「人頭税」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
10行目:
 
== 歴史 ==
[[古代]]から[[封建制]]にかけての時代には多くの国で導入されていたが、所得に対して逆進性の強い税制であるため、[[2014年]]現在では導入している国はほとんどない。
[[古代]]から[[封建制]]にかけての時代には多くの国で導入されていたが、所得に対して逆進性の強い税制であるため、2014年現在では導入している国はほとんどない。[[所得]]が無くてもそこに住んでいるだけで課税されるため、困窮した庶民が逃亡したりすることもあった。逆にこれを利用して、特定の民族を排斥する意図で導入されることもあり、19世紀後半の[[カナダ]]では増加した[[華僑|中国系]]の排斥を目的に人頭税を課した事例がある<ref>{{cite news |title=中国人コミュニティー動揺 カナダ、富裕外国人への移民プログラム大幅見直し |newspaper=[[産経新聞]] |date=2014-4-19|url=http://sankei.jp.msn.com/world/news/140419/amr14041910060006-n1.htm |accessdate=2014-4-29 | author=黒沢潤 }}</ref>。また、[[19世紀]]末から[[20世紀]]中頃までの[[アメリカ合衆国南部]]では、[[人種差別]]目的で人頭税の支払いを投票資格の要件とする[[アメリカ合衆国の州|州]]があったが、1964年発効の[[アメリカ合衆国憲法修正第24条|憲法修正第24条]]により租税滞納を理由とする投票権剥奪が禁止された。
 
[[古代]]から[[封建制]]にかけての時代には多くの国で導入されていたが、所得に対して逆進性の強い税制であるため、2014年現在では導入している国はほとんどない。[[所得]]が無くてもそこに住んでいるだけで課税されるため、困窮した庶民が逃亡したりすることもあった。逆にこれを利用して、特定の[[民族]]を排斥する意図で導入されることもあり、[[19世紀]]後半の[[カナダ]]では増加した[[華僑|中国系]]の排斥を目的に人頭税を課した事例がある<ref>{{cite news |title=中国人コミュニティー動揺 カナダ、富裕外国人への移民プログラム大幅見直し |newspaper=[[産経新聞]] |date=2014-4-19|url=http://sankei.jp.msn.com/world/news/140419/amr14041910060006-n1.htm |accessdate=2014-4-29 | author=黒沢潤 }}</ref>。また、[[19世紀]]末から[[20世紀]]中頃までの[[アメリカ合衆国南部]]では、[[人種差別]]目的で人頭税の支払いを投票資格の要件とする[[アメリカ合衆国の州|州]]があったが、1964年発効の[[アメリカ合衆国憲法修正第24条|憲法修正第24条]]により租税滞納を理由とする投票権剥奪が禁止された
[[古代ローマ]]には[[カピタティオ・ユガティオス制]]があり、中世[[ヨーロッパ]]、[[ロシア]]にも存在していた。
 
[[アメリカ合衆国南部]]では、19世紀末から[[20世紀]]中頃まで、[[人種差別]]目的で人頭税の支払いを投票資格の要件とする[[アメリカ合衆国の州|州]]があった。[[1964年]]発効の[[アメリカ合衆国憲法修正第24条|憲法修正第24条]]により、租税滞納を理由とする投票権剥奪が禁止された。
かつての[[中華人民共和国|中国]]には人頭税に相当する[[口算]]や[[力役]]があり、[[均田制]]においては[[丁 (曖昧さ回避)|丁]]を単位に[[租庸調]]が課されていたが、[[780年]]の[[両税法]]により資産額への課税に移行している。
 
[[古代ローマ]]には、人頭税と[[土地税]]が融合した[[カピタティオ・ユガティオス制]]があり、中世[[ヨーロッパ]][[ロシア]]にも存在していた。
[[イスラーム]]諸王朝では、[[ジズヤ]](jizya)が知られている。ジズヤは非ムスリム(イスラム教徒)に対して一定程度の人権の保障の見返りとして課せられるもので、非ムスリムに対しイスラームの優位を誇示する効果があった。非ムスリムがイスラームへ改宗した場合には免除された([[ウマイヤ朝]]時代には改宗した場合でも徴収された)。
 
かつての[[中華人民共和国|中国]]、かつて人頭税に相当する[[口算]]や[[力役]]があり、[[均田制]]においては[[丁 (曖昧さ回避)|丁]]を単位に[[租庸調]]が課されていたが、[[780年]]の[[両税法]]により資産額への課税に移行している。
[[1990年]]に[[イギリス]]で[[マーガレット・サッチャー]]政権時代に導入された例があるが、国民世論の反発が強く1990年[[11月22日]]に辞任する一因となり、[[1993年]]に廃止された(イギリスでは個人ではなく家に[[住民税]]がかかる)。
 
[[イスラーム]]諸王朝では、[[ジズヤ]](jizya)が知られている。ジズヤは非ムスリム([[イスラム教徒]]でない者)に対して一定程度の人権の保障の見返りとして課せられるもので、非ムスリムに対しイスラームの優位を誇示する効果があった。非ムスリムがイスラームへ改宗した場合には免除された([[ウマイヤ朝]]時代には改宗した場合でも徴収された)。
2014年にイラクとシリアの一部を実効支配する過激派組織[[ISIL]]が、支配地域内のキリスト教徒に対して人頭税を要求した事例がある。これは先述のジズヤと絡み、復古的なイスラーム支配を目指すものと指摘された<ref>{{Cite news
 
[[1990年]]に[[イギリス]]では、[[マーガレット・サッチャー]]政権時代の[[1990年]]に導入された例があるが、国民世論の反発が強く1990年[[11月22日]]に辞任する一因となり、[[1993年]]に廃止された(イギリスでは個人ではなく家に[[住民税]]がかかる)。
 
2014年にイラクとシリアの一部を実効支配する過激派組織[[ISIL]]が、支配地域内の[[キリスト教徒]]に対して人頭税を要求した事例がある。これは先述のジズヤと絡み、復古的なイスラーム支配を目指すものと指摘された<ref>{{Cite news
| url=http://www.yomiuri.co.jp/world/20140719-OYT1T50113.html
| title=「イスラム国」が殺害示唆、キリスト教徒脱出
30 ⟶ 34行目:
 
=== 日本 ===
[[日本]]では、[[薩摩藩|薩摩]]支配下の[[琉球王国]]により[[宮古島]]・[[八重山諸島]]において「正頭(しょうず)」と呼ばれる15歳から50歳まで([[数え年]])の男女を対象に[[1637年]]から制度化され、[[年齢]][[性別]][[身分]]、居住地域の耕地状況(村位)を組み合わせて算定された額によって賦課が行われた([[古琉球]]時代説もある)。この税制度は平均税率が八公二民と言われるほどの重税であり、しかも農作物の収穫が少ない年でも払わなければならず島民を苦しめた。この正頭は[[廃藩置県]]後も旧琉球王国の既得権益層への懐柔のために執られた[[旧慣温存]]策により存続したが、[[1893年]]([[明治]]26年)に[[中村十作]]、城間正安、平良真牛、西里蒲ら4人により、[[沖縄本島]]の官憲や士族らの妨害を乗り越えて、国会請願書が当時[[内務大臣 (日本)|内務大臣]]であった[[井上馨]]に届けられた。中村の同郷([[新潟県]])の[[読売新聞]]記者である[[増田義一]]の記事で国民に周知されるところとなり、世論の後押しも受け第8回[[帝国議会]]において[[1903年]](明治36年)廃止され、[[本土]]と同様の[[地租]]に切り替えられた<ref>高良倉吉「人頭税」(『国史大辞典 15』(吉川弘文館、1996年) ISBN 978-4-642-00515-9)</ref>。
 
== 学者の見解 ==