「朝鮮語の音韻」の版間の差分
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333行目:
==== 平音の濃音化 ====
平音 {{ipa|b,d,s,j,g}} は音節末の[[阻害音]] {{ipa|b,d,g}} の直後に来えない。その場合、当該の平音はそれぞれ濃音 {{ipa|β,δ,σ,ζ,γ}} に交替する。
*{{lang|ko|입시}} {{ipa|ibsi}} → {{ipa|ibσi}}
*{{lang|ko|국밥}} {{ipa|gugbab}} → {{ipa|gugβab}}
==== {{ipa|h}}の激音化 ====
{{ipa|h}} は音節末の[[阻害音]] {{ipa|b,d,g}} の直後に来えない。その場合、当該の {{ipa|h}} は直前の阻害音と同じ調音位置で発音される激音({{ipa|p,t,k}} のいずれか)に交替する。
*{{lang|ko|입학}} {{ipa|ibhag}} → {{ipa|ipag}}
*{{lang|ko|각하}} {{ipa|gagha}} → {{ipa|gaka}}
==== 阻害音の鼻音化 ====
音節末の[[阻害音]] {{ipa|b,d,g}} は[[鼻音]] {{ipa|m,n}} および[[流音]] {{ipa|r}} の直前に来えない。その場合、当該の音節末阻害音はそれぞれ鼻音 {{ipa|m,n,ŋ}} に交替する。
*{{lang|ko|욕망}} {{ipa|yogmaŋ}} → {{ipa|yoŋmaŋ}}
*{{lang|ko|앞날}} {{ipa|abnar}} → {{ipa|amnar}}
*{{lang|ko|뒷날}} {{ipa|düdnar}} → {{ipa|dünnar}}
*{{lang|ko|놓는}} {{ipa|nodnɯn}} → {{ipa|nonnɯn}}
{{ipa|b,d,g}} の直後に {{ipa|r}} が来る場合、南の標準語では {{ipa|r}} も同時に鼻音化して {{ipa|n}} に交替する。北の標準語では 後に{{ipa|ya, yɔ, yo, yu}} が続く場合においては, {{ipa|r}} を {{ipa|n}} に交替せず、{{ipa|r}} のまま発音することが許容される。
*{{lang|ko|독립}} {{ipa|dogrib}} → {{ipa|doŋnib}}
*{{lang|ko|협력}} {{ipa|hyɔbryɔg}} → {{ipa|hyɔmnyɔg}}
==== 流音の鼻音化 ====
南の標準語において、[[流音]] {{ipa|r}} は[[鼻音]] {{ipa|m,ŋ}} の直後に来えない。その場合、当該の {{ipa|r}} は鼻音 {{ipa|n}} に交替する。北の標準語では,後に{{ipa|ya, yɔ, yo, yu}} が続く場合においては, {{ipa|r}} を {{ipa|n}} に交替せず、{{ipa|r}} のまま発音することが許容される。
*{{lang|ko|통로}} {{ipa|toŋro}} → {{ipa|toŋno}}
*{{lang|ko|침략}} {{ipa|chimryag}} → {{ipa|chimnyag}}
==== {{ipa|n}}の流音化 ====
{{ipa|n}} は流音 {{ipa|r}} の直前あるいは直後に来えない。その場合、当該の {{ipa|n}} は流音 {{ipa|r}} に交替する。なお、この場合に {{ipa|rr}} という音の連続の実際の音声は {{IPA|ll}} である。
*{{lang|ko|신라}} {{ipa|sinra}} → {{ipa|sirra}}
*{{lang|ko|찰나}} {{ipa|carna}} → {{ipa|carra}}
*{{lang|ko|물난리}} {{ipa|murnanri}} → {{ipa|murrarri}}
*{{lang|ko|대관령}} {{ipa|dɛgwanryɔŋ}} → {{ipa|dɛgwarryɔŋ}}
=== 形態音韻論的な交替 ===
374行目:
例えば、{{ipa|nopa}} (高く)は {{ipa|nop}} が語幹であるが、語幹末音の {{ipa|p}} は {{ipa|nopa}} のように直後に母音が来て {{ipa|p}} が音節頭の位置にあるときは激音 {{ipa|p}} として現れるが、{{ipa|p}} の直後に子音が来るなどしてこの音が音節末の位置に来る場合には {{ipa|nobδa}} (高い)のように {{ipa|b}} に交替する。これは激音 {{ipa|p}} が音節末の位置に立つことができず、音節末の位置では {{ipa|b}} と {{ipa|p}} の区別が失われて平音 {{ipa|b}} のみが現れるためである([[中和 (言語学)|中和]])。
*{{ipa|p}}~{{ipa|b}}
**{{lang|ko|잎이}} {{ipa|ipi}} (葉が) ~ {{lang|ko|잎}} {{ipa|ib}}
*{{ipa|t,s,σ,j,c}}~{{ipa|d}}
**{{lang|ko|밭에}} {{ipa|bate}} (畑に) ~ {{lang|ko|밭}} {{ipa|bad}}
**{{lang|ko|옷이}} {{ipa|osi}} (服が) ~ {{lang|ko|옷}} {{ipa|od}}
**{{lang|ko|있어}} {{ipa|iσɔ}} (いて) ~ {{lang|ko|있자}} {{ipa|idζa}}
**{{lang|ko|낮에}} {{ipa|naje}} (昼に) ~ {{lang|ko|낮}} {{ipa|nad}}
**{{lang|ko|빛이}} {{ipa|bici}} (光が) ~ {{lang|ko|빛}} {{ipa|bid}}
*{{ipa|k,γ}}~{{ipa|g}}
**{{lang|ko|부엌에}} {{ipa|buɔke}} (台所に) ~ {{lang|ko|부엌}} {{ipa|buɔg}}
**{{lang|ko|밖에}} {{ipa|baγe}} (外に) ~ {{lang|ko|밖}} {{ipa|bag}}
<!--終声の次の形態素の最初の音節が「{{lang|ko|아}}、{{lang|ko|어}}、{{lang|ko|오}}、{{lang|ko|우}}、{{lang|ko|애}}、{{lang|ko|외}}、{{lang|ko|위}}」などの場合、終声は中和した後、次の音節の初声になって発音する。ただし、言葉の流れによって次の母音と離れて発音する場合もある。
*{{ipa|p}}~{{ipa|b}}
**{{lang|ko|늪이}} {{ipa|nɯpi}} (沼が) ~ {{lang|ko|늪 앞}} {{ipa|nɯbab}} (沼の前)
407行目:
{{ipa|barba}} (踏んで)は {{ipa|barb}} が語幹であるが、このように語幹末に子音が2つ連続している場合、語幹末の子音が {{ipa|barba}} のように初声の位置に立つときは連続する2つの子音が両方とも現れる。しかし、語幹末の子音が終声の位置に立つときは {{ipa|babδa}} (踏む)のように2つの子音のうち一方が脱落する。これは朝鮮語において音節末の位置に2つ以上の子音が同時に立ちえないためである。
*{{ipa|bσ}}~{{ipa|b}}
**{{lang|ko|값이}} {{ipa|gabσi}} (値が) ~ {{lang|ko|값}} {{ipa|gab}}
*{{ipa|rb}}~{{ipa|b}}
**{{lang|ko|밟아}} {{ipa|barba}} (踏んで) ~ {{lang|ko|밟자}} {{ipa|baːbζa}}
*{{ipa|rp}}~{{ipa|b}}
**{{lang|ko|읊어}} {{ipa|ɯrpɔ}} (詠んで) ~ {{lang|ko|읊자}} {{ipa|ɯbζa}}
*{{ipa|rm}}~{{ipa|m}}
**{{lang|ko|삶이}} {{ipa|saːrmi}} (生活が) ~ {{lang|ko|삶}} {{ipa|saːm}}
*{{ipa|nj}}~{{ipa|n}}
**{{lang|ko|앉아}} {{ipa|anja}} (座って) ~ {{lang|ko|앉자}} {{ipa|anζa}}
*{{ipa|rb}}~{{ipa|r}}
**{{lang|ko|넓어}} {{ipa|nɔrbɔ}} (広く) ~ {{lang|ko|넓다}} {{ipa|nɔrδa}}
*{{ipa|rg}}~{{ipa|g}}
**{{lang|ko|읽어}} {{ipa|irgɔ}} (読んで) ~ {{lang|ko|읽자}} {{ipa|igζa}}
*{{ipa|gσ}}~{{ipa|g}}
**{{lang|ko|넋이}} {{ipa|nɔgσi}} (魂が) ~ {{lang|ko|넋}} {{ipa|nɔg}}
*{{ipa|rg}}~{{ipa|r}}
**{{lang|ko|읽어}} {{ipa|irgɔ}} (読んで) ~ {{lang|ko|읽고}} {{ipa|irγo}}
*{{ipa|rσ}}~{{ipa|r}}
**{{lang|ko|외곬으로}} {{ipa|ögorσɯro}} (一途に) ~ {{lang|ko|외곬}} {{ipa|ögor}}
*{{ipa|rt}}~{{ipa|r}}
**{{lang|ko|핥아}} {{ipa|harta}} (なめて) ~ {{lang|ko|핥고}} {{ipa|harγo}}
==== 初声の形態音韻論的な交替 ====
435行目:
子音語幹[[用言]]に平音で始まる[[接尾辞]]・[[語尾]]が付く場合、語幹末子音が鼻音・流音の場合であっても直後の接尾辞・語尾の頭音である平音が濃音化する。
*{{lang|ko|삼고}} {{ipa|saːmγo}}
*{{lang|ko|핥고}} {{ipa|harγo}}
[[体言]]では、合成語において平音の濃音化が見られる。また、一部の[[漢字語 (朝鮮語)|漢字語]]においても平音の濃音化が見られる。
*{{lang|ko|말버릇}} {{ipa|maːrβɔrɯd}}
*{{lang|ko|보험증}} {{ipa|boːhɔmζɯŋ}}
なお、漢字語においては {{ipa|r}} の直後で平音 {{ipa|d}},{{ipa|s}},{{ipa|j}} が濃音化する。
*{{lang|ko|철도}} {{ipa|cɔrδo}}
*{{lang|ko|발사}} {{ipa|balσa}}
*{{lang|ko|물질}} {{ipa|murζir}}
===== 激音化 =====
用言のうち、接尾辞・語尾の頭音の平音が激音で現れるものがある。このような用言は語幹末に {{ipa|h}} を持つと考える場合が多い。正書法上では、終声字に「{{lang|ko|ㅎ}}」を含む場合({{lang|ko|ㅎ}},{{lang|ko|ㄶ}},{{lang|ko|ㅀ}})がこれに当たる。
*{{lang|ko|놓아}} {{ipa|noa}} (置いて)、{{lang|ko|놓는}} {{ipa|nonnɯn}} (置く) → {{lang|ko|놓고}} {{ipa|noko}}
*{{lang|ko|많아}} {{ipa|mana}} (多くて)、{{lang|ko|많은}} {{ipa|manɯn}} (多くの) → {{lang|ko|많고}} {{ipa|manko}}
*{{lang|ko|옳아}} {{ipa|ora}} (正しくて)、{{lang|ko|옳는}} {{ipa|orrɯn}} (正しい) → {{lang|ko|옳다}} {{ipa|orta}}
===== 鼻音化 =====
[[漢字語 (朝鮮語)|漢字語]]において、終声 {{ipa|n}} の直後で 流音 {{ipa|r}} が {{ipa|n}} で現れる場合、終声 {{ipa|n}} と初声 {{ipa|r}} の間に[[形態素]]の境界がある場合に {{ipa|r}} が {{ipa|n}} に交替する。
*{{lang|ko|생산량}} {{ipa|sɛŋsanryaŋ}} → {{ipa|sɛŋsannyaŋ}}
*{{lang|ko|의견란}} {{ipa|ɯigyɔnran}} → {{ipa|ɯigyɔnnan}}
===== 口蓋音化 =====
語幹末音に {{ipa|d}} を持つ語幹の直後に {{ipa|i}} あるいは {{ipa|hi}} で始まる接尾辞・語尾が付くとき、{{ipa|d}} と {{ipa|i}} あるいは {{ipa|hi}} が組み合わさり {{ipa|ji}} あるいは {{ipa|ci}} と現れる現象。正書法上では終声字「{{lang|ko|ㄷ}},{{lang|ko|ㅌ}}」の直後に「{{lang|ko|이}},{{lang|ko|히}}」が書かれて {{ipa|ji}}({{lang|ko|지}}),{{ipa|ci}}({{lang|ko|치}}) と発音される。
*{{lang|ko|미닫이}} {{ipa|midaji}}
*{{lang|ko|같이}} {{ipa|gaci}}
*{{lang|ko|닫힌다}} {{ipa|dacinda}}
*{{lang|ko|핥인다}} {{ipa|harcinda}}
===== 音の添加 =====
471行目:
合成語および派生語において前部形態素が子音で終わり、後部形態素が母音 {{ipa|i}} あるいは半母音 {{ipa|y}} で始まる場合、後部形態素の頭に子音 {{ipa|n}} が添加されうる。ただし、表記には通常反映されない。
*{{lang|ko|담요}} {{ipa|damnyo}}
*{{lang|ko|식용유}} {{ipa|sigyoŋnyu}}
*{{lang|ko|영업용}} {{ipa|yɔŋɔmnyoŋ}}
*{{lang|ko|내복약}} {{ipa|nɛboŋnyag}}
*{{lang|ko|그림엽서}} {{ipa|gɯrimnyɔbσɔ}}
*{{lang|ko|꽃잎}} {{ipa|γonnib}}
=== 音素交替と正書法 ===
549行目:
*{{lang|ko|허웅}}(1985;1997) “{{lang|ko|국어 음운학}}”,{{lang|ko|샘 문화사}}
<!--*『表現が広がるこれからの朝鮮語』権在淑 三修社 1988年 ISBN 4384014724 コメントアウト。この本は学習書であり、音韻の概説のためにはあまり役に立たない-->
{{DEFAULTSORT:ちようせんこのおんいん}}
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