「有機質肥料」の版間の差分

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== 植物由来 ==
=== [[藻類]]米糠 ===
; [[米糠]]
: 精米の際に生ずる糠。特殊肥料に指定されている。油粕類に比べてC/N比が高く分解が遅い<ref name=sdojo20 />。
; 発酵米糠
: 米糠を堆積発酵させたもの。特殊肥料に指定されている。北海道での[[亜麻]]栽培用に施用されていたが、現在は生産されていない<ref name=sdojo20 />。
 
=== 植物油粕類 ===
植物資源から油を搾った後の搾り滓を植物油粕類と呼ぶ。植物資源には、[[菜種]]、[[大豆]]、[[綿実]]、[[ゴマ]]、[[落花生]]などの植物の種子や[[米糠]]などがある。以下は全て、登録の有効期間が6年の普通肥料である。
; [[菜種油]]粕
: [[菜種]]から油を圧搾または[[有機溶媒]]で抽出した滓<ref name=nataneaburakasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/nataneaburakasufun.pdf 菜種油粕の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。搾油方法により3つに分けられる。それぞれ色状は異なるが、肥効に差はない<ref name=pocket />。いずれも、窒素4.5%、リン酸2.0%、加里1.0%以上を含む。
:* 圧搾滓:搾油方法が圧搾だけのもの。圧搾の前に原料は適度にせん熱される。残油分が多いことが特徴。
:* 抽出滓:搾油方法が抽出だけのもの。抽出の前に原料は[[圧偏]]機にかけられる。抽出溶媒は[[ノルマルヘキサン]]や[[ベンジン]]など。
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: 肥料取締法では菜種油粕に含まれる。
; [[大豆油]]粕
: 大豆からの油の圧搾後または有機溶媒での抽出後の滓<ref name=daizuaburakasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/daizuaburakasufun.pdf 大豆油粕の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素6.0~7.5%、リン酸1.0~2.0%、加里1.0~2.0%を含む<ref name=pocket />。
; [[綿実油]]粕(わたみあぶらかす)
: [[綿実]]の[[外果皮]](綿)を破砕して除去後、油を抽出した滓<ref name=watamiaburakasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/watamiaburakasufun.pdf 綿実油粕の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素5~6%、リン酸1~2%、加里1.5%程度を含む<ref name=pocket />。
; [[ゴマ油]]粕
: ゴマの種子から油を抽出した滓<ref name=gomaaburakasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/gomaaburakasufun.pdf ゴマ油粕の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素6~7%、リン酸1~3%、加里1~1.5%を含む<ref name=pocket />。
; [[落花生油]]粕
: 落花生の子実から油を抽出した滓<ref name=rakkaseiaburakasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/rakkaseiaburakasufun.pdf 落花生油粕の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素7.5%、リン酸1.3%、加里1.0%を含む<ref name=pocket />。
; [[ひまし油]]粕
: [[トウゴマ]]の種子から油を抽出した滓<ref name=himashiaburakasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/himashiaburakasufun.pdf ひまし油粕の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素4.0~6.3%、リン酸2.0%、加里1.2~2.0%を含む<ref name=pocket />。
; [[あまに油]]粕
: [[アマ]]の種子から冷圧であまに油を採取した滓<ref name=amaniaburakasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/amaniaburakasufun.pdf あまに油粕の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素5.0%、リン酸2.0%、加里1.5%程度を含む<ref name=pocket />。
; カポック油粕
: [[カポック]]という熱帯性[[喬木]]の種子から油を抽出した滓<ref name=kapokkuaburakasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/kapokkuaburakasufun.pdf カポック油粕の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素4.5%、リン酸2%、加里1%程度を含む<ref name=pocket />。
; 木の実油粕
: カポック種子以外の木本性植物の種子を搾油した粕の総称。[[やし]]、茶、[[オリーブ]]等の実の油粕。[[あぶらぎり]]の種子など<ref name=sdojo20 />。特殊肥料に指定されている。
; 米糠油粕
: 精米のとき廃出される米の皮部、[[胚乳]]の一部および胚の混合物から油を抽出した滓<ref name=komenukaaburakasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/komenukaaburakasufun.pdf 米糠油粕の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素2~4%、リン酸4~6%、加里1~2%を含む<ref name=pocket />。
; トウモロコシ胚芽油粕([[ジャーム粕]])
: トウモロコシ胚芽から油を抽出した滓<ref name=tomorokoshihaigaaburakasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/tomorokoshihaigaaburakasufun.pdf トウモロコシ胚芽油粕の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素全量3.0%以上、リン酸全量1.0%以上を含む<ref name=pocket />。
; くず植物油粕
; その他の植物油粕類<ref name=sohonsyokubutuaburakasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/sohonsyokubutuaburakasufun.pdf その他の草本性植物油粕の公定規格]</ref>。
: 草本性植物種子のくずを原料として使用した植物油かす及びその粉末<ref name=sdojo20 />。特殊肥料に指定されている。
: 窒素3.0%以上、リン酸1.0%以上、加里1.0%以上を含む<ref name=pocket />。
; その他の植物油粕類。
;: 登録有効期間が6年植物油粕類普通肥料である<ref name=sohonsyokubutuaburakasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/sohonsyokubutuaburakasufun.pdf その他の草本性植物油粕の公定規格]</ref>。窒素3.0%以上、リン酸1.0%以上、加里1.0%以上を含む<ref name=pocket />。
:* [[ヒマワリ油]]粕
:* [[サフラワー]]油粕
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=== 植物粕 ===
以下は全て、登録の有効期間が6年の普通肥料である。
; [[エンジュ粕]]
: [[エンジュ]]は、主に中国で栽培されているマメ科落葉高木である。エンジュは医薬品の原料([[ルチン]])を含み、エンジュ粕はルチン抽出後の残渣である<ref name=enjukasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/enjukasufun.pdf エンジュ粕の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素全量3.0%以上、リン酸全量1.0%以上、加里全量2.0%以上を含む<ref name=pocket />。
; 豆腐粕乾燥肥料
: [[おから]]を乾燥させたもの<ref name=tofukasukansofun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/tofukasukansofun.pdf 豆腐粕乾燥肥料の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。おからは、大豆を原料とした豆腐の生産において生じる副産物である。豆腐生産において大豆は脱皮、水への浸漬、摩砕、加熱されたのち、液体([[豆乳]])と固体(おから)に分離される。[[インスタント豆腐]]または[[豆腐の素]]として生産する際の副産物が多い。窒素全量4.5%程度、リン酸全量1.0%程度、加里全量1.5%程度を含む<ref name=pocket />。
; タバコ屑肥料粉末
: [[ニコチン]]抽出後のタバコ屑肥料のうち、粉末にしたもの<ref name=tabakokuzuhiryofun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/tabakokuzuhiryofun.pdf タバコ屑肥料粉末の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。タバコ屑とは、タバコの製造中に出る屑(葉柄、[[中脈]](中肋)、葉の微粉、茎)である。窒素1.0~2.0%、加里4.0~7.0%を含む<ref name=pocket />。
; [[甘草]]粕(かんそうかす)
: 甘草は中国やロシア、中近東で生産されており、その根から[[グリシルリチン酸]](調味料や医薬品などの原料)が抽出される。その抽出過程では甘草根の水浸出液は[[酸析]]処理され、[[沈殿]]からグリシルリチン酸はアルコール抽出される。甘草粕は、アルコール抽出後の滓を水洗した後に乾燥させたものである<ref name=kansokasufun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/kansokasufun.pdf 甘草根の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素全量9%程度を含む<ref name=pocket />。
; トウモロコシ胚芽
: [[コーングリッツ]]や[[コーンフラワー]]などの製造の際に出る副産物<ref name=tomorokoshihaigakuzu>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/tomorokoshihaigakuzu.pdf トウモロコシ胚芽およびその粉末の公定規格]</ref>。登録の有効期間が6年の普通肥料である。油分を多く含み、緩効性を持つ。[[マルチ資材|マルチ栽培]]向けの肥料の原料となる<ref name=pocket />。窒素全量2.0%以上、リン酸全量2.0%以上、加里全量1.0%以上を含む<ref name=pocket />。
 
=== [[緑肥]]発酵粕 ===
発酵工業で植物原料から得られた副産物。原料によって成分は一定しない。水分が多いものは早期に腐敗するため、堆肥原料に使うことが推奨されている<ref name=sdojo20 />。
緑肥とは、作物の収穫後残渣が土壌で放置されて発酵したものである。外部から投入される肥料とは別に栄養源となり、[[土壌肥沃度]]を高める。
 
=== [[藻類]] ===
ARSの研究によると、藻類は有機質肥料の材料となるだけでなく、農耕土壌からの窒素およびリンの流出を防ぎ、これら栄養素の流入による[[水圏]]の[[水質汚染|汚染]]を防止することができる。ARSは、栄養の流出を防止するためのalgal turf scrubberを開発した。栄養豊富な藻類は一度乾燥させてキュウリやトウモロコシの苗に投入されると、化学肥料の使用条件に匹敵する植物生長をもたらす<ref name=ars.usda.gov7 />。
 
=== 副産植物質肥料 ===
食品工業または発酵工業において副産されたものであって、植物質の原料に由来するもの<ref name=fukusansyokubutushitu>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/fukusansyokubutushitu.pdf 副産植物質肥料の公定規格]</ref>。しかし、農林水産省によると、[[酵母]]由来のものも副産植物質肥料に分類される。副産植物質肥料は登録期間6年の普通肥料である。
; [[醤油粕]]
: [[醤油]]を[[天然醸造法]]により製造する際の搾り滓。生産工程で塩酸が使用される場合、特殊肥料である<ref name=sdojo20 />。そうでなければ、登録の有効期間が6年の普通肥料(副産植物質肥料)に指定される。普通肥料の醤油粕は窒素3.5~4.5%を含む<ref name=pocket />。
:* 味噌粕:[[たまり醤油]]を天然醸造法により製造する際の搾り滓。窒素5.0~6.5%を含む<ref name=pocket />。
; [[味噌粕]]
; ビール粕
: [[たまり醤油]]を天然醸造法により製造する際の搾り滓。窒素5.0~6.5%を含む<ref name=pocket />。
; 焼酎粕
; ワイン粕
; ウイスキー粕
 
=== その他副産質肥料由来 ===
副産植物質肥料は食品工業または発酵工業において副産されたものであって、植物質の原料に由来するものである<ref name=fukusansyokubutushitu>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/fukusansyokubutushitu.pdf 副産植物質肥料の公定規格]</ref>。しかし、農林水産省によると、[[酵母]]由来のものも副産植物質肥料に分類される。副産植物質肥料は登録期間6年の普通肥料である。
; 植物タンパク質由来の肥料
: 味液の製造において、トウモロコシや小麦などの植物性[[タンパク質]]は塩酸で分解されてアミノ酸液が精製される。その際、副産物としてアミノ酸が泥状に固まる。この塊を乾燥させたものは肥料となる。窒素5.5~7.0%を含む<ref name=pocket />。
; 酵母由来の肥料
: 酵母由来の[[核酸]]や[[細胞壁]]が肥料として販売されている。酵母の核酸は、[[ウイスキー]]蒸留廃液、[[廃糖蜜]]の[[アルコール発酵]]廃液、酵母の抽出液から精製分離して得られる。この廃液を濃縮して乾燥したものが酵母核酸肥料となる。<ref name=pocket />
 
=== [[緑肥]] ===
緑肥とは、作物の収穫後残渣が土壌で放置されて発酵したものである。外部から投入される肥料とは別に栄養源となり、[[土壌肥沃度]]を高める。
 
=== [[藻類]] ===
ARSの研究によると、藻類は有機質肥料の材料となるだけでなく、農耕土壌からの窒素およびリンの流出を防ぎ、これら栄養素の流入による[[水圏]]の[[水質汚染|汚染]]を防止することができる。ARSは、栄養の流出を防止するためのalgal turf scrubberを開発した。栄養豊富な藻類は一度乾燥させてキュウリやトウモロコシの苗に投入されると、化学肥料の使用条件に匹敵する植物生長をもたらす<ref name=ars.usda.gov7 />。
 
=== その他 ===