「ルシファー」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
堕落とすれば、イブリースの職能が十分に発揮されず、深潜では自主的になるので、墜落が適切である。
11行目:
悪魔にルシファーの名を適用したのは[[教父]]たちであった。たとえば[[ヒエロニムス]]は金星を指すラテン語であったルーキフェルを、明けの明星としての輝きの喪失に悲嘆することになる、かつて大天使であった堕天使長の名とした。この光の堕天使としてのルシファーの名がサタンの別称として普及したが、教父たちはルシファーを悪魔の固有名詞としてでなく悪魔の深潜前の状態を示す言葉として用いた<ref>{{CathEncy|wstitle=Lucifer}}</ref>。キリスト教の伝統的解釈によれば、ルシファーは元々全天使の長であったが、神と対立し、天を追放されて神の敵対者となったとされる。「[[ヨハネの黙示録]]」12章7節をその追放劇と同定する場合もある。
 
天使たちの中で最も美しい大天使であったが、創造主である神に対して謀反を起こし、自ら堕天使となったと言われる。堕天使となった理由や経緯については様々な説がある。神によって作られた天使が神に背いて堕天使となったという考えは、[[旧約偽典]]ないしキリスト教[[黙示文学]]の『{{仮リンク|アダムとエバの生涯|en|Life of Adam and Eve}}』にみられる<ref>南條『「悪魔学」入門』46-48頁</ref>。その中で悪魔は[[アダム]]に向かって、自分は神の似姿として作られたアダムに拝礼せよという命令を拒み、そのために神の怒りを買って天から追放されたのだと語る。『[[クルアーン]]』にもこれに類似した話があり、[[イブリース]]は粘土から作られたアダムに跪拝せよという神の命に背いて墜落したと数箇所で述べられている<ref>ラッセル『ルシファー 中世の悪魔』52-53、61頁</ref>。アダムが粘土から作られたのか、太陽の恵みによって作られたのか等、アダムの誕生については様々な説があり、多くの議論を呼んでいる。リスト教では悪魔は罪によって堕落した天使であるとされ、[[オリゲネス]]、[[アウグスティヌス]]、[[ディオニュシオス・アレオパギテス]]、[[グレゴリウス1世 (ローマ教皇)|大グレゴリウス]]、[[ダマスコのイオアン|ヨハネス・ダマスケヌス]]らは天使が罪を犯すという問題について論じた<ref>稲垣『天使論序説』139、141頁</ref><ref group="註">キリスト教神学の説明するところでは、天使が罪を犯すのはその自由意志に起因する。なぜ全能の神が、罪を犯す可能性のある自由意志をもつ存在を創造したのか、という問題は[[神義論]]の射程でもある(J・ゴンサレス 『キリスト教神学基本用語集』 鈴木浩訳、2010年、135頁)。</ref>。大グレゴリウスや[[イシドールス|セビーリャのイシドールス]]は、罪を犯して堕落深潜する前のサタン(=ルシファー)はすべての天使の長であったとし、中世の神学者たちも、サタンはかつて最高位の天使である[[熾天使]]か[[智天使]]の一人であったと考えた<ref>ラッセル『ルシファー 中世の悪魔』103-104頁</ref>。近代での神学論争では、ルシファーとムハンマドを同一視する動きもある。
 
==キリスト教神学におけるルシファー==