「クロソイド曲線」の版間の差分

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'''クロソイド曲線'''(クロソイドきょくせん)({{lang-en-short|{{lang|en|clothoid curve}}}})とは[[線形 (路線)|緩和曲線]]の一種である<ref group="" name="kumamoto-u_clothoid"/>。
「クロソイド」は{{要出典|範囲=「クロソイド」は[[ギリシア神話]]に登場する[[女神]]である[[クロートー|クローソー]]に由来する。|date=2012-11-7}}に由来する。
また、[[光学]]の分野においては、同曲線は'''オイラー螺旋'''<!--({{lang-en-short|{{lang|en|Euler spiral}}}})-->や'''コルニュ螺旋'''<!--({{lang-en-short|{{lang|en|Cornu spiral}}}})-->とも呼ばれる。
 
==詳細==
 
[[曲率]]を一定[[割合]]で変化させていった場合に描かれる軌跡がクロソイド曲線である<ref group="" name="kumamoto-u_clothoid"/>。
曲率半径と始点からの曲線長をそれぞれ<math>R</math>と<math>L</math>としたとき、両者の積は[[定数|一定]]となる曲線がクロソイド曲線と定義される。
:<math>RL=A^2</math>
<math>A</math>は、'''クロソイドパラメーター'''と呼ばれる、[[長さ]]の[[量の次元|次元]]を持つ[[定数]]である。
この式において、[[無次元量]]<math>r=R/A</math>および<math>l=L/A</math>をそれぞれ[[定義]]すると、<math>rl=1</math>となり、<math>r</math>および<math>l</math>の[[幾何学]]的[[性質]]の議論から、実際の応用には[[スケール因子]]として機能する<math>A</math>を調節することで足りることになる。
これは、初等幾何学の[[三角形]]の[[相似]]を連想させてのように、多くの曲線の中で極稀な[[相似則]]を有する曲線である。
この相似則を利用して、[[直線]]・[[円弧]]・クロソイド曲線の複合した複雑な[[道路]]の路線[[設計]]が可能となる。
 
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本式中の積分は[[フレネル積分]]として知られている。
 
なお、<math>0</math>の曲率を有するものが[[直線]]で、そうではない[[有限]][[数|]]に曲率を固定したものが[[円_(数学)|円]]である<ref group="" name="kumamoto-u_clothoid"/>。
 
==実用例==
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例えば、[[自動車]]の[[運転]]において、[[運転者]]が一定の[[速さ|走行速度]]で、[[ステアリングホイール|ハンドル]]を一定の[[角速度]]で回していった場合に自動車が走行した軌跡はクロソイド曲線を描く<ref group="" name="asakura_9784254261585"/>。
もし、直線の[[道路]]に円弧状の道路それが直接接続されるとその地点で曲率半径の変化に不連続が生じて、自動車ならば急なハンドル操作を、[[オートバイ|自動二輪車]]ならば車体の急な倒し込みを、それぞれ行わなければ円周上をトレースでき辿れない。
即ち、[[躍度]]が突如大きくなりの急増で、乗員や積み荷が危険に曝される。
そのために、[[直線]]と[[円弧]]とを繋ぐ中間にクロソイド曲線等の緩和曲線が挿入される。
このクロソイド緩和曲線に沿って、ドライバー運転者に取って好ましい、ハンドルを滑らかに等速回転する運転操作を行えば、自動車走行路線長の最短を通り、2次微分連続(<math>C^{2}</math>連続)で変曲点の無い一定の曲率の線上を、回転揺れ無く走行できる。
つまり、クロソイド曲線とは、[[慣性航法装置|慣性航法]]の理想[[軌道 (力学)|軌道]]上を走行する、消費[[エネルギー]]を最小にする[[ルーティング|経路]]である。
既述の通り、クロソイド曲線は容易なハンドル操作のために道路等に利用されているが、クロソイド曲線の区間が短ぎると、これもドライバー運転者に無理なそれを要求す強いることなってしまう<ref group="" name="asakura_9784254261585"/>。
安全なハンドル操作のためには、クロソイド曲線区間の走行時間が<math>3</math>秒以上とならなければならない<ref group="" name="asakura_9784254261585"/>。
 
クロソイド曲線は、[[ドイツ]]の[[第一次世界大戦]]後の復興の象徴となる[[アウトバーン]]建設で、総監督を勤めた[[フリッツ・トート|フリッツ·トート]]<!--{{lang-de-short|{{lang|de|Frits Todt}}}}-->によって道路線形として世界で最初に採用された。
[[日本]]においては、同曲線は1952年に[[国道17号]]の[[三国峠 (群馬県・新潟県)|三国峠]]付近の区間を改良する際に初めて導入された<ref group="" name="chuko_9784121023216"/>。
この[[峠]]の[[群馬県]]側にはこの[[石碑|記念碑]]が建てられている<ref group="" name="mlit_17mikuni"/><ref group="" name="mlit_radio06_0307"/>。
クロソイド曲線が日本の道路に本格的に採用され始めたのは、フリッツ·トートが監督したアウトバーンの建設に従事していた経歴を持ち、[[世界銀行]]の提案によが発端となって[[名神高速道路]]建設の技術顧問として1958年7月に来日した[[フランツ・クサヘル・ドルシュ|フランツ·クサヘル·ドルシュ]]<!--{{lang-de-short|{{lang|de|Franz Xaver Dorsch}}}}-->による平面線形の主要線形要素における採用が契機である<ref group="" name="w-nexco_meishinn-1966"/>。
 
その後は、同曲線は、道路のみならず、曲率半径の小さい[[地下鉄]]等に用いられている。
なお、[[在来線]]には[[3次放物線]]が、[[新幹線]]には[[半波長正弦逓減曲線]]が、それぞれ用いられている<ref group="" name="kumamoto-u_clothoid"/>。
 
クロソイド曲線は、設計や[[シミュレーション]]の段階から[[コンピュータ|電子計算]]を活用して、多用されている。
====電子計算====
 
[[コンピュータ|電子計算]]の分野でも、クロソイド曲線が活用されている。
 
[[スプライン曲線|スプライン]]系の[[曲線]]と比較するとデータ点数と[[パラメータ]]が大幅に少ないので、[[電子媒体]]の使用容量の増加を防いで[[コンピュータネットワーク|コンピューターネットワーク]]の負荷を大きく減少させる[[メリット|利点]]もあって、ADAS([[衝突被害軽減ブレーキ|先進運転システム]])の高度化と車両の超短期開発の最前線で、各種アクティブ制御等高度化の基本[[サブルーチン|関数]]となっている。
同時に、道路のアップダウン情報の縦断勾配(設計値は放物線軌道の数式を採る)や横断勾配([[カント (路線)|カント]])の摺り付け・拡幅量の摺り付け・路面凹凸三次元座標・凍結等路面状況と[[風速]]の[[気象]]環境・[[渋滞]]状況の報知・予測データを使用した<math>{\rm{CO}_{2}}</math>排出量の削減・転覆防止等の安全運転支援・車両制御やヘッドライト[[前照灯]]の傾きの制御に使われている。
 
[[カーナビゲーション|カーナビゲーションシステム]]で使用されている折線列3次元[[データ]]から車載コンピューターが[[リアルタイムシステム|リアルタイム]]に曲率を計算してこれらの用途に利用する動向もる。
しかし、現実の道路中心線形は建設時に5cmから1m程の製造誤差があり、しかも、直線・円弧・クロソイド曲線・放物線の複雑な組み合わせから構成されているために、車載コンピューターで逆問題を精度良く高速に解く自動計算による線形の復元において安全運転支援の目的で走行時の安定的な計算値を保証することが大変困難である。
リアルタイム処理ではない事前の前処理と超高速[[データベース]]に線形データを格納するための[[オーサリングツール|オーサリング]]が欠かせない。
 
嘗ては、クロソイド曲線を平面図に描く際には<math>X</math>軸の一定間隔毎に<math>Y</math>軸の数値を収録した'''クロソイド表'''を参照してプロットした幾つかの点を[[雲形定規]]や専用の'''クロソイド定規'''を用いて繋ぐ等して仕上げていたが、現在は[[CAD]]を首めとした種々の[[ソフトウェア]]が普及してからは容易に描けるようになった。
ADAS用途のデジタル[[地図]]としては、{{lang|en|HERE Electronic Horizon}}<ref group="" name="uspto_6735515"/>や{{lang|en|SANEI Virtual Orbit}} (仮想軌道)<ref group="" name="reserge_2002271152"/>が良く知られている。
クロソイド曲線をデジタル地図の走行路データとして活用している自動車開発・検査用途の[[CAE]]ソフトウェアとしては、{{lang|en|CarSim}}・{{lang|en|veDYNA}}・{{lang|en|Simulink}}・{{lang|en|VT2000}}・{{lang|en|Adams}}・{{lang|en|AVL InMotion}}等のように数多る。
このデジタル地図を各種の通信ネットワークから受信し、デジタル地図の走行路を前読みしてリアルタイム制御する試みも活発になりつつあることや、高速走行になるほどに変曲点および運転時のハンドルの回転揺れが無い等の有利な実用的軌道特性を持つことから、将来的には[[オートパイロット|自動運転]]基盤地図要素としての利用が期待される。
 
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これは、直線軌道からクロソイド曲線を用いずに直に円軌道へ遷移すると、その瞬間に乗員の[[首]]に強烈な負荷が掛かって[[外傷性頸部症候群]](鞭打ち損傷)や[[ブラックアウト (航空・宇宙)|ブラックアウト]]が起こりうるためである。
 
実際に、[[コニーアイランド]]<!--{{lang-en-short|{{lang|en|Coney Island}}}}-->に在った[[遊園地]]『{{仮リンク|シーライオンパーク|en|Sea Lion Park}}』<!--{{lang-en-short|{{lang|en|Sea Lion Park}}}}-->に建設された世界で初めて垂直ループを備えたローラーコースター『{{仮リンク|フリップフラップ|en|Flip Flap Railway}}』では正円型のそれが採用されていた。
そして、それに乗車した人が鞭打ち損傷を起こしたという事例が起こった<ref group="" name="chartwell_9780785808855"/><ref group="" name="harpercollins_9780061747663"/>。
<!--http://drkssk27.web.fc2.com/zekkyou/column/history.html-->
 
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*{{official website|https://here.com/en/products-services/products/here-electronic-horizon|name=HERE Electronic Horizon|mobile=|format=}}{{en icon}}
*{{official website|http://www.sanei.co.jp/vitrual_orbit/|name=SANEI Virtual Orbit (仮想軌道)|mobile=|format=}}
*{{official website|http://carsim.blogdehp.ne.jp/category/1275944.html|name=乗用車、商用車(四輪車)の車両運動シミュレーションソフトウエア:CarSim|mobile=|format=}}
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