「ヴィクトリア十字章」の版間の差分

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[[Image:Turner VC f&b.JPG|right|thumb|200px|ヴィクトリア十字章]]
'''ヴィクトリア十字章'''(ヴィクトリアじゅうじしょう、Victoria Cross)は、[[イギリス]]および[[英連邦王国]]構成国の軍人に対し授与される最高の戦功章。敵前での勇敢な行為を対象とした顕彰にける第1レベルの賞とされる[[勲章#クロス|クロス章]]であり、受章者は'''“VC”'''の[[ポスト・ノミナル・レターズ]]<ref group="注" name="ポスト・ノミナル・レターズ">[[:en:Post-nominal letters|Post-nominal letters]]/名前の後に付ける爵位、勲位、学位等の略称。</ref>を使用することが許される{{#tag:ref|デコレーションの中には[[ポスト・ノミナル・レターズ]]の使用が認められていないものもある<ref>''London Gazette'': no. 56878. p. 3353-3353. 14 March 2003. Supplement No.1.</ref>。|group=注}}。[[グレートブリテン及び北アイルランド連合王国]]およほとんどの[[英連邦王国]]構成国にいては、[[ポスト・ノミナル・レターズ]]<ref group="注" name="ポスト・ノミナル・レターズ"/>の記載順位や佩用序列が全ての勲章・記章の最上位に位置付けられている<ref>''London Gazette'': no. 56878. p. 3353. 14 March 2003. Supplement No.1.</ref>。
 
イギリスの[[勲章]]は[[勲章#オーダー|オーダー]](Order)と[[勲章#デコレーション|デコレーション]](Decoration)に分けられ、デコレーションには[[勲章#クロス|クロス]](Cross)、[[勲章#メダル|メダル]](Medal)およびデコレーション{{#tag:ref|メダルとクロスもデコレーションに含まれるが、名称が“〜Decoration”となっているものもあり、これらは概ねオーダーより下位に位置する<ref>[[#小川|小川]] P 93</ref>。|group=注}}の種類があるが、受章者によって騎士団が形成され、[[勲位]]が与えられるのはオーダーだけであり、ヴィクトリア十字章を含むクロスやメダル、あるいは章の名称に“Decoration”が付く章は、功績や栄誉に対して与えられる功労章あるいは記章である<ref>[[#小川|小川]] P 87-119</ref>。そして、クロス章は勲章とは言えないとする見方もあるので<ref>[[#君塚|君塚]] P 16</ref>、本項では「ヴィクトリア十字章」とするが、それらも広い意味での勲章ではあり、日本では'''ヴィクトリア十字勲章'''<ref>リチャード・ホームズ 『戦闘-戦闘と戦争の歴史を知る 古代の戦闘から、第一次世界大戦まで』 ジェフ・ダン&ジェフ・ブライトリング写真、同朋舎出版、1997年3月。ISBN 978-4-8104-2249-8。P 58</ref>あるいは'''ヴィクトリアクロス勲章'''<ref>『ワイド版/第二次世界大戦全史 別冊1 - 勲章記章軍装』矢野庄介訳、ツル・インターナショナル社、1968年。p 1</ref>と表記されることも多い。
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ヴィクトリア十字章授与の告知は、伝統に従い[[ロンドン・ガゼッタ]]紙で行われる。
 
メダルは幅35mm35ミリメートルの十字形で、王冠にライオンの像がかたどられ、"For Valour(勇気に対して)"の文字が刻まれている。付属する勲符、リボンを含めた重量は27g27グラムほどである。同一人が再度受章する場合は、リボンに付ける飾板のみが授与され、略綬に描かれるヴィクトリア十字が増える。
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File:Victoria Cross Bar.jpg|複数回受章者用飾版。
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「敵前において勇気を見せた軍人」に対してのみ授与される。そのため、軍を指揮する将軍、参謀などに授与されることはない。また、“勇気”の基準が厳しく、世界各国において制定されている戦功章の中で最も受章が困難な勲章であるといわれている。
 
クロス章は一般的にはオーダーより下位に位置するが、ヴィクトリア十字章の佩用位置やポスト・ノミナル・レターズ([[:en:Post-nominal letters|Post-nominal letters]])<ref group="注" name="ポスト・ノミナル・レターズ"/>を列記する際の順番は「あらゆる勲章・記章の上位」とされている<ref group="注">ポスト・ノミナル・レターズではその上に[[準男爵]](Baronet)以上の[[爵位]]が位置付けられる。</ref>。このような特別な扱いのクロス章にはほかに[[ジョージ・クロス]]があり、ヴィクトリア十字章と最高位のオーダーである[[ガーター勲章]]の間に位置する。[[ジョージ・クロス]]はヴィクトリア十字章に匹敵する勇気を“敵前以外の場所”で見せた場合に与えられる。この2つの十字章は受章者の団体を共有しており、名称を“[[:en:Victoria Cross and George Cross Association|Victoria Cross and George Cross Association]]”としている。
 
[[オーストラリア]]、[[カナダ]]、[[ニュージーランド]]等の英連邦王国に属する国では、イギリス本国の勲章の一部について自国の勲章を代わりに制定しているが、最高の戦功章はヴィクトリア十字章あるいはその国のヴィクトリア十字章であるとしている。[[1993年]]に制定されたカナダ・ヴィクトリア十字章は[[ラテン語]]の代わりに[[英語]]の文字が刻まれている([[2005年]][[8月]]現在受章者はいない)。
 
== 授与 ==
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1856年から合計1,355のヴィクトリア十字章が授与されている。当初はイギリス本土出身の生存者のみに授与されていたが、[[20世紀]]初頭には死後にも授与されるようになり、その対象もイギリス軍指揮下にある全ての軍人となった。[[1914年]]、[[インド]]人兵士に対して[[植民地]]出身者として初めて授与された。
 
一日あたり最も多くの受章者を出した戦闘は[[1857年]][[11月16日]][[第一次インド独立戦争]]([[セポイの乱]])における[[ラクナウ]](Lucknow)包囲戦である。この日の戦功に対し24のヴィクトリア十字章が贈られている。一度の戦闘において最も多くの受章者をしたのは[[ズールー戦争]]におけるロークス・ドリフト([[:en:Rorke's Drift|Rorke's Drift]])の防衛戦([[1879年]][[1月22日]])で、この戦闘では11個のヴィクトリア十字章が授与された。また[[ボーイスカウト]]運動の創始者[[ロバート・ベーデン・パウエル]]卿も、[[ボーア戦争]]における[[マフェキング]]の包囲戦での功績に対してこれを贈られている。
 
[[第一次世界大戦]]においては、最終的に633名に授与された。そのうち187名は死後の授与である。一例として、ウォルター・リッチーの名を挙げる。彼は[[ソンムの戦い]]の初日、部隊の仲間とともにドイツ軍の塹壕に突入し、ドイツ軍の反撃に晒され仲間が全員死んだ後も「突撃せよ!」と叫び続け、士気を鼓舞した功績による。
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これまでにヴィクトリア十字章を2度受章したのはイギリス出身の衛生兵であるNoel Chavasse、Arther Martin Leake、[[ニュージーランド]]出身のCharles Uphamの3名のみである。
 
[[第二次世界大戦]]において、例外的に[[アメリカ軍]]の[[無名兵士]]に対して授与された。これへの返答として、[[名誉勲章]]がイギリスの無名兵士に対してられている。
 
[[日本]]に関連したところでは、[[下関戦争]]における戦功から、以下の2名のイギリス人と1名のアメリカ人に授与されている。
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* [[ウイリアム・シーリー]] [[:en:William_Henry_Harrison_Seeley|William Seeley]] (アメリカ人)
 
このほか、第二次世界大戦中の1945年8月9日に[[女川湾]]での戦闘で最後のカナダ人戦死者となった海軍パイロット、[[:en:Robert Hampton Gray|ロバート・ハンプトン・グレー]]大尉にもられた。
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