「ヒルベルト空間」の版間の差分

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を満たす。右辺で順番が逆になっているのは ''u''<sub>φ</sub> の反線型性から φ の線型性を回復するためである。実係数の場合は、''H'' からその双対空間への反線型同型は実際には線型同型になるから、実ヒルベルト空間はその双対空間と自然に同型になる。
 
表現ベクトル ''u''<sub>φ</sub> を得るには以下のようにする。φ&nbsp;≠ 0 のとき、[[核 (数学)|核]] ''F''&nbsp;= ker&thinsp;φ は {{mvar|H}} の閉部分空間であって、''H'' には一致しないから、''F'' に直交する非零ベクトル ''v'' が存在する。ベクトル ''u'' を ''v'' の適当なスカラー倍 λ''v'' として、φ(''v'')&nbsp;= &lang;''v'',&nbsp;''u''&rang; が
:<math> u = \langle v, v \rangle^{-1} \, \overline{\varphi (v)} \, v</math>
を満たすようにする。この対応関係 φ ↔ ''u'' は[[物理学]]ではお馴染みの[[ブラ・ケット記法]]で大いに活用されている。物理学ではふつうは内積 &lang;''x''&thinsp;|&thinsp;''y''&rang; の右側の項に関して線型なので、
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B(''H'') の元 ''U'' が可逆かつその逆作用素が ''U''<sup>∗</sup> で与えられるとき、''U'' は[[ユニタリ作用素|ユニタリ]]であるという。この条件は「''U'' が全射かつ {{mvar|H}} の各元 ''x'', ''y'' に対して &lang;''Ux'', ''Uy''&rang; = &lang;''x'', ''y''&rang; を満たすこと」とも言い換えられる。''H'' 上のユニタリ作用素の全体は、合成に関して {{mvar|H}} の[[等距変換群]]と呼ばれる[[群 (数学)|群]]を成す。
 
B(''H'') の元が[[コンパクト作用素|コンパクト]]であるとは、それが有界集合を[[相対コンパクト]]集合へ写すときに言う。同じことだが、有界作用素 ''T'' について、任意の有界列 {''x''<sub>''k''</sub>} に対して列 {''Tx''<sub>''k''</sub>} が収束部分列を持つとき ''T'' はコンパクトである。多くの[[積分作用素]]はコンパクトであり、事実[[ヒルベルト=シュミット作用素]]として知られるコンパクト作用素のクラスが[[積分方程式]]論において特に重要な働きをする。[[フレドホルム作用素]]は恒等変換の定数倍の分だけコンパクト作用素とは違うけれども、[[核 (数学)|核]]と[[余核]]が有限であるような作用素としても特徴付けられる。フレドホルム作用素の指数 (index) は
:<math>\operatorname{index}\, T = \dim\ker T - \dim\operatorname{coker}\, T.</math>
で定義される。この指数は[[ホモトピー]]不変量であり、[[アティヤ・シンガーの指数定理]]を通じて[[微分幾何学]]で深い役割を果たす。