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『'''ランスロまたは荷車の騎士'''』(ランスロまたはにぐるまのきし、''Lancelot, le Chevalier de la charrette'')は、[[11651177年]] - [[11901179年]]([[1181年]]とも)頃 [[クレティアン・ド・トロワ]]とラニー・ド・ゴドフロワ・ド・ラニー(Godefroi de Lagni/Godefroy de Lagny)により著作された[[韻文]]<ref>この叙事詩は、平韻八音綴(ヒョウインハチオンテイ)で書かれている。</ref>の[[騎士道物語]]。
 
== 概要 ==
ゴール(Gorre, Goirre)国の王ボードマギュ(Bademagu)の息子メレアガン(Meleagant)に王妃[[グィネヴィア|グニエーヴル]]が誘拐<ref>王妃の拉致は、アーサー王伝説の最古のモチーフの一つであり、[[モデナ大聖堂]]の[[飾り迫縁]]に刻まれた[[カラドック・オブ・スランカーファン]](Caradoc of Llancarvan)による[[ギルダス|ギルダス伝]](Vita Gildae)にも登場する。e.g. [http://ci.nii.ac.jp/els/110008430456.pdf?id=ART0009679421&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1472199727&cp= 花田文男『奪われた王妃』] [[千葉商科大学]]紀要 第48巻第2号2011年3月p.27 </ref>され、その後の彼女の救出を中心とした[[ランスロット|ランスロ]]の行動を描く。この物語は、王妃グニエーヴルを救おうとする騎士ランスロの試練、及び宮廷風恋愛の規則に束縛される戦士かつ恋人としての義務の板挟みになる彼の苦闘が描かれている。
 
クレティアンは、[[1168年]]頃<ref>ヴェルダン=ルイ・ソーニエ[[:fr:Verdun-Louis Saulnier|(フランス語)]]『中世フランス文学』 [[神沢栄三]]・[[高田勇]]共訳 1990年 [[文庫クセジュ]] [[白水社]] ISBN 978-4-560-05711-7 p.61</ref>お抱え詩人として仕えるシャンパーニュ伯夫人マリー([[マリー・ド・フランス (1145-1198) |マリー・ド・フランス]])から、北フランスの吟遊詩人によって流行し始めていた『貴婦人と騎士の主従関係における宮廷風恋愛』をテーマに作品を書くよう命令されたため、その時書いていた[[イヴァンまたは獅子の騎士]]を中断と並行してこの作品に取り掛かっを著述した。しかしクレティアンは、不倫を扱うこのテーマが気に入らなかったのか、ランスロがメレアガンによって城に閉じ込められるところまで<ref> 6150行目以降ゴドフロワ・ド・ラニーが執筆(全7134行)</ref>で執筆を放棄し、同僚の詩人ゴドフリーロワ・ド・ラニー(Godefroi de Lagny)に完成を委ねた。6つの写本が残存する<ref>[[加藤恭子]] 著 『アーサー王伝説紀行―神秘の城を求めて』1992年 中公新書 ISBN 978-4121010629 p.31</ref>。
 
この作品が人気を博した後、このテーマは[[ランスロ=聖杯サイクル]]に継承され、さらに[[トマス・マロリー]]の[[アーサー王の死]]に組み込まれることになった。
 
== 梗概 ==
『ランスロまたは荷車の騎士』は、従わざるを得ないようアーサー王を騙す謎の騎士<ref>この時点ではこの謎の騎士がゴール国の王子メレアガンであることは知らされていない。</ref>に王妃が誘拐される話から始まる<ref>『ランスロまたは荷車の騎士』 [[神沢栄三]]訳</ref>。
 
会食中のアーサー王宮廷に突如あらわれた謎の騎士は「自分の国に王の騎士や家族たちをとらえている。王にひとりでも信頼できる騎士がいて、わたしの行く森に王妃とともに来るというならば、そこで待とう。もしそこでわたしと戦って勝てば、王妃とわたしの国に囚えている者をみな返す」と嚇す。[[ケイ (アーサー王伝説)|クー]]は一計を案じて王に暇をいただきたいと申し出る。翻意を促す王の説得に対しクーは、王妃を自分にあずけて森で待つ騎士のあとを追うという条件を出す。仕方なく王は武装したクーと王妃を送り出すことにする。このとき王妃は「あの方がいてくれれば」と小さな声でつぶやくが、『あの方』が誰を指すのかはずっと後まで明かされない。[[ガウェイン|ゴーヴァン]]が抗議し、彼らを追跡すべきだと主張したので、王はゴーヴァンの意見を聞き入れ皆で追跡することにする。
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その後メレアガンは謀略を弄しランスロを出口のない高い塔に幽閉してしまう。
クレティアン・ド・トロワは、これ以降書き続けることを放棄する<ref>7134行中6150行以降、ゴドフリーロワ・ド・ラニーがエピローグを結辞まで執筆しており、その旨を書いている。</ref>。
 
ここから先はゴドフリー・ド・ラニーが話を続け完成させている。ランスロは、以前出会ったときにメレアガンを追跡する道を教わったあの乙女によって幽閉から助け出されるが、実は彼女はメレアガンの妹であった。メレアガンの妹はランスロの好意に報いるために彼の求めるものを探す。彼女は斧を見つけ、ランスロットが食物を引き上げるためのロープで斧を引き上げる。ランスロは逃げ道を考え出し、彼女の人里離れた家に彼女と一緒に逃げる。