「沸騰石」の版間の差分

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[[画像:Siedesteinchen.jpg|250px|thumb|right|市販の実験用沸騰石]]
'''沸騰石'''(ふっとうせき)とは、[[液体]]を[[加熱]]して[[沸点]]に到達した後の急激な[[沸騰]](突沸)を防ぐために目的であらかじめ液体中に加えておく[[石]]、または[[多孔質]]物体。'''ケミカルストーン'''ともいう
 
液体を加熱すると、その液体の成分や加熱条件によっては、沸点に達しても沸騰しない場合がある。この状態を[[過熱 (相転移)|過熱]]状態と呼び、一種の[[準安定状態]]である。この過熱状態のときに、物理的な衝撃や異物が液体に加えられると液体から[[気体]]への[[相転移#第一種相転移|相転移]]が起き、液体全体に広がる(突沸)。液体から気体への相転移では[[体積]]の[[膨張]]が大きいので、液体や[[蒸気]]が飛散し、[[事故]]が起こる可能性がある。そのため、突沸を防ぐために目的で沸騰石をあらかじめ液体中に加えておく。
 
== 原理 ==
日常の中で[[水]]を加熱した場合は、[[二酸化炭素]]、[[酸素]]など[[溶解|溶存]]していた[[空気]]成分が加熱によって[[飽和]]状態(温度が上がると水に溶ける気体の量が少なくなる。[[溶解度]]を参照。)になり、溶けなくなった空気成分が小さな[[泡]]を作る。この泡が沸騰(相転移)の核となるため突沸は比較的起こりにくい。しかし同じように水を加熱した場合でも、極弱火で非常にゆっくりと水温を上げた場合や、[[電子レンジ]]を用いるなど短時間で温度を上げた場合は、溶けていた気体が[[過飽和]]のまま微小気泡が発生せず過熱状態となるため突沸が起こる可能性が高い。
 
そこで液体中に常に相転移の核になる微細気泡を存在させれば、突沸を防ぐことができる。液体に[[毛細管]]や多孔質物質を加えておく、あるいは加熱中に[[マグネチックスターラー#攪拌子|攪拌子]]で攪拌(かくはん)する、などの方法がある。沸点測定の場合は毛細管の先端から連続的に[[泡|気泡]]が発生する温度を測定する。
 
毛細管の内面が完全に濡れて気泡が失われてしまうと突沸を防ぐ機能が失われてしまうため気泡を含んだ微細孔を多数もつ素材が利用される。一般には素焼の小片などが利用され、沸騰石と呼ばれる。あるいは[[ガラス]]に空気を練り込んだものでもよく、すなわちガラス沸騰石もよく使われる。それ以外の材質でも多孔質の素材が沸騰石として製品化されている。
 
沸騰石であっても、一度火を落として温度を下げてしまうと、気体部分の蒸気が液化して微細管の中に液体を引き込んで表面の気泡が失われてしまうため、沸騰石の性質を失ってしまう。したがって、温度を下げ沸騰を停止させたら、加熱する前に新しい沸騰石を追加する必要があるほか、一度使用した沸騰石は微細孔が不溶物でふさがっていたりするので完全に乾いていても再使用してはならない(「沸騰石は使い捨て」と考えるべきである)。また、過熱状態において沸騰石を投入すると逆に突沸を誘発するので、加熱の途中で沸騰石を投入するようなことは行ってはならない。家庭においても、水や[[牛乳]]などを加熱したのち、[[砂糖]]などをいきなり加えたり衝撃を与えたりすると、沸騰石の働きをしてしまうため突沸が起こる場合があるとされている<ref>[http://home.tokyo-gas.co.jp/shoku110/qas/531_c.html [[東京ガス]]:食の生活110番Q&amp;A:突沸現象]</ref>。[[味噌汁]]についても突沸の例が報告されており、[[出汁|だし]]入りの[[味噌]]、[[ステンレス鋼|ステンレス]]三層[[鍋]]を使う場合には注意が必要であるとされている<ref>[http://d-wise.org/b9902/consumption.pdf 「ホームエコノミストワイズ」'99.2所収「全国消費センター商品テスト・トラブル情報」p.5-7 <『だし入り味噌汁とステンレス鍋』大阪府立消費生活センター>]</ref>。
 
== 材質 ==
内部に多数の孔があり、ここに閉じめられた気泡が沸騰の核になって突沸を防ぐ。溶かして気泡を混ぜ込んだ[[ガラス]]が用いられたり、直径1mm程1ミリメートルほどの[[素焼き]]の粒が市販されている。このほか投入先の液体の性質を損なわず、液体によって沸騰石自体が分解されるおそれがない多孔質のものであれば、基本的に材質は問わない。実験の精密さを求めないのであれば、[[割り箸]]などでも代用可能である。[[コーヒー]]をいれる[[コーヒーサイフォン|サイフォン]]では多くの場合、[[鉄]]の[[鎖]]が使われている。
 
== 脚注 ==
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== 関連項目 ==
* [[沸騰]]
* [[毛細管]]
* [[過冷却]]
* [[差し水|差し水(びっくり水)]]
 
<!-- == 参考文献 == -->
 
== 外部リンク ==
* [http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0100a/contents/3350/3350.html 沸とう石  理科ねっとわーく(一般公開版)] - 科学技術振興機構
 
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