「交響曲第6番 (マーラー)」の版間の差分

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提示部と多声音楽について
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大編成の管弦楽を用いながらオーケストレーションは精緻であり、古典的な4[[楽章]]構成をとるが、その内容は大規模に拡大されていて、当時のマーラーの旺盛な創作力を物語っている。同時に、緊密な構成のうちにきわめて劇的な性格が盛り込まれており、純器楽的様式と、歌詞や標題とは直接結びつかない悲劇性の融合という点でも、マーラーの創作のひとつの頂点をなしている。
 
形式的には4楽章構成のほか、第1楽章の[[ソナタ形式#提示部|提示部]]繰り返しや、調性的にもイ短調で始まりイ短調で曲を閉じる一貫性を示しており、「古典回帰」を強く印象づける。その一方、[[交響曲第4番 (マーラー)|第4番]]、[[交響曲第5番 (マーラー)|第5番]]から顕著になり始めた[[ポリフォニー|多声的]]な書法はいっそうすすみ、音楽の重層的・多義的展開が前面に現れている。第5番で異化された、「暗→明」という[[ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン|ベートーヴェン]]以来の伝統的図式は、この曲では「明→暗」に逆転されていて、これを象徴する「[[イ長調]]→イ短調」の[[和音]]移行(強→弱の音量変化と固定リズムを伴う)が全曲を統一するモットーとして用いられている。
 
[[交響曲第2番 (マーラー)|第2番]]から[[交響曲第4番 (マーラー)|第4番]]までの3作が「[[少年の魔法の角笛|角笛]]交響曲」と呼ばれ、[[声楽]]入りであるのに対し、[[交響曲第5番 (マーラー)|第5番]]、第6番、[[交響曲第7番 (マーラー)|第7番]]の3作は声楽を含まない純器楽のための交響曲となっている。とくに第6番では、同時期に作曲された歌曲に『[[亡き子をしのぶ歌]]』があるが、第5番まで見られたような、相互に共通した動機や強い関連性は認められなくなっている。
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展開部では、第1主題を主に扱うが、第2主題の動機が現れ始めたところで曲調が一転し、「徐々に、いくらかテンポを抑えて」と指示された挿入部に入る。神秘的で清浄なヴァイオリンの[[トレモロ]]とチェレスタが柔和な和音を奏す。ここで、アルプスを思わせるようなカウベルの音が「遠くから」響き渡り、ホルンが提示部のコラール風の旋律を奏する。平安な雰囲気が最高潮に達したところで、再び駆り立てるような調子が戻り、木管楽器とシロフォンによって変形された主題の再現部へ入る。
 
再現部は短縮され、さらに劇性を増しているが、両主題は型どおり再現される。コーダは、第1主題に基づき[[葬送行進曲]]風に始まるが、次第に第2主題の暗示が強まる。ついに第2主題が勝ち誇ったように現れ、支配的になって、この楽章は第2主題の歓呼で結ぶ。
 
演奏時間は提示部反復を含めて21~25分程度、反復しない場合は17~21分程度。