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{{See Wiktionary|企業や組織などの収入・支出の計画}}
'''予算'''(よさん)とは、[[収入]]や[[支出]]の[[計画]]<ref name="koujien">広辞苑第六版【予算】</ref>、また、一[[会計年度]]における(中央政府や地方政府の)[[歳入]]・[[歳出]]の計画<ref name="koujien" />。
{{国際化|領域=日本|date=2014年10月31日 (金) 01:15 (UTC)}}
'''予算'''(よさん、budget)とは、[[収入]]や[[支出]]の[[計画]]<ref name="koujien">広辞苑第六版【予算】</ref>、また、一[[会計年度]]における(中央政府や地方政府の)[[歳入]]・[[歳出]]の計画のこと<ref name="koujien" />。
 
日本語の「予算」には一定期間の収入と支出の予定や計画という意味があり、政府だけでなく企業や家計といった経済主体でも策定される<ref>{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=75 }}</ref>。予算には、中央政府や地方政府などが歳入や歳出に関して編成する公会計のものと、企業などが収入や支出に関して編成する私会計のものとがある。一方、英語のバジェット(budget)は、もともと予算書を入れる革鞄を語源としており、一般的には政府が策定する強制力に裏打ちされた拘束力のある文書をいう<ref>{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=76 }}</ref>。
== 概説 ==
予算はいくつかの意味で用いられている。ひとつは一般に用いられている用語で、一般の組織(企業、様々な法人、グループ 等々)が、収入や支出に関して立てる計画のことである。もうひとつのしばしば用いられる用法は、行政用語で、中央政府や地方政府などが、歳入や歳出に関してあらかじめ立てる計画のことである。
 
== 公会計における予算 ==
一般に、何らかの事業を適切に行うには[[PDCAサイクル]]に考慮する必要があるとされているが、予算は、このPDCAサイクルの「P」(=Plan 計画)のうちの数字的なものに当たる。P(=計画)だけではあくまで紙にかかれたものにすぎず<ref group="注">厳しく表現する時は「絵に描いた餅」などと言う。</ref>、事業を行い現実の世界にその効果をもたらすためには、「P」の後の「D」(=Do 実行)、「C」(=Check チェック、監査)、「A」(Act 改善)が非常に大切なように、予算を立てるだけでは事業は成功せず、むしろその後の、事業を実行し、事業が適切に行われたかチェックし不適切であった部分を不適切だとはっきり指摘し、(次のサイクルのために、すぐに)改善すべき点を改善することのほうがむしろ重要となる。<ref group="注">「C チェック」および「A 改善」がなぜ非常に重要かと言うと、ある事業が終わったらそれで全てが終わるわけではなくそこから先が一層重要であるからである、またある年度が終わったからといってそれで全てが終わるわけではなく、翌年度以降の将来が確かにあり、将来が一層重要であるからである。</ref>
予算とは、一定の期間における政府の支出計画を法律または法律に準じた形式で規定し、議会において承認されたものをいう<ref name="gz45">{{Cite book |和書 |author1= 横山彰 |author2= 馬場義久 |author3= 堀場勇夫 |year= 2009 |title= 現代財政学 |publisher= 有斐閣 |page=45 }}</ref>。
 
財政学上の予算は社会を強制力によって統合する統治行為が存在すれば必ず存在するというものではない<ref name="jinno77">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=77 }}</ref>。封建領主が領主としての家計の支出計画を策定していたとしても、封建領主はそれを自由に変更できるから、拘束力のある文書としての性格を持たない<ref name="jinno77" />。支配者が本源的生産要素を領有している国家では予算を作成する必要はない<ref name="jinno82">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=82 }}</ref>。被支配者が本源的生産要素を私的所有するようになって初めて国家に予算という概念が登場することとなった<ref name="jinno82" />。
=== 一般組織における予算 ===
企業で「予算」と言う場合、まず経営ビジョンに基づいて設定した具体的な[[目標]]があり、その目標を[[数字]]として表現したものである<ref name="globis">グロービス MBA用語集</ref>。
予算の分類のしかたはいくつかある。 例えば「[[売上]]予算」「[[費用]]予算」「投資予算」などに分類することができる。
 
政府活動に伴う収入と支出をすべて予算に盛り込むとする原則をとると、一定期間ごとに議会承認を得る制度を採らざるをえない<ref name="jinno91">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=91 }}</ref>。この一定の期間を予算会計年度という<ref name="jinno91" />。予算会計年度は通常は1年間である<ref name="jinno91" /><ref name="gz47" />。日本やイギリスでは4月から翌年3月までを予算会計年度としている<ref name="jinno91" />。フランスやドイツでは1月から12月までを予算会計年度としている<ref name="jinno91" />。アメリカでは10月から翌年9月までを予算会計年度としている<ref name="jinno91" />。なお、アメリカの州予算では予算の期間を2年間としている州もある<ref name="jinno91" />。
企業の予算は、収入・売上をどう見積もるか、というところに特に重点が置かれる。
 
=== 予算の形式 ===
グロービスのMBA用語集では、予算の立て方の原型を2つ挙げている<ref name="globis" />。「トップダウン型」「ボトムアップ型」である<ref name="globis" />。
欧米諸国など多くの国々では歳入法と歳出法という法律の形式で成立する<ref>{{Cite book |和書 |author1= 横山彰 |author2= 馬場義久 |author3= 堀場勇夫 |year= 2009 |title= 現代財政学 |publisher= 有斐閣 |pages=45-46 }}</ref><ref name="jinno90">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=90 }}</ref>。予算を法律とする形式を採用とすると、フランスのように歳入法が議会で成立しない限り、その年度の租税を徴収することができない<ref name="jinno90" />。課税にも毎年度の予算での議会承認を必要とする方式を一年税主義という<ref>{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |pages=90-91 }}</ref>。
 
ここで言う「トップダウン型」とは、経営陣が一方的に各部門の予算を決める予算の立て方である。これはは、現場の意見が反映されていないので、現場の人から見ると予算が[[ノルマ]]と感じられてしまう傾向があり、現場の人の動機づけが難しくなるという面がある<ref name="globis" />。いわゆる[[モチベーション]]や[[士気]]が下がってしまうのである。
 
「ボトムアップ型」は、各現場が自主的に予算を設定し、これを部門ごとに集計することを積み上げて、最終的に全社予算を設定する予算の立て方である。こちらのほうは、各現場の予算を合算しただけでは、会社全体としての利益目標とかけ離れてしまうといった側面がある。
 
どちらも大きな難点があるわけである。したがって、健全な経営が行われている企業では、しばしば問題点を減らし、両方の良い特徴を持つ予算が立てられるようにと調整作業が行われる。
 
例えば、経営陣は経営陣で企業として必要だと思われる予算原案・素案をつくり、現場側・各部門側は現場の視点で見た可能な予算原案・素案をつくり、相方がそれらを持ち寄って顔をつきあわせて議論を重ねるための場を設け、互いに、各数字を算定した事情を説明したり、相手の説明を聞いて相手側の事情の理解すべく努め、その上で、相方が納得できる数字を見出すべく調整作業を行うのである。
 
日本では法律という形式をとらず、国会の審議と議決を経て、法律に準じる形式で予算を成立させる([[日本国憲法第86条]])<ref>{{Cite book |和書 |author1= 横山彰 |author2= 馬場義久 |author3= 堀場勇夫 |year= 2009 |title= 現代財政学 |publisher= 有斐閣 |page=46 }}</ref>。日本では予算を法律とする形式を採用しないので、租税法が成立すれば、その法律が存在する限りは自動的に徴税することができる<ref name="jinno91" />。予算と法律を区別したうえで法律(租税法)によって課税する方式を永久税方式という<ref name="jinno91" />。
;収入に関する予算
企業の「収入」というのは、(行政組織のように、住民・国民から税金を強制的に取り立てるようなやり方、「棚からボタ餅」のような状態で収入が発生するわけではなく)、ある意味で非常に不確定・不安定で、各営業職が顧客に対して地道で忍耐強い営業活動を行うことで、ようやく自社商品が売れ(売れないことがほとんどだが、稀に売れることがあり)、そうした膨大な活動の中においてある頻度で起きる売買成立によって個々の小さな売上が生じ、その積み重ねで企業としての売上、(帳簿上の「[[収益]]」)が生まれる、というしくみになっている。
 
=== 予算の機能 ===
企業においてしばしば、経営者の指揮のもと、経理部(あるいは財務部および経理部)、営業部 等々等々、[[収入]]・[[支出]]にかかわるあらゆる部署の責任者が協力し予算が立てられる。
* 政策的機能
*: 予算の政策的機能とは、予算が国のあらゆる政策の実行を資金的に可能にするための手段となっているという機能であり、公共政策を実行するための資金が予算として計上され、予算は政策の実施ための資金をどのように調達するかという資金的裏付けとなっている<ref>{{Cite book |和書 |author1= 横山彰 |author2= 馬場義久 |author3= 堀場勇夫 |year= 2009 |title= 現代財政学 |publisher= 有斐閣 |pages=46-47 }}</ref>。
* 政治的機能
*: 予算の政治的機能とは、予算が政府の政治的行動計画を貨幣的に表現する手段となっているという機能であり、政権担当政党としての政府は再選可能性を目指したり政治理念を実現するために予算的措置を講じている<ref name="gz47">{{Cite book |和書 |author1= 横山彰 |author2= 馬場義久 |author3= 堀場勇夫 |year= 2009 |title= 現代財政学 |publisher= 有斐閣 |page=47 }}</ref>。
* 統制機能
*: 予算の統制機能とは、予算は立法府(議会)が行政府(政府)を統制するための手段となっているという機能である<ref name="gz47" />。歳入予算については、租税収入や公債収入の予算の承認や、その背後にある租税法や財政法などの法律を制定することで政府を統制する<ref name="gz47" />。また、歳出予算については、予算内容や予算執行責任を明確にし資金の使途をチェックする<ref name="gz47" />。
* 管理機能
*: 予算の管理機能とは、予算が資金の効率的利用を高める管理手段となっているという機能であり、産出水準を明確に定めることで費用最小となる生産方式ないし投入方法を追求し、資金の効率的活用のために予算は利用される<ref>{{Cite book |和書 |author1= 横山彰 |author2= 馬場義久 |author3= 堀場勇夫 |year= 2009 |title= 現代財政学 |publisher= 有斐閣 |pages=48-49 }}</ref>。
* 計画機能
*: 予算の計画機能とは、予算が経済政策などの政策の計画化及び運営の手段となっているという機能をいう<ref name="gz49">{{Cite book |和書 |author1= 横山彰 |author2= 馬場義久 |author3= 堀場勇夫 |year= 2009 |title= 現代財政学 |publisher= 有斐閣 |page=49 }}</ref>。
 
=== 行政における予算原則 ===
==== 古典的予算原則 ====
政府、特に首長等の行政責任者の側(大統領、内閣など)は、毎年度、あるいは個々の事業を行うにあたってまず予算を立てる。
予算原則とは国民が毎年度編成される予算を議会を通じてコントロールするため定式化された基準をいう<ref name="jinno91" />。19世紀半ばにイギリスで確立された予算原則を古典的予算原則という<ref name="jinno99">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=99 }}</ref>。
* 完全性の原則(総計予算主義の原則)
*: 完全性の原則(総計予算主義の原則)とは、すべての収入と支出を漏れなくそのまま総額で計上することを求める原則をいう<ref name="gz50">{{Cite book |和書 |author1= 横山彰 |author2= 馬場義久 |author3= 堀場勇夫 |year= 2009 |title= 現代財政学 |publisher= 有斐閣 |page=50 }}</ref><ref name="jinno93">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=93 }}</ref>。予算を通じた財政のコントロールのためには、すべての収入と支出が隠されることなく予算に編入されている必要があるからである<ref name="jinno93" />。日本では財政法第14条に規定されている<ref name="gz49" /><ref name="jinno93" />。企業など民間の経済主体では収入を取得するのに必要な経費を収入から控除する純計主義も認められるが、政府を経済主体とする場合には議会の決定通りにコントロールされているという合法性が重視さるため収入と支出の差額のみを計上しない総計主義が用いられる<ref name="jinno93" />。
* 統一性の原則(単一性の原則)
*: 統一性の原則(単一性の原則)とは、収入と支出は単一の予算として計上しなければならず、予算は複数あってはならないとする原則をいう<ref name="gz50" /><ref name="jinno94">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=94 }}</ref>。予算が複数並立すると相互の関係が複雑化し統制機能が果たせなくなったり、効率的な資金利用が困難になり管理機能を果たせなくなるからである<ref name="gz50" />。統一性の原則は1787年にイギリスの統合国庫基金法で実現された予算原則である<ref name="jinno94" />。統一性の原則は特定の収入を特定の支出に結び付けて充当することを禁止するノンアフェクタシオンの原則の基礎となっている<ref name="gz50" /><ref name="jinno94" />。この統一性の原則を貫くことは現代の財政運営では事実上不可能となっており特別会計の制度が設けられている<ref name="jinno111">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=111 }}</ref>。
* 明確性の原則(明瞭性の原則)
*: 明確性の原則(明瞭性の原則)とは、予算の内容は収入の源泉・支出の目的・責任の所在などが国民にも明瞭に理解されうるような形式でなくてはならず、予算内容について目的別・機関別などに合理的・体系的に明確化され、かつ概観は容易な数量的表現で示さなければならないとする原則をいう<ref name="gz52">{{Cite book |和書 |author1= 横山彰 |author2= 馬場義久 |author3= 堀場勇夫 |year= 2009 |title= 現代財政学 |publisher= 有斐閣 |page=52 }}</ref><ref name="jinno94">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=94 }}</ref>。
* 排他性の原則
*: 排他性の原則とは、予算には歳入及び歳出以外の事項を記載してはならないとする原則をいう<ref name="gz50" />。
* 厳密性の原則
*: 厳密性の原則とは、予算の編成にあたって、予算に計上される予定収入と予定支出の見積もりは可能な限り正確でなければならないという原則をいう<ref name="gz50" /><ref name="jinno95">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=95 }}</ref>。意図的に収入を過少に見込んだり、支出を過大に見込んだりすると、行政府に財政操作を行う余地が生じ、議会による財政統制が有効に機能しなくなるためである<ref name="jinno95" />。しかし、実際には正確な見積もりには限界があるため、収入を控えめに支出を多めに見積もる慎重主義が採用されており、一般に予算規模の3%ほどの歳計剰余をが生じるように見積もられるのが一般的である。
* 事前性の原則
*: 事前性の原則とは、予算は当該会計年度が開始するまでに編成を終え、議会の承認を得ておかなければならないという原則をいう<ref name="gz51">{{Cite book |和書 |author1= 横山彰 |author2= 馬場義久 |author3= 堀場勇夫 |year= 2009 |title= 現代財政学 |publisher= 有斐閣 |page=51 }}</ref><ref name="jinno96">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=96 }}</ref>。事前性の原則を厳格に適用すると、会計年度の開始までに予算の議会承認が得られなかった場合には、行政活動は停止せざるを得なくなり予算の空白を生じる<ref name="jinno96" />。予算の空白に対しては、前年度予算をそのまま新年度にも施行する施行予算という方法もあるが、議会の予算審議権を著しく制限することとなる<ref name="jinno96" />。予算の空白に対するもう一つの方法として、短期間にわたる暫定予算を編成して対応する方法がある<ref name="jinno96" />。日本の場合、[[大日本帝国憲法第71条]]は施行予算を採用していたが、現行の予算制度は暫定予算の制度を採用している<ref>{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |pages=96-97 }}</ref>。
* 限定性の原則
*: 限定性の原則とは、予算に計上された経費について、年度間での融通、支出目的間での融通、支出額の超過を禁じる原則をいう<ref name="gz51" />。それぞれ会計年度独立の原則、流用禁止の原則、超過支出禁止の原則と表現される<ref name="gz51" />。なお、会計年度独立の原則は、それぞれの会計年度の支出はその会計年度の収入で賄わなければならないとする原則であり、予算は会計年度ごとに作成して議会の承認を得なければならないという単年度原則とは意味が異なるが、単年度原則は会計年度独立の原則の前提となっている<ref>{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=97 }}</ref>。
* 公開性の原則
*: 公開性の原則とは、予算に関する情報は議会に対してのみならず国民に対しても公開されるべきことを求める原則をいう<ref name="gz51" />。予算の数値の公開は一般には1781年にフランス蔵相のネッケルが「国王への財政報告書」を公開して始まったとされている(ただし、イギリスでは名誉革命以後、予算数値の公開は行われていた)<ref name="jinno98">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=98 }}</ref>。さらに公開性の原則は、議会での予算審議のためだけでなく、国民全体への公開が必要と考えられるようになり、この意味での公開性の原則が確立するのは1834年にイギリス議会に新聞記者席が設置されてからであるとされている<ref name="jinno98" />。
 
==== 現代的予算原則 ====
議会制民主主義においては、一般に、その予算を承認するか不承認とするか、ということは[[議会]]の側が決定することになっている。
現代の財政運営では、より行政府に裁量と責任を与え、予算手続も多元化すべきであるという考えから、ハロルド・スミスなど現代的な予算原則を提唱する者が現れ、これらの予算原則は現代的予算原則と呼ばれている<ref name="jinno99">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=99 }}</ref>。
よって、予算の承認・不承認は、議会が政府の行政を統制する手段のひとつ、中でも重要な手段となりうる。
 
現代的予算原則は企業会計原則の公会計への適用を目指すものだが、財政には社会統合という統治を被支配者が行うという民主主義原理が基本にあり市場社会はこれを否定するわけにはいかないため、効率性の要請と財政民主主義のバランスをとる必要があると考えられている<ref name="jinno99">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=99 }}</ref>。
特に[[議院内閣制]]の議会においては、年度の予算の否決は当該内閣に対する不信任を意味することが一般的である。
 
=== 予算循環 ===
*統制的意義(民主的統制機能)
予算は会計年度ごとに作成されるが、1つの予算が運営される過程には通常3年度以上の年月を辿るとされ予算循環と呼ばれている<ref name="jinno121">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=121 }}</ref>。予算循環には、立案過程、決定過程、執行過程、決算過程の4つの過程がある<ref name="jinno121" />。このうち予算の立案過程と決定過程はまとめて編成過程とも呼ばれる<ref name="jinno121" />。
*管理的意義(必要性の確認機能)
*経済政策実現意義(経済的国家目標の表示機能)
 
議院内閣制の国々では内閣が予算を立案して議会に提出する。アメリカは大統領制の国であり予算の作成も議会に権限があるが、1921年に大統領のもとに予算局が設置され、その予算書をもとに議会が歳出予算法を決定している<ref name="jinno123">{{Cite book |和書 |author= 神野直彦 |year= 2007 |title= 財政学 改訂版 |publisher= 有斐閣 |page=123 }}</ref>。いずれの国でも実際の予算の立案は行政府が行っている<ref name="jinno123" />。
;日本
日本では、[[国]]や[[地方公共団体]]等の[[政府]]の予算については、[[憲法]]・[[法律]]([[財政法]]等)で定められている。[[単式簿記]]方式になってしまっており、[[PDCAサイクル]]の「D 実行」「C チェック」「A 改善」がきちんと行えなえないずさんな状態が放置されている。<ref>[[石原慎太郎]] 前都知事などが、この問題を繰り返し繰り返し指摘している。そして[[東京都]]からまずやり方を変え、その後に日本政府にも変えてもらおうと努力した。</ref>
 
=== 行政予算改革 ===
{{出典の明記|date=2016年12月|section=1}}
=== 予算の編成 ===
==== 予算の編成 ====
*事業別予算制度
*:行政目的の効果的な達成の観点から、事業目的に従い管理する。
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** 財務部局の予算作成の負担が激増する。
 
=== 日本の予算の審議制度 ===
==== 国家予算 ====
通常、国家予算の審議は立法府によって行われる。
{{節stub}}
 
=== 予算の議決 ===
通常、国家予算の議決は立法府によって行われる。
{{節stub}}
 
=== 予算の執行 ===
通常、国家予算の執行は行政府によって行われる。
{{節stub}}
 
== 日本の国家予算(現行制度) ==
=== 概要 ===
==== 予算の内容 ====
予算は、予算総則、歳入歳出予算、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為とする([[s:財政法#16|財政法第16条]])。
 
予算の法的性格について学説は、予算行政説、予算法律説、予算国法形式説(通説)に分かれている。
==== 予算の法的性格 ====
現行法下での予算の法的性格について学説は分かれている。
 
予算の[[会計年度]]は、基本的に4月1日~翌年の3月31日である。
'''予算行政説、予算承認説''':旧通説
:国会は内閣の予算支出に事前に承認を与えているものとする。
* 根拠-
:: 内閣の権限の強化
* 批判-
:: 「財政立憲主義に反する」
* 国会の修正権
:: 国会による増額修正-可能
:: 国会による減額修正-不可能
 
'''予算法律説'''
:予算は法律の形式で制定されるべきであるとする。
* 根拠-
:: 「財政立憲主義の強化」
* 批判-
:: 日本国憲法では法律と予算の規定に差異が認められる。
 
* 国会の修正権
:: 国会による増額修正-可能
:: 国会による減額修正-可能
 
'''予算法形式説、予算法規範説、予算国法形式説''':通説
:予算は、「財政立憲主義」の趣旨から、法律と異なる特殊の国法の一形式とする。
* 根拠-
:: 1.予算が政府を拘束するのみで一般国民を直接拘束しない。
:: 2.予算の効力は一会計年度に限られている。
:: 3.提出権が内閣に属する。([[日本国憲法第73条|憲法73条]]5号、[[日本国憲法第86条|86条]])
:: 4.衆議院に先議権が認められており、再議決制でない。([[日本国憲法第60条|憲法60条]]1項・2項)
 
* 批判-
:: 予算と法律の不一致が生ずる
 
* 国会の修正権
:: 国会による増額修正-可能
:: 国会による減額修正-可能
 
==== 会計区分 ====
予算の期間([[会計年度]])は、基本的に4月1日~翌年の3月31日である。
 
単一予算主義に基き、全ての歳入や歳出は単位の会計において処理するのが原則である([[一般会計]]予算)。例外的に独立した会計を有するものとして、[[特別会計]]予算と政府関係機関予算がある。
 
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない([[日本国憲法第86条|憲法86条]])。予算を国会に提出する権能は[[内閣]]にあり([[日本国憲法第73条|憲法73条]]第5号)、[[財務省 (日本)|財務省]]が各省庁と協議の上作成し、[[閣議]]決定された後、1月中に国会に提出される([[s:財政法#27|財政法第27条]])。
==== 予算の種類 ====
単年度予算の種類は以下の通り。
* [[本予算]](当初予算)
* [[暫定予算]]
* [[補正予算]]
 
予算は[[衆議院]]に先に提出しなければならない(憲法60条第1項)。参議院で衆議院と異なった議決をした場合に両院協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が衆議院の可決した予算を受け取った後に国会休会中の期間を除いて30日以内に議決しないときは、衆議院の議決が国会の議決となる([[日本国憲法第60条]]第2項)。 つまり、衆議院で予算が議決されてしまえば、参議院の審議が終了しなくとも30日後には自動的に成立する。予算が3月初めに衆議院を通過してしまえば、暫定予算を策定する必要もないので、政府と与党にとっては予算の衆議院通過が重要視される。
=== 予算の編成 ===
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。([[日本国憲法第86条|憲法86条]])
 
予算を国会に提出する権利は、[[内閣]]にあり([[日本国憲法第73条|憲法73条]]第5号)、[[財務省 (日本)|財務省]]が各省庁と協議の上作成し、[[閣議]]決定された後、1月中に国会に提出される([[s:財政法#27|財政法第27条]])。
 
=== 予算の審議 ===
予算は、[[衆議院]]に先に提出しなければならない(憲法60条第1項)。{{main|日本国憲法第60条#条文}}
 
衆議院事務局が予算案の提出を受けると、[[衆議院議長|議長]]および[[議院運営委員会|議院運営委員長]]に通達されて委員会の場で各会派と調整し趣旨説明としての[[財政演説]]を行う日程を決める。[[本予算|当初予算]]であれば財政演説は[[政府四演説]]の一環として行われるため、[[通常国会]]の[[召集]]日取りおよび全体スケジュールと合わせて調整が行われる。{{main|政府四演説#開催の時期}}
 
なお補正予算を提出する場合でも趣旨説明たる財政演説を行う必要がある。[[第2次安倍内閣]]では、通常国会の冒頭に補正予算を提出して財政演説のみ行い、成立後に改めて本予算の説明を兼ねた財政演説を含めた形で政府四演説を行うというスタイルを採っている。
 
当初・補正のどちらの予算であっても、財政演説に対する[[代表質問]]を経て、衆議院[[予算委員会]]に付託し冒頭の[[質疑|総括質疑]]を行う。財務大臣は委員会冒頭の趣旨説明において、本会議での財政演説よりも踏み込んだ内容を話さなければならない。その後、一般的な法律案と同様に一般質疑、締め括り質疑を経て委員会・本会議それぞれの[[採決]]に掛ける形を取る。この時に、年度内成立ないしは暫定予算回避のタイミングを計った上で[[強行採決]]が行われることもある。{{main|予算委員会#予算審議の流れ|強行採決#概説}}{{see also|日本国憲法第60条#沿革|自然成立#概要|衆議院の優越#みなし否決・自然成立の起算点}}
 
=== 予算の議決 ===
==== 衆議院の優越 ====
参議院で衆議院と異なった議決をした場合に両院協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が衆議院の可決した予算を受け取った後に国会休会中の期間を除いて30日以内に議決しないときは、衆議院の議決が国会の議決となる([[日本国憲法第60条]]第2項)。 つまり、衆議院で予算が議決されてしまえば、参議院の審議が終了しなくとも30日後には自動的に成立する。予算が3月初めに衆議院を通過してしまえば、暫定予算を策定する必要もないので、政府と与党にとっては予算の衆議院通過が重要視される。
 
==== 予算と予算案 ====
一般的には、「法律案→可決→法律」の例に倣い国会議決前の状態を'''予算案'''と、議決後のものを'''予算'''と呼ぶことが多いが、法律上は、議決の前後にかかわらず「予算」という。国会の審議においても、「一般会計予算ほか2案」のように議案の単位としては「案」を用いるが個別の題名は議決前でも「予算」と呼び「案」は付さない。
 
これは
* 法律案は、両議院が可決すると法律となる。([[日本国憲法第59条|憲法59条]])
* 条約は、国会が承認すると発効する。([[日本国憲法第73条|憲法73条]])
のに対し、
* 内閣は予算を作成し、国会の審議を受け議決を経なければならない。([[日本国憲法第86条|憲法86条]])
との規定となっていることによる。
 
=== 予算の執行 ===
予算が成立したときは、内閣は、国会の議決したところに従い、各省各庁の長に対し、その執行の責に任ずべき歳入歳出予算、継続費及び国庫債務負担行為を配賦する([[s:財政法#31|財政法第31条]])。
 
=== 法律 ===
* [[財政法]](昭和22年3月31日法律第34号)
** [[s:財政法#23|第23条]] 歳入歳出予算は、その収入又は支出に関係のある部局等の組織の別に区分し、その部局等内においては、更に歳入にあつては、その性質に従つて部に大別し、且つ、各部中においてはこれを款項に区分し、歳出にあつては、その目的に従つてこれを項に区分しなければならない。
** [[s:財政法#31|第31条]] 予算が成立したときは、[[内閣]]は、[[国会]]の議決したところに従い、各省各庁の長に対し、その執行の責に任ずべき歳入歳出予算、継続費及び国庫債務負担行為を配賦する。
:: 2 前項の規定により歳入歳出予算及び継続費を配賦する場合においては、項を目に区分しなければならない。
* 予算決算及び会計令(昭和22年4月30日勅令第165号)
** 第14条 歳入歳出予算、継続費及び国庫債務負担行為の部局等の区分、歳入予算の部款項目並びに歳出予算及び継続費の項の区分は、[[財務大臣]]がこれを定める。
:: 2 歳出予算及び継続費の目の区分及び各目の細分は、各省各庁の長が財務大臣に協議して、これを定める。
 
=== 備考 ===
==== 予算科目 ====
予算については部局・予算の性質などにより項目(予算科目)が設けられる。
 
==== よくある誤解 ====
日本の国家予算は、一般会計の歳出(2008年度83.1兆円)だけを国家予算と呼ぶ場合があるが、これは誤りであり、特別会計も加えて、一般会計・特別会計で重複する部分を除外した数値が日本の全ての歳出となる。
 
==== その他 ====
{{main|大蔵省による一般会計予算の語呂合わせ}}
[[戦後]]、特に旧[[大蔵省]]時代は政府予算案の公開とともに、予算総額の数字の並びを用いて、旧大蔵省が[[語呂合わせ]]を発表するのが恒例行事であった。好印象の言い回しで希望的な意味合いを持たせ、予算の広報と話題作りを狙ったものである。さらに、このニュースに合わせて[[報道]]機関各社が別途独自に語呂合わせを作ることもある。こちらの場合は、皮肉を込めたものが多い。現在でも、[[地方公共団体|地方自治体]]のなかには、予算決定とともに語呂合わせを発表する所がある。
 
==== 日本の地方予算 ====
[[地方公共団体]]の予算の考え方については、国の予算とほぼ同じである。この節で、[[地方自治法]]は条数のみ記載する。
* この節で、[[地方自治法]]は条数のみ記載する。
 
=== 概要 ===
* 総計予算主義
*: 一[[会計年度]]における一切の収入及び支出は、すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない([[s:地方自治法 第二編 第九章 財務#210|210条]])。
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*# 歳出予算の各項の経費の金額の流用
 
=== アメリカ合衆国の予算制度 ===
** [[s:地方自治法 第二編 第九章 財務#216|第216条]] (歳入歳出予算の区分)
[[アメリカ合衆国]]では予算は法律として定められる。[[アメリカ合衆国憲法|憲法]]の規定上、[[アメリカ合衆国下院|下院]]の先議が定められている他は通常の法律案と同様の手続きで審議される(支出権限法案という扱いとなる)。したがって[[アメリカ合衆国大統領|大統領]]は提出権を持たないものの教書による勧告権および[[拒否権]]を有し、[[アメリカ合衆国上院|上院]]による法案可決も必須となる。
**: 歳入歳出予算は、歳入にあつては、その性質に従つて款に大別し、かつ、各款中においてはこれを項に区分し、歳出にあつては、その目的に従つてこれを款項に区分しなければならない。
** [[s:地方自治法 第二編 第九章 財務#219|第219条]](予算の送付、報告及び公表)
**: 長は、予算の送付を受けた場合において、直ちにこれを都道府県にあつては総務大臣、市町村にあつては都道府県知事に報告し、かつ、その要領を住民に公表しなければならない。(2項)
** [[s:地方自治法 第二編 第九章 財務#230|第230条]](地方債)
**: 地方債の起債の目的、限度額、起債の方法、利率及び償還の方法は、予算でこれを定めなければならない。
 
== 私会計における予算 ==
; 事故繰越し
企業で「予算」と言う場合、まず経営ビジョンに基づいて設定した具体的な[[目標]]があり、その目標を[[数字]]として表現したものである<ref name="globis">グロービス MBA用語集</ref>。
: 歳出予算の経費の金額のうち、年度内に支出負担行為をし、避けがたい事故のため年度内に支出を終わらなかつた経費で、翌年度に繰り越して使用するもの([[s:地方自治法 第二編 第九章 財務#220|220条3項]])。
予算の分類のしかたはいくつかある。 例えば「[[売上]]予算」「[[費用]]予算」「投資予算」などに分類することができる。
 
企業の予算は、収入・売上をどう見積もるか、というところに特に重点が置かれる。
=== 予算の執行 ===
* 歳入予算の執行には、調定、納入の通知、収納の3段階がある。また、調定と納入の通知とを併せて、徴収ともいう。なお、歳入予算の執行は、予算に拘束されない(つまり、歳入予算として計上された額より多く収入することが許される)点で、歳出予算と異なる。
** '''調定''' - 地方公共団体が、当該歳入について、所属年度、歳入科目、納入すべき金額、納入義務者等を誤っていないかどうか、その他法令又は契約に違反する事実がないかどうかを調査して、納入すべき金額等を決定することをいう。
** '''納入の通知''' - 納入義務者に、納入すべき金額等を通知することをいう。その際には、所属年度、歳入科目、納入すべき金額、納期限、納入場所及び納入の請求の事由を記載した納入通知書によって行うこととされる。
** '''収納''' - 地方公共団体の会計管理者が、納入義務者から金銭を受け取って、地方公共団体のものとすることをいう。
* 歳出予算の執行には、支出負担行為、支出命令、支払の3段階がある。なお、歳出予算の執行は、予算に拘束される(つまり、歳出予算として計上された額より多く支出することを許されない)。
** '''[[支出負担行為]]''' - 支出の原因となるべき契約その他の行為をいう。この行為が、法令に違反するようなもの、予算より多額のものであってはならない。
** '''支出命令''' - 地方公共団体の長が、会計管理者に対し、支出を命令することをいう。この命令がなければ、会計管理者は、支出をすることはできない。また、会計管理者は、当該支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認したうえでなければ、支出をすることができない。
** '''支出''' - 会計管理者が、契約その他の行為の相手方に、金銭を手渡したり、小切手を交付したりすることをいう。
 
グロービスのMBA用語集では、予算の立て方の原型を2つ挙げている<ref name="globis" />。「トップダウン型」「ボトムアップ型」である<ref name="globis" />。
* 普通地方公共団体の長は、[[特別会計]]のうちその事業の経費を主として当該事業の経営に伴う収入をもつて充てるもので条例で定めるものについて、業務量の増加により業務のため直接必要な経費に不足を生じたときは、当該業務量の増加により増加する収入に相当する金額を当該経費に使用することができる。この場合においては、普通地方公共団体の長は、次の会議においてその旨を議会に報告しなければならない(218条4項)。
 
ここで言う「トップダウン型」とは、経営陣が一方的に各部門の予算を決める予算の立て方である。これはは、現場の意見が反映されていないので、現場の人から見ると予算が[[ノルマ]]と感じられてしまう傾向があり、現場の人の動機づけが難しくなるという面がある<ref name="globis" />。いわゆる[[モチベーション]]や[[士気]]が下がってしまうのである。
== 日本の国家予算(旧憲法下) ==
以下、第二次世界大戦前、特に大日本帝国憲法下における日本の予算について述べる。
 
「ボトムアップ型」は、各現場が自主的に予算を設定し、これを部門ごとに集計することを積み上げて、最終的に全社予算を設定する予算の立て方である。こちらのほうは、各現場の予算を合算しただけでは、会社全体としての利益目標とかけ離れてしまうといった側面がある。
=== 概要 ===
==== 沿革 ====
明治6年、大蔵大輔井上馨、大蔵省出仕渋沢栄一が財政制度改革建議書を提出したのに対して、大蔵省事務総裁大隈重信が歳入出見込会計表を公表したが、これが日本の予算の最初であるとされる。
明治14年に会計法が制定され、22年に憲法が発布されるなどして、予算制度が確立した。
 
どちらも大きな難点があるわけである。したがって、健全な経営が行われている企業では、しばしば問題点を減らし、両方の良い特徴を持つ予算が立てられるようにと調整作業が行われる。
==== 種類 ====
収入支出の総括的協賛主義がとられ、したがって収支はまとめて協賛を求める。
 
例えば、経営陣は経営陣で企業として必要だと思われる予算原案・素案をつくり、現場側・各部門側は現場の視点で見た可能な予算原案・素案をつくり、相方がそれらを持ち寄って顔をつきあわせて議論を重ねるための場を設け、互いに、各数字を算定した事情を説明したり、相手の説明を聞いて相手側の事情の理解すべく努め、その上で、相方が納得できる数字を見出すべく調整作業を行うのである。
予算としては、総予算、特別予算、追加予算があり、総予算とは一般会計の予算である。
予算分割主義が行われ、後に国庫統一主義が採られた。
特別予算とは特別会計の予算で、その目的は次の通りであり、
#植民地財政独立のため。例えば、台湾総督府特別会計、朝鮮特別会計など。
#鉄道その他の官業、大学、社会政策などの特別施設のため。例えば、帝国鉄道、[[大蔵省専売局|専売局]]、帝国大学、官立大学、健康保険など。
#各種の基金整理のため。例えば、大蔵省預金部、国債整理基金など。
追加予算とは他の予算の協賛の後またはその審議中に追加として提出される。
 
純計予算または予算の純計とは、国の全て
 
予算を総合したものであるが、しかし総予算、特別予算、追加予算の合計が直ちに予算の純計にはならない。
例えば、一般会計から朝鮮特別会計に補助金が支給されるが、この金額は双方の会計の収入および支出の欄に現れるから、両会計の金額を機械的に合計すると、重複が起こる。
このような重複を控除して計算されるのが予算の純計である。
 
==== 会計期間 ====
会計期間は1箇年(4月1日から翌年3月31日まで)である。
ただし、戦時に限り、臨時軍事費の特別会計に限り、閉戦までを1会計期間とし、日清戦争のとき1年10か月間、日露戦争のとき3年4か月間、日独戦争のとき7年9か月間である。
 
==== 予算組織 ====
予算は歳出と歳入に、それぞれがさらに経常部と臨時部に区分される。
歳出は各省予算に区分される。
皇室費は別項目であり、また内閣費、帝国議会費は大蔵省所管に編入される。
歳入は大蔵省が統轄し、各省は雑収入を取り扱う。
歳入は省別されない。
 
予算は款、項、目、節に区分される。
一例を挙げると次のとおり。<!--固定ピッチ、等幅のフォントを指定したいところです-->
 
:文部省歳出経常部
::第一款 文部本省<
:::第一項 俸給
::::第一目 勅任俸給
:::::第一節 大臣
:::::第二節 政務次官
:::::等々
::::第二目 奏任俸給
:::::等々
:::第二項 事務費
::第二款 気象台
::第三款 緯度観測所
::等々
 
帝国議会は款および項の金額について議定する。
款および項を議決項目または法律科目と言い、予算の執行にあたって款と款、項と項との間の金額の流用は禁止されている。
 
目、節の金額の流用は許可されている。
上の例で言えば奏任俸給の金額を減じてこれを勅任俸給に流用してもよいが、事務費を減じてこれを俸給に流用することは許可されていない。
 
=== 予算の編成 ===
総予算は、各省から歳出概算書および歳入概算書が作成され、これらが大蔵大臣に送付される。
うち歳入のは主として大蔵省が作るが、過去3箇年の実収の平均を求め、これに増減の傾向率が加味されて推算される。
うち歳出のは各省で作られるが、諸般の理由から各省からは多額の要求が行われることが多く、大蔵大臣は全ての省の要求を認容することは不可能であるから、査定によって各省からの要求額を削減して収支の均衡を図り、歳入歳出概算書を作成し閣議に提出し、確定されて、各省において改めてこの決定を基礎として歳入は歳入予定計算書、歳出は予定経費費要求書をそれぞれ作成し、大蔵大臣に提出する。
 
これは前年の9月30日までに提出するべきであることとなっているが、実際は2ヶ月余、遅れる。
大蔵大臣はこれをまとめて歳入予算明細書および歳入歳出総予算を作って、閣議に提出し、決定の上議会に提出する。
 
特別会計は歳入歳出予定計算書に基いて、大蔵大臣は直ちに各特別会計の予算を作成する。
 
=== 予算の審議 ===
予算提出権は政府のみが有する。
議会は、希望する予算を政府が提出するよう建議するのにとどまる。
議会では政府提出の予算案について数字だけでなく政府の政策について審議する。
議会は予算の削減をすることができるが、増加する権能は無い。
 
==== 議会の協賛を要しない経費 ====
#皇室費 ただし増額の場合、協賛を必要とする。
#継続費 あらかじめ年限を定めて協賛を求める。その後は各年度の相当割当高をその年度の予算に編入する。これについてはいちいち毎年協賛を要しない。
 
==== 政府の同意無くして議会が廃除または削減し得ない経費 ====
#憲法上の大権に基づく既定の歳出 例えば文武官の俸給その他。
#法律の結果による歳出 例えば帝国議会費その他。
#法律上政府の義務に属する歳出 例えば公債元利金の支払その他。
 
==== 予算外の国庫負担となるべき契約 ====
予算外の国庫負担となるべき契約については政府はあらかじめ議会の協賛を必要とする。
例えば会社に政府が利益保証の契約をする場合その他である。
 
=== 予算の議決 ===
国家の歳出歳入は毎年予算をもって帝国議会の協賛を経ることとなっていた([[大日本帝国憲法第64条]]1項)。
他の議案とは異なって予算について衆議院は先議権を有する([[大日本帝国憲法第65条]]1項)。
衆議院を通過した予算は貴族院で議定される。
貴族院が、衆議院を通過した予算をそのまま承認する場合に、両院の意見の一致となり、上奏裁可を経て予算案は確定予算となる。
この協賛を経た予算を成立予算または決定予算という。
貴族院、衆議院両院の意見が不一致であるときは両院協議会が開かれ、協議会の案の全体を一括して、まず衆議院で可否を問い、可決したときは貴族院に回付する。
この際いずれもその案の全体について可否を決するのであり、一部修正あるいは一部承認は許されない。
両院の意見が不一致であるときは予算は不成立となる。
なお、衆議院では1891年の第一議会において、[[大日本帝国憲法第67条|第67条]]関連の予算削減を審議する際には事前に政府の了解を得るとする趣旨の決議が採択されている、これは予算修正の範囲を衆議院自らが狭める一方で、合意された修正予算案は実質的には政府と衆議院による共同提案の形となり、貴族院における異論の提示を困難にすることになった。
 
総予算は成立し、特別予算または追加予算の一部が不成立であるときは問題が無いが、総予算が不成立となり、特別予算、追加予算が成立した場合、この成立予算が有効であるかどうか疑義があるとされた。
各個の予算は別個の法律案であり、予算の不可分の原則は各予算別々について行われるという形式的立場から、成立予算は全て有効であるという議論があって、これは大正3年(1914年)以降、日本で慣例として認められた。
しかし、特別予算および追加予算は総予算を基礎として運営されるのだから総予算が不成立であるにもかかわらず、他の予算が成立するのは事務の執行の上で不便が多いという実質的な立場から反対する議論がある。
 
==== 予算が不成立である場合 ====
両院の意見の不一致、議会の解散その他によって、予算が不成立である場合は前年度の予算が踏襲される([[大日本帝国憲法第71条]])。
この予算を成立予算に対して施行予算という。
この場合、既定の継続費に対してはその年度割当高について変更を加えることが認められている。
施行予算の範囲内で実際に施行するべき予算を標準予算または実行予算という。
実行予算という用語は、ほかに、議会を通過した決定予算があるにもかかわらず政府が行政上成立予算の範囲内で自制的に実行するために作る予算についても用いられる。
例えば浜口内閣の成立直後に井上蔵相が作った実行予算はこれである。
 
=== 予算の執行 ===
国庫金の取扱は収入機関として日本銀行の本支店、代理店、税務署、出納官吏その他があり、支出は各省大臣またはこれから委託代理を受けたものが行う。
 
国庫委託金制度が行われていたが、後に国庫金預金制度が行われ、日本銀行は国庫金を預金として取り扱い、これに利子を付すると共にこれを他に貸付運用することが認められる。
 
==== 予算外の支出 ====
予算に不足がある場合の処置は次のようなものがある。
#第一予備金 予算金額を超過する支出の場合に使用する。
#第二予備金 予算外の新事項の支出に充当する。
#財政上の緊急処分 緊急の場合すなわち公共の安全を保持する必要のある場合、内外の情勢によって議会を召集することができないとき、憲法70条の規定によって勅令によって支出するのであり、議会の事後承諾を必要とする。
#責任支出 (1)、(2)の予備金を支出し尽くしたときおよび緊急支出によることができないとき、予備金の延長として国庫剰余金を政府の責任で支出する。明治24年濃尾地震のとき250万円の国庫剰余金を支出して議会の事後承諾を求めたのが最初で、以来、慣例として認められる。政府から見ると便利な方法であるが、議会から見ると監督が困難となり、違法とする説がある。
 
:一般会計所属の第一予備金は各省大臣が大蔵大臣の承認を得て支出する。
:特別会計所属のもの、または植民地特別会計所属のものは所管大臣または植民地長官が支出し、大蔵大臣に通告する。
:後者の場合、所管大臣から大蔵大臣に通告する。
:第二予備金は各省大臣の要求により大蔵大臣から勅裁を経て支出する。
:いずれの場合でも予備金の支出は議会の事後承諾を必要とする。
 
==== 予算の繰越および整理 ====
実際3月31日までに歳出入を完了することは不可能であるため、会計法においては7月31日までを整理期間として、これまでにすべてを決済させることになっている。
ただし会計規則においては、行政各部における実際の取扱期間をなおいっそう短縮する。
 
==== 予算外の収入 ====
予算外の収入は、財政上の緊急処分、非常税の徴収、公債の募集その他によって、また過年度の歳入が現年度に入ることによって、起こることがある。
これらはいずれも現年度の歳入として取り扱われる。
ただし過払または誤払によってひとたび支出された金が返納される場合、すなわち支出済歳出の返納金はただちにその年度の歳入としないで、かつてこれを支払った経費の部に戻り入れる規定である。
 
== アメリカ合衆国 ==
[[アメリカ合衆国]]では予算は法律として定められる。[[アメリカ合衆国憲法|憲法]]の規定上、[[アメリカ合衆国下院|下院]]の先議が定められている他は通常の法律案と同様の手続きで審議される(支出権限法案という扱いとなる)。したがって[[アメリカ合衆国大統領|大統領]]は提出権を持たないものの教書による勧告権および[[拒否権]]を有し、[[アメリカ合衆国上院|上院]]による法案可決も必須となる。
 
== 脚注 ==
<references group="注"/>
 
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