げやすい球種や変化させやすい球種が存在する。また、1人の投手が同じ球種を変化の角度・程度・球速などを変えて投げ分けることも多い
 
また、腕の角度などの要因から[[オーバースロー]]、[[スリークォーター]]、[[サイドスロー]]、[[アンダースロー]]といった投球フォームによって投げやすい・変化させやすい球種が存在する。
 
これについて、球界では古くから、「カーブの良い投手はシュートが良くなく、シュートの良い投手はカーブが良くない」と言われているが、シュートを大きく曲げようとして体が速く開いてしまうなどでカーブ・ストレートの質が落ちてしまうなど、新たな球種を習得したために、フォームに変化が生じ、元々投げられた他の球種を投げられなくなる場合もある。
 
1人の投手が同じ球種を変化の角度・程度・球速などを変えて投げ分けることも多い。
 
==分類==
** '''フォーシーム・ファストボール''':日本では'''ストレート'''、'''直球'''と呼ばれる直線的な軌道の速球<ref>最も落差が少なく到達時間も短い球種である事などから打たれ難く、基本になる球種とされている。なお、英語ではストレートは棒球を意味する。故に速球をストレートを呼ぶことはない。</ref>。
** '''ムービング・ファストボール''':日本では'''癖球'''あるいは'''曲球'''と呼ばれてきた。速い球速にて手元で変化させることで打ち損じ、空振りを狙う球種である。変化量などによっては変化球として認識されることもある。
*** [[速球#種類|ツーシーム・ファストボール]]:フォーシーム・ファストボール(ストレート)に近い速度で沈む球である。また、指の力加減により軌道をシュート方向にも(一部の投手はスライダー方向にも)曲げることが可能である。
*** [[速球#種類|ワンシーム・ファストボール]]:変化はツーシーム・ファストボールとほぼ同じであるが、変化量が大きいとされる。縫い目に平行に指を掛けるという握りの性質上、握力が必要かつ、器用でないと制球が難しい。
*** [[速球#種類|シンキング・ファストボール]]:ツーシーム・ファストボールやワンシーム・ファストボールの中でも特に沈む軌道を持つものを指す。
*** [[フォークボール#スプリットフィンガー・ファストボール|スプリットフィンガー・ファストボール]]:握りの浅いフォークボールの握りから投じられ、より速い球速で小さく落ちる球。
* '''ブレイキングボール''':ボールに回転をかけて軌道を変化させるボールを示す。日本でもよく「ブレーキの効いたカーブ」のように言うことがあるが<ref>この場合、カーブやチェンジアップに対して「腕の振りに対して球が遅く来ることで打者のタイミングが狂わされる」と言った「止まる」の意味合いでのブレーキである。</ref>、この場合のブレーキの綴りは「止まる」の“brake”ではなくて、「割れる・壊れる」の“break”であり、軌道が急激に変化することを表している。
** [[スライダー (球種)|スライダー]]:投手の利き腕と反対の方向に(落ちながら)曲がる球種。また、縦方向の落差が大きいものは「縦スライダー」と呼ばれる。派生として「高速スライダー」「スラーブ」「マッスラ」「スラッター」などもある。
** [[カーブ (球種)|カーブ]]:投手の利き腕と反対の方向に、山なりに曲がりながら落ちる球種。握りや速度、変化の方向などによって「スローカーブ」「パワーカーブ」「ドロップ」「ナックル・カーブ」などの派生があ分類される。
** [[シュート (球種)|シュート]]:投手の利き腕方向に曲がる球種。特に速度の速いものは高速シュートとも呼ばれ、メジャーリーグなどではムービング・ファストボールとして扱われる。
** [[シンカー・スクリューボール|シンカー]]・[[シンカー・スクリューボール|スクリューボール]]:投手の利き腕方向に曲がりながら落ちる球種。シンカーとスクリューボールの違い・アジア圏とそれ以外での定義の違いについては当該記事を参照。
* '''チェンジアップ''':速球と同じ腕の振りで投じられる遅い球全般を指し(メジャーリーグの場合)、速球と同じ腕の振りで球が遅れて打者へ向かってくることでタイミングをずらす事、指に挟んで抜くなどしてボールに回転をかけないずにボールを落とし、空振りを奪う、凡打に打ち取ることを目的とする
** [[ジャイロボール]]:ボールの進行方向に回転軸が向いている球種で、縦のスライダーに近いとされる。あまり実用的なものではないが、威力があるとの見解もある。
* '''チェンジアップ''':速球と同じ腕の振りで投じられる遅い球全般を指し(メジャーリーグの場合)、速球と同じ腕の振りで球が遅れて打者へ向かってくることでタイミングをずらす事、指に挟んで抜くなどしてボールに回転をかけない。
** (球種としての)[[チェンジアップ]]:変化量は少ないが、最も腕に負担がかからない。握りによって「サークルチェンジ」「バルカンチェンジ」などの派生がある(当該記事を参照)<ref>[[高津臣吾]]や[[高橋尚成]]、[[攝津正|摂津正]]などが投じる球速が速いタイプではないシンカーも、アメリカではチェンジアップと認識されている。</ref>。
** [[フォークボール]]:人差し指と中指の間にボールを挟んで投げ、縦に落ちる球種。
*荒れ球:制球が定まらないこと。それ自体は良いことではないが、主に速球派投手の球が荒れて、ストライクゾーンの上下左右に適度に散らばることで、投手の狙いとも打者の予想と全く異なるところへボールが来ると、逆に打ち辛くなることもある。これを意図的に利用して活かすピッチャーも居る。
*逆球:狙ったコースと逆のコースにいった球。キャッチャーの構えたコースと違うので捕球が難しい。
*フロントドア・バックドア:ベース板、左右ボールゾーンからストライクゾーンに入れる球を「ドア系変化球」と呼び、打者の内角ボールゾーンからストライクゾーンへ入れる球を、ホームベースを家となぞらえ、正面玄関から入るということでフロントドア、外角ボールゾーンからストライクゾーンを入れる球を「バックドア」と呼ぶ。ボール、特に内角の場合は[[死球]]と思わせてからストライクゾーンに入るため、意表を突ける、また、相手の打撃を崩せるなどの効果が望めるが、投げ損なった場合、ストライクゾーンに向かう球であるという性質上長打を浴びやすい球であるため、高等技術であるとされる。
 
==不正投球==
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