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その後、感染性、非感染性の区別を行う。体外毒素型の感染の場合は発熱が認められないことに注意が必要である。血が混じっているかといった便の性状、過去2日~3日の食事歴、旅行歴、同様の症状を伴った人が周りにいるか、抗菌薬の使用の有無、アレルギーなどが重要な問診事項となる。[[食物アレルギー]]([[カキ (貝)|カキ]]などの食物による嘔吐、下痢など)などの存在にも留意する。嘔吐なしの軽症患者では検査なし、重症患者、脱水患者では採血、点滴の施行、特殊患者では便培養を施行することが多い。
 
重要なことは'''感染性下痢症であっても殆どの場合は抗菌薬の投与は不要である'''。通常であれば排泄によって起炎菌の排出で自然治癒をするということが第一にあげられる。さらに抗菌薬投与によって増悪することもある。例えばサルモネラ菌による腸炎の場合は[[抗菌薬]]の投与によって[[保菌者]]となることがある。[[腸管出血性大腸菌]][[O157]]の場合は[[溶血性尿毒症症候群]](HUS)を誘発することがある。'''[[止瀉薬]]に関しても感染性下痢、出血性下痢といった器質性下痢に対しては使用しない'''。消化管の排菌機能を抑えてしまうからである(特に'''O157''''''[[志賀毒素]]を産生する[[赤痢菌]]'''の感染による下痢の場合は止瀉薬の服用によって重篤になることもある)。こういった事情から原則は乳酸菌などの[[整腸剤]]の投与を行う。海鮮物による下痢、出血性下痢、感染性胃腸炎で頻度の多いE.coli O157:H7、Campylobacter spp.(カンピロバクター)、Vibro parahemolyticus(腸炎ビブリオ)などには抗菌薬が不要である。逆に抗菌薬を使用する感染性胃腸炎には敗血症、重症感のある場合、旅行者下痢症、偽膜性大腸炎、性行為感染症、肝硬変の患者のVibrio vulnificusなどである。Vibrio vulnificusは生魚などに含まれる細菌であるが、肝硬変患者が感染すると致死率が高い。この場合はテトラサイクリン系の抗菌薬を用いる。下痢の患者に抗菌薬を使用する場合はラックビーR®やビオフェルミンR®といった抗菌薬耐性の整腸剤を併用する。よく用いる抗菌薬は点滴であれば[[セファマイシン]]系であるセフメタゾン®などである。経口薬では[[ニューキノロン]]系であればトシル酸[[トスフロキサシン]](オゼックス®)を150mg錠で3錠分3で5日間や、ホスホマイシン系では[[ホスホマイシン]](ホスミシン®)を500mg錠で6錠分3で5日間などがよくみる処方である。起炎菌は市中と院内では大きく異なることが知られており、入院後3日経過していれば抗菌薬投与中といった特殊な事情がなければ便培養は不要である。これは殆どの場合は感染性ではなく別の原因で起る下痢であるからである。対症療法が必要ならばこの場合も整腸剤を用いる。
 
入院中の下痢、発熱の場合は[[クロストリジウム・ディフィシル腸炎]]を疑いCDトキシンの測定が必要となる。診断したら[[メトロニダゾール]]又は経口[[バンコマイシン]]で治療する。