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[[image:Ritalin-SR-20mg-full.jpg|right|thumb|180px|化学的に合成した医薬品の例。錠剤。写真は[[メチルフェニデート|リタリン]]20mg錠。]]
[[File:12-08-18-tilidin-retard.jpg|thumb]]
'''医薬品'''(いやくひん)とは、[[ヒト]]や[[動物]]の[[疾病]]の[[診断]]・[[治療]]・[[予防医学|予防]]を行うために与える[[薬品]]。使用形態としては、飲むもの(内服薬)、塗るもの([[外用薬]])、[[注射]]するもの([[注射剤]])などがある([[剤形]]を参照)。[[日本]]では法的に、[[医療用医薬品]]と、[[薬局]]・[[薬店]]で誰でも購入できる[[一般用医薬品]]とに大別される
 
以下、特筆なき限り日本における医薬品の扱いについて解説する。
 
{{Main2|個々の代表的な医薬品|医薬品一覧}}
 
== 医薬品の定義と分類 ==
=== 日本の医薬品 ===
==== 医薬品医療機器等法による定義 ====
日本の[[医薬品医療機器等法]]第2条では次のように定義される<ref>[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S35/S35HO145.html 医薬品医療機器等法] {{ja icon}} 法令データ提供システム</ref>。
# [[薬局方|日本薬局方]]に収められている物
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国内で医薬品として譲渡を含め流通させるには、[[厚生労働大臣]]による製造販売承認が必要である。承認のないもので医薬品、医薬部外品、化粧品もしくは[[医療機器]]に該当しないものは「効能」「効果」をうたうことはできない。[[保健機能食品]]でその認められた範囲内で標榜する場合を除き、医薬品としての効能効果をうたった製品は、「未承認医薬品」として処罰の対象となる。
 
==== 食薬区分 ====
[[食品]]中の成分の薬理作用の研究が進んだ結果、[[疾病]]の予防などの効果をうたった[[健康食品]]が出現し、医薬品との区別があいまいになってきた。このため食品と医薬品を明確に区分する必要が生まれた。
 
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*[[成分本質 (原材料) では医薬品でないもの|成分本質(原材料)では医薬品でないもの]]
 
==== 種別医薬品の分類 ====
===== 医療用医薬品 =====
[[医師]]等によって使用され又はこれらの者の[[処方箋]]若しくは指示によって使用されることを目的として供給される医薬品をいう。ただし法的な定義がある訳ではなく、医療用医薬品であっても[[処方箋医薬品]]に指定されている医薬品でなければ、処方箋がなくても[[薬局]]で購入できるが、実際に販売している薬局は一部の薬局に限られている。
 
===== 一般用医薬品 =====
{{main|一般用医薬品}}
 
===== 薬局医薬品 =====
一般用医薬品以外の医薬品をいう。いわゆる医療用医薬品及び薬局製造販売医薬品([[承認]][[許可]]を取ることで[[薬局]]の調剤室での製造が認められる[[製剤]])。一般人へは薬局において[[薬剤師]]が対面で情報提供した上で販売するとされている。
 
===== 動物用処方箋医薬品 =====
「専ら[[動物]]のために使用されることが目的とされている医薬品」と定義されており、[[農林水産大臣]]が定めたものをいう。
 
=== 処方箋医薬品 ===
{{main|処方箋医薬品}}
医師等の[[処方箋]]がなければ、一般の人は購入できない医薬品。入手するには[[医療機関]]を受診し、[[医師]]または[[歯科医師]]の処方箋が必要になる。
 
===== 日本薬局方医薬品 =====
[[日本薬局方]]に収載された医薬品をさす。第一部医薬品、第二部医薬品に大別される。薬局方は約5年に一度大改定されるが、その間2年に一度程度追補版が発行され、収載医薬品が見直されている。最新版は、[[2011年]][[3月24日]]に、第十六改正日本薬局方が公表された。
 
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なお、第二部に収載された[[ショウガ]]、[[蜂蜜]]などは食品として利用されているものもある。
 
=== その他の種別フランス ===
フランスでは'''処方せん医薬品'''と良性の初期症状への処置を目的とする'''処方せん任意医薬品'''に分類される<ref name="mhlw2005">[http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/02/s0210-3d.html 諸外国における医薬品販売制度等について] 厚生労働省、2017年2月20日閲覧。</ref>。
* [[毒薬]]、[[劇薬]]
 
* [[医薬品医療機器等法#生物由来製品|生物由来製品]]、[[医薬品医療機器等法#特定生物由来製品|特定生物由来製品]]
=== ドイツ ===
* [[希少疾病用医薬品]]
ドイツでは'''処方せん医薬品'''、副作用が少なく一定の安全性が確認されているものに指定される'''薬局販売医薬品'''、強壮・健康状態の改善・内臓諸器官の機能保護・疾病の予防を目的とするもので具体的な効能・治療効果をもたないものに指定される'''自由販売医薬品'''に分類される<ref name="mhlw2005" />。
* [[麻薬]]、[[向精神薬]]、[[覚醒剤]]、覚せい剤原料、[[習慣性医薬品]]
 
=== イギリス ===
イギリスでは'''処方せん医薬品'''、一定の安全性が確立されているものの薬剤師が販売を監督する必要があるものに指定される'''薬局販売医薬品'''、安全性が広範に確立され薬剤師が販売を監督する必要がないものとして一般小売店で販売が可能なものに指定される'''自由販売医薬品'''に分類される<ref name="mhlw2005" />。
 
{{Main|== 医薬品開発}} ==
{{mainMain|後発医薬品開発}}
新たな医薬品(先発医薬品・新薬)の開発には長い期間(十数年)と巨額の費用(数十億から数百億円)を必要とするほか、製品化できないリスクも他の業界に比べて高い。さらに[[厚生労働大臣]]の承認を得るというプロセスが必要となる。一方、新薬の[[特許]]は申請後原則20年で切れる([[特許庁]]に特許延長願いを出し認められれば、最大5年間の延長が特許法で認められている)。そのため上市した後の特許保護期間は、他の製品に比べ短くなることから、常に新たな医薬品の研究・開発が必要とされる。以上のことから、医薬品業界は世界的に再編が進み、世界的な超大手企業([[多国籍企業]])に集約されつつある。日本でも例外ではなく、医薬品メーカーの再編が急激に進んでいる。
 
期間の切れた特許で作られた医薬品は[[後発医薬品]](ジェネリック医薬品)と呼ばれ、後発品専門の医薬品メーカーも存在する。既に先発メーカーで実績のある成分を用いる事から、開発期間も短く、新たな投資が少なくて済むため、先発品よりもコストが安い。ジェネリック医薬品の多用により、中小の新薬メーカーは開発費が回収困難になる懸念が持たれている。また大企業でも、[[2010年]]前後に大型医薬品が一斉に特許切れを迎えるため([[2010年問題]])、収益の確保が可能かどうか懸念が持たれている。
 
== 医薬品の製造 ==
日本では医薬品の製造には[[医薬品医療機器等法]]により[[製薬|医薬品製造業許可]]が必要とされている。また、製造した医薬品を上市するには、上市する医薬品の種類に応じて(第1種、第2種)医薬品製造販売業許可が必要である。
 
== 医薬品の販売 ==
=== 日本 ===
医薬品は誰でも販売できるわけではなく、原則として[[都道府県知事]]より許可を受けた以下のような場所でのみ販売できる。[[診療所]]や[[病院]]などで医薬品が扱えるのは、[[医師法]]あるいは[[歯科医師法]]の例外規定が根拠になっている。
 
==== 薬局 ====
{{main|薬局}}
医薬品医療機器等法では、[[薬剤師]]が販売又は授与の目的で調剤業務を行う場所を、[[薬局]]と定義している。調剤室以外での調剤は、[[薬剤師法]]の規定により原則として認められていない。ただし、[[在宅医療]]などの場合は例外がある。
処方箋に基づいて調剤をおこなう薬局を調剤薬局と呼ぶこともあるが、薬局であれば原則調剤ができるので不自然な呼び方であり、「薬局」と「調剤薬局」が別の形態であるかと誤認されるのを防ぐため、法的強制力は無いが新規の薬局には「調剤薬局」という名称を避けることが求められている。
 
==== 店舗販売業 ====
{{main|店舗販売業}}
医薬品販売業のうち店舗において一般人へ[[一般用医薬品]]を販売する業態で,一般用医薬品以外の医薬品は扱うことができない。いわゆる[[調剤]]を行わない薬店や[[ドラッグストア]]と呼ばれている業態。従来の[[一般販売業]]及び[[薬種商販売業]]は経過措置により[[2012年]]5月までは店舗販売業とみなされ営業できる。[[2009年]]施行の改正薬事法で新たに設けられた業態。
 
==== 配置販売業 ====
{{main|配置販売業}}
[[image:koukanndou2.JPG|reft|200px|thumb|戦前の配置販売業の薬箱と領収書]]
[[配置販売業]]とは、配置員(販売員)が消費者の家庭を訪問し、医薬品の入った箱(配置箱)を配置し、次回の訪問時に使用した分の代金を精算し、集金する仕組み(「先用後利(せんようこうり)」という)の医薬品配置販売業である。配置販売される医薬品は、置き薬ともいわれる。以前は、配置販売業の配置員は薬剤師などの資格を必要としなかったが、[[2009年]]の改正法による配置販売業では、薬剤師または[[登録販売者]]の資格を持たない配置員は、代金回収や補充以外の医薬品販売の業務ができないこととされた。配置販売に従事するに際しては[[都道府県]]知事の身分証の交付が必要となる。
 
==== 卸売販売業 ====
{{main|卸売販売業}}
医薬品販売業のうち医療機関や薬局などに医薬品を卸売りする業態であり[[倉庫]]が主体で店舗は持たない。[[自治体]]に[[ワクチン]]を納めるなど特殊な例を除き、医療関係者以外に直接医薬品を販売することは禁じられている。
 
=== 医薬品開発フランス ===
フランスでは医薬品を販売することが可能な業態は薬局に限られる<ref name="mhlw2005" />。薬局には薬剤師を常時配置することが必要で、一定の販売額を超える薬局では販売額ごとに決められた人数の薬剤師を配置することを要する<ref name="mhlw2005" />。
{{Main|医薬品開発}}
新たな医薬品(先発医薬品・新薬)の開発には長い期間(十数年)と巨額の費用(数十億から数百億円)を必要とするほか、製品化できないリスクも他の業界に比べて高い。さらに[[厚生労働大臣]]の承認を得るというプロセスが必要となる。一方、新薬の[[特許]]は申請後原則20年で切れる([[特許庁]]に特許延長願いを出し認められれば、最大5年間の延長が特許法で認められている)。そのため上市した後の特許保護期間は、他の製品に比べ短くなることから、常に新たな医薬品の研究・開発が必要とされる。以上のことから、医薬品業界は世界的に再編が進み、世界的な超大手企業([[多国籍企業]])に集約されつつある。日本でも例外ではなく、医薬品メーカーの再編が急激に進んでいる。
 
=== 後発医薬品ドイツ ===
ドイツでは処方せん医薬品と薬局販売医薬品を販売することが可能な業態は薬局のみ、自由販売医薬品を販売することが可能な業態は薬局及びドロゲリーに限られる<ref name="mhlw2005" />。処方せん医薬品と薬局販売医薬品の販売には薬剤師を常時配置することが必要であるほか、すべての医薬品は薬局の管理者による常時対応が可能になっていることを要する<ref name="mhlw2005" />。
{{main|後発医薬品}}
期間の切れた特許で作られた医薬品は後発医薬品(ジェネリック医薬品)と呼ばれ、後発品専門の医薬品メーカーも存在する。既に先発メーカーで実績のある成分を用いる事から、開発期間も短く、新たな投資が少なくて済むため、先発品よりもコストが安い。ジェネリック医薬品の多用により、中小の新薬メーカーは開発費が回収困難になる懸念が持たれている。また大企業でも、[[2010年]]前後に大型医薬品が一斉に特許切れを迎えるため([[2010年問題]])、収益の確保が可能かどうか懸念が持たれている。
 
==== 製造イギリス ====
イギリスでは処方せん医薬品と薬局販売医薬品を販売することが可能な業態は薬局に限られる<ref name="mhlw2005" />。自由販売医薬品は一般小売店でも販売することができる<ref name="mhlw2005" />。処方せん医薬品と薬局販売医薬品の販売には薬剤師を常時配置することが必要である<ref name="mhlw2005" />。
医薬品の製造には[[医薬品医療機器等法]]により[[製薬|医薬品製造業許可]]が必要とされている。また、製造した医薬品を上市するには、上市する医薬品の種類に応じて(第1種、第2種)医薬品製造販売業許可が必要である。
 
== 医薬品をめぐる問題 ==
臨床試験の期間は不十分であり、安全性の検証は限られたものであるが、現在では、製薬産業界またその間接的な影響にある患者団体が薬の承認までの期間の短縮を求めて、監督庁に圧力をかけている傾向にある{{sfn|国際医薬品情報誌協会|2005|pp=10-12}}。しかしながら、[[グローバル化]]によって超国家的に薬の売り出しを行っており、国際化されていない有害反応監視システムが手を打つ前に有害反応(副作用)の影響が広がる可能性がある{{sfn|国際医薬品情報誌協会|2005|p=10}}。
 
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日本の[[医療保険]]制度においては、患者の自己負担は[[薬価]]の3割([[障害者]]や[[高齢者]]の場合は2割や1割に減額される)であり、残りの7割が医療保険から支払われる。そのため、大量に薬が使われればそれだけ医療保険の負担も増すことになる。国は最近になって、先発医薬品に比べ薬価が低く同等の効果を持つとされる[[後発医薬品]](ジェネリック医薬品)の使用促進に取り組んでいるが、その目的の1つに、医療保険財政の改善がある。
 
=== 処方箋動物用医薬品 ===
日本では「専ら[[動物]]のために使用されることが目的とされている医薬品」と定義されており、[[農林水産大臣]]が定めたものをいう。
 
== 脚注 ==
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* [[製剤]]/[[製薬]]/[[創薬]]/[[治験]]/[[GCP]]/[[GMP]]/[[偽薬]]/[[研究製造業務受託サービス]]
* [[後発医薬品]]
* [[希少疾病用医薬品]]
* [[習慣性医薬品]]
* [[救急箱]]
* [[処方箋]]