「プランク定数」の版間の差分

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{{物理定数
|英語= Planck constant
|記号= {{mvar|h}}
|値= {{val|6.626070040|(81)|e=-34|u=J s}}
|不確かさ= 1.2{{e-|8}}
|語源= [[マックス・プランク]]
}}
{{物理定数
|名称= 換算プランク定数<br/>[[ディラック定数]]
|英語= reduced Planck constant<br/>Dirac's constant
|記号= {{mvar|&#x127;}}
|値= {{val|1.054571800|(13)|e=-34|u=J s}}
|不確かさ= 1.2{{e-|8}}
|語源= [[ポール・ディラック]]
}}
'''プランク定数'''(プランクていすう、プランクじょうすう、{{Lang-en|Planck constant}})は、[[量子論]]を特徴付ける[[物理定数]]である。量子力学の創始者の一人である[[マックス・プランク]]にちなんで命名された。[[作用 (物理学)|作用]]の[[量の次元|次元]]を持ち、作用量子とも呼ばれている。[[国際単位系|SI]]における単位は[[ジュール]][[秒]](記号: J s)である。
 
== 記号 ==
プランク定数は、記号 {{mvar|h}} で表される。この記号は[[プランクの法則|プランクの輻射公式]]を説明する定数としてプランク自身の論文の中で導入されている。Hilfsgröße(Hilfs =補助、größe =大きさ、量)の頭文字に由来する。
 
== 概要 ==
[[光子]]の持つエネルギー('''エネルギー量子''')ε){{Mvar|&epsilon;}} は[[振動数]]ν {{Mvar|&nu;}} [[比例]]し、その[[比例定数]]がプランク定数と定義される<ref>[[#nobel|1921年 ノーベル物理学賞(アインシュタイン)]]</ref>
:<math>\epsilon = h\nu.</math>
光のエネルギー {{mvar|E}} は光子の持つエネルギーの倍数の値のみを取り得る
:<math>E = nh\nu.</math>
 
プランク定数の値は
:<math>\begin{align}h&=6.626\,070\,040(81)\times 10^{-34}\,\mathrm{J\,s}\\
h &=64.626135\, 070667\, 040662(8125)\times 10^{-3415}\, \mathrm{JeV\, s} \\end{align}</math>
&=4.135\ 667\ 662(25)\times 10^{-15}\ \mathrm{eV\, s}\end{align}</math>
である(2014年[[CODATA]]推奨値<ref>[[#h|CODATA Value]]</ref><ref>[[#hev|CODATA Value]]</ref>)。
 
また、プランク定数 {{mvar|h}} を [[円周率]] {{mathmvar|&pi;}} の2倍で割った量 {{math|{{Sfrac|''h''/|2''&pi;''}}}} もよく使われるため、「'''[[換算プランク定数]]'''」、或いは単に「プランク定数」と呼ばれている。ときに「[[ディラック定数]]」と呼ばれることもある<ref>[http://[#dictionary.reference.com/browse/dirac's+constant |The American Heritage® Science Dictionary, 2002]]</ref>。ディラック定数には、プランク定数に用いられる記号 {{mvar|h}} に[[ストローク符号]]を付けた記号 [[Ħ|&#x127;]](H WITH STROKE, LATIN SMALL LETTER、[[Unicode]] U+0127、[[JIS X 0213]] 1-10-93)が使われており、量の記号に[[イタリック体]]を用いる約束に従って、専用の記号として &#8463;(PLANCK CONSTANT OVER TWO PI、[[Unicode]] U+210F 、[[JIS X 0213]] 1-3-61)も用意されている。また[[TeX|{{TeX}}]] には数式記号 <math>\hbar</math>(<code>\hbar</code>)が用意されている。{{mvar|&#x127;}} は「エイチバー」と発音される。
 
ディラック定数の値は
:<math>\begin{align}\hbar&=1.054\,571\,800(13)\times 10^{-34}\,\mathrm{J\,s}\\
\hbar &=16.054582\, 571119\, 800514(1340)\times 10^{-3416}\, \mathrm{JeV\, s} \\end{align}</math>
&=6.582\, 119\, 514(40)\times 10^{-16}\, \mathrm{eV\, s}\end{align}</math>
である(2014年[[CODATA]]推奨値<ref>[[#hbar|CODATA Value]]</ref><ref>[[#hbarev|CODATA Value]]</ref>)。
 
=== 黒体放射 ===
[[Image:RWP-comparison.svg|thumb|300px|温度 8 mK の[[黒体]]の[[ヴィーンの放射法則|ヴィーン]]、[[プランクの法則|プランク]]、[[レイリー・ジーンズの法則|レイリー]]の3式の比較]]
1896年に[[ヴィルヘルム・ヴィーン]]が[[黒体放射]]におけるエネルギー分布に関する[[ヴィーンの放射法則]]を提案した。この式はそれ以前の実験で得られていた高振動数領域では測定値をよく説明したが、新たに得られた低振動数の領域では合わなかった。1900年にプランクが低振動数領域でも測定値と一致するようにヴィーンの理論式を修正する形で[[プランクの法則]]を提案した<ref>{{Harvtxt|Planck|1900a}}</ref><ref>{{Harvtxt|Planck|1900b}}</ref><ref>{{Harvtxt|Planck|1900c}}</ref>。高振動数の領域ではヴィーンの理論式に移行する内挿的な公式である。[[ジョン・ウィリアム・ストラット (第3代レイリー男爵)|レイリー卿]]は古典的な[[エネルギー等分配則]]から低振動数極限における近似式の形を提案し、[[ジェームズ・ジーンズ]]がその係数を正しく与えた。[[レイリー・ジーンズの法則]]と呼ばれるこの式は、プランクの理論式から導かれる低振動数極限の形と係数を含めて一致した。
 
プランクが彼の公式の理論的な説明を与える過程で、光のエネルギーの受け渡しは大きさ {{mvar|h&nu;}} を単位としてのみ起こり得る、という仮定をした<ref group="注">プランクは光は振動子をもち、その振動によって波を放出すると考えた。ここで言う受け渡しとは振動子と波の間におこるエネルギーの受け渡しの事である[[#plankplanck|『熱輻射と量子』]] M.Planck 非可逆的な輻射現象について の頁を参照。</ref><ref group="注">この仮定が必要となった謂れ経緯については[[#plankplanck|『熱輻射と量子』]] M.Planck 正常スペクトル中のエネルギー分布の法則について の頁を参照。</ref>。ここに {{mvar|h}} が後にプランク定数と呼ばれるようになった普遍定数である。
 
=== 光電効果 ===
[[アルベルト・アインシュタイン]]はプランクの理論の影響を受け、1905年、[[光]]が[[粒子]]のような性質を持つという[[光子|光量子仮説]]を提唱し[[光電効果]]を説明した。光量子仮説では、プランクとは別の方法でエネルギー量子の存在を説明した<ref>[[#einstein{{Harvtxt|『光量子論』]] AEinstein|1969|loc=&sect;.Einstein 輻射の本質と構造 に関するわれわれ頁を参照見解の発展について}}</ref>。アインシュタインの光電効果の考えは、1916年に[[ロバート・ミリカン]]によって行われた実験にて確かめられた。ミリカンがこの実験から求めた定数 {{Mvar|h}} の値は、プランクが黒体放射から得た値とよく一致した。
 
== 理論 ==
プランク定数は[[量子論]]的な[[不確定性関係]]と関わる定数であり、{{math|''h'' &rarr; 0}} の極限で量子力学が[[古典力学]]に一致するなど、量子論を特徴付ける定数である。
 
[[軌道角運動量]]や[[スピン角運動量|スピン]]は常に換算プランク定数の定数倍になっている。例えば、[[電子]]のスピンは {{math|&plusmn;{{Sfrac|''&#x127;''/|2}}}} である。なお、[[量子力学]]の分野では[[プランク単位系]]や[[原子単位系]]を用いる場合が多く、その場合の電子のスピンは {{math|&plusmn;{{Sfrac|1/|2}}}} となる。
 
プランク定数は[[位置]]と[[運動量]]の積の[[量の次元|次元]]を持ち、不確定性関係から[[位相空間 (物理学)|位相空間]]での面積の最小単位であるとも考えられているが、{{要出典|=最近では Zurek その他の研究で、[[量子]][[カオス理論|カオス系]]においてはプランク定数以下の[[ミクロ]]構造が現れる事がわかった。|date=2012年11月}}
 
プランク定数は[[位置]]と[[運動量]]の積の[[量の次元|次元]]を持ち、不確定性関係から[[位相空間 (物理学)|位相空間]]での面積の最小単位であるとも考えられているが、{{要出典|=最近では {{enlink|Wojciech H. Zurek|Zurek|p=off|s=off}} その他の研究で、[[量子]][[カオス理論|カオス系]]においてはプランク定数以下の[[ミクロ]]構造が現れる事がわかった<ref>{{Harvtxt|date=2012年11月Zurek|2000}}</ref>。
 
== 質量の定義 ==
{{see also|新しいSIの定義}}
プランク定数は[[アボガドロ定数]]同様、質量の単位にとってかわる可能性がある。[[2013年]]に提案された[[新しいSIの定義]]案においては、プランク定数を {{Val|6.62606957|e=−34|u=s{{sup-|&minus;1}} m<{{sup>|2</sup>}} kg}} と定義することにより、別に定義される[[メートル]]と秒に依存してキログラムが定義されている。
 
プランク定数は[[アボガドロ定数]]同様、質量の単位にとってかわる可能性がある。[[2013年]]に提案された[[新しいSIの定義]]案においては、プランク定数を {{Val|6.62606957|e=−34|u=s{{sup|&minus;1}} m<sup>2</sup> kg}} と定義することにより、別に定義される[[メートル]]と秒に依存してキログラムが定義されている。
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Reflist}}
{{Reflist|group="注"}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
 
== 参考文献 ==
=== 原論文 ===
* {{Cite book|和書
* {{Cite journal|last=Planck|first=Max|authorlink=マックス・プランク|url=http://theochem.kuchem.kyoto-u.ac.jp/Ando/planck1901.pdf|format=[[Portable Document Format|PDF]]|title=On the Law of Distribution of Energy in the Normal Spectrum|journal=[[アナーレン・デア・フィジーク|Annalen der Physik]]|publisher={{仮リンク|Wiley-VCH Verlag|de|Wiley-VCH Verlag|en|Wiley-VCH}}|volume=4|page=553 ff|language=[[英語|English]]|year=1900|month=October|ref={{SfnRef|Planck|1900a}}}}
|author
* {{Cite journal|last=Planck|first=Max|authorlink=マックス・プランク|title=Ueber das Gesetz der Energieverteilung im Normalspectrum|url=http://www.physik.uni-augsburg.de/annalen/history/historic-papers/1901_309_553-563.pdf|format=[[Portable Document Format|PDF]]|journal=[[アナーレン・デア・フィジーク|Annalen der Physik]]|publisher={{仮リンク|Wiley-VCH Verlag|de|Wiley-VCH Verlag|en|Wiley-VCH}}|language=[[ドイツ語|German]]|volume=309|issue=3|pages=553–563|date=October 19, 1900|ref={{SfnRef|Planck|1900b}}}}
|title=熱輻射と量子
* {{Cite journal|first=M.|last=Planck|authorlink=マックス・プランク|date=December 14, 1900|title=Zur Theorie des Gesetzes der Energieverteilung im Normalspektrum|url=http://www.christoph.mettenheim.de/planck-energieverteilung.pdf|format=[[Portable Document Format|PDF]]|journal=[[ドイツ物理学会|Deutsche Physikalische Gesellschaft]]|language=[[ドイツ語|German]]|volume=2|pages=237-245|ref={{SfnRef|Planck|1900c}}}}
|series=物理学古典論分叢書
* {{cite journal|author=A. Einstein|authorlink=アルベルト・アインシュタイン|title=Über einen die Erzeugung und Verwandlung des Lichtes betreffenden heuristischen Gesichtspunkt|url=http://www.physik.uni-augsburg.de/annalen/history/einstein-papers/1905_17_132-148.pdf|format=[[Portable Document Format|PDF]]|trans_title=光の発生と変脱とに関するひとつの発見法的観点について|journal=[[アナーレン・デア・フィジーク|Annalen der Physik]]|series=Ser. 4|publisher={{仮リンク|Wiley-VCH Verlag|de|Wiley-VCH Verlag|en|Wiley-VCH}}|location=[[ヴァインハイム|Weinheim]]|language=[[ドイツ語|German]]|volume=322|issue=6|pages=132–148|date=March 17, 1905|lccn=50013519|issn=0003-3804|oclc=5854993|doi=10.1002/andp.19053220607|bibcode=1905AnP...322..132E|ref=harv}}
|others=物理学史研究刊行会 編
* {{cite journal|author=A. Einstein|authorlink=アルベルト・アインシュタイン|title=Zur Theorie der Lichterzeugung und Lichtabsorption|url=http://www.physik.uni-augsburg.de/annalen/history/einstein-papers/1906_20_199-206.pdf|format=[[Portable Document Format|PDF]]|trans_title=光の発生と光の吸収の理論について|journal=[[アナーレン・デア・フィジーク|Annalen der Physik]]|series=Ser. 4|publisher={{仮リンク|Wiley-VCH Verlag|de|Wiley-VCH Verlag|en|Wiley-VCH}}|location=[[ヴァインハイム|Weinheim]]|language=[[ドイツ語|German]]|volume=325|issue=6|pages=199–206|date=March 13, 1906|lccn=50013519|issn=0003-3804|oclc=5854993|doi=10.1002/andp.19063250613|bibcode=1906AnP...325..199E|ref=harv}}
|publisher=[[学校法人東海大学出版会|東海大学出版会]]
* {{Cite journal|first=Wojciech Hubert|last=Zurek|authorlink=:en:Wojciech H. Zurek|date=25 September 2000|url=http://www.nature.com/nature/journal/v412/n6848/pdf/412712a0.pdf|title=Sub-Planck structure in phase space and its relevance for quantum decoherence|trans_title=位相空間におけるサブ・プランクスケールの構造と量子デコヒーレンスとの関係|format=[[Portable Document Format|PDF]]|location=[[ロンドン|London]]|publisher={{enlink|Nature Publishing Group|p=off|s=off}}|journal=[[ネイチャー|Nature]]|volume=412|pages=712-717|issn=0028-0836|oclc=01586310|ref=harv}}
|isbn=4486001117
 
|ref=plank
=== 書籍 ===
}}
; 洋書
* {{Cite book|和書
* {{Cite book|url=http://dictionary.reference.com/browse/dirac's+constant|chapter=dirac's constant|title={{enlink|The American Heritage Dictionary of the English Language|The American Heritage® Science Dictionary|p=off|s=off}}|edition=1st|location=[[ボストン|Boston]]|publisher={{enlink|Houghton Mifflin Harcourt|p=off|s=off}}|date=January 25, 2005|asin=B001P5HDQI|oclc=56356196|ncid=BA73925776|isbn=0618455043|ref=dictionary}}
|author=A. Einstein
; 和書
|title=光量子論
* {{Cite book|和書|title=熱輻射と量子|series=物理学古典論分叢書|editor=物理学史研究刊行会(編)|translator=前川太市・辻哲夫・江渕文昭|publisher=[[東海大学出版部|東海大学出版会]]|date=1970-05|id={{全国書誌番号|69001601}}|isbn=4486001117|ncid=BN0095811X|oclc=674052206|asin=4486001117|ref=planck}}
|series=物理学古典論分叢書
* {{Cite book|和書|first=A.|last=Einstein|title=光量子論|series=物理学古典論分叢書|editor=物理学史研究刊行会(編)|translator=[[高田誠二]]・[[広重徹]]・上川友好|publisher=東海大学出版会|date=1969-04|id={{全国書誌番号|21579698}}|isbn=4486001125|ncid=BN00957809|oclc=675079787|asin=4486001125|ref=harv}}
|others=物理学史研究刊行会 編
|publisher=東海大学出版会
|year=1969
|isbn=4486001125
|ref=einstein
}}
 
== 外部リンク ==