「多重国籍」の版間の差分

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== 概要 ==
多重国籍の場合、複数の国家から[[国民]]としての義務([[兵役]]など)の履行を要求されたり、いずれの国家の[[外交的保護]]を認めるかという点で紛糾を生じる場合がある。このような不都合を避けるために[[1930年]]に「[[国籍の抵触についてのある種の問題に関する条約]]<ref name="oyam"/>」(国籍抵触条約、重国籍条約、国籍法抵触条約<ref>CONVENTION ON CERTAIN QUESTIONS RELATING TO THE CONFLICT OF NATIONALITY LAWS</ref><ref>[http://www.gcnet.at/un/hague-1930.htm]</ref>)が締結されている<ref>もっとも当事国は20か国にとどまっており、日本は署名したが結局批准や加入に至らなかった。</ref>。この国籍抵触条約によって、現代[[国際法]]では、「人は必ず唯一の国籍を持つべき」とする'''国籍単一の原則'''または'''国籍唯一の原則'''が基本原則である<ref name="oyam">[http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2009pdf/20090801103.pdf][http://megalodon.jp/2013-0211-2122-02/www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2009pdf/20090801103.pdf] [[参議院]]第三特別室大山尚「重国籍と国籍唯一の原則」『立法と調査』2009,8,No.295</ref>。他方、'''国籍自由の原則'''という考えもあるが、これは国籍の変更の自由などを意味し、多重国籍の自由を意味しない<ref name="oyam"/>。(後述「国籍取得における[[血統主義]]・[[出生地主義]]」)。
 
多重国籍を認めている国は、[[アメリカ合衆国]]、[[ロシア]]、[[カナダ]]、[[メキシコ]]、[[コロンビア]]、[[ブラジル]]、[[ペルー]]、[[パラグアイ]]、[[ウルグアイ]]、[[イギリス]]、[[アイルランド]]、[[フランス]]、[[イタリア]]、[[スイス]]、[[ポルトガル]]、[[フィンランド]]、[[スロバキア]]、[[オランダ]]、[[スペイン]]、[[デンマーク]]、[[チェコ]]、[[ギリシャ]]、[[イスラエル]]、[[トルコ]]、[[ナイジェリア]]、[[モロッコ]]、[[南アフリカ共和国]]、[[コートジボワール]]、[[オーストラリア]]、[[ニュージーランド]]、[[台湾]]、[[フィリピン]]などであるが、原則としては認めないが例外として認める場合や、条件付の場合など状況は各国において様々である。[[イスラエル]]や[[ヨーロッパ]]諸国などでも条件付で二重国籍を容認している状況にある。ヨーロッパでは無国籍のこどもが発生するという事案などから、「すべてのひとは国籍を取得する権利がある」とする[[国籍取得権]]の観点から、1997年の[[国籍に関するヨーロッパ条約]]において、出生や婚姻などで多重国籍となった場合には容認しなければならないという規定が盛り込まれた<ref name="oyam"/>。アメリカ合衆国では、二重国籍を認めてはいるものの、積極的には容認していない。出生時に自動的に他国の国籍を得た場合は、アメリカ国籍に影響を与えないが、アメリカ人は米国籍を放棄する意志を持って、自らアメリカ以外の国籍を得た場合は、アメリカ国籍を失う可能性がある<ref>{{Cite web |date= |url=http://japanese.japan.usembassy.gov/j/acs/tacsj-dual.html|title=アメリカ市民サービス > 二重国籍 |publisher=在日アメリカ大使館 |accessdate=2014-8-23}}</ref>。また、ブラジルなどは自国民の'''国籍離脱を認めていない'''ため、他国の国籍を取得すると必然的に二重国籍となる。
 
また、多重国籍を認めている国でも、[[政府]]要職に就任する人物が多重国籍である場合は国家の権力行使において問題視されることがあるため、多重国籍者の政府要職者就任禁止が規定されていることがある。
 
多重国籍の利点は、国籍を保有する国における生活の利便などがあるが、他方、短所としては、[[主権在民]]の観点から複数の国の[[主権]]としてふるまうことの矛盾があげられる<ref name="oyam"/>。たとえば、韓国は兵役の義務を国民に課しているが、日本と韓国の多重国籍である国民がいる場合など<ref name="oyam"/>。ただし、日本の[[法務省]]によれば、韓国は日本での居住者には兵役の義務を免除する法律があるため、そのような矛盾は発生しないとされる<ref name="oyam"/>。このほか、[[犯罪]]人の引渡し、重婚などがあげられている<ref name="oyam"/>。
 
=== 国籍取得における血統主義と出生地主義 ===
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[[出生地主義]]とは、本人が生まれた時点での出生地に国籍を付与する方式である。かつてヨーロッパ諸国も血統主義が一般的であったが、[[アメリカ独立]]、[[フランス革命]]を経て[[出生地主義]]が一部の国で採用されるようになった。出生地主義の国には、[[アルゼンチン]]、[[カナダ]]、[[アメリカ合衆国]]、[[ブラジル]]などがある。
 
両親のいずれもの国籍が血統主義である場合、子は多重国籍になる<ref name="homu"/>。このほか、たとえば[[日本人]]の子として[[出生地主義]]の国に生まれた場合や、[[外国人]]との婚姻などで外国国籍を取得した日本国民、また、[[帰化]]して日本国籍を取得したあとも以前の外国国籍を持ちつづける場合などがある<ref name="homu"/>。日本などの血統主義の方式の国家においては、いずれかの国籍を選択する必要・義務があり、手続きをとらない場合は日本国籍を喪失する<ref name="homu"/>。ただし、訓示規定に従わないから直ちに国籍を剥奪するようなことはない<ref name="oyam"/>。また、日本でも両親が不明または無国籍である場合は、例外的に出生地主義を採用し国籍付与を認めている<ref name="oyam"/>。
 
また、[[アメリカ合衆国]]は多重国籍を容認しているが<ref>川北対合衆国事件[[合衆国最高裁判所]][[判例]]により</ref>、海外での血統主義の国などにおいて多重国籍が問題となるような場合、その国での要求が優先されるとして、[[米国政府]]は多重国籍を方針としては支持していない<ref name=US_EMBASSY>[http://megalodon.jp/2013-0211-2016-13/japanese.japan.usembassy.gov/j/acs/tacsj-dual.html]在日米国大使館アメリカ市民サービス「二重国籍」</ref>。米政府が多重国籍を公式に支持しない理由は、アメリカ国民が国民に義務を要求する場合に、他方の国の法律と反するような状況に陥ったり、また二重国籍者が他方の国で問題となった場合、米政府が自国民として保護することが制限される場合があるためとしている<ref name=US_EMBASSY/>。
 
== 日本の実情 ==