「精神医学」の版間の差分

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*社会的な治療
:家庭環境や職場環境の調整、[[ジョブコーチ]]、[[訪問看護]]、[[デイケア]]、[[自助グループ]]([[断酒会]])など
 
WHOは「患者への処置(治療)や拘束(入院)が長期間に渡る場合には、機械的に定期レビューが実施される制度が存在していなければならない」との方針をを示している<ref name="who1996">{{Cite report|author=Division of Mental Health and Prevention of Substance Abuse |publisher=[[World Health Organization]] |date=1996 |id=WHO/MNH/MND/96.9 |url=http://www.who.int/mental_health/media/en/75.pdf }}</ref>。
 
=== 外来治療 ===
{{Seealso|デイケア|アウトリーチ}}
 
=== 入院治療 ===
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日本の精神科病床数は[[2007年]](平成19年)で351,188で、日本の病床の21.7%を占める<ref>[http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/07/kekka02.html 平成19年(2007)医療施設(動態)調査・病院報告の概況「病床の種類別にみた病床数」] [[厚生労働省]]大臣官房統計情報部 2011年6月25日閲覧</ref>。 これらは社会的な理由(たとえば周囲からの目線、家族が対応することができないなど)により退院できないという、いわゆる「[[社会的入院]]」をしている患者も[[2002年]]現在で約72,000人ほどいて<ref>[http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/bukyoku/syougai/j1.html 新障害者基本計画及び重点施策実施5か年計画(新障害者プラン)について] 全国厚生労働関係部局長会議資料 厚生労働省[[障害保健福祉部]] 平成15年1月21日 2011年7月16日閲覧</ref>、なかなか病棟が減らない状況にある{{要出典|date=2011年6月}}。また、社会的入院患者も含めて、人を強制的に監禁するのは人権問題であるという声も徐々に増えている
 
=== 外来治療 ===
{{節stub}}
 
{{-}}
== アウトカム評価 ==
精神医学においても「[[根拠に基づく医療]]」が求められている{{Sfn|OECD|2014|loc=Executive Summary}}。これはある介入と、そのアウトカム(結果)の因果関係を求め、介入の有効性を評価するというものである。他の医学領域では、評価するアウトカムとして、数値で表すことのできる生体データを用いることが多い。しかし、精神科領域ではこのような客観的なデータが得られにくいため、重症度を評価する評価尺度の点数や、自殺の有無、入院期間などをアウトカムとして用いている。イギリス保健省はHealth of the Nation Outcome Scales(HoNOS)を策定し、国家レベルにてアウトカム評価に用いている{{Sfn|OECD|2014|loc=Country press releases - UK}}。これらのデータに基づき、[[米国精神医学会]](APA)、[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)などのガイドラインが作成されている。
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== 課題 ==
=== スティグマ ===
{{Main|精神障害#スティグマ}}
大規模疫学調査による重症患者の未治療率の算出などからもわかるように、患者に対する[[偏見]]や[[差別]]は相当根強く、『精神病患者=頭がおかしい危険人物』という誤解も見られる。例えば未だに「精神病院に行ったほうがいい」などという言葉が相手を[[侮辱]]する意図で使われているし、退院できる患者の家族から「一生入れたままにして、戻してくれるな」と言われることもある。
 
何もかもを「こころの問題」として捉え、あらゆる事を精神医学的に解決させようとする風潮や、誤った医療知識による科学偏重主義(つまり精神医学とは科学的事実に基づかない疑似医学か?)、[[マスコミ]]が[[犯罪報道]]の際に「[[犯人]]には[[精神科]]通院歴があり……」と安易に偏見を煽ったり(''[[附属池田小事件]]の項を参照'')、完全無欠のはずがない医療者を完全でない、という理由で断罪したりという問題も発生している。
 
=== 操作的診断基準に関わる問題 ===
[[20世紀]]半ばから[[生物学]]的精神医学や[[精神薬理学]]が急速な進歩を遂げた現代に至っても、いまだ[[ヒト]]の[[高次心理過程]]の[[研究]]は[[生物学#生物学の今後|途上の段階]]にある。従って、特に精神医学分野は他の医学分野に比べ、[[根拠に基づく医療]]が不十分とされることがある<ref name="r7">{{Cite book|author=American Psychiatric Association|year=2006|title=Practice Guidelines for the Treatment of Psychiatric Disorders}}</ref><ref name="r8">{{Cite book|author=American Psychiatric Association|year=2003|title=Evidence-Based Practices in Mental Health Care}}</ref>。
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しかしまだ実際に罹患している患者の症状が快方に向かっても、家族や社会が受け入れず入院が長期化してしまうこともある。
 
==== 対症心理療法(薬物治療など)に関わる問題の欠如と行き過ぎた多剤投与 ====
{{Seealso|日本の精神保健#心理療法の欠如と行き過ぎた多剤投与}}
軽度の抑うつの場合や、[[向精神薬]]を用いた[[薬物治療]]などの[[対症療法]]に抵抗がある場合、あるいは心因性精神疾患など[[医薬品|薬物]]の効果が現れにくい場合や、[[発達障害]]・慢性化精神疾患など急激的な改善が期待されにくい場合を中心に、[[精神療法]]や[[心理カウンセリング]]、または[[作業療法]]や[[言語療法]]など、[[化学]]的アプローチではない治療法を患者が希望することがある<ref name="r13">{{Cite web|author=医学書院|date=2007|url=http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02744_01|title=患者さんとともに考える,認知行動療法――そのメソッド,エッセンスを日常診療に生かす|accessdate=2010-11-03}}</ref><ref name="r14">{{Cite web|author=医学書院|date=1998|url=http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1998dir/n2309dir/n2309_01.htm|title=精神医学の現在と今後の展望「専門医のための精神医学」発刊によせて|accessdate=2010-11-03}}</ref>。
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このような現状から、[[2010年]]には精神療法の一種である[[認知療法]]・[[認知行動療法]]に関して、「入院中ではない患者」について「当該の療法に習熟した医師」が「30分以上を診療に要した」場合「16回までに限り」[[医療保険|保険]]適用になると[[診療報酬]]が改定され、注目された<ref name="r19"/>。しかし、上記のように、臨床現場において精神療法は主に臨床心理士が担当することが多く<ref name="r13"/><ref name="r17"/>、その一種である認知療法・認知行動療法に「習熟した」精神科医を含む医師の絶対数が少ないこと<ref name="r13"/><ref name="r18"/><ref name="r19"/>、および、そもそも臨床心理士は[[専門職大学院]]等の指定[[大学院]]修了を課す高度な専門資格であるものの、現状では[[民間資格]]であるため、診療報酬規定に明記できないことなど<ref name="r13"/><ref name="r20">{{Cite web|author=医学書院|date=2010|url=http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02867_01|title=患者さんの考え方や行動の幅を広げる認知行動療法|accessdate=2010-11-03}}</ref>、精神科医療の本質的な問題は棚上げにされたままの制度改定との指摘もある<ref name="r13"/><ref name="r20"/>。
 
一方、多くの精神科医らが所属する[[日本精神神経学会]]・[[日本精神神経科診療所協会]]・[[精神科七者懇談会]]は、[[2005年]]当時には「臨床心理士及び[[医療心理師]]法案」をめぐって、それまでは両資格の[[法案]]一本化に合意し推進していたにも関わらず、[[国会]]上程の土壇場で反対に回るという一件があったものの<ref name="r21">{{Cite web|author=日本精神神経科診療所協会|date=2005|url=http://www.japc.or.jp/pdf/17.7.20sinnri.pdf|title=臨床心理士及び医療心理師法案要綱骨子に対する (社)日本精神神経科診療所協会の見解|format=PDF|accessdate=2010-11-03}}</ref><ref name="r22">{{Cite web|author=日本精神神経科診療所協会|date=2005|url=http://www.japc.or.jp/pdf/17726/shitumonjou.pdf|title=公開質問状|format=PDF|accessdate=2010-11-03}}</ref>、近年は[[日本心理学諸学会連合]]らからなる[[心理職]]国家資格化推進三団体との意見交換会に臨むなど、精神科医療にとっての転換点である心理職[[国家資格]]創設に向けて肯定的に関わっており<ref name="r23">{{Cite web|author=全国保健・医療・福祉心理職能協会|date=2010|url=http://www.onyx.dti.ne.jp/~psycho/NL062_prolog.html|title=意見交換の進展と今後の課題|accessdate=2010-11-03}}</ref>、こうした精神科医関連団体の協力姿勢2015年歓迎は国家資格期待の視線が注がれいる<ref name="r23"/>[[公認心理師]]が法成立した
 
=== スティグマ ===
{{Main|精神障害#スティグマ}}
大規模疫学調査による重症患者の未治療率の算出などからもわかるように、患者に対する[[偏見]]や[[差別]]は相当根強く、『精神病患者=頭がおかしい危険人物』という誤解も見られる。例えば未だに「精神病院に行ったほうがいい」などという言葉が相手を[[侮辱]]する意図で使われているし、退院できる患者の家族から「一生入れたままにして、戻してくれるな」と言われることもある。
 
何もかもを「こころの問題」として捉え、あらゆる事を精神医学的に解決させようとする風潮や、誤った医療知識による科学偏重主義(つまり精神医学とは科学的事実に基づかない疑似医学か?)、[[マスコミ]]が[[犯罪報道]]の際に「[[犯人]]には[[精神科]]通院歴があり……」と安易に偏見を煽ったり(''[[附属池田小事件]]の項を参照'')、完全無欠のはずがない医療者を完全でない、という理由で断罪したりという問題も発生している。
 
=== 精神医学に対する論争 ===