「数字付き低音」の版間の差分

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[[en:Figured bass]]
 
'''数字付き低音'''とは[[通奏低音]]の和音楽器の演奏(リアライズ)のために、楽譜[[音符]]の上または下に数字を付けた[[楽譜]]をいう。普通、[[音部記号|バス記号(ヘ音記号)]]で書かれる。
 
通奏低音では、和音楽器は、低音の上に[[和音]]の音を加えて即興的に演奏する。本来何の[[和音]]とするかは演奏者に任されるべきであるが、他パートの音から瞬時にそれを判断するのは困難であることから、何の和音にするかを示すための数字を音符に付す。数字は、低音からの[[音程]]の度数を表すもの、「3」とあれば、低音の上3度の所に音があることを示す。ただし、実際にそれらの音をどのオクターブに置くかは演奏者に任され、演奏者は[[和声]]的に正しくなるように、4声または3声で演奏する。当然、和声的な正しさだけでなく、音楽的に優れものであることが要求され、自由な装飾を付けることも行われる。
 
==記号の意味==
数字は、低音からの[[音程]]の度数を表す。たとえば、次のように4と6とが書いてあれば低音の上に4度と6度の音を加えた和音、すなわち、ハ-ヘ-イ(C-F-A)の和音である(ハは低音の音、ヘは4度の音、イは6度の音)。(日本では一般に下から読み、漢字では四六と書き「シロク」と発音する)
 
以下の譜例において、それぞれ上の五線は数字付き低音、下は数字付き低音が示す和音である。
[[画像:C_with_64_figured_bass.png]]
 
*譜例<b><i>a)</i></b>は何も数字が付いていないが、これは<math>\ \!^{\ 5}_{\ 3}\ </math>を示す。すなわち、低音の3度上と5度上に音を置く。<b><i>b)</i></b>、<b><i>c)</i></b>、<b><i>d)</i></b>は同じである。
一般に、4がなければ3を、6がなければ5を省略するので、次の譜の数字は、35→36→357を示し、それぞれハ-ホ-ト(C-E-G)→ロ-ニ-ト(B-D-G)→ト-ロ-ニ-ヘ(G-B(H)-D-F)を示す。
::[[画像:Chords_C-B63-G7Sujitsukiteion_35.png]]
*譜例<b><i>e)</i></b>のように6がある時は、<math>\ \!^{\ 5}_{\ 3}\ </math>の5の代わりに6度の音を置くことを示す。すなわち、<math>\ \!^{\ 6}_{\ 3}\ </math>で、<b><i>f)</i></b>と同じである。六の和音と呼ぶ。
::[[画像:Sujitsukiteion_6.png]]
*譜例<b><i>g)</i></b>のように4がある時は、3の代わりに4度の音を置くことを示す。すなわち、<math>\ \!^{\ 5}_{\ 4}\ </math>で、<b><i>h)</i></b>と同じである。
::[[画像:Sujitsukiteion_4.png]]
*譜例<b><i>i)</i></b>のように<math>\ \!^{\ 6}_{\ 4}\ </math>がある時は、3と5の代わりに4度と6度の音を置くことを示す。四六の和音と呼ぶ。
::[[画像:Sujitsukiteion_46.png]]
*譜例<b><i>j)</i></b>のように7がある時は、<math>\ \!^{\ 5}_{\ 3}\ </math>に7を加えることを示す。すなわち<math>\ \!^{\,_7}_{\,^5_3}\ </math>で、[[和音#四和音(七の和音)|7の和音]]である。
**フランス式では、属七の和音に限り、譜例<b><i>k)</i></b>のように「 + 」を加える。この+は、属七の第3音を示し、本来「+3」と書かれるべきものであるが、後述の3度の音の臨時記号の場合と同じように3を省略する。またこの書き方の場合には、後述のような臨時記号は常に不要である。
::[[画像:Sujitsukiteion_7.png]]
*譜例<b><i>l)</i></b>のように<math>\ \!^{\ 6}_{\ 5}\ </math>がある時は、前述の<b><i>e)</i></b>のように6だけが書かれた場合と異なり、5度の音を残しながら6度の音を加えることになる。すなわち<math>\ \!^{\,_6}_{\,^5_3}\ </math>である。五六の和音と呼ぶ。
**フランス式では、属七の第1転回の和音のような場合、5度が[[音程|減5度]]となるため、譜例<b><i>m)</i></b>のように5に斜線を引く。
::[[画像:Sujitsukiteion_56.png]]
*譜例<b><i>n)</i></b>のように<math>\ \!^{\ 4}_{\ 3}\ </math>がある時は、<b><i>g)</i></b>のように4だけが書かれた場合と異なり、3度の音を残しながら4度の音を加え、さらに5を6度に変えることを示す。<math>\ \!^{\,_6}_{\,^4_3}\ </math>とも書かれる。三四の和音と呼ぶ。
**フランス式では、属七の和音の第2転回の和音の場合、6度の所に第3音が来るため、譜例<b><i>o)</i></b>のように「 +6 」と書く。臨時記号は常に不要である。
::[[画像:Sujitsukiteion_34.png]]
*譜例<b><i>p)</i></b>のように2がある時は<math>\ \!^{\,_6}_{\,^4_2}\ </math>を示す。二の和音と呼ぶ。<math>\ \!^{\ 4}_{\ 2}\ </math>と書かれることが多い。
**フランス式では、属七の和音の第3転回の和音の場合、4度の所に第3音が来るため、譜例<b><i>q)</i></b>のように「 +4 」と書く。臨時記号は常に不要である。
::[[画像:Sujitsukiteion_2.png]]
*和音の中に[[臨時記号]]がある場合には、譜例<b><i>r)</i></b>のように数字の左または右に添える。
**省略される数字の場合にも、譜例<b><i>s)</i></b>のようにその数字が明示される。ただし、「 3 」は省略される。すなわち、譜例<b><i>t)</i></b>のように♭や♯だけが書かれた場合には、それが3度の音に付くことを示す。
**譜例<b><i>u)</i></b>は、本来書かれるべき3を♭で代用してしまっている例で、<b><i>v)</i></b>と同じである。
**半音上げる意味で「 + 」が使われることがある(フランス式とは別である)。譜例<b><i>w)</i></b>の場合、譜例<b><i>x)</i></b>の♯と同じ意味であるが、譜例<b><i>y)</i></b>のように[[調号]]の付くような場合には意味が違ってくる。この場合、<b><i>z)</i></b>のナチュラルと同じある。
::[[画像:Sujitsukiteion_rinji.png]]
 
==リアライズの実例==
[[画像:CBG_with_-_6_7_figured_bass.png]]
 
実際のリアライズ(数字等を読んで演奏すること)では、上の音のオクターブの選択は演奏者に任される。和声的に正しく、また美しくあることが求められる。次は例である。2段の5線の内、下の段とその下の数字が数字付き低音である。上の段は、そのリアライズであり、上下の段を一緒に演奏する。
[[画像:Chords_C-B63-G7.png]]
 
{{msg:stub}}
[[画像:C_with_64_figured_bassSujitsukiteion_001.png]]
 
譜例中、最初の和音は数字がないので、<math>\ \!^{\ 5}_{\ 3}\ </math>である。ニ/D音の3度上の音(ヘ/F音)と5度上の音(イ/A音)が加えられ、これら3音が右手で任意のオクターブで弾かれる。以下、和声的に続けられる。黄色部分の横線は、同じ音が続くことを示す。緑部のように、低音に音符のない部分に数字が書かれることもある。ピンク色部分は自由な装飾である。
 
==コードネームとの類似点、相違点==
 
数字付き低音は、和音の音符をすべて書かずに和音を示すという点で、[[和音#コードネーム|コードネーム]]と似ている。また、数字の意味もその意味自体は同じであって、コードネームのG7の7と、数字付き低音でト/G音に7を付けたときの7の数字が示す音は、ハ長調の場合同じで、それが示す和音も全く同じである。C6とハ長調でハ/C音に<math>\ \!^{\ 6}_{\ 5}\ </math>を付けた時の和音は同じで、6の数字が示す音も同じである。
 
決定的な相違点は、数字付き低音が調号に依存しているのに対し、コードネームは調号に依存していないことである。すなわち、コードネームでG7はどの調でもG-B-D-Fであるが、数字付き低音の場合は調号によって異なる和音になる。また、たとえば数字付き低音で♭があればリアライズした楽譜上で♭になるということであるが、コードネームでは減[[音程]]や短音程を表す。
 
また、コードネームが和音のルート(根音)から度数を数えるのに対し、数字付き低音では根音に関係なく低音から数える。だから、G7のコードの第一転回形はコードネームではG7/Bであるのに対し、数字付き低音ではロ/B/H音に<math>\ \!^{\ 6}_{\ 5}\ </math>と、全く違ってくる。