「ボーイズ対戦車ライフル」の版間の差分

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|作動方式=[[ボルトアクション方式]]
|発射速度=最大毎分10発
|銃口初速= 866.670 [[ヤード|yd]]/[[秒|s]](747 m/s)※.55 Boys Mk.I 使用時
|有効射程=300 [[ヤード|yd]](274.32m)
|重量=35 [[ポンド|lb]](15.875kg)
|全長=5 [[フィート|ft]] 7 in(1,575mm)
}}
'''ボーイズ<ref>日本では"''Boys''"を"ボイス"と表記している例もみられる</ref>対戦車ライフル'''({{lang-en-short|Rifle, Anti-Tank, .55in, Boys}})は、[[イギリス]]で開発された[[対戦車ライフル]]である。
 
== 概要 ==
[[1937年]]に[[イギリス軍]]が採用した[[ボルトアクション方式]]の[[対戦車ライフル]]で、その名は開発者のH.C.ボーイズ(H. C Boys)[[大尉]]に因む。[[1934年]]より開発が行われて[[1936年]]に[[プロトタイプ|試作]]第1号が完成したもので、当初予定された名称は"Stanchion anti-tank rifle(Rifle, Anti-Tank, .55in, Stanchion)"であったが、採用直前に死去したボーイズ大尉を偲んで改名された。
 
36[[インチ]](914.44mm)に達する[[銃砲身|長銃身]]より発射される13.9mm弾は、通常の[[小銃]]と比較すると遥かに高い破壊力と貫通力があり、[[戦車]]の他に[[掩体壕|掩蔽壕]]や[[機関銃|機銃]]座・非装甲車両などに対しても用いられ、[[ユニバーサル・キャリア]]や[[ダイムラー偵察車]]に[[ブレン軽機関銃]]の代わりに載せて限定的な対戦車能力を付したものもあった。
 
当初使用された.55 Boys弾は90度垂直に立てられた[[装甲|装甲板]]に対し、100[[ヤード]](91.4m)の距離で通常弾で12mm、[[徹甲弾]]を用いて18mmの貫通能力を持っていたが、対戦車ライフルとしては初速が低いため、特に遠射性能が低く、性能は優れたものではなかった。そこで、[[弾丸|銃弾]]を軽量化するなどして初速を向上させる改良が成され、改良型の.55 Boys Mk.IIでは70度の[[装甲#傾斜装甲|傾斜装甲]]に対して100ヤードで20mmの貫通能力を持つようになった。だが、-Mk.IIが配備された頃には既にこのような性能ではほとんどの戦車の装甲には通用しなくなっていた。
 
各国の対戦車ライフルと同様、大戦初期の戦車に対しては有効であったものの、戦争が進むにつれて戦車の[[装甲]]が強化され、[[対戦車兵器]]としての意義が薄れたこと、また、対戦車ライフルより軽量で効果的な[[PIAT]]が登場したことで、[[1943年]]に取って代わられる形で運用を終えた。しかし、装甲の薄い[[日本軍]]戦車に対しては充分に効果的で、遮蔽物や掩体越しの対人射撃にも大きな威力を示し、[[太平洋戦争|太平洋戦線]]での運用は大戦後期まで続いた。
 
1937年より-[[1940年]]までの総生産数は、[[イギリス]]、[[カナダ]]合わせて約62,000丁である。
 
== 構成 ==
本銃は[[機関砲]]に似た外観を持ち、一見すると[[自動火器]]のようにも見えるが、[[ボルトアクション方式]]の手動連発銃である。通常のボルトアクションライフルと異なり、給弾は脱着可能な[[弾倉#ボックスマガジン|箱型弾倉]]を用いて上部から行われる。全長は約1.6m、重量は16kgと、通常の[[小銃]]に比べると遥かに大きく重たく、[[銃砲身|銃身長]]だけで1mもあった。
 
[[銃口]]部に制退器([[マズルブレーキ]])を備え、接地部を横に幅広く取ったT字型として支柱内に衝撃緩衝装置を備えた[[単脚]]を持ち、さらに[[射撃]]時には[[|銃身]]部全体が25mmほど後座して反動を緩和する構造を持っている。床尾には革で包まれた分厚いゴムパッドが装着されており、これらにより[[口径|大口径]]弾の強烈な反動をかなり抑えることに成功しているが、それでも連続射撃は射手に首や肩の痛みをもたらした。本銃の特徴として、銃把(グリップ)が通常の銃器とは逆に前方に傾斜していることが挙げられるが、これも、強烈な反動を受け流しやすくすることにより銃把を握っている手首を傷めることを防ぐためのものである(ただし、握り辛いと不評であった)。
 
[[照準器]]は300[[ヤード]](274.32m)と500ヤード(457.2m)の2段階可変式だが、最後期の生産分は距離表示のない固定式となっていた。照準器の精度はさほど高いものではなかったため、後には小銃用の望遠照準器(ライフルスコープ)を装着できるマウントアダプターも用意された。
 
使用する[[弾薬]]は.55[[口径]](13.97mm)弾で、[[リム_ (実包)#ベルテッド|ベルティッド]]と呼ばれる、[[薬莢]]底部が帯状に肉厚になっている形状の弾薬を用いる。初期型の.55 Boys mkMk.Iは60gの[[徹甲弾]]を初速747m/sで、後期型の.55 Boys Mk.IIは47.6gの徹甲弾を初速884m/sで発射する。威力は-Mk.II500ヤードで垂直18.8mm、100ヤードで垂直23.2mmの装甲板を貫通できた。貫通力の向上を狙い、[[タングステン]]を用いた弾芯を初速945m/sで撃ち出す[[高速徹甲弾|HVAP]]弾も開発されていた。
 
これらの他に、射撃訓練用に使用される22口径弾用の[[実包]]形アダプターがあり、これを用いた場合には[[:en:.22 Long Rifle|.22LR弾]]を発射できた。
 
<gallery widths="200px" heights="180px">
画像:55boys.png|使用弾薬の.55 Boys 13.9mm ベルテッド弾
画像:Boys_anti-tank_rifle_muzzle.JPG|銃口部の円形制退器<br />後方(画面左側)のものは前方照準器(照星)
画像:Boys_anti-tank_rifle_rear_sight.JPG|機関部前部<br />画面中央部奥側のものが後部照準器(照門)
</gallery>
 
== 各型および派生型 ==
ボーイズ対戦車ライフルは基本的に1形式しかなく、外見の差異は公式には「製造所の違い」とされているが、便宜的に初期/後期型の区分が成されている他、主に使われた.55B弾に初期型のMk.Iと後期型のMk.IIの2種類があることから、Mk.I/IIとする分類もある。
 
; Mk.I
: 緩衝装置内蔵のT字型[[単脚]]と円形の銃口制退器([[マズルブレーキ]])を装備。[[イギリス]]本土、[[バーミンガム]]の[[バーミンガム・スモール・アームズ|BSA(Birmingham Small Arms Trade Association)]]社で製造された。
: 「初期型」とも呼称される。
; Mk.I*
: 緩衝装置のない単純な構造のV字型[[バイポッド|二脚]]と長方形の側面に孔のある"ハーモニカ型"銃口制退器を装備。[[カナダ]]、[[トロント]]のイングリス社([[:en:John_Inglis_and_Company|John Inglis and Company|イングリス]]社で製造された。
: 「後期型」とも呼称され、-I*を指して“Mk"Mk.II”II"とされることもある。
英語版]])で製造された。
:「後期型」とも呼称され、-I*を指して“Mk.II”とされることもある。
 
この他、 [[エアボーン|空挺部隊]]向けに[[|銃身]]を30[[インチ]](762mm)に短縮してマズルブレーキを廃止した短縮型が[[プロトタイプ|試作]]されており、"Mk.II”II"もしくは“Airborne”("Airborne"(空挺型、の意)と仮称されていたが、制式採用は成されなかった。現地改造で銃身を短縮したものも存在し、これらは主に[[太平洋戦争|太平洋戦線]]で用いられている。この他、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]ではイギリスより導入したボーイズの銃身を独自に[[ブローニングM2重機関銃]]のものに交換した[[12.7x99mm NATO弾|.50口径弾]]使用型を改造により製造している。
 
== 使用国 ==
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== 登場作品 ==
;=== 映画 ===
:; 『[[ラット・パトロール]]』
:: [[1960年代]]に製作されたアメリカのテレビ映画(連続テレビドラマ)。[[ドイツ国防|ドイツ軍]][[装甲車]]として登場する[[M3ハーフトラック]]の車上に搭載されている。
 
;=== アニメ ===
:; 『[[ストライクウィッチーズ]]』
:: リネット・ビショップがハーモニカ型[[マズルブレーキ|銃口制退器]]を装着したものを使用している。なお、T字型[[単脚]]およ[[二脚]]は装着されていない。
 
;=== 漫画 ===
:; 『[[ワイルド7]]』
:: [[|銃身]]を短縮し、運搬時に二分割できる構造のストレート形[[]]製ライフル[[銃床|ストック]]を装着、[[弾倉]]を使わずに手動装填の単発式とし、[[照準器|ライフルスコープ]]を装着したカスタムモデルが登場する。
:: 第4話「コンクリート・ゲリラ」では主人公の飛葉が[[狙撃]]に用い、第19話「谷間のユリは鐘に散る」ではストックが後床のないピストルグリップ形に変更されており、ユキがバイクのハンドル部に取り付け、[[市街地]]を走りながら発射する派手なアクションを見せる。
 
== 脚注・出典 ==